e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

小豆粥と土鍋行平

1月14

okayu 七草粥を食べてから約1週間後、今度は小正月と呼ぶ1月15日で小豆粥を頂き、厄除けや無病息災の願掛けを念押し!

お料理教室をされているマダムは、「お粥は土鍋行平(雪平)で炊くのが一番美味しい」と言っていました。
「口から蒸気が出て、土鍋だけど薄くて良く米が回る」のだそうです。
一般家庭では余り見かけなくなりましたが、「昔はどの家にもあったぐらい、よくお粥を炊いていた」といい、禅寺では今でも、毎月1日と15日に小豆粥を食す習わしがあるそうです。

和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された今、飽食の時代の中で、食べ過ぎで栄養が偏りがちな現代日本人も、外食が続いた後や海外旅行の後等に身体をリセット・お掃除するためにも、もっと日常の食卓にお粥を取り入れてもいい様な気がします。家族四人分でもお米一合くらいしか使わないので、身体にも家計にも優しいかも!?
また、土鍋行平は小さな子供の離乳食作りにも役立つともいいます。なんだか小豆粥と共に欲しくなってしまいました。

洛北蓮華寺

11月19

renge 洛北にある蓮華寺に行ってきました。
紅葉の見頃はまだ始まったばかりで盛りの一歩手前でしたが、青から黄色、赤へとグラデーションを描く紅葉の虹もまた、目に優しい印象を与えてくれます。
紅葉の陰で控えめに咲いている山茶花は、わずかな日の光も受け止めて雪の様に白く輝き、少し朽ちかけた花びらは透けるように繊細で。
その中を、様々な人が訪れては去って行き、小さいお寺ながら、人の足が絶える事はありませんでした。
移ろいゆく自然と、自分の前を通り過ぎて行く人々の流れ。これって、人の一生にも似ているのかも?

今の貴方は、何色ですか?
そして一面の銀杏の絨毯。色鮮やかな黄色に元気をもらいました。

清浄華院の泣不動

11月5

shojo 

 秋の非公開文化財特別拝観で公開中の清浄華院に行って来ました。

数多くの寺宝の中で個人的に最も印象的だったのが、泣不動尊と「泣不動縁起絵巻」でした。
それによると、三井寺の智興上人が死病に陥ったとき、最も年若の弟子・証空が自ら名乗り出て、陰陽師・阿倍晴明の祈祷により、その身代わりとなりました。
病の苦しみに耐えかねた証空が不動尊の画像に助けを請うと、夢に現れた不動明王は血の涙を流して証空の身代わりになると宣言します。
あの世では、証空の代わりに鎖に繋がれた不動明王がやって来て、閻魔大王はびっくり。逆に閻魔さんが平伏します。
こうして智興上人も証空も不動明王も助かり大団円。後に証空は高僧となって三井寺塔頭・常住院を開いたそうです。

背後にメラメラと燃える火焔を背負った不動明王は一見強面ですが(ちなみに縛られている間もメラメラ燃えています)、その表情は愛のムチとも言えるお叱りの気持ちのあらわれ。
右手に剣を、左手に羂索という縄を持ち、全ての障害や悩みを打ち砕くという心強い仏様です。
とりわけ涙を流して身代わりになるとは、なんとも情にアツい仏さまではありませんか。

特別公開は8日までですが、清浄華院の不動堂では8月を除く毎月28日に護摩供養会が行われており、誰でも参加できます。
お不動さんが、昔から多くの人々に親しまれてきた事が伝わって来ますね。

旧武徳殿

10月23

butoku 22日に時代祭が行われた平安神宮を中心に、美術館や図書館、イベントホールなどが立ち並ぶ岡崎は、京の文化ゾーンと言えます。
その中で、観光スポットでないゆえに、ちょっと足を踏み入れにくかった武道センターで、先日「形柔道」の世界選手権が日本で初開催と聞いて、潜入してみました。

武道センターの隣にある旧武徳殿は、国内唯一の武道の専門学校だったもので、平安宮の大極殿を模し、今では入手不可能とされる巨大なヒノキ材を用いて建設された明治期の大規模木造建築で、国の重要文化財に指定されています。
「平安道場」とも呼ばれるこの旧武徳殿は、平成19年には東儀秀樹さんによる雅楽のチャリティコンサートが開かれるなどの保存運動の甲斐あって、老朽化や修復の維持管理困難による廃棄処分の危機から逃れ、青蓮院の将軍塚に移築、大護摩堂として再生される事が決まっています。平成26年7月の完成を目指して工事が進められているそうです。

なお、現在の旧武徳殿の外観だけは自由に見学する事ができます。

日本と中国

10月15
manpuku

宇治の黄檗山万福寺

 初めての中国旅行から帰国しました。
最近の政治情勢から、現地の中国の人々と上手く交流できるかちょっぴり心配でしたが、それは全くの杞憂に終わりました。
とりわけ台湾の対岸に位置する福建省の廈門市は、昔から茶葉の貿易で栄えた街で、お茶に関するお店や喫茶文化が盛んな土地柄だったため、日本茶道のお点前を簡単にお披めしたところ、現地の人々は興味津々!
もともと緑茶も紅茶も麺類も中国から世界に広まっていったもの。共通の文化が世界各地で独自の文化に育ち、それがまた互いを惹き付ける潤滑油となっているのです。
一碗のお茶という文化を挟んで、賑やかで楽しい時間が流れていきました。

出国直前に、万福寺での「月見の煎茶会」に参加してみましたが、今年没後250年を迎えた煎茶道の中興の祖・高遊外売茶翁は、自ら僧籍を離れて庶民にお茶を売り、振る舞いながら禅の教えを説いたといいます。その境地に少し触れられたような気がしました。
世界平和のための秩序は必要ですが、もっと大切なのは、相手をもっと知りたいという気持ちや、互いの違いを理解しようと歩み寄る姿勢なのではないかと思います。

お寺でトイピアノ演奏会

9月24

piano 大徳寺玉林院でのトイピアノ演奏会に行って来ました。
40cm四方くらいの小さな小さなピアノは、おもちゃとは思えない程、音の鳴り始めは金属の様に澄んで鋭く、その後はコロコロとした丸みも感じるような、やわらかな響き。それは、木琴のものとも、オルゴールのものとも違う繊細な音色でした。

ここが会場となった経緯には幾つかの理由があり、まずは京都出身のピアニスト・寒川晶子さんが玉林院の保育園に通っていたという縁のほかに、「トイピアノの為の組曲」を作曲したアメリカの音楽家・ジョン・ケージ氏が、コロンビア大学で仏教学者の鈴木大拙氏に「禅」について学んだという共通点があります。
ジョン氏がそうであったように、即興演奏では本堂の外から聞こえてくる葉擦れや、にわかに勢いづいたかと思うと急に静まる蝉の鳴き声、観客席にいる赤ちゃんの声にも寄り添うかのように、じっと耳を澄ませながらの演奏が続きました。
ふと彼女の両手でトイピアノが本堂から縁側に持ち出されると、観客もつられて外に出て目を閉じ耳を傾けます。

「自然の中でピアノを弾いてみたい。」と話していた寒川さん。
グランドピアノに比べて持ち運びやすいトイピアノなら、夢ではないかもしれません。
京都のどこかでまた、こんなコンサートが開かれますように。

妙心寺東林院・沙羅の花を愛でる会

7月1

shojin 先週末は、妙心寺東林院の「沙羅の花を愛でる会」へ。
精進料理が評判なので、正直「花より団子」気分でやって来たのですが、人々で大賑わいの本堂とは対照的に、
お食事の部屋に面した「万両の庭」にも沙羅双樹の木があり、ぽろぽろと小さくて可憐な白い花と、白玉の様なつぼみを眺めながらお精進を頂く事ができました。

お寺のおばんざいなので、家庭でもお馴染みの品が見られますが、普段家で食べているのとは何かが違う。
濃すぎず薄すぎず、酸味のきつさも無いけれど物足りない味では無い。言わばバランスが取れていて「偏り」の無い味付け。
茄子の田楽もとろけるような味わい。敷かれた何かの葉っぱですら香り高くて美味しい。
基盤となるおだしの味がよっぽど良いのでしょう、湯葉がたっぷりと浸かっているだけの一品をとっても、食べ応えがあるのです。
ここのご住職・西川玄房さんが直々に教えて頂ける事で人気の精進料理体験道場『添菜寮』で、ぜひこのおだしの取り方を教わりたい!
同額くらいのフルコース料理と比べるととてもシンプルなのに、丁寧に作られている事が伝わってきてとても贅沢な気分になり、
食べる事に集中したくなるような気持ちにさせれます。

禅寺では、食事の前に「般若心経」と「食事五観文」等を唱えて自分を戒め、万物に感謝を表すそうです。
畑を耕す事から始まり、私たち体の中へ行き渡り、そして再び土へと還る日々の糧。
自然の営みに寄り添い、心身の偏りを正すよう精進していけば、人々の悩みや病も遠ざける事ができるでしょうか。

宝福寺の秘仏たち

5月7

inyou 5月の第一日曜日に限り秘仏が御開帳される伏見の宝福寺。豊臣秀吉と淀君に嫡子(秀頼)誕生の祈願をしたという「子授けの石」で知られ、今年は「こどもの日」と重なりました。
「子授けの石」は、男天・女天2体の立像が抱き合う姿の秘仏「雙身歓喜天」に由来し、「陰石」と「陽石」を男女が反対の石を交互に跨ぎ、心身を清浄にして願うという祈祷の様子は、本人達と御住職以外の者は見る事ができません。
お寺の方によると、「子授成就」の御利益は、「100%とは言えないけれど、かなりの確率で授かるようで、夫婦でお礼参りに訪れたり、知人の為に祈りに来る人もおられます。願いが適った方から口コミで伝わっていくためか、最近は名古屋からの方が多いですね。』とのこと。
また、仏像マニア「仏友」のみうらじゅん、いとうせいこうの両氏がテレビ番組で宝福寺を紹介した事もあるそうです。
早速その番組をネット検索すると…ありました!『新TV見仏記3京都編』です。
それにはテレビ初公開、宝福寺のご住職さえ触れたことの無いという超秘仏「荼枳尼天(だきにてん)」も登場するのだとか。そのDVD、見てみたい!!

東寺・夜桜ライトアップ

4月1

toji 東寺で夜桜のライトアップ。「京都駅に寄ったついでに撮影して帰ろう」くらいの気持ちで向かったのですが、五重塔を背にした「不二桜」を目前に立ちすくんでしまい、しばらくその場から動けなくなってしまいました。
まるで噴き出す水の流れを一瞬止めてしまったかの様に見事な八重紅枝垂れ桜。
東北・盛岡の生まれだというこの桜の大木を目で追うと、土から養分を吸い上げ、空目がけてまっすぐに伸び、やがて徐々に枝の力を緩めて再び土の方へと戻っていく。
この世に「気」というものがあるとしたら、それが目に見える形になったものが植物の姿なのではないでしょうか。住む場所が変わっても、眺める人が変わっても、繰り返される命。
ただただ毎年花をつけて、生き続けてきただけなのに、これだけ多くの人の心を動かし、スポットライトを浴びている事に、桜自身も驚いているかも?
「不二桜」を噴水や滝に例えるなら、瓢箪池の東側の桜並木は綿花のようで、まるで五重塔が気持ちよさそうに泡風呂に入っているかのようでした。

釘抜地蔵

2月18

kugi 弘法大使の開基と伝わり、「苦抜(くぬき)地蔵」から後に「釘抜(くぎぬき)地蔵」と呼ばれるようになったという石像寺を訪れてみました。

お寺の入り口には、「あなたのこころの悩みを話してみませんか 住職が聞かせていただきます 共に道を探しましょう」との手書きのメッセージ。
観光地化、博物館化してしまっている寺院も多い中で、この様に門戸が開かれていると何だか心強いですね。
境内にはご近所さんらしき親子やおばさん、背中を丸め、胸の前でお線香を大切そうに携えてお千度参りをしている老夫婦の姿もありました。
お堂の外壁には、釘抜と五寸釘がついた絵馬がびっしりと貼りめぐらされています。
それだけ昔から人々は様々な苦しみに悩んで来たのだ…と思いながら近くで見てみると、それぞれの絵馬には「御礼」の文字が。

ここをお参りし、精進してきたことで苦しみから解放された人々が、これだけたくさんおられるという事でもありますね。

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