e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

“Cha”で繋がる世界

6月6

yoshida 週末の昼下がり、ふと思い出して吉田神社へ自転車を走らせました。
京都吉田山大茶会』を久しぶりに覗いてみようと思ったのです。
黄色の横断幕が迎える石段を登り詰めると、いつもは静かな境内に所狭しと立ち並ぶお茶の屋台が見えてきました。

まずは赤い水色が目を引く韓国の五味子茶で栄養補給、和紅茶をスパイスと共に煮出したチャイをアイスでテイクアウト。
ほうじ茶と珈琲をブレンドした餡のどら焼きを片手に喉を潤していくうちに、晴天下の移動の疲れからみるみる元気になりました。

日本、中国、ベトナム、韓国、台湾、南米、ドイツ…お茶のみならず茶器や菓子、バッグ等の雑貨、お茶の木の苗木も手に入ります。
その数なんと37ブース。お客さんもお茶おたくばかり!後から興味本位で石段を登っていた外国人ファミリーは、この景色に圧倒したかもしれませんね。
お茶通でこの会の常連さんである友人達は、茶席が埋まらないうちに予約して午前中から水墨の書画体験も楽しんだようです。

ずっと雅楽のような音色が聞こえるので、吉田神社の神事と重なっているのかな、と思っていたら、更に石段を登ったところにある若宮社にて、能管とサックス、箏や笙の演奏がされていたのでした。初夏の風に乗る、気持ちの良いBGMです。
旅行で出逢ったベトナム雑貨が懐かしくなり、刺繍のバッグを自分のお土産としました。

普(あまね)く大衆と茶を共にする

5月30

fucha 連休と梅雨シーズンの間は、芽吹く新緑が活力を与えてくれる季節です。

宇治市・黄檗にある萬福寺の塔頭・宝善院の普茶料理を久しぶりに頂きました。
宝善院開基の独振性英禅師は隠元禅師の大通事(通訳)を勤めた人物だそうで、その歴史は300年を優に超えています。

「鶯の鳴き声って、まだ聞こえるんだね」と語り合うほどに静かで、この日にのために設えられたであろう床の間の花の香りが、離れた自分の席にまで漂ってきていました。
当日こちらに欠員が出てしまいましたが、食事も禅修行のうちとされる「五観の偈」には、正しい心で残さず頂くという心得が記されています。
ご厚意により、残った分を持ち帰れるようにしてくださいました。

宝善院では鈴虫を飼育されているそうで、9月上旬の夜には鈴虫の鳴き声を聴きながら松茸をふんだんに使った普茶料理が頂ける催しがあるそうです。
いつもは朝から一人で料理の仕込みをされ、表には出てこられない和尚様とも、この時は一緒にお話をしながら秋の夜を楽しめるとのこと。
例年だと時間は18時から20時まで、志納料1万円(税抜)くらいでご予約制とのことでした。
コロナ禍前は、卓上で松茸を焼いたりしていたそうで、今年はどの様な形でするのか詳細はまだ未定だそうですが、時期が近づけば公式サイトやSNSにて告知されるそうです。これを読んでお腹が空いてきた方は要チェックです!

鞍馬山からパワーをもらう

5月23

kurama 少し前の話になりますが、今月の満月の夜は鞍馬寺にいました。
コロナ禍が明けて再開された五月満月祭(うえさくさい)は、以前のように夜通し行われるのではなく、終電に間に合うよう行程が変更されていました。
本堂前には銘々にシートを敷いて開始を待つ人々多数。
自分が初めて参加してから随分年月が経っているためか、前に出逢ったような、パワーストーンをたくさん身に着けた「いかにもスピリチュアル系」な出で立ちの人々の姿は余り見られませんでした。

きよめの儀式が始まるまで時間があったので、鞍馬から貴船へと続く山道を奥の院まで歩いてみることに。
入山する瞬間から空気が変わり、木の根道を抜け、行き交う人と挨拶をかわし額に汗をにじませながら新緑の森を進みます。
それぞれの名前はわからないけれど、鮮やかな緑の葉の艶や、岩間から水が湧き出るように垂れ下がる細い葉っぱ、まるで人が立ち上がった瞬間かのように根っこが隆起した巨木。
あとは倒木がまるで橋のように小川に横たわっていたりと、台風21号の爪痕があちこちに残っていましたが、その荒々しさにかえって自然への畏怖の念がおのずと湧いてきます。

荒天でも最後にはいつも晴れて月が姿を現すというこのお祭り。
自分の立ち位置からは見られませんでしたが、周りの人々の会話から、一瞬だけ雲間から月が出ていたそうです。
前回参加したときと同様に、月や宗教というより、人や鞍馬山の自然からのパワーをもらった一夜でした。

上皇ご夫妻が葵祭を観覧

5月17

aoi 4年ぶりに勅祭・葵祭行列が斎行されました。
上皇ご夫妻が初めて観覧されるとのことで、苑内にはたくさんのSPが目を光らせていて、観覧席の前で手荷物検査の長蛇の列。
葵祭でボディチェックを受けたのは初めてでした。
報道陣がみんなかっちりと黒いスーツ姿というのも珍しい光景です。

「どこからどんな風にご覧になられるんだろう?」
「もしや高御座が御苑に運び出されるとか!?」
「まさかあの建礼門が開いてご登場か!?」
「もしも話しかけられたら『お帰りなさいませ』と申し上げるべきか」
といらんことを考えながら見回しているうちに、行列の開始直前に黒い車でご到着。

観覧席の人々が次々と立ち上がり、興奮気味に撮影するので、お二人の姿をカメラに収めるのは至難の業でした。
両陛下は行列を進む人と、何度も丁寧にお辞儀を交わしておられました。
1965年の第10回葵祭では、昭和天皇が香淳皇后と共に京都御苑内でご覧になられたこともあるそうです。

「お元気そうで良かった~」周りの人々は晴れ晴れした顔。
両陛下の真向かいで葵祭を見学していた幼稚園児達が、ご夫妻のお帰りの際に
「ばいばーい!ばいばーい!」と口々に叫んで手を振り、会場を後にする人々の笑いを誘っていました。

京都にニンジャがやってきた!

5月10

ninja 大型連休の一週間前に、三重県伊賀市の忍者村を訪れた際、京都の高台寺でも忍者イベントがあると知って、にわか忍者・くの一の子供達を連れて連休中に参上致しました。
「なぜ高台寺で忍者・・・」とは思いましたが、どうやら京都で全面ロケが行われた映画のPRイベントだったようです。
その映画の主人公「忍風戦隊ハリケンジャー」は、なんとテレビ放映から20周年とのこと。リアルタイムで観ていない私達親子には馴染みはなかったものの、通りすがりの若い男女が「あれ、ハリケンジャーじゃない!?」と反応し、高台寺公園で行われた俳優陣のトークショーにはコアなファンも駆けつけている様子でした。

月真院では伊賀忍者の指導で吹き矢を体験、忍術ショーも見学。外国人の子供達も見入っています。
京都のお寺でのこんな大掛かりなキッズイベントは初めてかもしれません。
イベントはスタンプラリー形式だったので、高台寺周辺や境内も巡り、立礼席では子供達とお薄で一服もしました。
この催しは「北政所ねね様四百年遠忌記念事業」の関連行事でもあり、2025年秋の完成を目指してクラウドファンディング中の「小方丈の再建」への告知でもありました。

映画は来月6月に公開。映画のシーンに出てきた京都の竹林や寺社を子供達と巡ったら、どんな反応をするかな。

楽しみ有り。

5月3

koyomi 前回に引き続き、織田有楽斎ゆかりの正伝永源院に向かいました。
現在特別公開中の建仁寺の塔頭で、京都文化博物館の織田有楽斎展と相互に拝観の割引を実施中です。
門を潜ってすぐ、有楽斎の妻や細川家歴代の墓、福島正則家臣の供養塔が目に入ります。

有楽斎が創作した国宝茶室「如庵」は愛知県の有楽苑に移築されていますが、平成8年からこちらに建つ「正伝如庵」は、本歌と瓜二つとのこと。
躙口から内部を覗くと、千利休の息が詰まるような薄暗い茶室とは事なり、窓が多くて広いので明るく感じます。
「こちらの腰張りは「暦張り」と言いまして..」と昔ガイドをした頃のことを思い出しました。
彼の独自の構想が光るデザインであるとともに、細かく記された内容は当時の風俗を知る上でも良い資料となるのかもしれません。

庭園はつつじが咲き、新緑のもみじが青々と既に初夏の装い。
細川護熙氏が手掛けた襖絵は、どれも静謐な景色です。山楽が納めた「蓮鷺図」の襖絵と同じ自然風景の中の静けさを求めたのかもしれません。
2021年に約100年ぶりに戻されたとい紹鴎供養塔が中央に聳え立ち、ふもとには純白の百合の花が供えられていました。

特別公開期間中、拝観を休止する期間がありますので、公式サイトをご確認の上お出かけください。
『文藝春秋』五月特別号には、織田有楽斎や正伝永源院の特集が収録されています。

織田長益の人となり

4月26

uraku
京都文化博物館にて「四百年遠忌記念特別展 大名茶人 織田有楽斎」が開催中です。

織田信長の13歳離れた弟・長益は、「利休十哲」の一人にも数えられる大名茶人「織田有楽斎」として広く知られています。
しかしながら本能寺の変で信長の息子・信忠を二条御所に残して逃亡し、その後豊臣秀吉、徳川家康のもとで武将として乱世を生き延びたことで、
「逃げの有楽」「世渡り上手」と揶揄されることも少なくありません。

しかしながら、当展覧会でも検証されている通り、本能寺の変後も時の武将や茶人、町衆との書簡のやり取りを見る限り、人々の立場の垣根を超えた調整役として多くの人に頼られていた事が伺えます。
縁の茶器もおおらかな風情のものが多く、武将としての荒々しさは見当たらず、書簡の文面には繊細な心配りさえ感じ取れ、決して織田家の血筋というブランド力だけで支持されていたとは思えませんでした。

自ら興した茶道有楽流は、なによりも「客をもてなす」ことを重んじ、ルールを厳格に守るよりも創意工夫を良しとする茶風なのだそうです。
「鳴かぬなら 生きよそのまま ホトトギス」。
織田有楽斎400年遠忌実行委員会が、新たに創作した句が秀逸です。

終盤に展示されていた狩野山楽の蓮鷺図は、パリの「オランジュリー美術館」にある「睡蓮」の絵の間を思い起こさせます。
同じく動乱の世を生き抜いた絵師による大作。少し離れて真ん中の椅子から、絵の中に入った気分で眺めるのがいいですね。

建仁寺の塔頭で、織田有楽斎ゆかりの正伝永源院は現在特別公開中で、京都文化博物館の織田有楽斎展と相互に拝観の割引を実施中です。
有楽斎が創作した国宝茶室「如庵」の写しや、2021年に約100年ぶりに戻された武野紹鷗供養塔など、有楽斎の生き様を改めて立体的に体感したいと思います。

ラグジュアリーホテルで女子会

4月18

aman 「たまにはヒール靴履いて、ラグジュアリーホテルで女子会してみたいよね」
の一言から始まった数か月前。
会場に選んだのは、鷹峯の「アマン京都」のランチでした。

大人気のアフタヌーンティーよりもランチの方が予約が取りやすいかもしれません。

タクシーで鷹峯の森の中に降り立ち、石畳を進んで「ザ・リビング パビリオン by アマン」の中へ。
小鳥の囀りが聞こえるテラスでしばし再会を喜んだあと、室内へ通されました。

暖炉を中心に配置されたテーブル席。天井まで伸びる窓の外には、新緑の苔やもみじ、奥には北山杉が真っ直ぐに並んでいます。
京都近郊の厳選素材の風味をいかし、和食の持つ繊細な季節感と西洋のテイストを軽やかに交えた、ボーダーレスな品々は、一皿ずつ小さな驚きを与えてくれます。
敷板や器も、ここに来るまでに触れた木々や土などの豊かな土壌と繋がっているような連帯感を覚えます。

広大な敷地内の散策は宿泊者限定ですが、通常のホテルのフロントにあたる建物が無いので、身体まるごと自然の中に溶け込んで気持ちいい。
ここに宿泊するような本物のセレブは、気合を入れてめかし込んだ我々とは違い、普段着でリラックスしているものなのだと改めて実感してしまうのでした。

後日女子会の話をしたところ、母が友人と行ってみたいとのことで、代わりに予約をしました。
ちょうど母の日が近い日程なので、こっそりホテルのスタッフの方に相談して、オプションサービスをプレゼントすることに。
他にも、ミニケーキや花束などのほか、テイクアウトメニューをお土産として事前に別会計でサプライズを仕込んでおくこともできるようです。
さて来月、母の反応はいかに!?

2023年4月18日 | お店, グルメ | No Comments »

隠れた藤の名所

4月11

fuji
妙心寺の塔頭・長慶院で観藤会が3日間だけ特別公開されていると知り、その日のうちに飛んで行きました。
初めて訪れるお寺の敷居を、心躍らせながら跨いで進んでいくと白い藤が出迎えてくれました。
と同時に「ぶーん…」。
大きな熊蜂が何匹も藤の周りを飛び回っていたので、そこを通り抜けるのはちょっとした試練でした。

客殿に入ると、眼前に広がる白や紫の藤の木々。数メートルは離れているのに、濃厚な香りに包まれました。
棚からぶら下がっているのではなく、下から花を持ち上げるような逞しい藤の樹。
拝観料を払おうとすると、「ご志納を賽銭箱にお納めください」とのこと。
藤の墨絵をあしらったご朱印等が有料で受けられるほか、お茶と藤を模したきんとんまで提供されていました。

SNS効果でしょうか、意外にもたくさんの人が撮影に興じていましたが、皆さん互いに真ん中のベストポジションを譲り合いながらとっておきの景色を撮っていた姿が微笑ましい。
たっぷりと蜜を吸った大きな蜂たちの羽音もなかなかの迫力ですが、彼らは蜜を集めるのに夢中なので、
恐れる必要は無いのかもしれませんね。

1600年創建という長慶院では、他にも様々な催しをされているそうです。
またちょくちょく公式SNSを拝見するといたしましょう。

本当の贅沢とは

4月3

han
白木が新しい高瀬船が停泊する史跡・一之舟入の高瀬川畔に、を眺めながらお食事できる素敵なテラス席を教えて頂きました。
飲食店を営む町家の2階「帆-HAN-」です。

カフェタイムのメニューはロゼシャンパンと濃厚な自家製プリンのみ。
春風を感じながら、外の川辺に見えるのは、記念撮影を楽しむ振袖姿の女の子たち。
舞い散る桜の花びらのなかでの嬉しそうな笑顔はこちらにも眩しいものでした。

絶好の満開のタイミング。
日本人の思う「贅沢」とは、お金をかけてめいっぱい飾り立てる事ではなくて、

「移ろう自然が美しく輝く今この瞬間を味わう」
「何もしない余白」
にある気がします。

昼会席(3日前までに要予約。8000円)とカフェタイム(14~17時)に利用できるのはオープニング期間の4月27日まで。
テラスの側にはワインと国産ウイスキーを扱うバーカウンターもあり、
これからの新緑の季節や夏の夜には、夜風にあたりながら飲むのも気持ち良さそうです。
オープンな川床とも違う隠れ家のような風情は、誰か大切な人を連れて行きたくなるかも。

2023年4月03日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »
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