e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

己の光を指針に

2月22


yo
友人に誘われ、高台寺の夜の茶会「夜咄」へ初参加。
寒さの厳しい季節に、陽が落ちてから開かれる夜咄は、暗い茶室の燭台の灯りだけで楽しむ趣向の茶会です。

一席辺り20~30名程でしょうか、先のグループが席入りしている間に、お坊さんが仏教の小話をして下さいました。
茶会の後は、広大な庭園内を登ったり降りたりしながら案内してもらいます。水鏡と化して木々を映す臥竜池を静かに眺められるのは夜の高台寺茶会ならでは。

境内を離れ、向かいの湯葉料理の「高台寺御用達 京料理 高台寺 羽柴」で点心席。
特別メニューの「うずみ豆腐粥」は、禅宗の修行僧が修業明けの真夜中に暖を取るために食するものだそう。
厳しい修行の最後の日に出されるとあっては、五臓六腑に染み渡ることでしょう。
人気観光地の高台寺ですが、僧堂としての姿を思い起こさせる、この催しならではのお品書きでした。

どなたでも、お一人でも、洋装でも、肩肘張らずに参加できる茶席です(懐紙と黒文字の用意もあります。撮影も可)。
誘ってくれた友人達が、お茶を習った事は無くてもお茶会に行ってみたい、一緒に行こう、と言ってくれるのは嬉しいこと。
隣り合わせた単身の方もその様なご様子でしたが、政所窯の茶盌やお道具などに都度肩寄せ合ってお話しながら、一緒に楽しくお茶を楽しませて頂きました。

「変わらず」時を刻み続けるという価値

2月8


sanmon
(※画像の金毛閣は現在修復工事中です)

大徳寺三玄院特別公開されています。
普段は非公開の塔頭ですが、閉ざされた門前を通る度に、個人的な思い出が甦ります。もう何年も前に、ある雑誌の記事広告撮影の裏方をお手伝いさせて頂きました。
記事の内容は、スイスの高級時計ブランド「オメガ」と、そのイメージキャラクターとしてスーパーモデルのシンディ・クロフォードさんと当時の競泳選手・千葉すずさんが、三玄院を訪れるというものでした。
記憶が正しければ、お茶席に入るときは時計を外して…と、手首のオメガの時計がアップで写るといった趣向だったように思います。
ゴージャスなイメージのシンディさんはとても華奢な身体をしていて、千葉すずさんは色白でスラッと背が高く、お二人とも美しい女性でした。

三玄院は、石田三成や古田織部の菩提寺だけに、誰もが知る多くの武将や貴人が参禅し、戦国の時代でもまたその時を象徴する人々を呼ぶ空間であったようです。
江戸期の絵師・原在中が各室ごとに技法を変えながらぐるりと襖絵を描き、絵師としてもこの上無い誉だったかもしれません。

拝観の後、ここの方丈前でその広告撮影の際に撮った記念写真を(※特別公開中の撮影は禁止です)見返してみてみました。
これまでもこれからもきっとずっと変わらず時を刻み続けていくのでしょうね。

花は一発勝負

2月1

hana  
画像を載せるのもお恥ずかしいのですが、お茶の稽古場で、隙間時間にお花も教えていただけることになりました。
和花は近所で買えないし、終わったら持って帰って家で飾れるので嬉しいですね。
華道はこれまで単発的に体験した程度なので、ど素人の挑戦です。

今回の花器は竹の花入を選びました。
竹の花入の場合、花を上からではなく、
間の窓から差し入れます。
入れる本数は偶数が基本。
正面から鑑賞するものなので、正面の鑑賞者に向かってくるような感じにいけます。
花器の縁周り付近に花がまとわりつかないよう、外に浮いているかのようにいけるそうです。

指先で枝に触れ、その造形に沿わせていると、
立体化した墨文字をなぞっているような感覚になります。蝋梅と椿が、もしかしたら
立てた弓と羽根みたいに決まるかも…と進めていましたが、最後の最後で鋏で茎を切りすぎて、
縦にまっすぐだった枝が横にくるりんと回転して戻らなくなってしまいました。

完成したら、中筒の淵ぎりぎりまで水を満たします。
そうすると、もうこれ以上手が入れられなくなります。
一発勝負なのも書画と似ている気がします。
最後に全体に霧吹きで水打ちして瑞々しく。

問題は、家には和花をいけられる花器が無い!
さて、どこで買おうかな?

うさぎの宇治で年明け

12月28

manpuku 萬福寺にて『黄檗ランタンフェスティバル』が2023年の1月末まで開催されています。
訪れた時は平日の晩だったので、境内も駐車場もとても空いていました。
小籠包や綿菓子などの軽食やキラキラ小物を販売する屋台と即席の座席、日本の縁日とはひと味違うちょい派手な遊具もご愛敬。

中国風のBGMと赤、黄、紫…のカラフルなランタンに溢れた境内を回遊していると、時折色の無い光と闇だけで浮かび上がる伽藍を抜ける瞬間もあり、本来の禅宗寺院としての厳かさが際立ちます。

昼間訪れた人は「中華街みたいだった」そうですよ。
年が明けて華やかな新春風情を楽しむのもいいかもしれませんね。(動画はこちら)

さて、年末の大河ドラマ最終回で承久の乱の地の一つとして記憶に新しい「宇治」。
宇治神社には、祭神「菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)」が河内の国からこの地に向かう道中を一羽の兎が振り返りながら導いたという故事にちなんでうさぎをモチーフにした授与品があります。
世界遺産宇治上神社にも「うさぎおみくじ」があるのだとか。

朝は卯年のお参り、昼は宇治茶を楽しみ、夜は萬福寺でそぞろ歩きと、そんな新年のスタートを宇治でを切るのはいかがでしょうか。

「カワイイ」のチカラ。

12月14

kitty
全国巡回中の「サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史」。京セラ美術館での終了間際に滑り込み!

子供向けというより、マイメロディやキキララ、ハンギョドンなど、昔からサンリオのキャラクターのグッズを愛用してきた元・乙女たちが懐かしさに胸をときめかせるような内容でした。
巨大なキティちゃんと一緒に写真を撮ったり、映像アトラクションなどは親子で楽しみましたが、貴重なミニチュアやオブジェ等は触れないよう注意しないわけにはいかず、娘はちょっと寂しそう。
展示物も子供の背丈よりも高めの位置で、子供たちにとってはたくさんの大人から垣間見る感じになり、早く外に出たがってしまいました。
サンリオの歴史やキャラクターデザインについてもっと詳しく見たかったのですが、やはり幼子とよりも大人同士で行った方が良かったのかもしれませんね。

手塚治虫や石ノ森章太郎、水森亜土など著名な作家が関わっていた事も初めて知り、マイメロディの原画がキティのデザインの黄金比率が見れたのが嬉しい。
キティちゃんの両目の間隔、頭部に対する胴体の長さ。どれかが崩れると違和感を感じてしまう、考え抜かれた造形は、日本中の女子のみならず、世界のセレブや男性までも魅了し続けていきます。

「母」と言う文字が含まれている「苺」。
ただの「もの」がいちご柄になるだけで、人々を癒してくれる「カワイイ」になる。
サンリオを象徴するいちご柄にデザインの力をみました。

2022年12月14日 | 芸能・アート | No Comments »

「書きたいもの」を書く

12月7

hude
年賀状、いつもどうされていますか?
挨拶文や礼状、熨斗紙、金封、結婚式などの芳名録など、「こんな時に綺麗な字で書けたら…」と思った人は多いはず。
でも、定期的に書道教室に通うとなると、資金や時間の工面の敷居が高い。
そんな時目に留まったのが、「aotake」の2階座敷で行われている「ふで文字教室」でした。

たまたま常連の生徒さんと入れ違いで、風月柏葉先生とマンツーマンだったので、「自分の名前をもっとこなれた感じに書きたいので、お手本を書いて欲しい」とリクエストさせてもらいました。
「ここにスペースを空けて、風がよく通るように…」「“口”を書くときは、左の縦線が長く、下の横線は少し外に出るようにします」。
「自分の書きたいもの」だから楽しくなり、調子に乗って家族分の名前や、礼状に記すお茶の先生の名前まで書いてもらい、実に様々な見本が出来上がりました。
調子に乗って、「『謹賀新年』や『賀正』以外に、お正月にふさわしい気の利いた言葉が知りたい」とお願いすると、先生が本の中から一緒に探して下さいました。

『初空』。文字通り元旦の空を指す言葉ですが、シンプルな清々しさを感じたので、来年の我が家の年賀状に採用することにしました。

お稽古の後は、先生と美味しい日本茶とお菓子で歓談。
こちらがニワカ生徒なのに、「写真って、どうすればもっと写せるの??」ときさくに話して下さる先生でした。
「ふで文字教室」は日程が限られていますが、興味のある方は相談されてみてはいかがでしょうか。

余白に込められたもの

11月2

fujin 友人に誘われて夜の人気もまばらな建仁寺へ。
キヤノン株式会社主催の夜間特別拝観・映像体験イベント「ヨルZEN(禅)-自然と共生する日本-」が10月末まで開催されていたのです。
広くは告知されていなかったようで、その友人もまた祇園界隈に勤める知人のSNSで知ったのだとか。

本坊に入ると、遊園地のアトラクションか!?と連想してしまうような轟が床から響いてきました。
綴プロジェクト」によって昨年奉納されたという、国宝『風神雷神図屏風』の高精細複製品に投影されたプロジェクションマッピングがその正体。
雷鳴や風雨、黄金色に輝く稲穂が周囲にも映し出され、農耕を支配する雷や風などの自然に神仏が宿ると信じて来た日本人の信仰がこの屏風に描かれている事を再認識させます。

方丈へと進むと、専用ゴーグルを装着。
目の前に広がる枯山水「大雄苑」に、MR(複合現実)による映像が現れ、最後に墨の様な黒い粒が白砂の上の空間に結集し、まるで墨蹟の様に空中に浮かび上がる様は圧巻でした。
法堂ではスマートフォンやタブレットを通して、天井の「双竜図」を眺めてみると、AR(拡張現実)によって、龍たちが天井を抜け出し、より近づいてその姿を眺める事ができました。

この様な映像技術はこれからますますあらゆる場面で見かける事になり、次世代を担う子供達にとっては当たり前のものとなっていくのでしょう。
それぞれ楽しませてもらったのの、個人的には、日本の美意識の一つである「余白」を目に見える形にして埋めてしまうのはどうなのか、と少々危惧してしまうのです。
だからこそ、これまでは「風神雷神のユニークな姿」という印象しか持っていなかった屏風に、今回の仕掛けによって日本人の信仰の形を見出したように、
オリジナルが何を訴えようとしているのか、と自分で改めて想像力を働かせる意識を持ちたいと思います。

本番前の時代祭

10月25

anzai
時代祭の時代行列は例年正午に御所の建礼門前より進発しますが、今年こそは出発前の様子を見てみたいと思い、朝の平安神宮へ。
8時より2基の鳳輦に御霊代を遷す神幸祭が行われており、既にそこそこの人だかりができていました。
本番だと静々と進む御鳳輦がなんとも京都的ですが、應天門を多人数で担がれながらそろそろと潜り抜け、台座にやっとこさ仮座される際は珍しく「わっしょい」な風情でした。
9時になると、これという合図は無いものの、神幸列が平安神宮の大鳥居に向けて進行を始め、演奏しながら歩く雅楽隊や幟を持つ人々、歴史人物たちはそれぞれのルートで京都御苑を目指していきました。
付近からシェアサイクルに乗って京都御所・建礼門前の行在所へ。
京都料理組合による神饌物の奉献、白川女による献花、関係者が榊を納めたり、維新勤王隊列が京都御苑を出発する前と、平安神宮に到着した時だけ演奏するという「朱雀行進曲」も。
少し離れたところで待機していた徳川城使上洛列の奴(やっこ)たちは、待機場所から行在所へ向かう際にも独特の掛け声を出していたので、次回は御苑での裏舞台の様子も観てみたい!

ところで、神社で風が吹いたり、蝶々が飛んでいるのを見かけたりすると、「神様が喜んでいる。歓迎してくれている」という話を聞いた事があるのですが、ちょうど行在所祭の最中に、2匹の黄色い蝶々が目の前を横切って行ったのです。
時代祭は平安京の最初と最後の天皇を祭神として、その二柱の神々に現在の京都の様子を見てもらうためのお祭。
3年ぶりに斎行された時代行列を、お二方が喜んでおられたのでしょうか。

2022年の時代祭関連動画はこちら

羽を広げて風に乗ろう

10月12

cho
今年の夏より一般拝観を始めたお寺があります。
これまで何度となく本法寺の境内を歩きましたが、その一角にある尊陽院という塔頭には気づきませんでした。
訪れたきっかけは、SNSで流れて来た、アサギマダラを描いた鮮やかな天井画でした。

朽ちた空き寺だったところを手探りで再興、住職の妻も修行の末に尼僧となり、自身の辛い経験から水子供養を主とする祈りの場として生まれ変わったそうです。
このアマギマダラの天井画を制作したのはmais(マイス)という若き芸術家。音が色で見えるという共感覚を持っているそうです。
墨一色の龍の天井画とは対照的に、彼女の瞳を通すと、世界はこのように色鮮やかに見えたりするのでしょうか。

草花を描いた天井はよくありますが、こちらは蜜を吸いに来る側の蝶。
それも、ひらひらと可憐な、というよりも羽を大きく広げた力強い印象の方が優ります。
浅葱色の羽が美しいアサギマダラは、日本から海を渡り香港まで移動できる程の珍しい蝶でもあります。
アートは目にした人の数だけ解釈があると思いますが、自ら動いて幸せを取りに行くような、風に向かってしなやかに飛び立とうとする女性を象徴しているかのように思えました。

お寺の復興から天井画の完成に至る不思議な物語は、拝観時に教えて頂けますよ。

「おもろいおっちゃん」に会いに

10月3

issey 先日、父が楽しみにしているという、『イッセー尾形の一人芝居「妄ソー劇場」』を観に京都府立文化芸術会館を訪れました。
早速イッセーさんが描いたイラスト入りのTシャツを購入。

自分にとって初めてイッセー尾形という人物を認識したのは、阪神淡路大震災の際に延々と流れていたACのコマーシャルだったので、
以来、俳優やナレーターとしての活躍をテレビの画面を通してみてきました。

開演前のアナウンスもご本人のもの。思わずくすりと笑わせてくれます。
人間観察を笑いに昇華させた小劇と小劇の合間には、暗転する舞台の端だけスポットライトが当たり、イッセーさんがその場の姿見と観客の前で衣装替えするのです。
ドーランを塗り、もみあげもヘアマスカラでしゅしゅっと染めて、紅をひく表情も仕事人そのもの。
再び舞台の真ん中に戻ったかと思えば、よく通る最初の一声で観客を湧かせます。

会場に集まっているお客は年齢層が高めでリピーターが多い様子。
世代の違いか、ネタによっては内容がよく分からないまま周囲の爆笑に戸惑いました。
しかしながら、テレビのナレーションにおいても、声を聞いただけでその飄逸なキャラクターを連想させ、
自分の芸名を冠した、しかも一人芝居で何年もファンを魅了し続けているというのは脅威的なことです。
今回初めて実際に本人を観ましたが、こういう劇場公演なら演劇人としてもっと色んな側面を観る事ができそうです。

ホールを出ると、3年ぶりに行われるというサイン会を心待ちにする人々の長蛇の列が既にできていました。
あの笑顔を前にすれば、きっとつられて笑ってしまい元気が出るでしょうね。
イッセー尾形さんが「世界で一番好きな劇場」と呼ぶ京都府立文化芸術会館での次回の公演は、来年3月を予定されているそうですよ。

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