e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

お寺のひな祭り

3月6

hina 春桃会の三十三間堂。普段は厳かな佇まいの千手観音坐像も、隣にお雛さんが飾ってあるだけでどことなく春の空気をまとっていました。
この日に限り、体半分ほど高いところから堂内を眺められる足場が設置してあり、おびただしい数の千体千手観音立像が規則正しく並ぶ様を斜め上の角度から観ると、まるで合わせ鏡の中で永遠に続いているかのようです。
境内で女の子の赤ちゃんを連れた人をよく見かけたのは、桃の節句に子供の幸せを願ってのことでしょう。実家にあるお雛さんを思い出し、代わりに女性専用の「桃のお守り」を受けて後にしました。
三十三間堂の東側に出たすぐそばの法住寺の、庭を隔てた奥の書院には、三間にわたって吊り雛をはじめとした様々な人形が花壇の様に彩を放っていました。
段飾りに、床の間には立ち雛の掛け軸、畳の上には貝合わせに西洋の人形まで、様々な姿で親しまれてきた人形たちを観ていると、それらをひとつひとつ包み、大切にしまって引き継いできた人々の姿を想像します。
子供の頃は単なる人形遊びだったひな祭り。その意味を知り、お片付けやお飾りを手伝うようになったのは、いくつのときだったかな。

萩の寺の別の顔

2月13

jorin
出町柳駅を出てすぐ、常林寺には、勝海舟が寝泊まりしていたという一室があります。
幕末ゆかりの人物や建築物の魅力は、肖像画ではなく写真という形でよりリアルに感じられること。
この部屋も、まるで勝海舟がつい先程まで居たかのような錯覚を覚えてしまいます。
庭を流れている枯れた川は、砂川の跡。往時の志士達は、このせせらぎを聞いたのでしょうか。
この寺は三角州にあったために水捌けが良く、萩が良く育つのだそうです。
そういえば、ここは「萩の寺」として知られているはずなのに、さっき見た門前は萩の木すら無かったのでは!?
実は、一度株を残して切ってしまった方が萩の生育には良いそうで、秋は白い萩で人の体の半分が埋もれてしまう程の境内も、真冬の今はきれいさっぱり何もありません。
門のそばに建つ、桐と菊の紋の入った灯籠の前には、「世継子育地蔵尊」が祀られています。
雛人形ほどの小さな可愛らしいお地蔵さんにも関わらず、雨風しのげる以上に立派なお堂が建てられ、これまでに若狭街道を往来する多くの人々が手を合わせてきた事が偲ばれました。
なお、常林寺はGoogleMAPのストリートビューで境内や本堂内を見る事ができ、宿坊として利用できる一軒家の「離れ」の内部も見る事ができます。

島津家と相国寺と田辺製薬

1月16

houkou
京の冬の旅」で公開されている相国寺林光院と豊光寺を初めて訪れました。
龍の気配を察して片目を開いている猫の姿がユニークな龍虎図ならぬ「猫虎図」や、襖絵としては珍しくリスが描かれている林光院
関ヶ原の戦いの際、敗れた西軍に属していた島津義弘を大阪の豪商・田辺屋今井道與が庇護し、薩摩への逃避行を海路で誘導した功により薩摩藩の秘伝調薬方の伝授を許され、これが現在の田辺製薬(現田辺三菱製薬)の始まりなのだそうです。
後に道與の嫡孫が林光院の五世住職となり、林光院は薩摩藩が京都に作られるきっかけの寺院となりました。
豊臣秀吉の追善のため創立された豊光寺では、富岡鉄斎が碑文を書いたという「退耕塔」や葉書の語源となった「多羅葉(たらよう)」の木、山岡鉄舟の書等があります。
山岡鉄舟は剣や書の達人として知られ、獨園和尚のもとで禅修行にも励み、江戸城の無血開城にも関わった人物です。
いずれも、「鶯宿梅」の咲く頃に拝観されるとより楽しみが増しそうです。
「明治維新150年記念」と「西郷隆盛」のテーマに沿って、よりマニアックに町巡りをしたい人には、「龍馬伝 京都幕末地図本」がおすすめです。

京都で盆踊り

7月31

bon
どちらかというと地蔵盆の方が盛んな京都ですが、盆踊り大会が毎年開催されているところもあります。
先日行われたのが、西本願寺の「本願寺納涼盆踊り大会」。
境内の北側にある広大な駐車場に櫓が組まれ、音頭が響きわたるなかで浴衣や洋服姿の老若男女が踊っていました。
どうやら「ゆかたレンタル&着付け」のコーナーもあったようです。
「本願寺グルメストリート」も同時開催されていて、定番の屋台メニューに加えて、有名B級グルメの「富士宮焼きそば」、矢尾定の鮎塩焼きやわらび餅、前田珈琲のかき氷など京都でお馴染みのお店の出店もあり、京都グルメも味わえます。
テント付きの床几もたくさんあるため、甚平姿の赤ちゃんから夫婦連れのお年寄りまで腰かけて食べていました。
夕闇が降りてきて提灯に一層の赤みが増したころ、吉本芸人のお笑いライブが始まると、同時にたくさんの人だかりが舞台へと吸い寄せられていきました。
そういえば、屋台に目移りしてばかりで、踊る事をすっかり忘れてしまっていたな…。

現代人の特権

5月8

nishi 連休中は一旦休止されていた「西本願寺花灯明 ~夜の参拝・特別拝観~」が、9日より再び期間限定で始まります。
入場料の代わりに熊本地震の災害義援金を志納するのですが、入り口で記念冊子(記念しおりや龍谷ミュージアムの割引引換券付き)が一人ずつに手渡されます。
これを袋に入ったまま見学している人がたくさんいましたが、それでは勿体無い!袋の中には拝観ルートの解説も同封されているので、予め一読して散策される事をおすすめします。
伽藍が整備された当初は、篝火や蝋燭で灯された様もきっと美しかった事でしょうが、ライトアップという形で金箔や水鏡が輝く光景を拝める事は、天下人の秀吉さえ叶わなかったことであり、私達現代人の特権とも言えます。
国宝の唐門や北能舞台、鴻の間や白書院などは、まさに「荘厳」の一言そのもの。しかしながら、ソテツが南国の景色の様にあちこちににょきにょきと聳え立つ特別名勝の「虎渓の庭」は京都の庭園としては非常に珍しいものでした。
ちなみに、屋内でも扉は開放されて風通しが良いため夜は少し肌寒いので、調節しやすい服装で春の宵歩きをお楽しみ下さい。
また、取材当時(5/1)は、境内の仮設フードコート「本願寺 おてら かふぇ&まるしぇ AKARI」は、飲み物と甘味のみの営業だったので、お食事でご利用の際には事前にお問い合わせ下さい。
フェイスブックの方では、会場から徒歩圏内で立ち寄った飲食店をご紹介しますね。

セレブ御用達のお寺

4月17

yoshi 先週末に勝持寺を訪れた後、せっかくなので、そこから車を15分程走らせて善峯寺へ。
竹の里らしく、桜と竹林の合間を縫って走っていると、所々個人宅の軒先に朝堀り筍が並べられているのが視界に入ってきます。
境内は桜もさることながら、山肌のあちこちに春霧が立ち昇り、樹齢600年を経た「遊龍の松」は霧雨に打たれて新緑の鮮やかさが増し、まるで龍が息を潜めて横たわっているかのような枝ぶりで、思わず足を止めてしまうのでした。
通常のお寺の2、3倍の規模はあるかと思われる宝物館も、寺の紋と徳川家の紋を配した大層な品が多く、善峯寺がいかに「セレブ御用達の」お寺であった事が伺えます。
境内にはソメイヨシノより少し遅れて咲く枝垂れ桜の蕾も多く見られ、公式ホームページからの情報によると、今週末も名残の桜が楽しめるかもしれませんね。

花と西行の寺・勝持寺

4月10

shouji 交通の便の良い桜の名所は車では近付きにくいので、市の中心部から少し離れた「花の寺」こと勝持寺へ桜ドライブをしてきました。
雨天で足元がぬかるんでいるのもあって人数はそう多くなく、傘や木の葉に当たる雨音だけが響きます。
ここで出家したと伝わる西行法師ゆかりの「西行桜」をはじめ百本を越えるとされる桜さの木が植わっているのですが、西行と言えばかつての大河ドラマ『平清盛』で藤木直人さんが演じていたイケメン西行をついつい思い出してしまうのですが。
すっかり桜とぬかるみに気を取られて上下ばかり見て歩いていましたが、ふと目に留まった木に張った苔や、草の鮮やかな青さに、新緑の季節の便りを受け取ったのでした。
勝持寺周辺には他にも、大原野神社正法寺など桜の美しい寺社があるので、桜尽くしの一日を満喫できますよ。

京都で一番大きな仏様

2月21

den座像にして7.5メートルと、京都で一番大きいとされる轉法輪寺の阿弥陀如来。
この大きな仏さまも、一般的に大きく描く事になっているという涅槃図も、ともに「お堂の片隅にいる人にも見やすく、お参りして頂ける」という配慮の現れなのだそうです。
轉法輪寺の涅槃図は今年修復を終えたばかり。ゆえに最も鮮やかで細かい所まで見やすい最良の状態になっていると言えます。
「当時のお坊さんはファッションリーダーで、西陣の織元が奉納した織物を身に纏う事で、その評判が世間に広まり…」
住職さんの、立て板に水のごとく繰り出される絵解き話はとても分かりやすくて楽しく、涅槃会を間近で眺めながら、「前はお釈迦さんが入滅した原因の話やったな」「講演に来て欲しいな」と話している人達がたくさんおられました。
涅槃図の両端には釈迦の80年の生涯が描かれていて、釈迦が誕生した際に降ったとされる甘露にちなみ、温かい甘茶や甘酒のおもてなしも嬉しいものでした。
ぜひホームページで絵解き話の時間をチェックして、実際に確かめてみて下さいね。

茶室観賞は客の目線で

1月16

kyu 「京の冬の旅・非公開文化財特別公開」の対象となっている建仁寺の久昌院。
禅寺に茶室は付きものですが、こちらもバラエティ豊か。
書院の方丈と渡り廊下で繋がる「高松軒」は、八畳台目の座敷に蛭釘を打ち、釜を釣り下げて目にも温かな炉の風情を、十二台目の座敷には爽やかに風炉を据えて季節ごとの趣向を楽しみ、特に後者は貴人向けに二畳の上段の間を設け、屋根付きの露地を雨に濡れる事無く席入りできるよう工夫されています。
それらに挟まれた「遠州別好ノ席」は小さな空間ですが、だからこそ舟底を模した屋根が活きています。
最も古いとされる茶室の織部床の間は、最初は素通りしていましたが、よく観ると、掛け軸が棚の細長い穴を貫通した状態で吊るされているのです。
例えるなら、ベルトをバックルに通したかの様な姿と言えばよいでしょうか、一体何の意図なのか古田織部に問いかけたいくらいの不思議さで、これは一見にしかず。
利便性良く4つの茶席が密集していながらそれぞれに趣向が異なるので、奥平家代々の大名達にとって、お茶でのおもてなしを受ける墓参は、一つのレジャーでもあったかもしれません。
お茶席を観賞する際には、ぜひ想像力を働かせながら客の目線になりきってみてくださいね。

静かに燃える紅葉

11月29

ei 今年の紅葉の見頃は少し早足のようで、早くも散り紅葉の絨毯が話題に上がっています。
金戒光明寺の山門を潜り、本堂に向かって左側の道を奥に進んだところにある塔頭・栄摂院(えいしょういん)を拝見できると知って、お邪魔してみました。
看板も無く静かに開かれた朱塗りの門に負けないくらいの赤い紅葉が参道の奥からのぞいており、期待感が高まります。

お堂は周りの庭園のみ開放されていて、青から赤へと移ろう様に色付いた紅葉が、木立の中に座する仏様に向かって波の様に降り注いでいました。
またそれらが苔むす石段をより鮮やかに惹き立たせ、むしろその深い碧にしばし目を奪われてしまいました。
お堂の奥へと曲がると、白砂がまぶしい枯山水庭園が広がり、また異なる景色が楽しめます。
金戒光明寺の公式サイトにも掲載されていないにも関わらず、訪れる人の足が絶える事はありませんでしたが、比較的静かでかつ無料で(賽銭箱はありますので、志納金は納められます)こんな手入れをされたお庭を観せて頂けるとは、有難い事です。
帰り際、夜間拝観(27日)が始まるまでの合間に、本堂前で奉納演奏への の準備が進められており、いつの間にか石段にはほのかな行灯光が落ちていました。

2016年11月29日 | お寺 | No Comments »
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