e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

松殿山荘

7月22

imayou 宇治市の木幡に、財団法人松殿山荘茶道会が維持保存する広大な庭園と小間(草庵式)・広間(書院式)17の茶室を備えた「松殿山荘」があります。
松殿山荘は院政期の関白・藤原基房の邸宅跡で、大正~昭和にかけて弁護士で数寄者であった高谷宗範が自ら設計し作り上げてきた建築郡で、2階の眺望閣からは豊かな緑と、京都西山や比叡山に生駒山等を見渡せるとは、なんとも贅沢。
日本と西洋の文化が溶け合う空間には、随所に「方(四角)」と「円(丸)」のモチーフが見られ、「心は円満に丸く行いは常に正しく四角く」という方円の考えを目に見える形で説いています。
自然の中に身を委ねながらもどこか緊張感がある方が、日本人にとっては心地が良いのでしょう。
その30畳もの大書院を舞台に、狩平安~鎌倉期に流行した歌謡「今様」を、公募で参加する男女の歌人が狩衣姿で詠み合う「今様合(いまようあわせ) 松殿十五ケ日」が、この松殿山荘で11月1~15日に開かれます。
現在、「梁塵秘抄」の「遊びをせんとや生まれけむ…」に代表される様な今様の歌や、出演参加する歌人を募集しています。もちろん見学も可能です。
お問い合わせは、090-3496-9383(日本今様歌舞楽会・太田)まで。

祇園祭2013

7月17

map 山鉾巡行の前日・宵山の昼間は、聖護院の山伏たちが護摩焚きを行う役行者山へ。
町会所の中には新旧の山鉾の配置を記した「祇園会山鉾分布図」があり、「弓矢ほこ」や、長刀鉾よりも東に位置していた「ひむろ山」、保昌山と同じく最南端の「おかひき山」、など初めて見る名前がたくさん並んでいて、応仁の乱以降に消失してしまったままになっている山や鉾の多さに驚きました。

もう一つ特筆すべきは、清掃ボランティアの活躍です。
歩行者天国が完全に解除される前の烏丸通に目をやると、既にゴミが落ちていない!!
道路脇には分別された缶ビールがちきんと集められていて、約27万人が歩いていたとは思えないほど。
美しい祇園祭をつくる会」の方々に拍手を送りたいと思います。

毎年新たな発見がある祇園祭。まだまだ狂言の奉納や御輿の渡御、夏越祭など、今月末まで続きます。
来年の山鉾巡行は、いよいよ大船鉾や後祭の復活で大きく様変わりするということで、今から楽しみですね。

2013年7月17日 | 観光スポット | 1 Comment »

大橋家庭園(苔涼庭)

7月8

suikin 伏見稲荷大社のすぐ北にある大橋家の「苔涼庭」には、京都最古の水琴窟が今もその音色を響かせています。
水琴窟は京都のあちこちのお寺で耳にしますが、それらが作られたのは意外にも、この庭園ができた大正2年よりもずっと後のこと。
水滴が地中に埋められた甕に反響する音は水量により変わりますが、数滴ずつ、というよりも幾つかの水の筋が絡み合いながら落ちる様なものでした。

京都で瀬戸内の鮮魚の元請を営んでいた大橋仁兵衛氏が好んで配した石灯籠は、春日型や善導寺型など100坪程の庭の中に12基もあり、今でこそ苔蒸して周囲に馴染んでいるものの、庭園が完成した頃、庭造りをアドバイスしていた庭師の七代目・小川治兵衛さんからは「いくらなんでも置き過ぎや!」と突っ込まれていたそうです。
露地風なので、菊型の蹲(葉まで掘ってあるのは珍しいそう)や待合が設けられていますが、家相の関係で茶室は作られなかったそうです。それでも、渡り廊下は折り上げ天井、足元の煉瓦は亀甲型というこだわりぶり。

「受け継いだものを維持していくのは大変でしょうね。」と話すと、ご当代は「この庭が無かったら、毎年ヨーロッパ旅行できるぐらいですわ。」と笑っておられました。
保津川下りの風情を模したという傾斜の両側にはもみじが青々と茂り、秋になればよりお庭の彩りが増すかもしれません。
本当に個人宅のお庭なので、訪れる前には予約を入れて下さいね。

妙心寺東林院・沙羅の花を愛でる会

7月1

shojin 先週末は、妙心寺東林院の「沙羅の花を愛でる会」へ。
精進料理が評判なので、正直「花より団子」気分でやって来たのですが、人々で大賑わいの本堂とは対照的に、
お食事の部屋に面した「万両の庭」にも沙羅双樹の木があり、ぽろぽろと小さくて可憐な白い花と、白玉の様なつぼみを眺めながらお精進を頂く事ができました。

お寺のおばんざいなので、家庭でもお馴染みの品が見られますが、普段家で食べているのとは何かが違う。
濃すぎず薄すぎず、酸味のきつさも無いけれど物足りない味では無い。言わばバランスが取れていて「偏り」の無い味付け。
茄子の田楽もとろけるような味わい。敷かれた何かの葉っぱですら香り高くて美味しい。
基盤となるおだしの味がよっぽど良いのでしょう、湯葉がたっぷりと浸かっているだけの一品をとっても、食べ応えがあるのです。
ここのご住職・西川玄房さんが直々に教えて頂ける事で人気の精進料理体験道場『添菜寮』で、ぜひこのおだしの取り方を教わりたい!
同額くらいのフルコース料理と比べるととてもシンプルなのに、丁寧に作られている事が伝わってきてとても贅沢な気分になり、
食べる事に集中したくなるような気持ちにさせれます。

禅寺では、食事の前に「般若心経」と「食事五観文」等を唱えて自分を戒め、万物に感謝を表すそうです。
畑を耕す事から始まり、私たち体の中へ行き渡り、そして再び土へと還る日々の糧。
自然の営みに寄り添い、心身の偏りを正すよう精進していけば、人々の悩みや病も遠ざける事ができるでしょうか。

下鴨神社「蛍火の茶会」

6月10

hotaru  下鴨神社での「蛍火の茶会」。
今年は御手洗池ではなく、糺ノ森の泉川に蛍が放流され、参拝者たちは普段は公開されていない糺ノ森の東側を回遊します。
真っ暗闇の森の中、遠くの川の向こうで呼応するかのように光ったかと思えば、頭上をふわりと通り抜ける蛍も。
ふと人々の歓声の中に紛れ込み、誰かの鞄にくっついて光る姿を見ると、思わず周囲の人と顔を見合わせてにっこり。

帰り道に、松ヶ崎疏水にも寄ってみました。
住宅に囲まれた静かな小川には、既に近所の人たちが蛍を観るために集まっていました。
目を凝らし指で追いながら蛍の数を数えるお孫さん達に、おじいさんが「今日は少ないなあ~」とぽつり。
かつて自分自身も幼い頃に、近所のおじさんに連れられて蛍を観に出かけた事がありました。
その頃は、頬にぶつかることもあるくらい、蛍がたくさん飛んでいたように思います。
この先、自分の子供や孫にもこの神秘的な景色を見せてあげられるでしょうか。
人々が銘々に家へ帰って行った後、しばらく暗闇のせせらぎに舞うかすかな光を眺めていました。

宝福寺の秘仏たち

5月7

inyou 5月の第一日曜日に限り秘仏が御開帳される伏見の宝福寺。豊臣秀吉と淀君に嫡子(秀頼)誕生の祈願をしたという「子授けの石」で知られ、今年は「こどもの日」と重なりました。
「子授けの石」は、男天・女天2体の立像が抱き合う姿の秘仏「雙身歓喜天」に由来し、「陰石」と「陽石」を男女が反対の石を交互に跨ぎ、心身を清浄にして願うという祈祷の様子は、本人達と御住職以外の者は見る事ができません。
お寺の方によると、「子授成就」の御利益は、「100%とは言えないけれど、かなりの確率で授かるようで、夫婦でお礼参りに訪れたり、知人の為に祈りに来る人もおられます。願いが適った方から口コミで伝わっていくためか、最近は名古屋からの方が多いですね。』とのこと。
また、仏像マニア「仏友」のみうらじゅん、いとうせいこうの両氏がテレビ番組で宝福寺を紹介した事もあるそうです。
早速その番組をネット検索すると…ありました!『新TV見仏記3京都編』です。
それにはテレビ初公開、宝福寺のご住職さえ触れたことの無いという超秘仏「荼枳尼天(だきにてん)」も登場するのだとか。そのDVD、見てみたい!!

理想の住宅建築「聴竹居」

4月30

chochiku 建築家・藤井厚二が「真に日本の風土・気候にあった日本人の身体に適した住宅」を追い求めて、京都府乙訓郡大山崎の地に建てた実験住宅「聴竹居」。
自らその住み心地を検証、改善を重ね、完成形と言える第5回目の住宅であり、夏は床下や屋根の通気口を開けて風を通す事で約5度も室温を下げ、冬は隙間風を通さない様に工夫された大きな窓から低い太陽の光を居間の奥深くまで取り込めるよう、家の向きまで計算されています。
和と洋のデザインの良いところを違和感無く調和させ、かつ機能性も持たせた美意識と技術はさることながら、窓からサンルーム(縁側)を通して豊かな緑を望む子供達の勉強部屋や、配膳口で繋がった台所と食堂、洋装・和装の客人をもてなす事を考慮した客室や畳の間が一つの居間を中心に配置され、程よく区切りながらも人々が一つに集まれるような設計が何より印象的でした。家族の笑い声が聞こえてくるような、まさに理想の家。

なお、内部の撮影は特別公開時はできない(外観のみ可)ので、通常の見学日に合わせて事前に申し込んで下さいね。

今井食堂のさば煮

4月9

imai 週末の台風の様な風が吹いた後、京都の桜はどうなっているでしょうか?
桜の定点観測のため加茂川沿いの道を走っていると、散り始めた桜がひらひらと空中を流れてきました。
ソメイヨシノの花はもう半分程になってしまいましたが、半木の径のベニシダレザクラや上賀茂神社境内の斎王桜、みあれ桜等は強風にもめげずに見事に咲き誇り、道行く人々を喜ばせていました。

門前の神馬堂で焼き餅を買おうと思ったら、お昼前にして売り切れ!しかしそこでタダでは帰りません。そのまま道なりに進んで、昔ながらの「今井食堂」(075-791-6780)で名物の「さば煮(3切れ500円)」を買ってみる事に。
平日でも少しだけ待ちましたが、帰宅して早速お昼のおかずとして頂きました。どこに骨があるのか分からない程柔らかく炊かれた鯖は、しっかりと味が染みこんでいながら塩辛いという事もなく、どこかニシンそばに似た味がしました
総菜屋に売られている様な濃くて甘い味付けが苦手な人にもおすすめです。
お弁当の持ち帰りもできるので、近くの加茂川の桜吹雪と芝生の中で食べる事もできそうですね。

遅咲きで知られる仁和寺の御室桜もただ今見頃とのこと(公式ホームページで咲き具合を告知しています)。
週末までもってくれるといいですね!

東寺・夜桜ライトアップ

4月1

toji 東寺で夜桜のライトアップ。「京都駅に寄ったついでに撮影して帰ろう」くらいの気持ちで向かったのですが、五重塔を背にした「不二桜」を目前に立ちすくんでしまい、しばらくその場から動けなくなってしまいました。
まるで噴き出す水の流れを一瞬止めてしまったかの様に見事な八重紅枝垂れ桜。
東北・盛岡の生まれだというこの桜の大木を目で追うと、土から養分を吸い上げ、空目がけてまっすぐに伸び、やがて徐々に枝の力を緩めて再び土の方へと戻っていく。
この世に「気」というものがあるとしたら、それが目に見える形になったものが植物の姿なのではないでしょうか。住む場所が変わっても、眺める人が変わっても、繰り返される命。
ただただ毎年花をつけて、生き続けてきただけなのに、これだけ多くの人の心を動かし、スポットライトを浴びている事に、桜自身も驚いているかも?
「不二桜」を噴水や滝に例えるなら、瓢箪池の東側の桜並木は綿花のようで、まるで五重塔が気持ちよさそうに泡風呂に入っているかのようでした。

『熊野(ゆや)』と「地主桜」

3月4

yuya 世阿弥の娘婿・金春禅竹の作とも言われ、能を代表する曲の一つ『熊野(ゆや)』。
能楽金剛流宗家の長男・金剛龍謹さんによる「龍門之会」で初めて鑑賞しました。

故郷にいる母の病を案じながら、清水での花見の宴で舞い、勤めを果たす平宗盛の愛妾・熊野。
面はわずかにうつむき、心の曇りを写しだしているかのようです。
鼓の音が突然の村雨を表し、雨に打たれて散る桜を母の姿に重ね、扇で受けとめる情景が美しい。
翌日、『熊野』に登場する「地主桜」があるという地主神社に足を運んでみました。
清水の舞台の近くにあり、なおかつ縁結びのパワースポットとして人気の神社のため、若い女性や外国人旅行者で混み合う中で、
『熊野』の村雨降る感傷に浸る事は叶いませんでしたが、「えんむすび祈願さくら祭」でも謡曲「熊野」を聴く事ができるようです。

地主権現の、親と子の縁を結ぶ働きのためか、宗盛から帰郷の許しを得た熊野。無事に母の顔を見る事はできたのでしょうか。

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