e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

祭に食するもの

7月27

hamo 歳時記を大事にしている京都人の友人は、6月も末になると「水無月食べなきゃ」。
祇園祭の季節に入ると「したたり買って帰ろ!」「今年まだ稚児餅食べてない!」と大騒ぎ。
なんとも律儀な事です。確かにそれぞれ美味しいので好きですが、まあ忙しいこと。
食べる事で厄払いしたような安心感が得られますもんね。

その人が祇園さんの紋に似ているからと真面目にきゅうりを避けているかどうかは知りませんが、
「鱧まつり」と呼ばれるこの時期には、季節限定の食品が実にさまざま。
ずっと昔に料理人の知人から教えてもらっていて食べ損ねていた「たん義」のはも丼を思い出し、お持ち帰りを予約しました。
祇園の割烹とはいえ、3000円から5000円程でお食事ができるのは、若い人達にも嬉しいですね。
明るく感じの良い電話口の応対で、地元に長年愛された良いお店である事が伝わります。

初代から伝わる秘伝のたれをまとった焼き鱧は、箸でほろほろ、ほくほくととそぼろのようにこぼれます。
同じくご飯もほんのりたれの色に染まっていて、家族にも好評でした。
折詰のたん義弁当は、虫養いにちょうど良い分量です。
個人的には鱧の落としが好物なので、次は割烹の風情の中でライブ感を肴に頂こうと、今後のお楽しみとしました。

2021年7月27日 | お店, グルメ | No Comments »

京のおいしい定番

6月23

tenpura
ステイホーム中に実家から送られてきたものの続き。
村上開新堂」のクッキーは、シックな包装紙と紐を解くと、屋号の入った掛け紙に紅白の紐が水引のごとく結ばれ、まるで老舗の干菓子でも入っていそうな体裁です。
シンプルな缶に「シトロンクリームサンド」や「杏子ジャムサンド」などびっしりと埋められた11種類のクッキーは、ほんの1㎝程の隙間にまで小さなボーロが無数に詰まっています。
昔ながらのベーシックな味わい。しおりに「紅茶やもとより日本茶にもよく合います。」とある通り、甘過ぎずに大小様々な大きさがあるので、子供から大人まで一緒にお茶の間を楽しめるかもしれません。

いづ萬」の練り天ぷら
単体でもおかずとして成立する存在感は助かる!
スーパーで見る練り物と比べて、どら焼き並みに大きくて、ずっしりと重量感があります。
みっちりと詰まった乳白色の断面をまじまじと眺めながら咀嚼。
一口ですぐに甘みが来るのではなく、噛むごとに徐々に現れる甘味に、素材の良さが伝わります。
いつもの様に生姜醤油を添えて食卓に出しましたが、別のおかずの小皿に残っていた塩胡椒とオリーブオイルに漬けてみたら意外と合いました。

2021年6月23日 | お店, グルメ | No Comments »

一コマが語る物語

6月15

dora
以前伺ったカフェの床の間に、漫画『ドラえもん』の原稿の一部が額装されていました。
珍しいなぁと思っていたら、後に四条河原町下ル東側にある「寿ビルディング」5階の「TOBICHI京都」で「ドラえもん1コマ拡大鑑賞展」が開催されることに。

しずかちゃんの全身が描かれたコマが出迎える入り口には、開店前から数組が心待ちにしている様子。
国内外に大ヒットしている日本の漫画は数あれど、あらゆる世代の人が主要キャラクターの名前や性格まで知っている作品は稀有だと思いませんか。

油絵作品なら塗り重ねられた絵の具の盛り上がりが見えるものですが、こちらは漫画の原画の一部を拡大しているため、写植をする前の鉛筆書きのセリフや、ベタ(墨)塗りの筆跡まで、創作の息遣いが残ります。
つるつるの単行本のページを眺めるのとは違い、まるで出来上がったばかりの原稿をポップアートや線描画のようにも見える魅力がこの企画の狙いなのでしょう。

お楽しみの心ときめくグッズも多数あり、名言を吐いた吹き出しのあるコマをたくさんコラージュしたハンカチを買いました。

「なやんでるひまに、ひとつでもやりなよ」
「いっぺんでいいから 本気でなやんでみろ!!」
「せきたてちゃだめだよ。それぞれ自分のペースがあるんだから。」
「未来なんて ちょっとしたはずみでどんどんかわるから。」

アニメしか観ていなかった幼い頃は「ドラえもんってのび太くんを駄目にするくらい過保護やなぁ。」と呆れた事もありましたが、誰しも「やれやれ、世話の焼ける」と肩をすくめながらも寄り添ってくれる存在が幾つになっても欲しいものなのかも。
厳選された一コマが収められた話が収録された単行本も読みたくなるし、激励したい人にこの名言ハンカチを贈れば、まじまじと見入ってしまう事受け合いです。

涼を分かち合う菓子

6月3

kansen
実家から送られて来た荷物の中に、甘泉堂の水羊羹が入っていました。
祇園の路地裏にある名店と呼ばれています。
持った瞬間にぶにょっと箱がへこんでしまうほど柔らかく、慌てて机の上にそっと置き直しました。
ゼリーや寒天とも違う、水羊羹の瑞々しさを表すために極限ぎりぎりまで水分を含ませているのでしょうか。
箱からするりと出してみると、既に一口分ずつ切り分けられているのが有難い。

淡い小豆色の端正な佇まいに対して、霧を含んだようなもろもろとした舌触りが口中にすうっと馴染む、素朴な味。
なぜか、「しゅっとしてはるけど、気ぃやすい人」という言葉が頭に浮かびました。
「淡白」という言葉で表現するには足りないけれど、いい器を選びたくなるような気品があります。
羊羹を食べると即座にお茶に手が伸びるものですが、こちらのは甘さがかなり控えめなので、甘いものが苦手な人とでも涼感を共有できるかもしれません。
不思議と何度もおかわりしてしまいたくなる穏やかな味で、抹茶より煎茶や紅茶が合いそうです。

明日の午後は熱いお湯で香りを立たせた新茶を淹れて、ひんやり冷やした水羊羹とともに涼を取ることにしよう。

2021年6月03日 | お店, グルメ | No Comments »

テキスタイルが繋ぐ東西の縁

5月19

fin かつて京都を案内したフィンランド人夫妻から贈り物を頂きました。
北欧グッズの数々中にマリメッコのクッションカバーがあり、京都出身のデザイナー・脇阪克二氏(現「SOU・SOU」のテキスタイルデザイナー)による「ピック・ブーブー」の柄でした。
昨年からメールと手紙で互いにこのパンデミック下での近況を報告し合い、それぞれの家族の健康と平穏を祈りました。

お礼として、こちらからは日持ちのする宇治茶と、唐紙のレターブックを。
相手はとてもおしゃべりな人で、立て板に水の様な口調そのままに、話したいことが溢れすぎて便箋の裏側にまで文字が続くほどなので、
きっと便箋がたくさんいるだろうと思ったからです。
(ちなみに、息子さんは一行しか返信を書いてくれないと、嘆いておられました)

cocon烏丸にある「雲母唐長 四条店」を尋ねたのは随分前の事なのですが、上記の旨を伝えると、
レターブックの中に、フィンランド人デザイナー・Saana ja olli(サーナヤオッリ)が出がけた便箋が入っていると教えて頂きました。
奇しくも、送り先住所と同じトゥルクの出身のようです。
「マスクの仮置きに挟んで使ってください」との一文を添えて、唐紙の模様が透ける懐紙も同封しました。

そろそろ、届く頃かな。

2021年5月19日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

菓子から知る丹波くり

4月28

kuri
直径1ミリの錦糸を重ねたようなモンブランが話題の「丹波くり・和栗専門 沙織~さをり~」、がJR京都伊勢丹の地下一階イートイン「菓子のTASHINAMI」に期間限定のショップを開いています。
元旅館を改装したという本店は行列ができると聞いて尻込みしていましたが、京都伊勢丹の方は順番が近づくとお知らせしてくれるシステムでした。
4月初頭に覗いてみたときは、京都の寺社が閉門する16時頃よりも前に訪れたせいか、4組待ち程度でした。

珈琲や和紅茶など様々なペアリングドリンクが選べますが、栗に合わせて同じく香ばしい日本茶が飲みたくて冷たいほうじ茶に。

契約農家から直接仕入れているという丹波くりは、国産栗の中でも生産量僅かに1%、京都で生産される「京丹波くり」は更に少なく希少なもの。
粒が大きく肉質が締まり、渋皮が剥がれにくく香り高いとされています。
独自に開発されたという機材で極細のペーストを絞り出す様を観たい人には、お店の人がわざわざ呼びに来てくれるのですが、これは単なるパフォーマンスではなく、その栗本来の旨味や香りを生かすためのもの。

出来上がりはかき氷くらいのインパクトですが、繊細な曲線がしっとりと絡み合うマロンペーストも、真ん中に埋もれたさくさくのメレンゲも軽い食感で、くどさや重さはありません。
カトラリーで頂く体裁ですが、栗らしいほっこりとした感触の残る素朴さは、人を幸せな気持ちにさせますね。

モンブランと言えばお酒がふんだんに使われている印象を持っていましたが、こちらは「栗以上に栗」。
余分に加える必要無いのでしょう。

夏は暑く秋冬は寒さの厳しいメリハリある盆地の気候が丹波の名物の霧を生み、豊かな風味を育みます。
平安時代から朝廷への献上品としても好まれていたという「丹波くり」。
秋を待って、丹波くりそのものも食べてみたくなりました。

JR京都伊勢丹の限定ショップは5月11日まで時間を変更して営業されているそうですが、8月上旬まで展開されているので、今すぐのお出かけが叶わなくてもご安心を。

2021年4月28日 | お店, グルメ | No Comments »

失われゆく遊郭建築

4月21

hashimoto
夏目雅子さん主演の映画『鬼龍院花子の生涯』にも登場する橋本遊郭。
かつては82軒もの妓楼があったそうですが、10年以上ぶりに訪れてみると、遊郭の名残を感じさせる建造物は今も僅かに残っています。
橋本遊郭跡にある大店の一つが旅館「橋本の香」として生まれ変わっており、漢方エステや足裏マッサージが受けられるほか、500円で内部を隈なく案内してもらえます。

屋久杉の木目が美しい欄間やステンドグラス、今となっては容易に再現することが不可能な霜ガラスや色とりどりの豆タイル。
どこを切り取っても写真映えがする異世界は、寺社をお参りするだけでは見られません。一般の女性が敷居を跨ぐことができるのは、現在だからこそ。
贅を尽くした遊郭建築は基礎からしっかりと作られているので、長年風雨にさらされ地震を経ても周りの住宅よりも持っているのだとか。
文化財級の価値がありながら公的に保護保存される事もなく、その貴重な素材や意匠は取り壊され更地や駐車場になるなど徐々に失われてしまっています。
色街の遺産とも言える曰くつきの建造物を買い上げ保存に動き出せるのは、日本人よりも中国など海外の人の方が積極的なのかもしれません。

二軒隣の「旧第二友栄楼」も500円の追加で一緒に中に入らせてもらいました。
老朽化した築120年の妓楼を、中国茶を楽しむ茶楼に生まれ変わらせるために改装中で、軋む廊下や階段を進むと、前の持ち主が残した着物や古いカメラ等の雑貨がいっぱい。
これらの貴重な建築を活用し保存するためのクラウドファンディングが27日まで行われています。
物干し程の広さのバルコニーもあり、どんな風にこれから変貌していくのか、とても楽しみです。

古都に乾杯

3月31

K36
新しい檜の香り残る清水の舞台を後にして、閉門の清水寺からの帰り道。
ザ・ホテル青龍清水」の前を通りがかりました。
昭和期に建てられ2011年に閉校した清水小学校の校舎を活かした建築、また周辺の八坂の塔などが見渡せるルーフトップバーで知られるホテルです。

こちらは自転車姿。立派な車寄せを前にこんな出で立ちで敷居をまたいでも良いものかと、営業確認を兼ねてホテルに問い合わせましたが、快く受け入れて頂けました。
新しいホテルなのにノスタルジックな空気感の廊下を進んでエレベーターに乗り、「K6」のバーテンダー・西田稔氏がプロデュースに参画したというルーフトップバー「K36 Rooftop」へ。
当時はまだ冬の寒さが残る頃だったので、テーブルに添えられたカイロを使っても寒かったのですが、清水の舞台から眺めた夕焼けとはまた異なるパノラマ夜景の中に身を置いて、全くの別世界を楽しみました。
ちょっと移動するだけで、全く違う世界に出たり入ったりできるのが京都の街の面白いところ。

予算の目安としては、本日のおすすめワインを今宵の一杯に選んだとすると、ナッツが付いて4000円ちょっと。
桜の季節でお客の数は増えているかもしれませんが、視界の開けた席で夜風に当たりながらさっと飲みに立ち寄るだけでも気分転換になると思います。

その夜は間もなく満月が顔を出す頃合いでしたが、夏は五山送り火の船形や左大文字が見えるそうですよ。
そろそろ、夜の春風が届く頃でしょうか。

2021年3月31日 | お店, グルメ | No Comments »

銘木と椿の競演

3月17

taizan 銘木商・泰山堂(新烏丸通丸太町上ル新富町304。075-213-0355)というところで椿展があると誘われ、お邪魔しました。
庭園に植わっている椿の木を回遊するのかと想像していましたが、畳敷きの小上がりのある、こじんまりとした数寄屋建築が会場でした。

染付とのコントラストが鮮やかな花の群れに迎えられ、ある花は燗鍋の口から枝を伸ばし、ある花は唐紙の版木を敷板に、またある花は仏手のような彫刻の指先に花を付けていました。
その品種も「月光」「赤城」「百合椿」「千寿」、そして雷光のように枝をうねらせた「雲龍」など、花びらの色から葉の形状まで実に豊富です。

美しい椿は寺院や庭園、お茶席の床の間など京都でたくさん出逢えますが、様々な古材や花器の絶妙な取り合わせで生けられた姿を一度に観られるのは新鮮でした。

「真の美しさに触れた時、人は心強くし、何度でも再生できる」
案内状にはそう書かれていました。

撮影は可能ですが拡散不可なので、ここでの椿の画像をお見せできないのが残念ですが、
この椿展は毎年3日間だけ開催されているそうなので、来年のご参考までに。

「京都ネイティブ」なお店

3月3

mago
京都マニアの友人に教えてもらった、京都御所に程近い「孫右ェ門」。

個人宅の庭に踏み入り縁側から靴を脱いで入店するようなスタイルに戸惑いながらも、庭に面したソファ席に身を沈めました。
ウヰスキー入りの濃厚なチョコタルトが、初めて飲む「二三味珈琲」によく合い、よく見るとタルト生地にも珈琲の豆が。

床の間にはお雛さま。こちらに住まわれているオーナーさんは、並河靖之七宝記念館のポスターを手掛けるグラフィックデザイナーだそうで、衣紋掛けの前には新古のデザイン本が並んでいました。
越して来られる前のお家は、祇園祭の岩戸山が立つ町内とのこと、テーブルクロスも祭つながりのものだったので、
「今年の祇園祭はどうなるんでしょうねえ」「さあ~何らかの形でしはるんちゃうかなあ~?」
と会話に花が咲き始め、カウンター越しに長らく話し込んでしまいました。

立て看板が無ければうっかり通り過ぎてしまうような入り口、椿が咲き長い路地を奥へと進む静かな高揚感と、意外にアットホームな居心地(家だけに)と手頃なお値段。
バーの時間帯に人を連れて行ったら喜ばれそうです。

家からお店への改装や置かれた小物にもセンスを感じて、久々に「京都ネイティブ」なお店に出逢えた気がします。

2021年3月03日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »
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