e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

報恩寺と妙顕寺

3月17

myoken 梅の香りがほのかに香るなか、通常非公開の報恩寺妙顕寺に行ってきました。
大河ドラマ主人公・黒田官兵衛の息子・黒田長政の宿舎であった報恩寺で有名な「鳴虎図」は、複製でありながらも1本1本書き込まれた毛並みは触感が伝わってきそうな質感。
また、ちょっと頭の大きな織田信長や無精髭を蓄えた豊臣秀吉の肖像画(作者不詳)も珍しいものでした。
京都初の日蓮宗道場で、門下唯一の勅願寺である妙顕寺では、尾形光琳ゆかりの「光琳曲水の庭」等異なる趣向の三つの庭園もありましたが、日蓮宗開祖・日蓮聖人直筆とされる十界曼荼羅と、その要素を立体的に再現した本堂須弥壇は、まるで誰かが扮しているのでは!?と思うほど迫力のあるものでした。
また、日蓮の孫弟子にあたり当寺を創建した日像上人が、通常なら7巻にもわたる法華経を、携帯用ケースに収めるべく極小文字で1巻に纏めており、鼠の髭で書かれたとも言われるその文字は1㎜四方にも満たない大きさ!それでも、添えられた虫眼鏡で見ると、ちゃんと文字の形になっているのです!!
やはり、インターネットで拾った見どころ情報だけで知ったような気分になっていても、実際に足を運んで得られる発見は、その行間にあるものなんですね。
京都市観光協会「京の冬の旅」主催の「非公開文化財特別公開」は18日で終了しますが、4月下旬からは京都古文化保存協会が主催による「京都春季非公開文化財特別拝観」が始まります。

冬の貴船

2月25

botan 冬の貴船を訪れました。夏の川床、秋の紅葉シーズンは多くの人が足を伸ばすこの地も、人影はまばらだな…と思いきや、若い女性のグループやオフシーズンならではの静けさを楽しむ外国人カップルなど、意外に人足が絶える事は無いようでした。
特に貴船神社では最も人が多く、水に浮かべてご神託を受ける「水占おみくじ」を試みる家族連れや、お札を求める夫婦などの姿があり、パワースポットとしての人気は冬場も衰えを見せません。
川沿いでは3月まで店を閉めているところもありましたが、今回は「べにや」で寒い時期のお楽しみ、「ぼたん御膳」を頂く事にしました。
「昔は猪に抵抗のある人が多かったけど、最近は若い人がよう食べはりますね。」と仲居さん。
締めには、野菜と猪肉の旨みが溶け込んだスープでおじやを作ってもらい、お腹の中からぽかぽか温まります。
なにより料理旅館なので、仲居さんにお座敷へ通された時から、まるで旅行に来た様な気分。窓を開けると、せせらぎも聞こえてきます。
冬の貴船は、京都の人にとっては小旅行の気分を味わえ、他府県から観光で来た人にとっても、京都の町中とは景色がガラッと変わるので、このしんと冷えた空気も気持ちよく感られました。

いなり、こんこん、恋いろは。

1月21

konkon 京都が登場する小説や映画、アニメはこれまでも製作されてきましたが、今月からは伏見稲荷大社を舞台としたアニメ「いなり、こんこん、恋いろは。」が始まりました。
京都出身の漫画家・よしだもろへさんが「ヤングエース」で連載する漫画が原作で、主人公の内気な女子中学生「伏見いなり」が神様との交流を通じて成長していくラブコメディです。
映画以外のアニメを観るのは久々だったのですが、昔の少女漫画の様な懐かしさもあり、また主人公が宇迦之御魂大神(通称「うか様」)から神通力(変身能力)を授かるというSF的要素もあり、掌サイズのかわいい狐の「コン」ちゃんもあり。
お稲荷さんへ月参りしている身としては、「丹波橋くん」や「墨染さん」など、どこかで聞いた事のある名称に思わずニヤリとしてしまい、また、背景に描かれているコンビニを見ると、「これは、あの角を曲がった所では…」と、ストーリー以外の所も気になってしまいます。
先月同大社で開かれたという完成披露記者会見によると、制作関係者は今後、主人公の伏見いなり役の声優・大空直美さん(立命館大学出身)が伏見稲荷を紹介するスマートフォン用アプリや、インターネット上の観光マップを開発される予定だそうです。
アニメは全国10局で放映中で、単行本は既に7巻まで刊行。来月にはスタンプラリーも開催が予定されています。

下鴨神社の蹴鞠初め

1月6

kemari  下鴨神社の蹴鞠初めを観て来ました。
飛鳥井流の作法に則り 、毬を落とさず長く続ける事を心がける勝敗の無い遊びです。
鹿皮を裏返して縫い合わせた毬は、中が空洞で重さは100~150g程度。ほんの少しの風でも流れてしまうと言います。
サッカーのリフティングとは違い、王朝装束を身にまとい、足裏を見せないようにできるだけ地面に近い所で蹴って、毬を送る時には「ありい」、受ける時には「おう」と声を掛ける等、様々な作法の制約があるので、ラリーを長く続けられるのは、かなりの熟練を要しそうです。
この独特の掛け声は、それぞれが毬の中にいるという神様の名前を指しているのだとか。
白峯神宮や一般公開時の京都御所など、寺社で奉納される事の多い蹴鞠ですが、「依頼があれば一般のご邸宅でも致します」とのこと。
サッカーW杯やオリンピックでの前座でもやってくれたら、国内外の方から喜ばれるんじゃないかな~なんて、ちょっと期待してみたり。
なお、「蹴鞠保存会」では、白峯神宮にて毎月二回日曜日に練習を行っているそうです。
下鴨神社の蹴鞠初めの動画はこちら

お稲荷さん前のカフェ「Vermillion」

12月24

ver 伏見稲荷大社へ月詣りする度に立ち寄っている「薬力亭」の息子さんが、とうとうカフェ『Vermillion(京都市伏見区深草稲荷御前町85)』をオープンされました。

千本鳥居の「朱色」を表す店名で、メニューはまだコーヒーとカフェオレ、手作りのお菓子とかわいいお稲荷さんポストカードのみですが(電話もまだありません!)、若いオーナー夫妻は英語が堪能なので、お稲荷さんを目指して訪れる外国人観光客へのインフォメーションスポットとしても、これからも充実していく事でしょう!
場所は、JR「稲荷駅」や京阪「伏見稲荷」駅から伏見稲荷大社の表参道へ向かう途中にあるという好立地。
そして二階は未だ工事中。この先一体どんな展開が!?

とにもかくにも、初詣の寒さでかじかんだ指先には、一杯の温かいコーヒーをどうぞ!

上賀茂神社「鎧着初式」

11月26

yoroi 先週末の上賀茂神社は、結婚式に七五三、そして「鎧着初式」で賑やかでした。

鎧廼舎(よろいのや)「うさぎ塾」が主催する「鎧作り教室」で手作りされた鎧兜を着たちびっこや大人武者達が練り歩いてお披露目する「鎧着初式」。
武者行列は、母の手に引かれ足元もおぼつかない幼児からハーフの女の子、アメリカ人留学生に髭を立派に蓄えたお年寄りまで、色づき始めた木の葉よりも華やかです。
組紐で編まれたその気品ある色遣いと美しい立体感に、鎧兜もまた伝統工芸品である事を改めて実感しました。
平安鎌倉期の伝統儀式「鎧着初式」に倣い、代表の子供達が一人ずつ、烏帽子を外した頭に兜を被せられ、緒を締めます。
新たな装いとなった子供は神前にて、それらを作ってくれたご両親や大人たちへの感謝の言葉を捧げます。
子供や孫が健やかに成長するように、と心を込めて作られた鎧兜を身にまとい、さっきより引き締まった表情で歩く姿を見ると、自分も将来子供に手作りの鎧兜を贈りたいと思いました。

いつか成人するまで、いやその後々も、この先の人生にはきっと色んな事が起こるかもしれません。
でも大丈夫、その鎧兜がきっと守ってくれるよ。  
鎧着初式の動画はこちら

洛北蓮華寺

11月19

renge 洛北にある蓮華寺に行ってきました。
紅葉の見頃はまだ始まったばかりで盛りの一歩手前でしたが、青から黄色、赤へとグラデーションを描く紅葉の虹もまた、目に優しい印象を与えてくれます。
紅葉の陰で控えめに咲いている山茶花は、わずかな日の光も受け止めて雪の様に白く輝き、少し朽ちかけた花びらは透けるように繊細で。
その中を、様々な人が訪れては去って行き、小さいお寺ながら、人の足が絶える事はありませんでした。
移ろいゆく自然と、自分の前を通り過ぎて行く人々の流れ。これって、人の一生にも似ているのかも?

今の貴方は、何色ですか?
そして一面の銀杏の絨毯。色鮮やかな黄色に元気をもらいました。

清浄華院の泣不動

11月5

shojo 

 秋の非公開文化財特別拝観で公開中の清浄華院に行って来ました。

数多くの寺宝の中で個人的に最も印象的だったのが、泣不動尊と「泣不動縁起絵巻」でした。
それによると、三井寺の智興上人が死病に陥ったとき、最も年若の弟子・証空が自ら名乗り出て、陰陽師・阿倍晴明の祈祷により、その身代わりとなりました。
病の苦しみに耐えかねた証空が不動尊の画像に助けを請うと、夢に現れた不動明王は血の涙を流して証空の身代わりになると宣言します。
あの世では、証空の代わりに鎖に繋がれた不動明王がやって来て、閻魔大王はびっくり。逆に閻魔さんが平伏します。
こうして智興上人も証空も不動明王も助かり大団円。後に証空は高僧となって三井寺塔頭・常住院を開いたそうです。

背後にメラメラと燃える火焔を背負った不動明王は一見強面ですが(ちなみに縛られている間もメラメラ燃えています)、その表情は愛のムチとも言えるお叱りの気持ちのあらわれ。
右手に剣を、左手に羂索という縄を持ち、全ての障害や悩みを打ち砕くという心強い仏様です。
とりわけ涙を流して身代わりになるとは、なんとも情にアツい仏さまではありませんか。

特別公開は8日までですが、清浄華院の不動堂では8月を除く毎月28日に護摩供養会が行われており、誰でも参加できます。
お不動さんが、昔から多くの人々に親しまれてきた事が伝わって来ますね。

式年遷宮

10月3

jingu 20年に1度、新しい本殿に神様が遷られる「式年遷宮」が、伊勢神宮で行われました。
式年遷宮まめ知識
第六十二回神宮式典遷宮記念切手
多くの人々の信仰を集めている神宮。京都にも伊勢神宮にゆかりの場所があるのでは?と思って調べてみたら、やはりありました。

まずは京都府内で「元伊勢」と呼ばれる元伊勢内宮皇大神社、天岩戸神社と元伊勢外宮豊受大神社(いずれも福知山市)や、 籠(この)神社(宮津市)。
伊勢神宮の御祭神が、現在の三重県伊勢市に鎮座するまでに一時的に滞在し、祀られたと言われる場所です。
京都市内で伊勢神宮に関連があるのは、日向大神宮野宮神社斎明神社天道神社。掘り下げれば、まだまだ発見があるかもしれません。

同じく平成25年に式年遷宮を迎えた出雲大社は60年に1度というように、期間は異なるものの、かつては殆どの神社で遷宮が定期的に行われていたそうですが、経済的事情、用材や職人確保の問題で、継続はなかなか難しいようです。
そんな中、上賀茂神社下鴨神社も平成27年の式年遷宮に向かって動き始めています。

「式年遷宮」には社殿を新調し神域を清浄にする、宮大工の技術を継承する等の意味を持つとされていますが、日本人の信仰心や国民性を改めて意識する機会の様な気もします。
古いのに、新しい。変わらないようでいて、まっさらになっていく。なんだか不思議な儀式です。

下鴨神社・矢取神事

8月12

ya 真夏にシャワーを浴びるとさっぱりするように、一年の折り返しを過ぎた夏になると、日本人は禊祓(みそぎはらえ)がしたくなるのでしょうか。
立秋前夜を迎えた下鴨神社の御手洗社では、先月の御手洗祭に引き続いて夏越神事が行われていました。
社の井戸の前に野菜などを供え、大麻(おおぬさ)で周囲の見学者も共にお祓いしてもらうこと約一時間。
奉納された厄除けの人形が流され、合図が鳴ると、褌姿の氏子男子が一斉に御手洗池に飛び込み、ざぶんざぶんと音を立てて中央の斎矢を奪いあいます。その時間わずか30秒ほど。
終わった後の池の水面や裸男たちの背中には、厄除けの人形がびっしり。自分たち半年分の穢れを水に流してもらったようで、ありがたい。
夏も半ば。毎日温度計ばかり見て嘆くよりも、何か夏らしい思い出を作る事を考えませんか?
下鴨神社では、16日まで「納涼古本まつり」が開催中です。

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