e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

家族で定食屋

8月1

tatuki 夏休み、お盆シーズンを迎え、町なかにはお年寄りと子供達、赤ちゃん連れの大所帯で歩く家族連れの姿をよく見かけるようになりました。
そんな時のお食事は、家族それぞれの好みも違っているため、様々な種類のメニューがあるお店を求めて、ファミリーレストランに列を成す人達も少なくありません。
それならば、揚げ物等の洋食から麺・丼類である昔ながらの定食屋さんに行ってみるのも楽しいかも。
以前から前を通る度に、豚の暖簾が気になって仕方無かった「たつ㐂」(075-491-8972。京都市北区小山初音町)。
壁に貼られたメニューはなぜか「ざるそば」だけ、端っこに積まれた新聞や漫画雑誌にパイプ椅子という、必要最低限のもので構成された店内はシンプルそのもの。
ですが、揚げたてのトンカツや鰯のフライはサクサクで重さを感じない軽妙な歯応え、ほくほくとしたじゃがいもが香るコロッケは、ほっとする家庭的な味、定食屋ならではの「中華そば」は、あっさりスープの旨みもさることながら、麺もしっかり香ばしい。
それぞれの一品のボリュームは多くありませんが、お手頃な価格なので、それぞれが食べたいものを頼んでも、お財布に優しいのもありがたいもの。
不思議と気になったのは、各テーブルに備え付けられた調味料のガラス瓶。
ここの様に地元で愛される定食屋なら、ソースの跡でも多少残りそうなところですが、まるで磨かれたのかと思う程にぴかぴかでした。
テイクアウトも可能のようですが、すかさず暖簾の奥から「お店で食べてもらった方が美味しいよ!」との声。
大衆的なのにどこか清潔感があって、大将の意気込みが光る定食屋でした。

2016年8月01日 | お店, グルメ | No Comments »

『祇園祭・犬神人の「武具飾」

7月25

bugu 快晴下で後祭巡行や花傘巡行が行なわれ、祭神も八坂神社へと帰還し、残る祇園祭の行事もあと僅かとなりました。
毎年一度しかない祇園祭で、今年こそ見てみたいと思っていたのが、「武具飾」(16、17日)でした。
1974年まで、祇園祭の神幸祭・還幸祭には中御座の警護役として、弓矢町の町人による武者行列が参列していたといい、当時の甲冑が東山区弓矢町の松原通に面した商店や民家の軒先で展示されているというもの。
そもそも、弓矢町内には、「犬神人(いぬじにん)」と呼ばれ、神社領の清掃や警護、雑役を務めていた人々が近世になって移り住み、ここで神事や魔除けに使われる弓矢や弦走り(つるばしり。※鎧の胴体の正面部分)、僧の帽子などの皮製品を作って行商していたそう。
神輿を警護する犬神人の姿は、「洛中洛外図屏風」(上杉本)にも描かれているとい
うのです。
町会所の「弓箭閣(きゅうせんかく)」にも、多くの鎧兜や武具が蔵出しされ、古地図や武者行列を収めた古い写真に囲まれていました。
これまでにも甲冑の愛好家等から武者行列を復活させないかという声が何度か来ているそうですが、
「もともとは虫干しを兼ねて町内だけでやってたさかい、大ごとになって人がようけ来たら、対応できひん」と、何とも京都人的な発言。
観光イベントとしても大いに魅力的ですが、夏の盛りにこれらの重い武具14領を蔵から出し入れし、一領ずつを10カ所にしかるべき手順で飾るのは、高齢化が進む町内には体力的にも経済的にも負担がかかる事は目に見えています。
江戸時代からの「文化財級」とも言われるその甲冑は、行列を終える度に岐阜から専門の職人がメンテナンスに来るほど、大切に伝えられてきました。
博物館での保存も薦められるものの断り、町内の宝として自分達で守っていきたいという葛藤もみられます。
来年もまた、こうしてひっそりと行なわれるのでしょうか。

豊園泉正寺榊の粽

7月19

sakaki 皆さんは、祇園祭の粽を買うとき、どこのものを選びますか?
たまたま通りかかった山鉾町の粽、個人的に馴染みがあったり応援したいと思う山鉾町の粽、ご利益やデザインで選んだ粽、登りたい鉾で入場料代わりに、という人もいることでしょう。
今年の前祭は、宵山の16日のみ授与される「豊園泉正寺榊」という、ちょっと珍しい粽を受ける事にしました。
山のご神木や鉾の先端のように、祇園祭の祭神を載せる3基の神輿にも、それぞれ神を迎える「よりしろ」となる榊台が立てられていたといい、この泉正寺に伝わる中御座の榊台だけが今も静かに受け継がれています。
山鉾巡行の後の夕刻、神幸祭では中御座を迎えに行き、神霊を合一して、共に氏子地域を巡ります。
きれいに巻き込まれた華奢な粽は、まるで扇の中啓のような風格が漂います。
茅の輪が変化し、家の戸口に飾られるようになった粽はお守りのような存在ですが、同時に、それを伝えてきた地域を応援するための募金の形だとも言えますね。
今年は後祭りの宵山も巡行も週末と重なっています。前祭に行けなかった人も、ぜひ。

2016年7月19日 | 歴史, 神社 | No Comments »

お香のおもてなし

7月12

hayasi マンションに暮らす友人の部屋に通されたとき、照明を付けるやいなや、カウンターの端に置いてあったお香をさっと焚いてくれた事がありました。
本人は留守にしていた部屋の臭い消しのつもりだったのかもしれませんが、そのごく自然な流れがずっと印象に残っています。
「そうだ、今度、我が家に誰かが訪ねて来る時には、部屋にお香を焚いておこう。」
江戸末期から京都で薫物線香、焼香、伽羅や沈香などを商う香老舗の「林龍昇堂」では、
薫物線香と香水線香の3種に加えて、希望の薫物線香をサンプルとして取り寄せる事ができます。
きっと天然の良い素材に由来するものと思われる、きつさの無い自然な香りが気に入ったので、実際にお店まで買いに出かけました。
年代の異なる伽羅を焚いて比べさせてもらうと、若い方にはさわやかな軽さがあり、年代物は濃厚で少し重め。でも広い空間で焚くとさほど気にならないそう。
これが木の皮から醸し出される自然の恩恵なのかと感動を覚えるその間も、作務衣姿の人や料理屋さんが買い求めに出入りしていました。
二条城二条陣屋、祇園祭で神輿が向かう又旅社神泉苑にも近いため、もしやと思い尋ねてみると、大船鉾に続いて話題となっている鷹山にも納めておられるそうで、お店の前はどうやら三基の神輿の通り道にもなっているようです。
温もりのある薫りが満ちた店内は、昔ながらの風情をごく自然に保たれていて、良い薫りをたっぷりと吸い込んで、なんだか嬉しい気持ちでお店を後にしました。

2016年7月12日 | お店, イベント | No Comments »

いつも遊び心を忘れない

7月6

mini かつてプレゼントに選んだ白のカッターシャツ。仕事が空けたぞ、と袖を捲り上げると、袖裏から色とりどりのストライプ柄が顔を出しました。
また、ある女性のベーシックなトレンチコートは、裏地が大輪のバラ畑のようでした。
ポールスミスのデザインは、まさに「ひねりをきかせたクラシック」。
18日まで開催中の展覧会では、入り口でもらえるピンク色のイヤホンを自身の携帯電話に繋ぎ、作品の側にあるQRコードを読み込んで解説を音声で聴く事ができます。
ポールのインスピレーションの元になっている冒頭のスクラップは、まるで子供が綺麗なもの、お気に入りのものをごちゃ混ぜに投げ込んだおもちゃ箱のようで、それらがファッションの枠から飛び出して、車やラジオ、ソースや飲料水‌の瓶、直営店等のデザインにも遊び心を加えています。
誰もが知る世界的なファッションブランドですが、一番最初のショールームは、ホテルの一室のベッドに数点の服を広げただけ。初めてのファッションショーも、友人のアパートを借りた手作りのものだったそうです。
個性を尊重し、ショップで買い物をしない人でも楽しくなれるような空間を創る。常に夢を持ち続ける。どんな時でも想像力を働かせて楽しく工夫をしてみる。
今でも第一線で活躍しているポールの姿勢は、ファッション以外の分野においても、大切なものを私達に伝えてくれています。

京に眠る遺跡パワー

6月28

saiji  京都を何度も訪れている人でも、新幹線の窓から東寺の五重塔が迫って来ると、毎回気分が高揚するといいます。
平安京の時代、羅城門を挟んで東寺と対称に位置していた西寺があり、空海が真言密教の道場として発展させ、今や世界遺産となった東寺に対して、守敏が鎮護国家の官寺として発展した西寺は、度重なる火災と国政の衰微を経て廃れてしまいました。
その跡地に降り立ってみると、予想通り、西寺跡石碑や復元整備された礎石や案内板のみとなっており、芝生の小さな丘の上で野球に興じる少年達が歓声を響かせていました。
平安京に関する書物を読み、存分に想像力を働かせてこそ楽しめるのは言うまでもありませんが、西寺の台所であった大炊殿跡に中華料理屋が建っているのがご愛嬌。この前身のお店も料理屋さんだったそう。
西寺児童公園の北側にある鎌達稲荷神社は、伏見稲荷大社よりも歴史が深く「元稲荷」とも呼ばれ、平安期の陰陽師・安倍晴明の子孫である安倍家、土御門家の鎮守社なのだそうです。ここのサムハラ呪符は奇蹟を生むお守りなのだとか。
ちなみに、2013年には京都府八幡市美濃山の「美濃山瓦窯跡群」で、西寺跡周辺で発見された瓦と同じ「西寺」の押印がある瓦が1点出土したというニュースもありました。
現存する木造塔として最高の東寺の五重塔。同規模だったとされる西寺にも立派な塔が建っていた可能性も考えられます。
いつの世も、あらゆる国で、そびえ立つ塔は人の心を惹きつけてやみません。
国の災いを引き受け、姿形は失われてもなお、人の足を運ばせてしまう遺構の数々
京の土の下からはまだ、何らかのパワーが秘められているのでしょうね。

現役の机上式ゲーム機

6月21

game 昔からずっと変わらない姿で営業を続けている喫茶店を見かけると、入ってみたい衝動にかられつつも、その敷居を跨ぐのに老舗の暖簾をくぐるよりも勇気がいるのは何故なのでしょう
北大路堀川にある「純喫茶 翡翠」もそのうちの一つでした。
大徳寺の帰りに勇気を出して入ってみると、中は想像以上に広く、天井もランプも過剰なまでの装飾です。水槽に金魚が泳いでいるのも、各テーブルに置かれたガラスやステンレスの灰皿もミートスパゲティも、一つ一つが80年代を形作るかけら達であり、何だか自分が幼い頃の空気がまだここに残っているかのよう。
壁も食器も真っ白で明るくシンプルな現代のカフェとはまるっきり対照的なのですが、ふかふかのソファと照明の薄暗さがなんだか落ち着くのです。
そして予想通りありました、机上式のゲーム機。
なんと今でも硬貨を入れれば動くというので、店員さんが電源を入れてくれました。
運ばれていた分厚いトーストをひとまず脇に置いて、早速プレイ開始!
しかしながら、ファミコン世代で、レバー操作に少々不慣れな自分は、ルールを把握する間もなく撃沈してしまいました。

2016年6月21日 | お店, グルメ | No Comments »

カフェという発信装置

6月13

kaika 一軒カフェとは結びつかないような京都の老舗が、続々と喫茶サービスに乗り出しています。
その多くが京町家風で「和モダン」を打ち出すなか、日本で最も歴史の古い手作り茶筒の老舗「開化堂」がこのほど開店した「Kaikado Cafe」は、京都市電の車庫兼事務所だった場所を改装し、どちらかというとニューヨークの珈琲ショップのよう。
手を離しただけで上蓋が筒に吸い込まれるように密閉される、開化堂ならではの手作り珈琲缶も多数陳列され、キッチンには「金網つじ」と「中川木工芸」が試作したというドリッパーが目を引きます。
時間の経過を忘れるほどお喋りに夢中になっていたにも関わらず、口に運んだアイス珈琲の香ばしさや、チーズケーキの濃厚な舌触りがちゃんと印象に残っているところをみると、品数は限られていても、それぞれの素材を吟味してきちんと作られたものだけを出しているのでしょう。
大量生産はできないけれど、世代を越えて愛されるように、一つ一つの品を手作業で丁寧に仕上げていくお店の姿勢と共鳴するものがあります。
これまでの老舗や職人といえば、小さな工房の中で家族身内が肩寄せ合って黙々と作業をしているのが常で、外に開かれているのは体験教室や見学といった時くらいでした。
そんな状態では、もとから興味を持った人しか、その製品に関わる事はありません。
カフェという形は、現在最も多くの人が自然な形で伝統工芸品に触れられる装置なのだと言えます。

2016年6月13日 | お店, グルメ, 和雑貨 | No Comments »

祇園でおもてなしを学ぶ

6月6

maruyama 自宅で料理教室をされているマダムの主催で、「祇園丸山」の建仁寺店で昼間のお食事会をしました。
この様な料亭では、予約の際に苦手や食材やアレルギーの有無はもちろんのこと、どの様な用途での利用なのかも尋ねられます。
今回は参加メンバーの中でお祝いごとがあり、また訪れた先月は五月の節句だったので、床の間には立派な鎧兜や矢屏風に弓太刀、そして「萬歳」と書かれた屏風が出迎えてくれました。
坪庭の蹲から流れてくる水の音に耳を澄ませていると、「綺麗だな、と感じるお庭は、実は相当な手間がかかっているものなんですよ」と先生。
食事も季節のもの、鯛や赤飯などのめでたい趣向のものを、温かいものは温かく、冷たいものはひんやり舌触りも良く、それぞれが清楚に盛りつけられ、非常に正統派な京料理屋という印象を受けました。(またこの手のお店のお手洗いは広い!)
ところで、幸か不幸か、インターネットの急速な普及によって、お店に限らず物品や不動産関係、医療機関まで、あらゆるものが評価の対象として晒され、自分の財布を開かずとも、事前に口コミ評判を得られて当たり前となっています。
あるとき街角の飲食店で、食べ物がこびり付かないよう予め濡らしてある木の箸を、「お箸が濡れていて気持ちが悪いので交換して下さい」と言っていたり、「器に何かが付着している」と、金継ぎが施された器を指差している人を見かけたりすると、ネットの口コミとは書き手次第で左右される危ういものだな、と思わざるを得ません。
全ての評判を鵜呑みにする読み手は多くないでしょうが、「おもてなし」とは、至れり尽くせりの一方通行なサービスや評価の対象ではなく、双方の掛け合いでつくられていくもの。
通された部屋のしつらいや食材の取り合わせ、間合いの取り方にどんな気配りが巡らされているのか、目に見えないとこをも汲み取って、感謝の思いで返せるような良いお客になっていきたいですね。
言葉に代わり、お皿に乗せて伝えたいこと。このお食事会は、先生の課外授業だったのかもしれません。

2016年6月06日 | お店, グルメ, 花街 | No Comments »

吉田山大茶会

5月31

kan 先週末の京都は茶会ラッシュだったようで、大徳寺のあちこちの塔頭では利休忌に因んだ月釜が、神護寺でも「神護寺茶会」という催しが行なわれたようです。そんな中で、吉田山大茶会に初めて行って来ました
吉田神社境内で、様々な団体や店舗が銘々の趣向で茶会やお茶の販売をしており、京都の宇治茶はもとより、静岡の天竜茶や、台湾茶など、300種類以上のお茶が集結して賑わいをみせていました。
軽食もあり、テイクアウトの中国茶のミルクティーや冷たいライチ紅茶で喉を潤しながら、茶器を買ったり、韓国茶道の茶席にも参列したりと、ここでは朝から夕方までティータイムです。
軽トラックの荷台に畳を敷き、売茶翁さながらにお茶をふるまうところや、急須と合体させた湯呑みなどの、独創的な試みにも触れてみたり。
毎年参加されているというお茶好きな方からのアドバイスは、「早めに会場入りして、まずは予約を入れること。人気の茶席はすぐに完売してしまう」だそうです。
今回も38ものブースが出典しており、会場には全体マップが一か所でしか掲示されていなかったので、行きたいお店を探すのに少々時間がかかりました。
事前に出展者リストをプリントアウトして、行きたいところをチェックしてから効率よく巡るのがおすすめです。来年のご参考に。

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