e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

京都人からみた葵祭

5月15
aoi

(※画像は過去のものです)

京都人からみた葵祭の印象とは。

「あ、もうそんな季節か」と気づくのが装束行列(「路頭の儀」)の約1か月ほど前に発表される「斎王代」の発表の記者会見でしょうか。

「今年はどこぞのご子女がしゃはるんやろ」
「あら、べっぴんさんやねえ」

から始まり、その後は大型連休に気を取られたまま5月に入り、「斎王代女人列御禊神事」で再び思い出すものの、「競馬神事」や「流鏑馬神事」が葵祭の関連行事である事に気付かないまま15日の葵祭当日を迎える人も少なくないと思います。

斎行されるのは毎年「5月15日」と固定されているのですが、日付まではっきりと認識しているお祭はお盆の「五山の送り火」ぐらいで、必然的に平日開催の割合が多くなるため、仕事の合間の休憩中や就業後に観たニュースで「今日は葵祭やったんか」という声も。

どちらかというと観覧席は観光客用で、地元人はぶらぶらと歩きながら眺めるスタイル。
うっかり人の波の中を自転車で紛れてしまうと動けず、交通規制により回り道をしなければなりません。
行列が通る沿道のお店の人達は、商売にならないのか、店頭に立っていつもとは違う外の景色を眺めている人たちもけっこういるものです。

一方、京都に根差した企業や伝統芸能の世界に関わる人達の中では、室礼の中に葵祭の要素を盛り込んだり、鯖寿司を食べたり、祭に関わる人達の着付け等の裏方で大忙しの人たちもたくさんいるのです。。
友人は学生の頃に女人役を体験し、白塗りの集団がバスに乗って移動する様はとてもシュールだったそうですよ。

世界遺産たる所以

5月7

kozan 京都市内からバスに揺られること約1時間弱、高雄の新緑の中へ。
高山寺での「世界遺産の新緑を愛でる特別拝観」に参加するためです。

「栂ノ尾」停留所で降り、まずは「NISHIKI TERRACE zap」で腹ごしらえ。
山の緑を眺められるタウンター席や、せせらぎが聞こえてきそうなテラス席、トイレには子供用に踏み台も用意されており、お店の前にも車が何台か置ける駐車場がありました。

高山寺の「石水院」は、明恵上人時代の唯一の遺構として伝わり、国宝に指定されています。
密教と華厳を修めた明恵上人は宗派を開かず釈迦信仰を貫き、宗派や身分を越えて様々な人々と交流していたそうで、北条泰時が制定した 「御成敗式目」は、明恵の思想がもとになっているとのこと。
後鳥羽上皇による勅額「日出先照高山之寺」の通り「高山」と「華厳の聖地」という意味合いがあるそうです。

非公開の茶室「遺香庵」の待合の中央には大きな梵鐘「茶恩鐘」が。
明恵上人700年遠忌にあたる昭和6(1931)年に建てられた茶室で、鐘には住友吉左衛門や堂本印象など全国の財界人を中心とした寄進者の名が刻まれていました。
今すぐにでも茶会が開けそうな茶室は、どっしりとした作りです。

「日本最古之茶園」の石碑が建つ茶園にも初潜入!
栄西禅師が中国から持ち帰ったお茶の種を、明恵上人が栂尾山内で栽培した茶が宇治へと伝えられたのが宇治茶の始まり。現在も宇治茶業組合により維持管理されているので、葉っぱも艶々です。
意外に広く200坪以上はあるとのこと。近年のDNA鑑定により、日本と中国古来のお茶の木が混在していることが分かり、栄西・明恵ゆかりの茶の木が連綿と引き継がれているのではないでしょうか。

最後は、外の新緑を望む書院にて高山寺オリジナルのお抹茶と和菓子を、お土産には当プラン限定のご朱印と鳥獣戯画グッズのお土産を頂きました。
まもなく高山寺では茶摘みが行われ、11月8日には開山堂にて明恵上人への献茶式も行われるそうです。

8点の国宝、1万2千点に及ぶ重要文化財など、高山寺に伝わる史料や文化財はどれも明恵上人ゆかりのものばかりで、文庫では最近ようやく鎌倉時代の調査が進んだところとのこと。
まだまだこれから新たな発見がありそうです!

高山寺が「鳥獣戯画のお寺」である以上に世界遺産としての指定を受けている所以に触れたとともに、近年でも白洲正子や河合隼雄などの文化人からも愛される明恵上人という人物に興味が湧きました。

今月末まで特別公開の日程が公式サイトに掲載されています。
高雄の新緑のもみじと共にお楽しみくださいね。

2024年5月07日 | 未分類 | No Comments »

つつじの丘で与謝野晶子に出逢う

5月1

keage 桜に代わって約4,600本のつつじが咲き誇る蹴上浄水場の一般公開(4月29日で終了)は、京都の晩春の風物詩の一つです。

ポコポコと花の半球が山肌を埋める鮮やかさは、三条通りを走る車の窓からでも確認できるほど。
いざ場内に入ってみると、思った以上に広さも高さもあることに気が付きます。

早くも初夏の湿気を含んだ空気のなかで、鼻を近づけなくても漂ってくる花の香り。
近所でも見かける身近な花ながら、初めて知るツツジの香り。

「ツツジのトンネル」を潜り抜け、息の切れる階段を登るなか、歌集「みだれ髪」や『源氏物語』の現代語訳でも知られる歌人・与謝野晶子の歌碑に出逢います。

晶子の筆蹟を写した歌は、
「御目ざめの鐘は知恩院聖護院 いでて見たまへ紫の水」。

与謝野晶子と鉄幹の思い出の旅館「辻野」が、かつてこの蹴上浄水場の敷地内に建っていたそうですね。

高台の広場に出てみると京都市内を一望でき、眼前にはインクライン、遠くに五山の送り火の「妙」「法」も見渡せます。
「絶景かな、絶景かな」のフレーズで有名な南禅寺の三門までも見下ろせてしまいます。

飲食ブースにはキッチンカーやテントのあるベンチが並び、各地からやってきたグルメもレベル高め。実店舗にも足を運んでみたくなりました。

思えば小学生だった頃、疎水沿いの通学路にはツツジが連なっていました。
ぶらぶらと歩きながら、花の付け根からラッパを吹くように蜜を吸ったりしたものです。
ツツジは、時間がゆっくりと流れていたあの頃の思い出の花です。

宇治市に『ニンテンドーミュージアム』

4月24

nin 宇治市小倉町に2024年3月末までに完成予定と発表されていた
ニンテンドーミュージアム』。
主にトランプや花札の製造や、ゲーム機の修理業務を行っていた任天堂宇治小倉工場をリノベーションし、過去に発売した商品を展示することで当社のものづくりに対する考えを紹介する資料館なのだそうです。

4月になったらお友達親子と一緒に見学して、
宇治茶平等院もご案内しようとわくわくしているのですが、これまでに現地に2度足を運んで撮影した2月中旬時点でも外観は特に変わらず、新しい公式発表も無い様子。

空撮写真により判明した、屋上に描かれている「ハテナブロック」はもちろん地上から見えません。かろうじて、「スーパーマリオブラザーズ」の背景に出てくる「雲」がちらっとだけ。
近くに大きな駐車スペースは整備されている様子でした。

近鉄小倉駅から徒歩6分、JR小倉駅から徒歩8分という立地ではありますが、観光向けのお店はまだ僅かですが、近くに奈良街道が南北に通り、それに沿って宇治茶関連のお店や、巨椋神社隣には「玉露製茶発祥之碑」という石碑がある静かな住宅地です。

なんとGoogleマップではオープン前から高評価が付いている不思議。
それだけファンの期待が高いのでしょうね。

オープニングスタッフの求人を見てみると「勤務開始日 2024/6/1~」とのこと。
まだまだ正式なオープンは先のようですね!

鴨川で桜のお茶会

4月17

naka再びお天気に恵まれた先週末。
枝垂れ桜の半木の道と鴨川の菜の花の対岸で、友人がお茶会を開いてくれました。

お互いにお湯とシートを手にゆるゆると集まり、色とりどりのシートでパッチワークのようになった芝生の上に円座。

リボンが結ばれたバスケットには、「菓子屋のな」の「あんバターチャバタ」がいっぱい!
イタリアの堅めのパンに、あんこや苺とマスカルポーネが挟まった、贅沢な一品です。

普段、高級茶である玉露を飲むことはそう多くありませんが、宇治玉露の「ごこう」や「宇治ひかり」、静岡煎茶の「静7132」や「つゆひかり」など、品種茶をメインにたくさんお茶を飲み比べ、ペアリングの和洋菓子をお腹いっぱい楽しませて頂きました。

主催の友人は日本茶インストラクターであり、フードコーディネーターでもあります。
このお茶会のためにお菓子の予約をして買い回り、たくさんの茶器を運んでここまで来られたのかと思うと、頭が下がります。

かすかな春風にふと見上げると、雲のない真っ青な空に、桜の花びらが瞬くように舞っていて、いつしか自分の茶碗の中にもひとひら浮かんでいました。

頭上の桜、脚下のたけのこ

4月9

takenoko桜の満開を迎えた週末の京都。
平日蕾を濡らした雨も上がったというのに、家族行事で京都の桜を拝みにいけずじまい。

そんななか、生協の宅配のネット注文をしていると、期間限定企画の「京都の皮付たけのこ」を発見!
新物で、あく抜きに必要な鷹の爪入りのぬかまでセットされていました
(ちなみに税込2,138円でした)。

スーパーでもたけのこのそばに米ぬかが置いてあったりするものの、これまで
たけのこで有名な「とり市老舗」の前でも
「美味しそうだな…でも手間だしな…値段も…」と
横目でやり過ごしていました。

京都のたけのこは、肥料を与えるなどの手入れは全て手作業で行われ、えぐみが少なく肉厚でやわらかく、甘みがあるのが特徴なのだそうです。

一度は自分で下ごらしえしてみたかったので、ポチっと注文して、いざチャレンジ。

たけのこは何日も置いておかず、すぐに調理するのが鉄則。
かつてお料理教室で習ったことを思い出しながら、こちらも参照しました。
他産地のものをゆがいたことが無いので分かりませんが、思っていたより短時間でやわらかくなりました。

2本をまるごと家族で頂く贅沢。
牛肉と一緒に炊くのも捨て難いけど、やっぱりシンプルな若竹煮に。
こりこりとした歯応えとやわらかい肉質を、子供達も楽しんでいるようでした。

初めてにしてはうまくいきましたが、やはり料理屋で食べるものとは味付けが違いますね。
プロが仕上げたたけのこは、より上質な素材の味を引き出すように工夫されているのだろうと、自分で手をかけてみて改めて感じます。

たけのこ尽くしで有名な「錦水亭」にも行ってみたくなりました。
長岡天満宮の八条ケ池の桜ライトアップも10日まで期間が延長となったようです。
これからの季節はキリシマつつじも綺麗でしょうね。

オープントップバスから桜の京都を眺める

4月2

sky満開のタイミングや自身の予定、お天気との掛け合わせにやきもきする桜シーズン。

屋根のないオープントップの2階建てバス「スカイバス」の「桜満喫ドライブ」を予約してみよう。そう思い立ったのが、天気予報で桜の開花予想が出たころでした。

1週間後のに満開のタイミングには少し早いものの、翌日から雨続きの予想のために数日前倒しの4月頭で予約することに。
それからは雨予報がずれ込まないか、毎日のように「近畿地方の2週間天気」とにらめっこ。
ところが、あれから3月末の気温が冷え込み、実際の開花は予想よりも遅くなってしまいました。

当日は快晴に恵まれました。4月1日より改名されたばかりの「ニデック京都タワー」が青い空に映え、心地よい風に吹かれて出発進行!

さて、桜の結果は…鴨川・賀茂川沿いの桜はちらほら咲き、岡崎エリアへと続く冷泉通りは早咲きの桜がところどころピンクの塊となって窓を撫でるように続きます。
「最初の開花予想のままだったら、今頃延々を続く見事な桜に客席からもっと歓声が上がっていただろうなあ」と思いましたが、予約した日を後ろにずらしたところで、雨と被ってしまっては元も子も無いと思い当初通りの日取りで乗車したのです。

気候も開花も自然のものだから仕方のないことですね。

春の風と日差しを受けながら、沿道のホテルのスタッフさんが大きく手を振ってくれたり、琵琶湖疎水船(動画にリンクします)と並走したり、信号ほどの高さから知恩院の古門をくぐるのはこのバスならではの楽しさでした。

ちなみに、五条より南の桜は満開で、窓の外を流れる桜並木と雪柳の共演を眺めることができました。

京都の桜シーズンはスタートを切ったばかり。
ダメもとでチャンスを伺ってみてはいかがでしょうか。動画は後程アップ予定です。

ひな茶会へ、再び。

3月25

hina 春の恒例行事「ひな茶会」に久々に参加しました。
前回は独身時代に旦那さんと、今回は子供達を連れて。

会場である「平野の家 わざ 永々棟」は、北野天満宮からほど近く、衣笠小学校の真裏にあり、年間を通して季節の催しが開催されています。

茶会のご案内があるまで、館内の様々な雛人形や市松人形、西洋人形等を見学。
雛道具に台所用品があるのは京都の特徴ですが、布団と枕まであるのは初めての発見でした。

今回の席の亭主と半東さんは中学生でしょうか、前に参加した時よりも大きな娘さん達でした。
お母さまが着ていたという華やかな着物を纏い、
まだ少し緊張が残るものの落ち着いた所作でもてなしてくださいました。

対照的に、いつもと違う環境に興奮気味の我が子らをたしなめるのに必死で、
床の間のお人形たちをじっくりと観る事は正直できませんでしたが、
脇床にあった截金が施された木彫りの雛人形公式Facebookにて詳しく紹介されていました。

こんなに端正なお顔立ちをされていたのですね。
時代物の雛人形は、京都のあちこちの催しで観ることができますが、木曽檜と截金の繊細な技が見られるのは、数寄屋建築の技が結集した「永々棟」ならではという気がします。

日本家屋と聞くと薄暗い町家のような印象を持つ人もいるかもしれませんが、良質な木材をふんだんに使い、窓にはステンドグラスを配した館内は明るく、新しい数寄屋の趣です。
それゆえに、幼い子供達もおくどさんを「キッチン」と呼び、肌感覚で心地よさを感じているようでした(お手洗いも素敵です)。
日本の気候と暮らし、それぞれの木材が持つ良さを生かした意匠は、これからの和風建築を生かした家づくりのヒントにもなりそうですね。

2024年3月25日 | 未分類 | No Comments »

アートとビジネス

3月20

kiki 2011年の東日本大震災の直後に京都に移住したという現代美術家・村上隆による大規模展覧会『村上隆 もののけ 京都』。
「京都では8年ぶり」「日本での個展はこれが最後かも」「出展作品の9割近くが新作の大作(未完成もあり)」など話題が尽きません。

現職や金箔で華やかな展覧会場の中には、世にも珍しい「言い訳ペインティング」が各所に漫画の吹き出しのように展示されています。
その一つによると、美術館側から多数の新作を「無茶ぶり」され、その資金調達のために「ふるさと納税」制度について勉強したとのこと。

そこで返礼品としてトレーディングカード(トレカ)付き入場券が誕生し、この初の試みの結果、総支援額は3億円を突破、京都市内在住・通学の学生(高校生・大学生)の入場料無料化が実現しました。

日本では、欧米に比べてアートを投資などビジネスの対象として捉える行為をタブー視し、眉をひそめるする人も少なくないでしょう。
とはいえ、我が国においては優れた芸術を生み出す作家であっても、その作品や演奏だけで食べて行くのは難しく、自分の腕を磨くより、お金を回す勉強をした方が、金銭的にはよっぽどリターンがあるのが現状です。

身近にいる芸術家達を見て、いつも思います。
「他の人にはそう真似できないことをやっているのに、もっと報われてもいいのではないか」と。

「フラワー」など、村上ワールドはグッズとしても大量生産できるデザインでありながら、こちらに迫って来るようなエネルギッシュな力強さがあります。

村上作品に初めて出逢う人にとっては、その奇抜さに「なんやこれー」と戸惑うかもしれませんが、「風神雷神ワンダーランド」や「洛中洛外図」「もののけ洛中洛外図」、「 五山くんと古都歳時記」など京都にゆかりのあるそれぞれの作品群は、奇をてらうものでもなく、過去の名作の模倣でもなく、みやこに育まれた系譜への敬意を村上流に表現したものであると感じられるのではないでしょうか。

この展覧会は「観て終わり」ではありません。
4月1日からはαステーション(FM京都)にて村上隆氏がレギュラーDJ を務めるラジオプログラム『MONONOKE RADIO』が始まるそうですよ(「radiko」で聴くのもおすすめ)。

京都の名建築、明治村にあり。

3月11

meiji小京都」と呼ばれる町は日本各地に見られますが、それとは別に、かつて京都にあった建造物がたくさん移築されているのが愛知県犬山市にある「博物館 明治村」です。

約100万㎡という広大な敷地内を、日本初の一般営業用電気鉄道であった「京都市電」が来場者を乗せて走り、「京都七条巡査派出所」のそばにある「市電 京都七条駅」に停車します。
この赤レンガのタイル張りがモダンな派出所は、西本願寺前に建っていたのだそうです。

河原町三条で創業、後に御幸町通に移転して営業していたという「京都中井酒造」。
現在明治村で甘味処としても利用できる京町家の一角には「岩竹」という銘柄の酒瓶と酒樽が据えてありました。
樽には「京都中井酒造ゆかりの酒」、瓶のラベルには伏見区下鳥羽の「三宝酒造」とあります。
京都中井酒造も三宝酒造も廃業もしくはその住所では既に営業されていない様子ですが、
御幸町二条には「清酒 岩竹」とだけ書かれた看板が残っているようです。

聖ヨハネ教会堂」は「日本聖公会京都五条教会堂」として、明治40年から昭和38年に解体されるまで京都に存在していました。
外観こそ洋館そのものですが、内部の天井には京都の気候に合わせて竹のすだれが採用されています。
この堂々たる佇まいの洋館が河原町通五条にあったのかと、想像が膨らみますね。

他にも北区小松原北町にあったという茶室「亦楽庵」「宮津裁判所法廷」など、これら京都にゆかりのある建造物の多くが登録有形文化財に指定されています。
機会があれば、ぜひ注目してみてくださいね。

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