e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「この景色」が撮りたくて

8月2

motomiya
伏見稲荷大社・本宮祭(宵宮祭)

京都の観光地や催しを撮影していると色々あります。

ベストな撮影場所を求めて、早朝から場所を取って待機していたのに、始まる直前になって報道陣が目の前に現れて視界が塞がれてしまったり、音を拾うためのテレビ局クルーのマイクが目の前に伸びてきて真正面に映り込んでしまったり。

早くから現地入りをして、「神聖な儀式の場だから」と少し遠慮して下がってカメラを構えていたら、後から来た背の高い外国人が前に入って来て長い腕でスマートフォンを掲げたまま動画撮影を始めてしまったり。

「ああ…」と思わず深いため息が出てしまうこともしばしば。
中には怒りを露わにして、前にいる人に向かって声を上げる人もいたりします。
「寺社は神聖な祈りの場なのだから、撮影スポットでは譲り合うべきだ」とネットで語る人もいました。

自分の中にもそんな感情が沸き上がりそうになる事もあります。でもそんなときは、
「分かる…!分かるけど…寺社は撮影をしに来る場所じゃないんだよなあ」
「ほら、フォトジェニックな景色を撮らんがために、仏神にすっかりお尻を向けて、お賽銭すらしていないじゃないか。」
と自分に言い聞かせて戒めています。

ガイドブックに掲載されているのと同じ景色を撮ることに、みんな必死。
でも、同じアングルの、似た画像が大量生産されるのってそんなに価値があるでしょうか?

エピソードよりも先に、SNSの画像から直感的に旅行先のプランを立てる傾向も主流になりつつあります。
自分の個人的なSNSでも、外国人の方から度々尋ねられることも出てきました。
撮影場所だけでなく+αの情報も添えて、文化的な背景も知って欲しいな、と願いながら返信をしています。

2023年8月02日 | 未分類 | No Comments »

お気に入りの珈琲を探して

3月14

coffee 京都の町に続々と、珈琲店が生えるように増えていますね。
どこで飲もうか面食らう程ですが、今回は「生きている珈琲」というかわった名前の喫茶室へと、地下への階段を降りてみました。

まるで昔からここにあったような純喫茶の様な内装ですが、スタッフは若く、Wi-Fiもあり、完全分煙と、ちゃんとイマドキです。

さて「生きている珈琲」とは。
豆の細胞を壊さず、焦がさないという熱風低温焙煎の珈琲は、胃に優しく豆本来のクリアな味がするそうで、冷めても飲みやすいとのこと。

メニューのチャートに「コク」「さっぱり」「酸味」「苦み」といった特徴が豆ごとに分類表示してあるので、素人にとっては分かりやすくありがたい。
コクと甘みのコロンビアを選んでみましたが、お店の指南によると、酸味もコクも楽しめるバランス系。
日本女優に例えるなら宮沢りえ、だそうです。

一杯25gの粗挽き豆から抽出された珈琲を、まずはブラックで。
家だと甘さを入れたカフェオレばかり飲んでいるので、「ブラックでも苦味を気にせず飲める」のが自分にとっての美味しさの基準にしています。
これはちゃんとブラックで楽しめました。クリアな味をしばらく楽しんだ後は、添えられたフレッシュを足して、最後は砂糖も少し加えて味変を楽しみました。

ちょうど家の豆を切らしていたので、オーダーした珈琲を飲みながら
「家族が朝一番に飲むから、どんな味がいいだろう?」
「カフェオレにするなら、苦みもある方がいいかな?」
と購入する豆を何にするかじっくり思案。

少量の小袋で家族の反応を見てみることにしました。
ちなみに、熱風低温焙煎の珈琲は賞味期限も約2倍だそうですよ。

2023年3月14日 | お店, グルメ, 未分類 | No Comments »

花は一発勝負

2月1

hana  
画像を載せるのもお恥ずかしいのですが、お茶の稽古場で、隙間時間にお花も教えていただけることになりました。
和花は近所で買えないし、終わったら持って帰って家で飾れるので嬉しいですね。
華道はこれまで単発的に体験した程度なので、ど素人の挑戦です。

今回の花器は竹の花入を選びました。
竹の花入の場合、花を上からではなく、
間の窓から差し入れます。
入れる本数は偶数が基本。
正面から鑑賞するものなので、正面の鑑賞者に向かってくるような感じにいけます。
花器の縁周り付近に花がまとわりつかないよう、外に浮いているかのようにいけるそうです。

指先で枝に触れ、その造形に沿わせていると、
立体化した墨文字をなぞっているような感覚になります。蝋梅と椿が、もしかしたら
立てた弓と羽根みたいに決まるかも…と進めていましたが、最後の最後で鋏で茎を切りすぎて、
縦にまっすぐだった枝が横にくるりんと回転して戻らなくなってしまいました。

完成したら、中筒の淵ぎりぎりまで水を満たします。
そうすると、もうこれ以上手が入れられなくなります。
一発勝負なのも書画と似ている気がします。
最後に全体に霧吹きで水打ちして瑞々しく。

問題は、家には和花をいけられる花器が無い!
さて、どこで買おうかな?

ホテルや旅館に飽きたなら

1月11

yado
京都旅行はホテルや旅館でしっぽりと…が定番となっている人は、その古都イメージを覆すお部屋に泊まって新しい刺激をどうぞ。
洛北に3カ所展開する「宿ya」の中で、今回宿泊したのは修学院の「宿yaロッジ」。
一見店舗かと間違える建物の2階に上がり、鍵で中に入ると…部屋のあちこちに鹿や鰐、鳥、熊の剥製に、角が何本もぶら下がったシャンデリアという強烈な個性の空間が広がっていました。
イカツイご趣味かと思いきや、天蓋付きの大きなベッドの傍らにギター、大画面のテレビの下に大量のCDとデッキ、間接照明にバーカウンター(調理器具あり)、照明が変えられる広いバスルームなど、ステイそのものを楽しむ要素がいっぱいで、内装も細部にわたってこだわりと遊び心が満載。
トイレでは、サメの頭の剥製の下で用を足す度に優雅な音楽が流れます。

小さな子供連れでの利用は、添い寝であれば大人の料金のみ。
ゲストブックには国内外からオーナーに対する感謝や「また来たい」という言葉がびっしりとしたためられ、受験のために宿泊された学生さんもいたようです。
先に泊まった事のある身内の家族連れは、家の建て替えの際に向かいのファミリータイプの部屋を利用したのですが、なんと各ベッドが監獄風で鉄格子が入っていたとのこと。
さぞかし子供達はエキサイトしたことでしょう。
オーナーの方曰く、そちらの部屋は3月からペット連れで泊まれるようにされるとのことで、現在公式サイトからはその部屋の様子が見られなくなってしまいましたが、興味のある方は直接問い合わせてみてはいかがでしょうか。

2023年1月11日 | 未分類 | No Comments »

今年はしめやかに。

6月8

bon 「暗闇の奇祭」と呼ばれる宇治縣祭
縣神社 のみならず、周辺の住宅地までも消灯して神様が通るのを迎えるお祭です。
クライマックスが真夜中という事もあり、神社から近くJRと京阪の「宇治」駅の間に位置する宇治第一ホテルに泊りがけでお参りさせて頂きました。

今年は3年ぶりに梵天が境内を渡御しました。
担がれた大きな球状の幣帛(へいほく)の塊の中をよく見ると、「カミサン」と呼ばれる男性が一人、埋まるように乗っていて、激しく上下左右に揺さぶられる中でも片手を真っ直ぐに伸ばして耐えています。
今年は境内の中だけでの渡御だったので、この「天振り」も従来よりは随分と大人しいものだったのかもしれません。
それでも、17時の「夕御饌の儀」や19時の「護摩焚法修」など、神事の刻となる度にどことなく人々が集まり、次第に強まる雨の中でも見守るなか、若衆たちの表情もまたどこか誇らしげだったのでした。
雨風混じる夜でしたが、やはり消灯して暗闇で神移しが行われる瞬間、一陣の風が巻き起こって木々の葉をざわざわと揺らし、そのあと静まる瞬間があるのは嬉しいものです。

例年の祭の様子は、縣神社をモデルとした小説『蒼天』に描写されています。
近畿各地から集結した数百軒余りもの露店や屋台が立ち並び、浴衣姿の子供達など老若男女で賑わっていたという地元色の風情も味わうため、また訪れてみたいものです。

梵天から外され、お下がりとして頂いた白い紙垂を手に、僅かな街灯のみに照らされた暗闇の縣通りを後にしました。 →動画はこちら

日本三景「天橋立」の記憶

8月11

ama
一度は観てみたい日本三景。
陸奥の「松島」、安芸の「宮島」と並び、京都府北部にある「天橋立」もその一つです。

「股のぞき」できる高台は「天橋立ビューランド」前にあり、小型のモノレールまたは一人乗りのリフトで昇りますが、リフトは足が届きそうな高さのまま進むのでご安心を。
何十年ぶりかに天橋立へと向かう道中では、「〇大名所とか呼ばれるところって、思ったほど魅力的でもない“外れ”もあったりするよね。」と半ば高をくくっていました。
ちょうどその日は空にさざ波のような雲の筋が入り海面は滑らかだったので、まるで空と海が逆さまになったかのようで、想像したよりもずっと美しく清々しい景色でした。

「天橋立ビューランド」は、子供も運転できるコインカーにゴーカート、アーチェリー、SLや観覧車、天橋立を眺めながら漕げるサイクルカーなどなど子供から大人まで楽しめて、ちょっと懐かしい施設がいっぱいです。
幼い頃にこの遊園地で遊んだかどうかは覚えていないのですが、天橋立で「股のぞき」をしたその瞬間の記憶だけがなぜか残っています。

対岸へと渡った先にあるのが「元伊勢」として信仰を集めている「籠神社」。
本殿は檜のいい香りが漂い、境内は30分もあれば十分にお参りできる程の広さなので、ぜひ徒歩5分程の奥宮の真名井神社もお参りしてみてください。
長い階段を登りますが、蝉の声が木々と磐座の中に染み入るようで、自然との一体感をより感じます。

地形に係わる名所や神社は、時間を経てもそう簡単には無くなりません。
「一度は行ってみたい場所リスト」に加えてみませんか。

やり直しは、何度でも。

1月20

7 大晦日に大掃除をしてお正月を迎え、七草粥を食べたかと思えば、元旦から2週間程で「小正月」。
そうこうしているうちに節分の足音がやってきて再び晦日と新春の気分へ。

家では靴を脱いでスリッパに履き替え、トイレでまた別のスリッパに履き替え、庭に出る時もつっかけに足を移す。
伝統芸能の世界では、扇子を自分の前に置くなど、結界としています。
どうして日本人はこんなに「区切り」たがるんでしょうね。

疫病退散や厄除けの行事も年がら年中多いこと多いこと。物凄い念の押しようです。
ともあれ、一年の計が三日坊主になりがちな者にとっては、気分新たに仕切り直しができるきっかけが何度もあるのは有難いことですね。

2021年1月20日 | 未分類 | No Comments »

「ライトダウン」を楽しむ夜間拝観

12月2

orin
「せっかくの京都だけれど、紅葉狩りにはちょっと遅いかな…」と肩を落としている人におすすめの催しがあります。
妙覚寺妙顕寺妙蓮寺の日蓮宗3カ寺にて「まるごと美術館」が12/6(日)まで開催されています。

妙蓮寺は他の会場から歩いて堀川通りを渡らないといけないのですが、その分異質な空気が漂っていました。
今年のテーマは「ライトダウン」だそうで、人影の無い暗い境内に踏み入り山門をくぐった瞬間から音声が流れてきて、どきりとします。
受け付けを済ませると再び闇の中へ。最初の部屋で、いきなり眩しい光と共におりんを鳴らす手首が浮かび上がり、思わず「ぎゃー」と、まるでお化け屋敷に入った客の様なリアクションをしてしまいました。
これは、普段私達が視覚で感知できない「宇宙線」を捉えた瞬間におりんを鳴らす装置という理化学的なアート。
この作者が主催する「ジェダイトレーニング」というライトセーバーを使ったイベントに参加してみたかった!

またある部屋は、中央に据えられたモニュメントに近づくと、ある音声が流れるという「ソーシャルディスタンスの春」というアートなのですが、恥ずかしながらこちらでもびびってしまいました。
決して肝試しというわけでは無いのですが、、取材時は他に拝観者の姿も無く、なかなかの暗さの中をお香の香りを頼りに歩く廊下や、青白く光る障子を見ながらたった一人だけで最後まで巡れる気がしませんでした。
現代の眩し過ぎる照明の暮らしに慣れた目で眺めた枯山水の「十六羅漢石庭」は、まるで月面に立ったような気分にさせてくれました。

まだまだ作品はご紹介しきれませんが、広い寺院建築の内外を行き交いながらアートを巡り、天候が良ければ特等席に座ってお月見もできてしまう贅沢な夜間拝観を、ぜひお試しください。

2020年12月02日 | 未分類 | 1 Comment »

日本文化の首都!?

11月26

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幾度となく開館延期を余儀なくされた京都市京セラ美術館の開館記念展「京都の美術250年の夢」展は12月6日までです。
当初は3部構成だった会期・展示内容等を再構成し、総集編となっています
「京都は日本文化の首都どっせ」と言わんばかりに(内心そう思っている京都人はいるはず)江戸から現代に至るまで約250年間の京都の美術を彩った名品の数々を、かつてない規模で全国から集めて紹介しています。

美術館の前方スペースを大胆に掘り下げて、昭和天皇の大礼を記念して開設されたという旧京都市美術館の姿を丸ごと残したデザインには、変化に敏感な京都人も納得!?
内装も開放感ある空間へと生まれ変わり、これまで展示品ばかりに目が行っていた意匠を再注目するようになりました。

事前予約制ですが、当日の入場者状況によっては飛び入りも可能です。
美術館全館を丸ごと楽しむなら半日では足りないので、ぜひ午前中からお楽しみください。

2020年11月26日 | 未分類 | No Comments »

2020年の祇園祭は②

7月29

sinme 31日で今年の祇園祭は幕を閉じます。
2020年の祇園祭も例外なく数々の神事が縮小や中止となり、山鉾建てや宵山の賑わい、山鉾や神輿の巡行も行われませんでした。

山鉾巡行と神輿の渡御に代わる「御神霊渡御祭」では、神霊を移した榊と神宝を持った列が氏子地域を練り歩きました。
これは、応仁の乱で多くの山鉾が焼けて復興が叶わなかった頃に、室町幕府から「神輿の修復が間に合わなければ、榊をもって代用とするように」とのお達しに基づいたものだそうです。
八坂神社の祭神は神籬に移され、それを白い神馬が運び、大政所御旅所や又旅社、神泉苑にて神事が斎行されました。
四条御旅所の前では、通りがかりの人達も手を合わせていました。
おそらく、今年は殆どの人が同じ願い事をしているのではないでしょうか。

人が殺到してはいけないので、巡行ルートは伏せられていましたが、
輿丁たは神輿を担ぐときの装束を身にまとい、肩寄せあって手拍子と「ホイット!ホイット!」の掛け声を挙げていました。
形を変えてでも、リスクを負っても神を送りたい気持ちが溢れてしまう。これもまた人の性ですね。

聖俗がせめぎ合い、疫病リスクを避けながら取材する事の難しさを考えさせられる2020年の祇園祭でした。

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