e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

鷹峯の渓涼床

9月4

yuka 今夏は遠出をしなかったので、代わりに鷹峯・しょうざんの渓涼床でひと時の旅行気分を味わう事にしました。
しょうざんと言えば、京都っ子にはボウリングの思い出がある人もいますが、幼少の頃は「芝生のあるプール」としての印象が残っていて、入り口からお店に向かうまでの道のりは、片側には豊臣秀吉が設けたお土居の遺跡、反対側ではあのプールが垣間見え、なんとも懐かしい気持ちになってしまうのです。
渓涼床は、以前はお座敷スタイルだったのがテーブル席に替わったと聞いていたので、洋風の風情になってしまったのではと心配していたのですが、料亭にあるような背の低い仕様だったので、京都らしい風情のまま、お子様から足の悪い方まで安心して寛げるようになっていました。家族連れも多く見かけた気がします。
季節のもので構成された京会席は、外せない鮎をはじめ、ほんのり山里を連想させる取り合わせ。締めの山菜ご飯は、秋になると松茸ご飯に変わるようです。
床の外から客席に向かって扇風機が回っているユニークな姿に笑ってしまいましたが、エアコンがなくても木陰と渓流からの空気がふんだんに流れ、十分に涼しくすごせました。
床と簾の合間から見渡す限りの青紅葉が見え、滝の様な水音を聞きながら、錦秋を想像するのもまた楽し。
ここの床は鴨川よりも長い期間楽しめるので、敬老の日のお祝い食事会にも良さそうですよ。

2017年9月04日 | お店, グルメ | No Comments »

味噌は味噌屋で

8月22

kato 盛夏の折、汗をたくさんかくためか、赤出しが美味しく感じます。
ちょうど切らしたので、「加藤みそ」(075-441-2642)に買いに行きました。
西陣の住宅地の中にあるので、味噌だけを買うにはちょっと不便なところにあるのですが、
もともと実家近くの魚屋さんにも置いてあり、食卓にて
「ん、この赤出し美味しい。どこの?」
「“萬亀楼”さん(京都の料亭)の南隣にある“加藤商店”さんの。」
という会話が始まりでした。
言われた場所に建つ町家はご自宅だったようで、向かいの工場で分けてもらいました。
今やスーパーやコンビニで何でも揃ってしまいますが、特に都会で生まれ育っている人にとっては、「米は米屋で」「味噌は味噌屋で」買い物をするのは一種の憧れのような、わくわく感があるのでは。
工場いっぱいに広がる味噌のいい香りは、直営工場ならでは。
創業100年近くなってもなお昔ながらの手作り製法を通しているそうで、作業着姿の若い店主の語りからも、品質への自信が垣間見えました。
親子で量り売りの赤出しや八丁味噌、甘酒を購入しましたが、白味噌や塩麹、田楽みそなど、15種類程の商品があり、味噌作り体験もされているようです。
早速夕食に初めて八丁味噌を飲んでみましたが、こちらも塩分でしんどくなるようなキツさがなく、まろやかな味わい。
京都の美味しい豆腐屋さんで買う香ばしいお揚げさんや湯葉と合わせると最高です。

2017年8月22日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

京都で盆踊り

7月31

bon
どちらかというと地蔵盆の方が盛んな京都ですが、盆踊り大会が毎年開催されているところもあります。
先日行われたのが、西本願寺の「本願寺納涼盆踊り大会」。
境内の北側にある広大な駐車場に櫓が組まれ、音頭が響きわたるなかで浴衣や洋服姿の老若男女が踊っていました。
どうやら「ゆかたレンタル&着付け」のコーナーもあったようです。
「本願寺グルメストリート」も同時開催されていて、定番の屋台メニューに加えて、有名B級グルメの「富士宮焼きそば」、矢尾定の鮎塩焼きやわらび餅、前田珈琲のかき氷など京都でお馴染みのお店の出店もあり、京都グルメも味わえます。
テント付きの床几もたくさんあるため、甚平姿の赤ちゃんから夫婦連れのお年寄りまで腰かけて食べていました。
夕闇が降りてきて提灯に一層の赤みが増したころ、吉本芸人のお笑いライブが始まると、同時にたくさんの人だかりが舞台へと吸い寄せられていきました。
そういえば、屋台に目移りしてばかりで、踊る事をすっかり忘れてしまっていたな…。

祇園祭後祭・私的宵山ルート

7月25

taka
2017年の祇園祭宵山は、後祭をメインに楽しませて頂きました。
暑さがやわらぐ夕暮れに、大行列を覚悟の上で大船鉾に到着すると、「鉾に上がるまで45分待ち」とのこと。粽も既に完売です。
ひとまずは協賛の呈茶席へ入り、大船鉾を再建する際に参考にされたという掛け軸を間近で観ながら、限定のお菓子とお薄を頂きました。
大船鉾へは意外と早く入る事ができ、まだ新しい木の香りがする船上から下を見下ろすと、黒山と浴衣の波の上に浮かんでいるようです。
ご神体の神功皇后にお賽銭をしたり、?人の背丈程もある大きな房飾り等を観ながら、結局は20分程で降りて来られました。
数々の山鉾を見上げながら、「祇園祭後祭エコ屋台村」に入り、「ローストビーフ丼」や「鱧天バーガー」、「トマトの蜂蜜漬け」等を夕食に。
京都芸術センターのグラウンドにテント付きの床几がたくさん並んでいるので、子供からお年寄りまで屋台グルメやゲームを楽しんでいました。
毎年宵山でそぞろ歩きする人々を観ていると、ベビーカーを押したり乳幼児連れの夫婦をたくさん見かけるようになりました。
前祭では「こどもステーション」が開設されたり、後祭でツアーが組まれたりと、乳幼児がいてもお祭に参加できる取り組みがなされていたようですね。
女性が登れない山鉾は今でもありますが、今の様に外で気軽に食事ができなかった昔はどうしても、力仕事の表舞台は男衆に、腹ごしらえや子供達の面倒を見る縁の下の力持ち役は女性が担っていて、その役割分担の意味もあったのではないかと個人的には考えています。
復活を目指し活動中で、今年は報道陣に引っ張りだこだった鷹山の、初めての日和神楽を見届けて帰路につきました。→動画はこちら(随時追加)

「はんげしょうの宝珠」

7月11

hange 関東から京都に移住して来た知人から、干菓子を頂きました。
創作和菓子ユニット「日菓」だった杉山早陽子さんによる菓子工房「御菓子丸」の「はんげしょうの宝珠」です。
先月建仁寺の塔頭・両足院で半夏生の庭園が特別公開されていた期間のみ、現地限定で販売されていたもの。
長野県産の無漂白寒天で作られたすり硝子の様な白い葉が、合掌する手の様にピスタチオをそっと包んだようにも見えるデザイン。
名前に「の宝珠」と付く事から、禅を意識しているのでしょう。
一見、柔らかそうに見えましたが、手でつまむと琥珀の干菓子の固さ。
微かにシャリっと音を立てて齧ると広がる控えめな甘み。スイス産のオーガニックてんさい糖を使っているそうで、素材へのこだわりを感じました。
その知人は、以前より度々京都を訪れていましたが、今年の始めに市比売神社をお参りしてから約1か月後に、京都の企業での仕事の話が舞い込み、京都への移住が決まったのだそうです。
更に、会社から紹介されたマンションも、奇しくもその神社のすぐ近く。
娘が関東を出てしまって、親御さんはさぞ寂しい思いをされているかと思いきや、京都旅行のきっかけができたと喜んで、娘の部屋に泊まるための寝袋まで買われたのだとか。
お参りがきっかけで、京都への良きご縁が結ばれたようですね。

宮川町「游美」

7月3

yubi 宮川町にある「游美」で、少し贅沢なお昼ご飯。
予約の際に、妊婦を含む小さな女子会である事を伝えていたので、献立にもご配慮を頂きました。
珍しい食材よりも、どちらかというと普段から親しみのある食材が多く登場しますが、淡白な蛸はしっかり味を含ませて煮凝りに、当然、魚はきれいに形を保ったまま、炭火でふっくらと焼き上げられて。
素材の魅力はそのままに、堅実に磨きがかけられて、すっと檜舞台に出されます。
なんとなく、お店に向かう道中ですれ違った、素肌の美しい浴衣姿の舞妓さんを思い出しました。
友人は「ここのお料理は元気が出る」と、毎月通いつめて、およそ一年が経ったそうです。
カウンター席とテーブルが一台の内装は、客側の漆喰の壁は店主自ら塗ったそうで、厨房側は更に漆が擦り付けるように黒く塗られています。また、天袋の戸は桜の樹の皮が網代になっている珍しいもの。かつて天龍寺宝厳院で見かけたものに惚れ込み、作れる人を求めるうちに京都を飛び出し、滋賀の職人に依頼したのだとか。
多くを語らない、物腰やわらかな若い主人ですが、質問すればするほど、こだわりの逸話が引き出されそうです。
お店を開いてからもう10年になると聞き、驚きついでに思わず「お弁当やお節はされているんですか?」と尋ねると、「残念ながら…」との返答。
その代わりに、お正月の三が日は営業されているそうです。いいことを聞きました。

2017年7月03日 | お店, グルメ, 町家, 花街 | No Comments »

コレでみたアレが食べたい。

5月29

ninjin 漫画で観た「マンガ飯」のように、テレビや映画で観た食事のメニューが余りにも美味しそうで、つい食べに出掛けてしまった、あるいは作ってしまった!という経験はありませんか?
現在放映中の朝ドラに度々登場する洋食屋のメニューにいつも食欲をそそられており、中でも「ビーコロ1(ワン)!」とセリフで発せられる「ビーフコロッケ」に心を奪われてしまった人は少なくないのではないでしょうか?
今回は「グリルにんじん」というお店を初訪問。
北白川の住宅街には珍しい三角屋根の、フランスの田舎の家の様な店構えと広い駐車スペース、
大胆なコの字型のカウンター席と周りを囲むテーブル席という、広々とした空間を観た瞬間、長年愛されてきた洋食屋の人気と自信を直感しました。
メニューには、ドラマで観たようなビーフコロッケは無かったので、代わりに「カニクリームコロッケ」をお願いしました。
二皿注文したためか、それぞれに別の野菜が添えられていたのが嬉しい。
さて、薄めの衣の中に、なんとかギリギリ破れないくらいにクリームがたっぷりと詰まったカニクリームコロッケ。
箸からも伝わる揚げたてのさくさくを、切り開いてこぼれない様に口に運ぶ瞬間は幸せの絶頂。
乳白色のおふとんからのぞくのは、ほぐし身ではなく、カニ足の身そのものでした。
夕焼け色のソースを纏っていましたが、一緒に頼んだ一口カツにかかっていたデミグラスソースも時折拝借しながら楽しませて頂きました。
店の片隅にはワインショップも併設されており、回転棚には一枚ずつ色んなワインの解説が書いてあるペーパーがびっしり。
「よし!次に来店した時は、ワインとビーフシチューだ!」
これもまた、ドラマの影響です。

2017年5月29日 | お店, グルメ | No Comments »

鷹峯の、その奥へ

4月24

hase 北大路橋西詰にある老舗の洋食屋「HASEGAWA」の姉妹店があると聞いていたので、鷹峯の山奥へ。対向車が来ても行き交う事ができるのか、本当にお店は存在するのかと心配になるくらい細い道をずんずん進んで、ログハウスらしき建物「山の上はせがわ」に辿り着きました。
意外にも車が数台停まっていて、既に何組かの女性グループが食後の女子会トークを楽しんでいる様子。おばちゃんに注文をして、誰かの別荘だったのかと想像しながら薪ストーブや吹き抜けの天井を眺めていると、立派な体格の猫ちゃんがのそのそと横切って、ダンボールの上に丸く収まっていました。
メニューを裏返すと、「熊肉あります」と鉛筆で手書きしたメモが無造作に挟まっており、外の屋根付きデッキでは、BBQやすき焼きができそうなテーブルがたくさん並んでいて、複数の家族グループでも賑やかに楽しめそうです。
食べ終わってお茶していると、小ぶりな焼き芋をサービスしてくれました。
お店の周辺には何も無い(と思われる)辺鄙な場所にありながら、キッチンからはハンバーグの種作りをする音が頻繁に聞こえてくる辺り、こんな不便な場所でもお客さんはコンスタントに訪れるのかもしれません。
入り口側のデッキにはハンモックもあり、ちょっと車で市内から奥へと移動するだけで、家族揃って俄か森林浴も楽しめそうなスポットです。

2017年4月24日 | お店, グルメ | No Comments »

甘い京土産と甘くない京土産

4月3

mabusi 手土産にはよく甘いものが選ばれますが、相手によっては甘くない物が好まれる事もありますよね。 京都駅直結のJR京都伊勢丹地下にある「紫竹庵」を通りがかったとき、「松風」と「味噌松風」という言葉が目に留まって、思わず立ち止まりました。 恥ずかしながら、松風とは京都で限られた2,3の店舗でしか買えないものだと思い込んでいたからです。 「味噌松風」を包んでもらっているついでに、「何か、お酒のあてになるものはありませんか?」と尋ねると「まぶし昆布」を薦めてもらいました。 大徳寺のほど近くに本店を構える紫竹庵は、大徳寺納豆を用いた商品を多数揃えていて、この味噌松風も例外ではありまぜん。 自分が受験生だった頃、やたら生の胡桃や大徳寺納豆を食べていた記憶があり、今思えば疲れた脳が欲していたのかもしれません。また、祖父が食べ物の味比べをする際に、合間に大徳寺納豆を口に放り込んでいたという思い出話も聞いていて、自分にとってはなんとなく記憶に残る珍味なのでした。 「これなら大徳寺納豆そのものほどきつくないし、卵かけご飯やペペロンチーノにしても」とのことで、お土産用とは別に自宅に追加で買ってしまいました。 帰り際にも「冷奴にするなら、これふって胡麻油かけて」との一言の通り、早速夕食タイムに再現。普通の塩昆布に比べてしっとりと細かく、胡麻や柚子の皮の香りが爽やかで複雑な味を生みだしながらもすっと舌の中へ溶け込んでいきました。

2017年4月03日 | お店, グルメ | No Comments »

ぼた餅の別名

3月21

bota お彼岸と言えば「ぼた餅(牡丹餅)」。秋には「おはぎ」(お萩)」と呼ばれる事も多いですね。
夏や冬の別称もある事をご存じでしょうか。
ぼた餅の餅は米粒を残す、つまり「搗かない」、転じて「つきが無い」。
月(つき)が見えないのは冬の北の窓だから「北窓(きたまど)」。
「搗かない」が「着かない」となって、夜は暗くていつ船が着いたか分からないから、夏は「夜船(よふね)」という言い回しがあるようです。
糯米と餡のみという素朴さで、春や秋に限らず名前を変えて年中街角で売られているほど人々から愛されているお菓子だと言えますね。
また、日本人はそのものすばりの名称を語らず、湾曲した表現を好むようです。
例えば、厚揚げ。
焼いて縞の様に焦げ目を付けた厚揚げを「虎」と呼び、「『雪』にしますか?それとも『竹』にしますか?」と相手に問う、というお江戸の例えを聞きました。
『雪』の様に真っ白な大根おろしを添えたものを「雪虎」、『竹』に見立てた青葱と一緒にしたものが「竹虎」と呼ぶそうです。
なんでも無いおかずが、なんとも雅やかな品に思えてしまう不思議。
物質的な貧しさを心の豊かさに代えてきた昔の日本人の工夫が、そこに現れています。

2017年3月21日 | グルメ | No Comments »
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