e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

ガツンとくる京うどん

7月9

benkei暑い季節に熱い話題で恐縮ですが、以前から行ってみたかった「辨慶うどん 東山店」の訪問記です。

昭和50年に創業し、五条大橋のふもとに出した屋台から始まったそうで、以来ずっと京都人に愛されたきた京うどんの名店。
五条坂は何度も歩いているはずなのにいつも素通りしてしまっていました…。
検索してみて意外にもネット通販と公式インスタグラムまであることも初めて知りました。

外からは店内の様子は見えませんが、引き戸を開け一歩中に入ると、出汁の香りが細長い店の奥まで充満しています。
「けいらんうどん」に「かやくごはん」、「おにぎり」や「いなりずし」など、手書きのメニューと有名人のサインが所狭しと並び、席はカウンターも小上がりもあり、子供連れ家族からお年寄りまで美味しそうにうどんをすすっています。

看板メニュー「べんけいうどん」は、やはりやわらかな京うどん。
しかしながら、その出汁はガツンと鰹がぶつかってくるような力強い風味で、きんぴらはピリッと大人の味。甘きつねもスーパーや定食屋のペラペラなのではなく、厚くてしっかりとした味付けでした。
生姜の香りも相まって、これはきっとすじカレーうどんも美味しいに違いない。

帰り際にどうしても気になった「“ソッパうどん”て何ですか?」と尋ねると、「スジ肉のことなんです」とのこと。今でこそスジ肉は人気ですが、昔は人々に好まれず『ソッポを向かれる』というのが語源らしいですよ。

来月に五条坂周辺で開催される「五条若宮陶器祭」や清水寺の「千日参り」の前の腹ごしらえにいかがでしょうか。

2024年7月09日 | お店, グルメ | No Comments »

古門前でコーヒーを。

7月3

loto 祇園さんこと八坂神社の氏子地域は広範囲にわたります。
中でも17日の神幸祭で祇園祭の神輿が通る古門前通りは、画廊美術商懐石料理店等が並び、祇園の中でも落ち着いた大人向けのエリアといった趣きです。

その一角にある「Cafe Loto Kyoto」は、アート巡りの合間の喉を潤すのにちょうど良いスタンディングカフェ。

大理石のカウンターに淡いグリーンが目を引くエスプレッソマシンは、シアトルのMavam製。開店当初は、京都のコーヒー店で初めて導入されたものだそうです。
香しい珈琲豆の香りの中で、今までに見たこともない動きに目を奪われてしまいました。

訪れたのは6月も下旬、ベリーが鎮座するタルトが水無月に見えてしまい、アイスカフェラテと共に頂きました。
細い路地を抜ける風、さくさくのタルト生地と果実の酸味、ミルクに溶け込むビターなコーヒーを交互に行き来する、ささやかだけど深い幸せ。
季節の果物のジュースや、抹茶を楽しむイベントもあります。

マドレーヌ等の焼き菓子は、このカフェをプロデュースした料理研究家・武田雅代さんの手作り。2階は料理研究所武田サロンとなっていて通常は非公開ですが、「ウェルカムセット」をオーダーすると上がらせてもらえるのだとか。

お土産には、限定帆布バッグ入りのコーヒドリップバッグのセットも。
一澤帆布とのコラボはとても珍しいそうですよ。

更に注目していただきたいのは、しつらいだけでなく公式インスタグラムの投稿に散りばめられた、京都に息づく職人技などの文化に触れられる話題です。
古門前に足を運ぶ人々の審美眼にかなうカフェでした。

水無月食らうは京都人のノルマ!?

6月19

mina 6月に入ると、京都の家庭や茶席では、当然のように卓に上がる菓子・水無月
どちらかというと漉し餡派なので、特に購入する意欲が無かったとしても、結局手土産やおもてなしで頂くことがあったりして、なんだかんだ毎年食べている気がします。
京都暮らしの「定番」というよりもはや「ノルマ」に近い気が…。

水無月に関する蘊蓄についてはあちこちで語られているので割愛しますが、どこかドライな感覚を持っているお茶の師匠が、
「氷を象ったとか、魔除けとか言われているけど、四角い型から対角線上に切り取るだけで無駄が無いから菓子屋に重宝されたんじゃないか」
と話していて妙に納得した覚えがあります。

なにはともあれ、京都人にとっては「え、水無月って全日本人が食べてるもんとちゃうのん!?」と県民ショーばりの驚きであって、「土用の鰻」や「節分豆」のように、「食べるおまじない」のような存在ですね。

ちなみに、画像の水無月は「たからや」のもの。
素材の風味がストレートに伝わってきて、あんこがそのまま自分の身体に馴染んでいくような、おまんやさんの素朴な水無月です。
お皿をあらかじめ冷蔵庫でひんやりさせて、おいしく頂きました。

2024年6月19日 | お店, グルメ, 歴史 | No Comments »

昭和と平成の狭間とサイフォン式コーヒー

6月11

kiku祇園 花街芸術資料館」に行く前に軽くお昼を食べようと、友人が提案してくれた「菊しんコーヒー」に行ってみることにしました。

観光客が行き交う四条通りを避けるため、団栗通りから祇園へ入ります。
東大路通りを渡って一筋東の静かな通りの中にそのお店は溶け込んでいました。

お昼前とはいえ観光地エリア内なので待つのを覚悟していましたが、運が良かったのか誰もいないタイミングで暖簾をくぐることができました。

目の前で、サイフォン式で珈琲が淹れられる不思議な動きに目を奪われながら、はちみつチーズトーストを頂きます。
細かく切り込みが入れられた食パンを昔ながらのトースターで焼き、バターとスライスチーズ、蜂蜜を縫って黒胡椒を挽いたトーストが、シンプルで真似したくなる美味しさ。

後で調べてみると、お湯をコーヒーの粉に注いで抽出し、成分が濃くしっかりとした味わいが出るのがドリップ式、サイフォン式は粉とお湯を混ぜて飽和させて抽出し、
柔らかくすっきりとした味わいになるそうです。なるほど。確かに透明感のある軽やかな一杯でした。

マスターの男性はずっと寡黙に見えましたが、常連さんが来ると少し緊張が解けたように会話をされていました。
アスファルトに落ちる初夏の眩しい日差し、開け放した戸と暖簾の間から入って来る穏やかな風、昔どこの家にもあったようなラジカセから流れて来る少しこもった音声。
もとは「仕出し屋」だったという屋号を受け継いだ店名だそうです。
黒電話やトースター、食器類も、昭和から平成初め頃の懐かしさを損ねないバランスで統一されています。

常連のおばちゃんを真似て自宅用に挽いてもらった珈琲豆。家で棚を開く度にいい香りが漂って癒されています。

2024年6月11日 | お店, グルメ | No Comments »

日本文化の砦としての花街

6月5

siryo 先月開館した「祇園 花街芸術資料館」へ。
1時間程で見学する予定が、気がつくとトータル4時間弱も長居していました。

場所はお馴染みの祇園甲部歌舞練場やギオンコーナーに隣接する八坂倶楽部内です。

舞妓さんが手にする籠の中身や化粧道具、月毎に替える簪や帯に忍ばせる懐中時計などを間近で拝見できます。着物も帯も、さすが本物ばかりで、花街が日本の文化のみならず伝統工芸を維持するための砦となっていることに気づかされます。

五世井上八千代さんが舞い、京舞について、また自身の襲名に至るまでを語る映像もつい最後まで観ていました。どの瞬間を切り取っても凛とした女性の美しさを表していて惹き込まれるのです。

国産ウイスキーやソフトドリンクをおつまみと庭の新緑と共に楽しめるバーもあり、今なら割引価格で静かにくつろぐことができますよ。

花見小路を歩く観光客が急増したとはいえ、お茶屋に縁のある人やお金を落とす人はそう多くはないでしょう。
美しい芸舞妓さんと出会える瞬間は、たまたまそこを横切っていく姿を追うときだけ。
彼らは決してその世界観を侵そうと徘徊しているのではなく、「もっと知りたい」だけなのです。

そんな人達がツアーではなく自分達のペースで花街の文化やしきたりに触れ、間近で舞を眺め一緒に記念撮影(別料金)できる施設がようやくできたと思いました。
ここを利用することで、花街という「ハレ」と「ケ」が同居する独特の世界への理解が深まり、維持していくための一助となることを願います。

ちなみにポスターのあの美しい人は「華奈子(はなこ)」さん。
会場には彼女の別の写真も展示してあり、あの大人っぽさとは違う少女のような表情が見られますよ。

誰かの実家で食べるごはん

5月27

chikoro 大文字山を下山したころ、世界遺産・銀閣寺の参道のお店がすっかり営業を開始していて、多くの観光客で賑わっていました。
一息つくのにどこに寄ろうか彷徨ううちに南側へ延びる脇道が目に入り、直感的に進んで行くと、やっぱりありました。古民家カフェ。

入れ違いに玄関を出てきた外国人のマダムの穏やかな表情が、静かで落ち着いた時間をすごせたことを物語っています。

縁側の隅には持ち主のものと思われる文庫本がしまわれており、いかにも銀閣寺界隈に古くからあるような、文芸的な薫りのするおうち。
「家は使わないと傷んでいってしまうから…」と、身内の方が静原の自家農園で採れた野菜や近隣の新鮮な有機野菜や有機食材でこしらえた自家製のランチやお菓子を提供しています。

床の間の棚の扉には「大」の字が。「大文字」の送り火のお膝元なので、後から入れられたのだそうです。珍しく高さのある木枠に収まった火鉢など、アンティークショップにあるような家財がそこかしこに馴染んでいます。
帰り際に玄関に飾られているお花は、なんと人参の花なのだそう。

アップテンポなBGMや映えるスイーツのカフェも気分がアガるけど、「誰かの実家で食べるごはん」という環境は腰を下ろしてほっとするのに最適ですね。
Cafe Chikoro」はまだ昨年オープンしたばかり。銀閣寺を目指して人混みを歩く人々にも教えてあげたくなりました。

つつじの丘で与謝野晶子に出逢う

5月1

keage 桜に代わって約4,600本のつつじが咲き誇る蹴上浄水場の一般公開(4月29日で終了)は、京都の晩春の風物詩の一つです。

ポコポコと花の半球が山肌を埋める鮮やかさは、三条通りを走る車の窓からでも確認できるほど。
いざ場内に入ってみると、思った以上に広さも高さもあることに気が付きます。

早くも初夏の湿気を含んだ空気のなかで、鼻を近づけなくても漂ってくる花の香り。
近所でも見かける身近な花ながら、初めて知るツツジの香り。

「ツツジのトンネル」を潜り抜け、息の切れる階段を登るなか、歌集「みだれ髪」や『源氏物語』の現代語訳でも知られる歌人・与謝野晶子の歌碑に出逢います。

晶子の筆蹟を写した歌は、
「御目ざめの鐘は知恩院聖護院 いでて見たまへ紫の水」。

与謝野晶子と鉄幹の思い出の旅館「辻野」が、かつてこの蹴上浄水場の敷地内に建っていたそうですね。

高台の広場に出てみると京都市内を一望でき、眼前にはインクライン、遠くに五山の送り火の「妙」「法」も見渡せます。
「絶景かな、絶景かな」のフレーズで有名な南禅寺の三門までも見下ろせてしまいます。

飲食ブースにはキッチンカーやテントのあるベンチが並び、各地からやってきたグルメもレベル高め。実店舗にも足を運んでみたくなりました。

思えば小学生だった頃、疎水沿いの通学路にはツツジが連なっていました。
ぶらぶらと歩きながら、花の付け根からラッパを吹くように蜜を吸ったりしたものです。
ツツジは、時間がゆっくりと流れていたあの頃の思い出の花です。

鴨川で桜のお茶会

4月17

naka再びお天気に恵まれた先週末。
枝垂れ桜の半木の道と鴨川の菜の花の対岸で、友人がお茶会を開いてくれました。

お互いにお湯とシートを手にゆるゆると集まり、色とりどりのシートでパッチワークのようになった芝生の上に円座。

リボンが結ばれたバスケットには、「菓子屋のな」の「あんバターチャバタ」がいっぱい!
イタリアの堅めのパンに、あんこや苺とマスカルポーネが挟まった、贅沢な一品です。

普段、高級茶である玉露を飲むことはそう多くありませんが、宇治玉露の「ごこう」や「宇治ひかり」、静岡煎茶の「静7132」や「つゆひかり」など、品種茶をメインにたくさんお茶を飲み比べ、ペアリングの和洋菓子をお腹いっぱい楽しませて頂きました。

主催の友人は日本茶インストラクターであり、フードコーディネーターでもあります。
このお茶会のためにお菓子の予約をして買い回り、たくさんの茶器を運んでここまで来られたのかと思うと、頭が下がります。

かすかな春風にふと見上げると、雲のない真っ青な空に、桜の花びらが瞬くように舞っていて、いつしか自分の茶碗の中にもひとひら浮かんでいました。

頭上の桜、脚下のたけのこ

4月9

takenoko桜の満開を迎えた週末の京都。
平日蕾を濡らした雨も上がったというのに、家族行事で京都の桜を拝みにいけずじまい。

そんななか、生協の宅配のネット注文をしていると、期間限定企画の「京都の皮付たけのこ」を発見!
新物で、あく抜きに必要な鷹の爪入りのぬかまでセットされていました
(ちなみに税込2,138円でした)。

スーパーでもたけのこのそばに米ぬかが置いてあったりするものの、これまで
たけのこで有名な「とり市老舗」の前でも
「美味しそうだな…でも手間だしな…値段も…」と
横目でやり過ごしていました。

京都のたけのこは、肥料を与えるなどの手入れは全て手作業で行われ、えぐみが少なく肉厚でやわらかく、甘みがあるのが特徴なのだそうです。

一度は自分で下ごらしえしてみたかったので、ポチっと注文して、いざチャレンジ。

たけのこは何日も置いておかず、すぐに調理するのが鉄則。
かつてお料理教室で習ったことを思い出しながら、こちらも参照しました。
他産地のものをゆがいたことが無いので分かりませんが、思っていたより短時間でやわらかくなりました。

2本をまるごと家族で頂く贅沢。
牛肉と一緒に炊くのも捨て難いけど、やっぱりシンプルな若竹煮に。
こりこりとした歯応えとやわらかい肉質を、子供達も楽しんでいるようでした。

初めてにしてはうまくいきましたが、やはり料理屋で食べるものとは味付けが違いますね。
プロが仕上げたたけのこは、より上質な素材の味を引き出すように工夫されているのだろうと、自分で手をかけてみて改めて感じます。

たけのこ尽くしで有名な「錦水亭」にも行ってみたくなりました。
長岡天満宮の八条ケ池の桜ライトアップも10日まで期間が延長となったようです。
これからの季節はキリシマつつじも綺麗でしょうね。

鴨川さんぽの寄り道

3月6

kamo 先週ご紹介した「ストックルーム」に行くのに、どこかお昼を食べられるところは、と思っていたら、同じ建物の上階へ若い女性たちが続々と上がって行くのが見えました。

窓から鴨川は見れそうに無いけど、『かもがわカフェ』。
階段を登ってちらっと店内を一望させてもらうと、何だかいい感じ。
ミニシアター系の映画やら落語の会やら、壁を埋め尽くす数々のポスターやフライヤーを眺めながら待ってみる事にしました。

頂いたのは、揚げ餅と大根の優しい味のスープに、
大原産の長葱を牛肉で巻いた韓国風の照り焼き、ライチ茶などなど。

残念ながらランチは2月で終了だそうで、今後は珈琲に特化した喫茶がメインになるようです(軽食メニューは有り)。
思いのほか食事にありつけるまで時間を要したので美味しそうな珈琲を頂くいとまが無くなってしまいましたが、今月より珈琲豆の卸しもされるようなので、そちらとを次のお目当てにしようと思います。

せっかちな人には向きませんが、鴨川さんぽの後にゆっくりするひと時を求めて何度となく足を立ち寄る人もきっと多いのでしょう。なんと今年の5月で20周年、お雛様の日に新装オープン。
落語の会がある日に、珈琲片手に耳を傾けてみるのもいいかもしれません。

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