e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「日本のあそび」曲水宴

4月11

kyoku
上賀茂神社の渉渓園に一歩踏み入れると、濃厚なお香の香りを感じて思わず振り返ると、山田松香木店が「薫物(たきもの)」をされていました。
薫物の演出は『源氏物語』等の古典文学にも記されており、今年は染殿后藤原明子の「梅花」をもとに、昔ながらの調合方法で調整されたものだそうです。

「ならの小川」からの分水が流れ、木漏れ日の中には客席が設けられ、そよ風に汗ばむ程の陽気も忘れてしまうほどの心地よさ。
受付から開宴までの合間に、たまたま居合わせた和歌をたしなむという方とならの小川の畔に腰かけて、せせらぎの音に耳を傾けながら昼食を取りました。

「五・七・五・七・七」のリズムを持つ短歌と和歌と違いとは。
和歌には型というものがあり、いわゆる「現代短歌」は、明治以降に入ってきたもので、芸術として自我を表現するものだそうです。
令和元年に選ばれた斎王代が十二単の袖を引いて現れると、場が一層華やぎ、客席も色めき立つのが伝わってきます。

薫物は二箇所であり、遮る物の無い開けた庭園であっても、披講の抑揚ある調べに載せるようにリズミカルに濃淡を変えながら香りが漂っていました。
曲水宴は、中国の禊祓の行事が日本流にアレンジされたもので、自然の中に身を置き、香を焚いて雅楽とともに場を盛り上げ、歌を詠む順番さえも羽觴(うしょう)を運ぶ遣水(やりみず)の流れに任せるという、まるで王朝文化への憧れを投影した「日本のあそび」を象徴するような催しでした。

宴の後は、斎王代が境内の斎王の前で美しい立姿をみせてくれました。

京都御苑の梅・桃・桜を同時に観る

3月29

konoe
いよいよのシーズン本番ですね。

いつも早めに満開を迎える京都御苑の糸
小雨の薄暗さの中でも目の覚めるような新緑の芝生の上に、枝を左右に広げて咲き誇る姿を人々が囲む様子は、まるで噴水のようにも見えます。
まさに満開とならん姿の奥に、まだ蕾を抱えた枝垂れの大木が控えており、むしろそちらの瀧が落ちるような枝ぶりに惹かれて、根本まで歩み寄ってしまいました。

近衛邸跡の糸桜が見頃を迎えるタイミングで御苑を歩くと、梅林の梅、桃林の桃、出水広場の等を同時期に楽しむことができます。
花々に見とれるがままに南下していくうちに、大輪の木蓮や、50m以上は続いているかと思われる雪柳など、時を忘れていつまでも歩けそうでした。

ちなみに、新たな休憩所が御苑内に3カ所新設されるそうで現在工事が進められています。
直接尋ねてみたところ、大きな窓一面からの大木を臨める近衛邸跡前の休憩所は、3月31日に開業予定だそうですよ。
間もなくですね!

2022年3月29日 | 観光スポット | 2 Comments »

早咲き、遅咲きの桜を求めて

3月24

yodo
連休中は、毎年一足先に満開を迎える淀の河津を目当てに、今年最初のお花見散歩。
駅前にある淀城址のシンボル・水車も華やかなに囲まれていました。

幼児と乳児連れでしたが、川沿いに延々と連なるの連続に子供達も興奮気味。
所々階段もありますが、ベビーカーを畳まずとも降りられました。

今回はお土産の販売を見かけませんでしたが、小雨上等、持参した食料で乾杯する人もちらほら。
既に葉が出ている木もありますが、花の色が濃いピンク色なので気になりません。
だけでなく菜の花や雪柳、水仙にパンジーなどの色とりどりの景色を背景に、飼い犬の撮影に真剣なグループの姿も。

木々が雨を受け止めてくれるせいか、子供にとっては傘も要らないようです。
いつの間にか、透明なビニール傘には可愛らしいの花びら模様ができていました。
散策路の一部は枝垂れが続くので、ソメイヨシノの盛りが過ぎた頃から再び立ち寄るのもいいかもしれません。

一方、家で競馬予想に真剣になっていた家人は、その日久々の快挙だったそうです。
京都競馬場からほど近い「淀の」パワーが届いたのでしょうか。

2022年3月24日 | 観光スポット | No Comments »

月を観たか?

3月2

ao 西陣の興聖寺。
堀川沿いにあるため、前を通りがかったことのある人も多いかもしれませんが、「京の冬の旅」キャンペーンとしては40年ぶりの公開だそうです。

仏殿の天井に描かれた「雲龍図」、わざわざ螺旋状の石段を降りたところにある「降り蹲踞」、目にも鮮やかな、フィジーの海中写真を襖絵に仕立てた『青波の襖』や四季折々の草花を描いた天井画、茶道織部流の祖でもある武将・古田織部の院号を冠した茶室「雲了庵」と織部の木像など。
「ここまで“映える”お寺だったとは….古田織部が現代に蘇ったら、目を丸くして喜ぶかもしれない。」
などと妄想しながら、景気よくカメラのシャッターをパシャパシャ切っていました(※仏殿や茶室は撮影不可です)。

別の日に訪れていた友人のSNSによって、仏殿に「指月標」と書かれていたことを知りました。
「月を示そうと指をさしても、肝心の月を観ないで指を見る。(目先のことに囚われず遠くを見よ)」との意味だとか。
“映え”を気にして記録に残す、見せることばかりに熱心な自分は、ここで何を受け止めただろうか…。

伽藍を出て門へと帰る途中に、立派な枝垂れの木が佇んでいました。
春本番になれば、きっと見事なの振袖を見せてくれることでしょう。
この先、このお寺が再び一般公開されるのは何年先となるでしょうか。

すぐき漬け活用法

12月16

cava 車でせせらぎの流れる社家を通り、賀茂川沿いのイタリアン「カフェ&レストランCAVA」を久しぶりに訪問。
大きな窓から見える木々はすっかり葉も落ちて裸の冬仕様になっています。これが春なら並木が望めるところですが、
川面と土手と山と雲がなだらかな縞模様を描く様をぼんやりと眺めるのも気持ちが落ち着きます。

メニューをあらためて見ると、野菜はオーガニックな八百屋「ワンドロップ」や上賀茂の「八隅農園」等から、魚は下鴨の「はっとり鮮魚」から、肉や酒も信頼を置く業者から仕入れているそうで、揚げ物のパン粉には吸収量の少ない大豆たんぱく粉末が配合されているとのこと。
ずっと長く地元の人達から愛されているお店は、やはり素材からこだわりが違うのでしょうね。

ちょうど付近の名物・上賀茂のすぐき漬けがテレビで紹介されていたこともあり、冬メニューの一つですぐきと菊菜と焼き穴子を合わせたパスタを選びました。
菊菜の緑やアルデンテの麺の間から、1㎝程にきざまれた乳白色のすぐき漬けが見え隠れしながらオイルと馴染んでいます。
いつもの食卓では醤油をひと垂らししてご飯と共に頂く事しかしていませんでしたが、すぐきのこんな使い方もあるのか、と小さく驚き、そのほのかな酸味と歯応えを噛み締めました。

2021年12月16日 | お店, グルメ | No Comments »

土地の記憶も継承する

9月15

shin
2年前、花街とそこでの景色をカメラに収める観光客とのニーズは果たして噛み合っているのだろうか、と疑問に思った事がありました。

現在、建物の老朽化や耐震性問題により宮川町歌舞練場が建て替えられるのに伴い、向かいの旧新道小学校の跡地と一体的に再整備する計画が進められています。
設計を担う隈研吾さんによると、1916(大正5)年の木造建築の大屋根のデザインを宮川町のシンボルとして踏襲し、元新道小はホテルとなりレストランを伎芸披露の場へ、また周辺には学校の歴史を伝えるスペースや児童館、多目的ホール、防災倉庫等多様な機能を備えた地域施設が新設されます。
劇場内部の唐破風は復元され、すだれ格子をデザインしたファザード、照明や幕を吊るす装置として使われていた竹すのこもホテルのホワイエに活用、小学校のファザードも再現されると共に外壁のタイルや枝垂も移築して活かされます。

ただ和モダンにリニューアルするのではなく、普段は花街との接点が無い観光客や地元に住まう人達と宮川町を繋ぎ、花街文化を継承していくためにICT技術を取り入れるという試み。
ICT(情報通信技術)とは、様々な形状のコンピュータを使い「IT(情報技術)」にコミュニケーションの要素を含めたもの。
川端通りと大和大路通りとの間には新たな小路「新道通」を通し、「“街の記憶の継承”と“新たな共存価値”の創造」を目指すのがこの事業のコンセプトだそうです。
これまでにも、宮川町お茶屋組合とNTT都市開発は京都から離れた場所からもインターネットを通して「京おどり」を好きな角度で観られるようにするVR配信サービスを行ってきました。

具体的には、観光客がホテルからの紹介で宮川町のお茶屋を訪れ、遠方にいる別のお客は分身ロボット「OriHime」を通して遠隔操作でお茶屋でのひと時をヴァーチャル体験。
その後実際に宮川町を訪れ本物を体験してもらうきっかけ作りに繋げるほか、この「OriHime」をによってインバウンド客への通訳も可能となるそうです。

まもなく宮川町歌舞練場は解体されますが、歌舞練場と旧新道小学校は3Dスキャンによって取り込まれた点部データを加工し作られる「デジタルアーカイブ」として閲覧できるようになる予定で、卒業生がまるで母校を訪れ内部を歩き回るかのようにいつでも観に行く事ができるそうです。

京都に「浪花桜」

5月12

naniwa
昨年に嵯峨野の福田美術館を訪れた折、すぐそばに建つ塔が気になったので何となくカメラに収めておきました。
後になって、今春まもなく最終回を迎えるNHK朝ドラ『おちょやん』主人公のモデルとなった女優・浪花千栄子さんが整備されたものだと知りました。

もともと浪花千栄子さんについて何も知らなかったので両親に聞くと「確か、嵐山でお蕎麦やさんか旅館かしたはったなあ」との返答。
調べてみると、渋谷天外と離婚した浪花千栄子さんは、嵐山付近にあったとされる「竹生」という料理旅館を養女と共に開いていたようですね。
江戸初期に建てられたという塚は荒廃していた様子で、見かねて化野の石塔を一基つを移したといい、現在は綺麗に整えられています。

小督は『平家物語』や能「小督」に登場する宮中一の美女で琴の名手。
平清盛の娘婿・冷泉隆房の愛妾でしたが、後に高倉天皇の寵愛を受け、隆房は自死。平清盛によって宮中より追放されます。
嵯峨野に隠れ住んでいたところを、天皇の命を受けて探していた源仲国が琴の音に導かれて発見に至りました。
宮中に呼び戻された小督は、天皇との間に子を宿しますが、清盛によって再び追放され、清閑寺にて出家させられたとされています。

落柿舎から小督塚を訪れた松尾芭蕉が桜を植えた事が『嵯峨日記』に記されており、「小督」と呼ばれています。
昨冬に訪れた当時は知る由も無かったのですが、この近辺に「浪花桜」と名付けられの古木があるそうです。

芸に秀で、恋に運命を翻弄された美女の足あと。来春の巡りの候補にしてみようかな。

2021年5月12日 | 町家 | No Comments »

春の船旅

4月7

sosui
びわ湖疏水船に乗ってきました。
せっかく大津に来たので三井寺にも立ち寄ってから乗船場に向かいました。
川面と船の透明な屋根にはの花びらが落ち、他の乗客とは互いに背中合わせの座席になっています。

出航して間もなく入った第一トンネルは日本最長。なんと20分かけて通り抜けます。
暗くてひんやりするトンネルの中でも、ガイドさんの声はよく通りました。
外の眩しさに目が慣れた頃にはと菜の花がお出迎え。川沿いを歩く人々が手を振ってくれたり声をかけてくれたり、子供達が並走する姿を観るのもまた嬉しいもの。

最初のトンネルを潜る時の高揚感はアミューズメントパークのクルーズ船のそれと似ていましたが、
春風を感じながら、水の音を聞きながら季節の花々、木々の間を滑るように進む船の僅かな揺らぎが本当に心地よい。
東京遷都によって衰退した京都を近代化によって復興させるため、当時の京都府の年間予算の約2倍を投じて日本人の力だけで完成された「100年の計」。
その恩恵を今なお受けている事への感謝の念も自然と湧いてきます。

船の席順は申し込みの受付順だそうで、もし最前列を狙うならWEB予約受付初日の開始と同時に申し込むのがおすすめです。
もちろん、最後尾でもトンネルを抜けた後に扁額がよく見えるのでy良い眺めだと思います。
次回は紅葉の季節に、蹴上から大津への上り便を体験してみたいと思いました。動画はこちら(随時追加していきます)

古都に乾杯

3月31

K36
新しい檜の香り残る清水の舞台を後にして、閉門の清水寺からの帰り道。
ザ・ホテル青龍清水」の前を通りがかりました。
昭和期に建てられ2011年に閉校した清水小学校の校舎を活かした建築、また周辺の八坂の塔などが見渡せるルーフトップバーで知られるホテルです。

こちらは自転車姿。立派な車寄せを前にこんな出で立ちで敷居をまたいでも良いものかと、営業確認を兼ねてホテルに問い合わせましたが、快く受け入れて頂けました。
新しいホテルなのにノスタルジックな空気感の廊下を進んでエレベーターに乗り、「K6」のバーテンダー・西田稔氏がプロデュースに参画したというルーフトップバー「K36 Rooftop」へ。
当時はまだ冬の寒さが残る頃だったので、テーブルに添えられたカイロを使っても寒かったのですが、清水の舞台から眺めた夕焼けとはまた異なるパノラマ夜景の中に身を置いて、全くの別世界を楽しみました。
ちょっと移動するだけで、全く違う世界に出たり入ったりできるのが京都の街の面白いところ。

予算の目安としては、本日のおすすめワインを今宵の一杯に選んだとすると、ナッツが付いて4000円ちょっと。
の季節でお客の数は増えているかもしれませんが、視界の開けた席で夜風に当たりながらさっと飲みに立ち寄るだけでも気分転換になると思います。

その夜は間もなく満月が顔を出す頃合いでしたが、夏は五山送り火の船形や左大文字が見えるそうですよ。
そろそろ、夜の春風が届く頃でしょうか。

2021年3月31日 | お店, グルメ | No Comments »

チョコレートに息づく職人技

2月3

hosashi
「ここはチョコレートの街か!」と思うほど、京都には国内外のチョコレート専門店がひしめき合い、バレンタインへの贈り物をどこで選ぶか悩ましいところです。
昔からずっと愛されてきた老舗で買う?誰もが知る有名ブランド店なら間違い無い?本場ベルギーから直輸入のお店?それとも豆の産地からこだわった品で差をつける!?
なんやかやと悩むふりして、味見という名目でチョコレート専門店をはしごしてしまいたいのが本音だったり。

今回は、「クラブハリエ」出身、世界大会でも実績のある小野林範シェフによる「ショコラトリー ヒサシ」へ。
色の暖簾をくぐった店内は既に数人が等間隔に並んで列を成していましたが、オンラインショップもあるようです。
葉っぱのように木のオブジェに個包装でぶら下がっているフィナンシェから最中のような「Monaショコラ」、世界大会優勝の「ボンボンショコラ」まで、実力派ショコラトリーながら、どこか親しみやすさを感じるラインナップです。

オリジナルチョコレート「GAIA(ガイア)」を使用した濃厚なソフトクリームは、やわらかいながらも粒々した感触があり、上質なチョコレートの粒子をそのまま味わっているかのよう。
底から発掘されるさくさくと軽いメレンゲが対照的な食感を楽しませてくれます。
500円というワンコインでパフェを越える充実感を味わえるイートインメニュー。テイクアウトも可能です。

2021年2月03日 | お店, グルメ | No Comments »
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