e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

大徳寺孤篷庵と小堀遠州

10月14

koho 小堀遠州ゆかりの大徳寺孤篷庵が珍しく特別公開されていました。
ここを現代に当てはめて例えるとすれば、名古屋城天守閣や二条城二の丸庭園、南禅寺金地院の茶席、経緯などを手がけた人気デザイナーが、仕事から離れ、自分自身が楽しむために作った遊び心溢れるデザイナーズ建築といったところでしょうか。
庭の刈込みや石の造形を生かした配置で水平線を現し、想像力を働かせれば、まるで一艘の船に乗っているような気分になれます。白い胡粉で磨かれていたという「砂ずりの天井」は外の光を反射して、その杉板の木目がまるで揺らぐ水面を映しているかの様に見えたのだとか…。
しかも初公開の直入軒は、扁額書いたのが松花堂昭、茶室「忘筌」を再興したのが松平不昧公という、「数寄者ブランド」とも言うべき著名人物の名前が出てきます。
この貴重な機会を逃すまいと、閉門直前にも行列ができており、現代人もなお憧れる空間の演出家しての小堀遠州の人気ぶりが伺えました。
千利休、古田織部と続く茶人ブーム。次もやはり、小堀遠州でしょうか。

宇治茶のテーマパーク

10月7

ujicha 

80年以上行われてきたという「宇治茶まつり」。午前中は宇治茶を育んできた自然や茶祖、茶筅に感謝を捧げる厳かな儀式で幕を開けます。
「茶壺口切り式」では、茶壺の中で大切に熟成されていたお茶の封印が解かれ、宇治川の水と合わせて茶祖に供えられました。
儀式の後は、塔の島を中心とした一帯は宇治茶のテーマパークに!
今年は京都文教大学の学生が主催する「親子で楽しむ宇治茶の日」が同時開催された事もあって、気まぐれな雨にも負けずたくさんの親子連れが、京田辺市や木津川市等の宇治茶産地のお茶を楽しんだりしていて、スタンプラリーの景品交換所には長い傘の列ができていました。
茶券(茶席が混んでいる場合は、お菓子だけ持ち帰ることも可)を片手に訪れた宇治市観光センターのセルフサービスの緑茶でさえも一定のクオリティを感じるところは、さすが京の茶どころ。
点心席として訪れた宇治茶道場「匠の館」で出されたお茶も、甘みがあってとても美味しく、思わずお代わりするほど。
あちこち巡っている間に、落成式を終えたばかりの平等院鳳凰堂を拝観する時間が無くなってしまったので、次回のお楽しみとしました。

酔芙蓉の寺・大乗寺

9月30
大乗寺の酔芙蓉

大乗寺の酔芙蓉

 朝に白い花をつけ、それが午後から夕方にかけて徐々に淡いピンク色に変化していき、最後はまるでお酒に酔ったかのように濃く染まってしまい、そしてたった一日で枯れてしまう不思議な花・酔芙蓉
法華宗の大本山・本能寺の末寺である大乗寺は、300年以上の歴史を持つものの檀信徒が殆ど無く、廃寺同然の荒れ寺だったところを現住職・岡澤海宣住職夫妻が移り済み、50代にしてツルハシ一本での参道造りから寺の復興を図ってきたそうです。
住職夫妻の詩吟の弟子から寄贈されたのを機に1996年から植え始められたという酔芙蓉は、現在では約1500本にもなりました。
境内は小規模ながら、酔芙蓉の小道は殆どが自分の背丈よりも高く成長し、誰かに肩を叩かれたかな、と振り返ると酔芙蓉の葉だった、という程に密集しています。
休憩所でお茶を頂き、お寺の方とのんびり語らっていると、無料で開放されているのが申し訳無いくらい。
色づき具合は気温や太陽の光に左右されるそうで、濃い色に染まった花が観たい人は、拝観時間を過ぎても自由に見学しても良いそうです(ただし、外灯はありません)。
まだまだつぼみもたくさんあったので、今月末から来月にかけて満開の景色が観られそうです。
急こう配の石段があるため、ある程度階段を登れる脚力と虫除けスプレーは必須ですが、柔らかく繊細な八重の花びらと、アットホームなおもてなしは、きっと訪れる人の心をほぐしてくれると思います。

島原文化の灯

9月16

wa  京の花街・島原で現在もお茶屋営業を続けている「輪違屋」が、10年ぶりに公開されています。
6名が所属しているという太夫さんは、今でこそマンションから派遣されて来るそうですが、かつては置屋として輪違屋の中で共同生活をされており、その部屋は非公開の3階部分にも残っているようです。
10年前の初公開時に訪れた時には、その豪華な打掛や太夫そのもの神秘性の方に関心がありましたが、その後様々な機会に太夫道中や舞を観るに従って、観光イベントだけでは伺い知れない奥深さにも触れてみたいと感じて来ました。
それだけに、輪違屋に跡取りがいないという事がとても気掛かりです。
京都市の指定・登録文化財としての建物自体は残されたとしても、他の花街とも違う、島原独自の文化は、今後どの様に守られていくのでしょうか。
資金が必須とはいえども、お金だけでは文化芸能の継承にはなれず、主客双方の文化レベルも維持していかなければいけません。
同じく付近で特別公開していた角屋は、「京の夏の旅」としての公開時には二階座敷と美術館は拝観できませんでしたが、15日より通常公開に戻っているので、二階座敷を予約して、輪違屋と共に観賞する絶好の機会です。
来月には「角屋の文化講座」や「太夫の舞 鑑賞会」も予定されています。

プロジェクションマッピング・二条城

8月4

nijo   祇園祭五山の送り火との間に新たな夏の風物詩とした登場した「京の七夕」(11日まで開催中)も、今年で4回目を迎えました。
最初の日曜日は生憎の雨にも関わらず、たくさんの浴衣姿と傘の花が堀川会場を彩っていました。
堀川の東側にある京都国際ホテル内の屋台村では、ハワイアン生演奏とフラダンスの舞台を楽しみながら、冷房の利いたテーブル席で食事ができるので、家族連れには堀川会場がお奨めかもしれません。
一方、堀川の西側で夜間に一部開放されている二条城では、二の丸御殿の形状に合わせてプログラミングした映像を投影するプロジェクションマッピング「荘厳なるあかり」が行なわれています。
城内に反響する音楽に合わせて、まるで車寄が動いているかの様に見えたり、壁面に花火や紅葉が散ったり、文字が浮かんだりする度にさざ波の様な歓声が挙がります。
国宝である建築物の、豪華な欄間彫刻を活かした投影によって浮かび上がらせる事で、その対象となる建物や事物に新たな価値を生み出し、保存継承に繋げていく事がこの「プロジェクションマッピング」という最先端技術の役割なのだろうと理解しました。
期間中、夜間の二条城は無料で入城できるので、代わりに一口募金(200円毎に記念カンバッチ進呈)をしてきました。
いち早く動画でご紹介したいところですが、皆さんには是非現地に足を運んで生の迫力を楽しんで頂きたいので、公開はまた後日に。

禊の社

7月28

mitarasi 土用の丑の日を目前に控えた夏の日。賑やかな下鴨神社の駐車場を眺めながら「京都っ子は御手洗祭が好きやなあ。」と思いつつ、やっぱり自分の足も御手洗池に向かっていました。
夜は長~い行列ができますが、お昼時は並ぶ事もありませんでした。
下鴨神社の井上社(御手洗社)は、葵祭で斎王・斎王代が禊祓をする事で「禊の社」として知られていますが、かつてはこの社の前身とも言える「唐崎社」があり、平安時代に葵祭の斎王が祭の後で斎戒を解くためにお参りしていたそうです。
1470年の文明の乱の兵火によって焼失してしまいましたが、御手洗社へ合祀されるまでは、葵祭等の官祭では唐崎社、下鴨神社独自の祭の時には御手洗社で斎戒の解除の為の神事が行われていたそうです。
井上社と同じく水の女神・祓の神様の「瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)」を祀る「唐崎社」は、高野川と賀茂川の合流する辺りから東側に鎮座していたそうで、そんな姿を想像して出町柳の三角州を眺めると、川の飛び石まわりで遊んでいる子供達と、御手洗池の冷たい水に喜ぶ子供達の姿が重なったりもして。
こんこんと湧くお水をゴクゴクと頂き、夏越神事で流してもらう「人形」を奉納する頃には、気分もすっきり。暑さもすっかり忘れていました。 動画はこちら

浦安の舞

6月23

kekkon ここ数年の間に、京都の町中に幾つもの結婚式場ができています。
その数、その勢いには戸惑いすら感じるほど。
そんな中で先日、身内の結婚式が貴船神社でありました。
快晴と緋色の傘に導かれて進む花嫁行列。市内中心部よりも涼しく、たっぷりの緑の中で参列者も清々しい面持ち。
居合わせた観光客には、外国の方も多かったのでしょう、本殿の中から後ろを振り向くと、外から式の様子を伺う人がたくさんいました。
神前で巫女さんが舞う「浦安の舞」は、昭和天皇御製の歌が歌詞になっているとの宮司さんのご説明を受けました。
「浦安」は「心安」とも書き、「心安の国」とは日本国の美称だそうです。
世の中が平穏であるためには、一人一人の心が平穏である事が基本。
貴船の水の神様から恵まれる一滴の水が集められて貴船川となり、鞍馬川や宇治川、桂川等と合わさって大阪湾へと注がれていくように、結婚式とは新郎新婦だけのものではなく、神様や親族へ報告をするためのものであり、新たに誕生した夫婦という一つのユニットから世界の平和を願う儀式なんですね。
「天地(あめつち)の神にぞ祈る朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を」。おめでとう。

宮川町のごはんや「蜃気楼」

4月21

miyagawa 「京おどり」最終日を迎えた花街・宮川町の夜。
 雪洞が照らし始めた石畳の彼方へ、自転車に乗り 仕出し箱を担いだ板前さんが走り去って行きます。

11年前までお茶屋だったという町家で、手頃に食事ができる「ごはんや 蜃気楼」で晩ご飯。
舞妓さんが店出しや襟替えをする際に玄関先に貼る目録や、お茶屋バーを彷彿とさせるカウンター席など、花街の風情も残しつつ、居酒屋ほど砕け過ぎない気楽さと、奇をてらわないシンプルな料理は、お座敷に上がる人の虫養いにも良さそうです。

 店を出ると、ちょうど近くのお茶屋さんから、舞妓さんと女将さんが移動するところでした。
これから次のお座敷に向かうのかな?それとも置屋さんへと帰るところでしょうか。
すっかり夜も更け人影もまばらな宮川町には、まだ昼間の賑わいがどこかに残っているかの様でした。

色々なお花見

4月14

gosho ソメイヨシノの見頃は過ぎましたが、ところどころ見られるしだれ桜や八重桜は、「たわわ」と形容したくなる様な花をたくさん付けています。
先週末の京都の町中も、桜を見上げる人々の笑顔で溢れていました。
学生時代の様に、レジャーシートを抱えて場所取りをする気力は無くなってしまったけれど、今年は2か所でお花見をする事ができました。
京都御苑では、ベビーカーを押すママ達と。御所の一般公開で大勢の人が歩いていましたが、北西の児童公園ではベンチやテーブルも空いていて、何本かのしだれ桜が優しい色の花を残していました。
歩き始めたばかりの子供達は、桜にはご興味無い様子。代わりにたっぷりと花びらが落ちた土を、小さな手で何度もすくって楽しんでいました。
一方、嵐山亀山公園では、馴染みの居酒屋の主催で、落語とお花見弁当を肴に一献。
桜はすっかり散っていて、八重の一本しか残っていませんでしたが、なかなか良いお花見場所を教えて頂きました。
それにしても、噺家がお酒を飲む仕草の美味しそうなこと!こちらもついつい、いつもより飲みすぎて、帰りはひらひらと花びらの舞う中、まるで雲の上を歩いているかのようにふわふわとした気分で家路につきましたとさ。

2014年4月14日 | 観光スポット | No Comments »

深草の桜

4月9

sidan 先週土曜は、「墨染桜」の咲く墨染寺を目指して、伏見稲荷大社近くから琵琶湖疏水沿いを歩きました。

 深草、藤森…と続く徒歩30分の道のりは、ところどころに頭上を覆うほどの満開の桜の木が植わっていて、地元の人が犬の散歩を楽しむような静かな遊歩道になっており、観光客の姿は殆ど見当たりません。
 特に師団橋の手前辺りの桜の木々は、疎水の水面すれすれにまで枝が伸び、優雅なカーブを描いていました。

 因みに、この「師団橋」という名前は、かつてこの深草近辺に大日本帝国陸軍の第16師団が置かれていた名残で、周辺の幾つかの橋桁には、五芒星のマークが今でも見られます。

 地元の人々によって行なわれているライトアップも美しいそうで、これからも開催されるといいですね。

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