e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

宇治の炭山へ

4月2

moto
空は青、桜満開の宇治市に入り、車でつづら折りの細道を進みながら最初に目指したのは、炭山というのどかな住宅街の中にある「基牛舎」でした。
4,50年程前には牛舎、その後は椎茸の栽培にも使われていたいう建物を、カフェと暮らしの雑貨を展示販売するギャラリーに改装しており、陶芸作家であるオーナーのヤマモトソウヘイさんが作った器や、自ら選んだ選んだ暮らしの道具を展示販売しています。
カフェではオーナーの母親が手作りしたランチや、貴重なコーヒーのスペシャルティ、宇治の抹茶を使ったロールケーキ等が頂けます。
わずかに灰色がかった白い皿やカップの京焼・清水焼、サイダーの様な水泡を閉じ込めたガラスの器は、主張し過ぎず日常に溶け込んで、生活空間にささやかな高揚感を加えてくれそうなものばかり。
木造の梁を残す高い天井にファンが回る店内は、各席のイスやシャンデリア等のインテリアだけでなく、ジュースのグラスやストローの色など細部に至るまでこだわりとセンスが光っていました。
京焼・清水焼は、昭和46年の条例で京都市内にて薪窯を焼くことが禁止された事から、清水坂界隈の窯元が山科の清水焼団地や宇治の炭山に移転して創作を続けていました。
車が無いと少し不便な立地ですが、観光客で賑わう駅前の茶店街や茶畑、萬福寺・三室戸寺界隈とは異なる宇治の一面です。
その後は宇治川沿いの「朝日焼ショップ&ギャラリー」(7、8日に「夜の音楽会」を開催)や平等院鳳凰堂(5日からライトアップを開催)にも立ち寄りましたが、その話はまた後日。

生命を写し取る

11月21

CF06A51E-1203-464F-BD9E-3F71B61B7B1F 賀茂社資料館「秀穂舎」では、学問所であった社家建築の解説と共に、「光りと游ぶ」展として、写真家・井上隆雄氏が晩年に毎日の様に通って撮り溜めていたという糺ノ森の写真を中心に展示されています。
聞いた話によると、井上氏がかつて病気で倒れ、生死を彷徨っている間に、夢の中で下鴨神社の宮司さんに呼び止められ、生還された体験があるそうです(後日に宮司さんにその話をした時、宮司さん側は特に身に覚えが無かったそうですが)。
この紅葉の盛り、カメラを手に痛感している 人は多いと思いますが、美しいものを感じたまま写し取るのはとても難しいもの。
光量や露出の調整といった技術的な経験だけでなく、何かをキャッチするまで対象を見つめ続ける体力や気迫、感度が違うのは言うまでもありません。
泉川に浸る紅葉、幾重にも重なった落ち葉、それらの感触や音、温度までも、自らの手に刻まれた記憶が呼び覚まされます。
私達が実際に歩いて観てきた森の景色と、車椅子に座った位置からレンズ越しに観る景色もまた、違って見えるのでしょうか。

鷹峯で森林浴

6月12

shouzan 鷹峯にて、外国人達が亭主役を務める茶事に参加して来ました。
すぐそばで流れる紙屋川は、所々が深くなっていて、思わず「着物ごとダイブしてみたい」と談笑。夜になれば、にも出逢えるかもしれません。
お食事は青もみじを忍ばせた竹籠弁当とお吸い物という正統派の和食でしたが、食後は自国ゆかりの果物を使った餅菓子やドライフルーツが、お茶のお供でした。
海外で釜を掛けようと思うと、炭は危険物扱いとなるため飛行機では輸送できず、船便になるそうです。
帰り道は、亭主が「人が少なく菖蒲が見頃で、500円で貸し切り状態だよ」とおすすめしていたしょうざん庭園へ。
華しょうぶの会」が終了した後だったので数々の茶室の内部を伺い知ることはできませんでしたが、人が去った後でひっそりとしていて、遠くで聞こえる水撒きの音が、まるで自分にも優しく降り注いでいるような心地でした。
散策の途中で現れる茶花や竹筆のお店も覗いてみたりと、素敵な寄り道でした。
今度は川床にもお邪魔してみたいと思います。

2017年6月12日 | 未分類 | No Comments »

元・立誠小学校

2月14

cinema 歌舞伎役者の中村雁治郎さんや俳優の近藤正臣さん、中村玉緒さんが卒業したという元・立誠小学校の3階にある「立誠シネマプロジェクト」で映画を観て来ました。
日本で最初の映画上映が行われた地という事で、「日本映画原点の地」とも言われています。
少し薄暗い廊下と冷たくて堅い階段、きしむ床板に懐かしさを覚えながらも、かつて自分が通っていた小学校よりもモダンな造りに新鮮さも感じます。
校舎の突き当たりにある教室の中へ入ると、黒板や机は残るものの、そこはポスターやパンフレットを備えた小さな映画館の受付になっていました。
上映前になり更に暗幕の奥へ進むと、幕に囲まれた小さな空間の段差に座椅子が並べられており、まるで大学時代に度々訪れた小劇場の様で気分が高揚しました。
広告の代わりに、上映合図はスタッフの口頭で。座布団はありましたが、映画が終わる頃には少しお尻が痛くなってしまいました。
ちなみに、こちらでは鑑賞券のインターネット販売は無く、各日の最初の上映時間より30分前から受付で購入する必要があるので御注意を。
鑑賞後は1階の「Traveling Coffee」で、淹れたての珈琲を一杯。
教室の窓から差し込む陽光をぼんやり眺めたのは、もう何年ぶりの事でしょうか。映画の余韻に浸るために存在するような教室でした。
少子化により子供の足音が減ってしまった寂しさはちょっぴり残る校舎ですが、「高瀬川会議」等の有志によりその景観は守られ、学区外の子供から大人までがイベントに参加できる施設として今も息づいています。

2017年2月14日 | 未分類 | No Comments »

時空を越えて行く茶碗

1月24

raku 吹雪く程寒い日は、あちこち巡るより美術館でゆっくりすごしたくなります。
「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」展が開催中の京都国立近代美術館へ。
手捻りから生み出される樂茶碗は、両手に包まれ湯気をたたえる冬が最も映える気がします。
展示品の約半数は十六代を継ぐ篤人氏を含む樂歴代や本阿弥光悦等の作品を展観し、また半分は十五代樂吉左衞門氏の茶碗と新たな創作で構成されていました。
漆黒または朱色の肌で一般に知られているとはいえ、その造形はやはり時代の影響を映しており、ただ初代の作風を模倣するだけではここまで存続する事は無かったでしょう。
観賞順路も一方通行では無く、最後は出口にも初代長次郎の作品のある入口にも戻る事ができるようになっているのは、おそらく意図されたものだと思われます。
聞くところによると、当代は若き篤人氏に譲られ、樂美術館での企画も任されているのだとか。
京都会場のみ展示される作品や関連イベントも多く、樂美術館では「茶のために生まれた「樂」という、うつわ展」も開催中です。

お膳でお食事

1月5

zen 毎年大晦日は親戚同士で祖母宅に集まり、おせちを作ったり正月飾りのお手伝いをしてから、銘々に持ち帰っています。
たくさんのお膳が出ていたので尋ねると、なんと今でも元旦には皆正座をしておせちをお膳で食べているとのこと。
ひ孫らのお食い初めの時のお膳やお椀を大事に残して活用しており、中には親の代のものまでありました。
「湯通ししたら、すぐにぬぐって乾拭きしてね!水滴の跡が残るし。」
ところどころ漆が剥げてしまったものもありましたが、柔らかい布で磨くと、内側から滲み出るように光沢が蘇ります。
扱いに多少気を遣うし、しまうにも場所を取るものなのに、よく世代を越えて使い続けてるなあと感心していると、それらをひっくり返して重ねて見せてくれました。
ちゃんとスタッキングできるようになっているんですね。
「お家でお膳でお食事」、ちょっと憧れです。
サイドテーブルとして、ソファの隣に置いても面白いんじゃないかしら?

2017年1月05日 | 未分類 | No Comments »

終い○○

12月26

simai
毎月各地で行われる縁日も、「しまい大国祭」や「しまい金比羅」等、師走は「終い○○」と呼ばれ、最後は「しまい不動」で締めくくります。
人気の「終い天神」は、全国高校駅伝の影響もあってバスがなかなか来ず、到着するまでに時間がかかってしまいました。
真ん中の参道の両側は、主に食べ物やお正月飾りの屋台が並び、本堂側に向かって左手の参道裏は南天や値引きの松、鉢植え等の花の市、向かって左手の参道裏は陶器市が平野神社に迫る勢いで伸びて伸びています。
お参りの長蛇の列も覚悟していましたが、どちらかと言うと市を巡る前にまずお参りする方が、スムーズに済ませられる気がします。
都合で天神さんに来れなかった身内に「大福梅買ってこよか?」と連絡すると、大喜び。やはり人気なのですね。
花柄のホーローのティーポットや千円ちょっとのアンティークなワンピース等に目移りしながらも、結局買ったのは棒だらや祝い箸におじゃこ、昼ご飯代わりのはし巻きや締めの甘酒にお銚子と、結局食べるものばかりに財布の紐をゆるめてしまっていました。
あれ、もともとは割ってしまった抹茶茶碗の替わりを探しに来たんじゃなかったっけ。
まあいいや、年越し始めの「初弘法」で探すとしよう。

テイクアウト年越し蕎麦

12月20

men 事始めも過ぎた辺りから、世間話も年末の話題が多くなってきました。
美味しい蕎麦屋の話から派生して耳にしたテイクアウト専門の「洛北製麺所(075-781-4267」。
工場の隅にレジを置いただけの簡素なお店の中で、おばちゃんが暗算でお会計をして商品を受け渡ししています。
お品がきも、天ぷら(うどん・そば)等の温かい麺のセットやぶっかけ等の冷たい麺のセットのほか、鍋焼や冷麺等の季節の限定商品もあり、風邪から病み上がりだったのでカレー鍋を選びました。
牛肉やわらか、葱は元気に青々としていて、天ぷらも添え物ではなく身も衣もちゃんと主張があります。
辛さは控えめで、とろけたチーズがだしのきいたルーに絡んでとってもまろやかなので、幅広い年齢の人が楽しめそうです。すっかり飲み干してしまいました。
もちろん、麺やこだわりを感じさせるだしの単品もあります。
大晦日も営業されているそうで、一部の商品は予約が必要とのこと。
帰省の手土産代わりに、年越し蕎麦用に、京都のにしん蕎麦(390円)なんていかがでしょうか?

2016年12月20日 | 未分類 | No Comments »

乙女に還るふろくの力

12月11

ribbon 「りぼんのふろく」に惹かれて、開館10周年を迎えた京都国際マンガミュージアムへ。
夢の幸せなパステルカラーに彩られたふろく達は、組み立てて使う紙製のものからプラスチックの小物、ポーチやマニキュア、CD-ROMに至るまで、その時代の流通規格や読者の嗜好に合わせて変化していて、「あ、これ持ってた!」とあちこちの女性から声が上がっていました。
人気漫画家が書き下ろしたイラストのシールやノートに始まり、本立てや小物入れ、ミニアルバムなど、紙とはいえ読者を取り巻くイベントに合わせて実用的に使える工夫は、子供ながらにも感じるものがあり、何十年経った今見ても、やっぱり乙女心をくすぐられてしまうのです。
まさか半年も前からアイデアが練られる程に力を入れられていたとは。毎年発行されていたダイアリーなんて、単体で大人向けに販売してみたら、きっと懐かしさで手に取ってしまう人もいるのでは?
リボンでとじる『ねこねこ幻想曲』のレターセットは、今でも封筒やポチ袋を入れるのに愛用しています。

2016年12月11日 | 未分類 | No Comments »

聖護院門跡

9月21

hora 台風が過ぎ去るのを待って、天台宗系修験宗の総本山である聖護院へ出向きました。
神仏習合、山岳信仰である修験道は、神道と共に日本独自の宗教と言え、出家・在家に関わらず修行に参加できる事から、知り合いの会社の社長さんも、時折山伏姿で歩くところを見かけたりします。
霧雨が降る中、静かに拝観できそう…と思っていたら、後から来た団体さんに追いつかれてしまいました。
その大人数の拝観客を出迎える為だったのでしょうか、お寺のガイドさんに加えて、お坊さんが現れたので、同行させて頂くことに。
上段の間の床に描かれた滝の水が外へと満ちてゆくかのように繋がる障壁画の描き方や、あえて鼠の通り道を空ける事で欄間を獣害から守る工夫、床の間を二つ設けて客人と身分を気にせず過ごす為の心遣い等、日本の建築ならではの仕掛けが多彩で、それらをお坊さんが歩き回りながら一つ一つ説明して下さり、また、本来なら進入禁止のエリアも団体なら入っても良いとの事で、堂内の奥まで踏み込んで観せて頂けたのは非常に幸運でした。
よーく見ると、枯山水や苔の庭には猫やリス等のかわゆい置き物が配置されており、あれが誰の趣味なのかが気になるところです。
庭先に体験用の法螺貝も置いてあるので、この機にホラを吹きたい方は、ぜひ。

2016年9月21日 | 未分類 | No Comments »
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