e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

古都に乾杯

3月31

K36
新しい檜の香り残る清水の舞台を後にして、閉門の清水寺からの帰り道。
ザ・ホテル青龍清水」の前を通りがかりました。
昭和期に建てられ2011年に閉校した清水小学校の校舎を活かした建築、また周辺の八坂の塔などが見渡せるルーフトップバーで知られるホテルです。

こちらは自転車姿。立派な車寄せを前にこんな出で立ちで敷居をまたいでも良いものかと、営業確認を兼ねてホテルに問い合わせましたが、快く受け入れて頂けました。
新しいホテルなのにノスタルジックな空気感の廊下を進んでエレベーターに乗り、「K6」のバーテンダー・西田稔氏がプロデュースに参画したというルーフトップバー「K36 Rooftop」へ。
当時はまだ冬の寒さが残る頃だったので、テーブルに添えられたカイロを使っても寒かったのですが、清水の舞台から眺めた夕焼けとはまた異なるパノラマ夜景の中に身を置いて、全くの別世界を楽しみました。
ちょっと移動するだけで、全く違う世界に出たり入ったりできるのが京都の街の面白いところ。

予算の目安としては、本日のおすすめワインを今宵の一杯に選んだとすると、ナッツが付いて4000円ちょっと。
の季節でお客の数は増えているかもしれませんが、視界の開けた席で夜風に当たりながらさっと飲みに立ち寄るだけでも気分転換になると思います。

その夜は間もなく満月が顔を出す頃合いでしたが、夏は五山送り火の船形や左大文字が見えるそうですよ。
そろそろ、夜の春風が届く頃でしょうか。

2021年3月31日 | お店, グルメ | No Comments »

チョコレートに息づく職人技

2月3

hosashi
「ここはチョコレートの街か!」と思うほど、京都には国内外のチョコレート専門店がひしめき合い、バレンタインへの贈り物をどこで選ぶか悩ましいところです。
昔からずっと愛されてきた老舗で買う?誰もが知る有名ブランド店なら間違い無い?本場ベルギーから直輸入のお店?それとも豆の産地からこだわった品で差をつける!?
なんやかやと悩むふりして、味見という名目でチョコレート専門店をはしごしてしまいたいのが本音だったり。

今回は、「クラブハリエ」出身、世界大会でも実績のある小野林範シェフによる「ショコラトリー ヒサシ」へ。
色の暖簾をくぐった店内は既に数人が等間隔に並んで列を成していましたが、オンラインショップもあるようです。
葉っぱのように木のオブジェに個包装でぶら下がっているフィナンシェから最中のような「Monaショコラ」、世界大会優勝の「ボンボンショコラ」まで、実力派ショコラトリーながら、どこか親しみやすさを感じるラインナップです。

オリジナルチョコレート「GAIA(ガイア)」を使用した濃厚なソフトクリームは、やわらかいながらも粒々した感触があり、上質なチョコレートの粒子をそのまま味わっているかのよう。
底から発掘されるさくさくと軽いメレンゲが対照的な食感を楽しませてくれます。
500円というワンコインでパフェを越える充実感を味わえるイートインメニュー。テイクアウトも可能です。

2021年2月03日 | お店, グルメ | No Comments »

今できることに集中する

4月29

takara

満開のを横目にやり過ごしていた今年の春。
じっと留まっているかのような閉塞感を感じている人もいるかもしれませんが、
食卓には筍や山菜が並び、季節は変わらず進み、確実に時間は流れています。
過去を非難したり、未来に不安を抱いたり、カラ元気だったり、他者とぶつかり合ったり、
色んな所で疲れを見せている人々の様子を散見する中で、いつも通りに見える人は強いな、と思います。
「今できること」を考え、こなしています。
「喫茶去」という禅語は、現代では「どうぞお茶でも」と解釈される事も多いのですが、
あるお坊さんが、スマートフォンのホームボタンに例えていたのがユニークでした。
画面上には色んな機能が並んでいて、私達は右に左にせわしなく操作していますが、
ホームボタンを押すと、いったん元の画面に戻りますよね。
家族、他人、仕事、仲間、現在、過去、未来…千々に乱れる心をリセットして、「今ここの」「目の前のこと」にいったん意識を戻す。
お茶の時間にするとして、どこでも手に入る春のおやつ。餅とよもぎ餅。
画像のは深泥池畔の「多賀良屋」のですが、幼子の手のような感触に、鼻を抜けるよもぎの香りが豊かです。
毎年楽しみにしている新茶の季節もそろそろ足音が近づいてきました。
茶葉とお湯で満たされた急須から注がれるお茶、立ち昇る湯気と香り、湯呑から指先に伝わる温度。唇から喉に流れ込んでいく温かさ。
感じ得る一つ一つの動きにことごとく集中すると驚くほどたくさんの事象があって、さっきまでの頭のざわつきがいつの間にか少し落ち着いているかも。
邪念に心が支配されないための練習
おうちで旬のものを食べて飲んで、どんなときも芽を伸ばそうとする自然の力を味方につけましょう!
2020年4月29日 | お店, グルメ | No Comments »

大原の温泉と味噌鍋

4月6

oohara まだも咲いていない頃の話なのですが、家族で春先の大原山荘にて味噌鍋を頂きました。
自家用車で食事の前に早めに到着して、温泉に入りたい人は大原温泉へ。それ以外の人は外の足湯カフェでリラックスもできます。

既に外国の観光客が少なくなってきた時期だったので、広い座敷の一席に通されたときは、お客は私達のみ。
その後、一組が来ては定食を食べて去り、もう一組来ては去り、という具合で、小さな子供連れでもゆっくりできました。
入り口に売られていたのと同じ味噌でしょうか、大原で育ったみずみずしい有機野菜と香ばしい地鶏が溶け合う自家製樽出し味噌は、地元産キヌヒカリを使用した麹を48時間寝かせたものだそうで、こくがあって美味しい。
誤魔化しのきかないシンプルな料理こそ、素材の良さが現れますね。
野菜も鶏も更に一人分追加して、身体がよく温まりました。

大きな窓から見える山里ののどかな景色。街の中心部から半時間程で澄んだ空と静けさを味わえるコンパクトさも京都の魅力のひとつですね。
また安心してお出掛けできるようになったときの、ご参考までに。

妙顕寺の桜

4月1

myoken

通院の予定があり自家用車で京都市内を走っていると、だいぶの開花が進んできているようです。
かつての混雑ほどでは無いものの、週末の四条通り沿いはそこそこの人々が往来していて驚きました。
祇園を離れ、堀川寺之内へ。本堂が広く開けていて人同士の接触も少なそうだと思い、妙顕寺で下車しました。
人影もまばらで静かな境内は、染井吉野が可憐に咲きこぼれ、枝垂れはピンク色の蕾を膨らませて出番をひっそりと待っているようでした。
中に入ると、青い苔が美しい坪庭に出逢い、そこに流れ込んだ風に孟宗竹が微かに揺れていて何とも涼しげ。
いつもなら、訪れた感想を色々と書き連ねるところなのですが、どうも筆が進みません。
人が少ない所を観光してください、とは安易に申し上げられません。
ですが、今年の桜が散ってしまっても、の木や咲いている場所が突然無くなるわけではありません。
にわかに吹いた風に舞い散る花びらの奥に、うねるような幹の逞しさを観ていると、これらのは、私達が生まれるよりずっと前から毎年花を付けてきたのかもしれません。
人間が大騒ぎしている外の世界とは違う時間が流れているようでした。 →妙顕寺のの画像はこちら(e京都ねっと公式フェイスブック

梅宮大社の神苑

2月26

ume
暖冬の影響なのでしょう、京都市内の梅が見頃となり早咲き品種のまで咲き始めているところもあるようです。
訪れた梅宮大社はその名の通り、鳥居の前から梅が出迎えてくれました。

神苑に入ると広い池が現れ、一気に視界が広がります。雨が上がったばかりで梅の枝にはたくさんの雫も連なっていましたが、やはり花が多く咲いている木ほど、近づくと香りが濃厚になります。
曇り空には紅梅が目を引きますが、実は白い南高梅の裏側のがくの部分も一回り小さな紅梅のようで可憐です。
足元には水仙の清らかな白、若草色の葉の中に混じっているのは…もう黄色い山吹が咲いている!?
今咲いている花々も美しいのですが、昨夏に見頃を終えて枯れた紫陽花の姿も、普段観る事が無いのでなんだか胸に残りました。

3月第1日曜日には「梅・産(うめうめ)祭」が斎行されます(今年は祭典のみ。梅ジュースの無料接待は中止です)。
まだ丸く膨らんでいる蕾もあったので、なんとか梅見も叶うのではないでしょうか。

神苑の花の開花状況はこちらで紹介されています。

静かな紅葉スポット

12月4

hou タクシーの運転手さんとの会話が好きで、特にや紅葉のシーズンに乗車すると、
「この時期だったら、お客さんをどこに連れて行かはりますか?」
と、いつも尋ねてしまいます。
町中を隈なく走り回っている運転手さんならでは面白いお話が聞けるかもしれないと期待して。
「そうですねえ。よく京都に来たはるんやったら、おすすめは鹿王院なんですよ」
「ああ、ライトアップもしてはりますよね。嵐電とのコラボで」
「えっ、そうなんですか!?」
時には、自分からの情報に相手が驚くという事もあり、情報交換の場のように移動中の会話を楽しんでいます。
それでは、と法金剛院を教えて下さいました。夏の蓮で有名なお寺ですね。
「“花の寺”とも呼ばれていて、紅葉も綺麗なんですよ」
これは!とばかり、幼い子供と来訪しました。バリアフリーではありませんが、門を潜った裏側の陰にベビーカーを置かさせて頂きました。
池の周りの紅葉は盛りを過ぎていたものの、たくさんの嵯峨菊の鉢が礼堂に映え、一つの木の中で緑から黄色、深紅へと彩りの移ろいを見せる紅葉が日に照らされて、思わず足が止まります。
子供も何か楽しいようで、落葉のクッションの上にたくさんある団栗を拾っていました。優雅な紅葉の足元で、赤と黄色の千両の可愛らしいこと。
紅葉は美しいし、人もまばらで静かだし、駅からも近い。前から知っていた寺院なのに、まさに灯台下暗しですね。
その運転手さんの名刺を頂くのを忘れていました。お礼が言いたいです。

春と秋、同じ場所を訪れる

11月26

heian2 や紅葉の季節になると、気候に左右される上に行きたいところの方角がバラバラでいつも悩みます。
今回は、春に訪れて紅葉の並木が気になった「平安郷」に再び訪れる事にしました(24日で終了)。

きれいに整えられた竹林が続く参道を進むと、遠くに色付いた木々が見えてきます。
同じ場所を春と秋に訪れると、それぞれ異なる場所が彩られていて面白い。
広沢池に沿って「もみじのトンネル通りぬけ」があり、頭上には赤蒼黄色の紅葉のグラデーション、足元には若草色の苔や常緑樹の濃い緑色で包まれます。
まさしく「頭上漫々脚下漫々」。

平日だったためか人影もまばらで、ひんやりとした澄んだ空気と砂利道を踏みしめる音が心地よく響きます。
観光シーズンの京都はどこも人でいっぱいだというのに、こんなに手入れされた広大な庭を静かに歩けるなんて、しかも入場無料とは申し訳ないくらい。
お弁当を販売していた売店で、栗がごろごろ入った赤飯に食欲をそそられ、お土産にして帰路につきました。

2019年11月26日 | 観光スポット | No Comments »

京北で桜ドライブ

4月24

keihoku 先週末は、右京区京北にある宝泉寺を観てきました。
京都市内よりも開花が遅く、シーズン終盤のお花見が楽しめます。
遠く坂の先の壁越しにピンク色のが溢れるように垣間見えてくると、期待値が上がります。
その割に「花より団子」とは言ったもので、着いてすぐさま東屋の日陰の中でぜんざいやよもぎ餅を頬張りました。
京北地域では、お正月に餅で納豆を餅で包んだ「納豆もち」を食べる風習があり、こちらもぱくり(味はそのままでした!)。
徒歩で一周できるほどの丘に、「観音桜」、「平安しだれ桜」、「金剛桜(うわみず桜)」、仁和寺から移植した「御室桜」、「楊貴妃」などの希少なが約20本あるそうで、子供が触れられる程の高さに枝を伸ばしたものや、桃色のシャワーの様な木がたくさんありました。
夕方になってからもぽつり、ぽつりと参拝者が絶える事はなかったのですが、不思議と静か、車で時間をかけて来て良かったと呼べるのどかな名所でした。
東屋に置いてあった「花降る里けいほく SAKURAめぐりマップ」によると、樹齢300超年とされる「黒田百年桜」をはじめに周辺にも美しいの木があくさんあるようで、紹介されているスポットは39箇所も!
また、夕方の帰路の高速が渋滞していたので、早めに京北に入って車で巡るのが正解かもしれません。
今年の「まつり」は終了しましたが、は自由に見学できるそうです。まだ間に合うかも!?

一匙の粋

4月17

nodate
平安神宮のホームページによると、枝垂れ桜は満開、八重などは8分咲きだそうです(16日現在)。
先立つソメイヨシノは鮮やかな若葉が目立ち始め、川には花筏。散りゆく花びらが美しい頃合いです。
能を習う知人が舞囃子を披露するとのことで、小腹満たしの差し入れを持って観世会館へ向かいました。
能舞台の切戸口から、黒の紋付き袴姿の男性達に混じって紫の袴の女性が現れた瞬間の清々しさ。
女性が踏む能舞台もまたいいものだな、と感じました。
家の近くの公園にもが植わっているので、籠に茶碗や抹茶の缶を入れ、道中のケーキ屋でチョコレート菓子を買い、家族とベンチでささやかに一服しました。
タクシーの運転手をしている知り合いは、貸し切りのお客様のためにお茶を振舞うため、車のトランクには野点セットをいつも入れていたそうです。
夏になると、娘さんを乗せて蛍を観に行ったりしていたとか。なんて素敵なお父様でしょうか。
その方はもう故人となられて久しいのですが、今でもその話を思いだします。
ちょっとした事でいいから、日々の生活の延長線上に日本人としのて一匙の粋を持っていたい、そう思う春です。

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