e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

京都発祥のジュエリーブランド

12月1

niwaka クリスマスイルミネーションを見かけて、聖夜に向けてプロポーズを考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
京都で挙式をする人が増えているように、和風のデザインを取り入れた婚約指輪、結婚指輪もよく見かけるようになりました。
京都発祥のジュエリーブランドの一つとして知られる「」は、その意匠や石の質の良さはもちろんのこと、純白の陶器におさめられ、桐箱に真田紐をかけて慶びを表した装いは、心躍るもの。証明書もたとう紙に包まれています。
西洋の「黄金比」に対して「白銀比(大和比)」と呼ばれ、法隆寺や生け花、A判用紙に至るまで日本人が古来より美しいと感じてきた正方形の形が正面に現れる様に、独自のカットを施しています。
もう一つ特筆すべきは、ダイヤモンドはしばしば戦争での取引に使われる事があるといい、俄では紛争地を経由しない「コンクリフト・フリー」のダイヤと選んでいるそうです。
一生ものだから、良いものを贈って喜ばせたい。とはいえ、贈る側が前もって相手の好みをリサーチして、指のサイズも聞き出して…というのは案外難しいもの。
後で一緒に選びたいという人のために、大粒のクォーツをダイヤの様にセッティングした「プロポーズ専用のリング」もあります。ファイト!

2015年12月01日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

心を立体的に表現する水引

10月19

oosima 親戚の結婚を控え、祝儀袋を買いに「大嶋雁金屋」を訪れました。
普段ならデパートや文具店、コンビニでも気軽に求められる物のですが、昔から室町の呉服屋さんご用達の老舗と聞いて、どんな所だろうと好奇心が湧いたためです。
小笠原家から直伝の折型を守る老舗、となると敷居が高いのでは、との心配は無用でした。
ショーウインドーには、職人さんがお遊びで作ったと思われる水引製の、スポーツ選手の人形達が展示されていました。隣にはマジメに作った、こぼれんばかりの梅や松を載せた水引の宝船。お店の方も自然体で、筆耕もお願いしました。
改まった形で結婚祝いをお金で贈る場合は、新郎宛の目録には「松魚(しょうぎょ)」、新婦宛には「五福」と書くそうで、後で調べてみると、それぞれ肴と呉服を表しているそうです。
なお、京都では、お祝いの品を持っていくのは正式には結婚式当日ではなく「大安の日の午前中」と決まっていて、その日のために準備した目録や祝儀袋、袱紗等を並べるとなかなか壮観です。
店内には、立派な光沢を放つ華やかな祝儀袋もあれば、キューピー人形の付いた、ちょっと砕けた楽しい出産祝いの祝儀袋も並べられています。もちろん、どの水引飾りも職人さんの手作業によるもの。
色とりどりの水引の輪っかを自分の飲み物の容器に掛けて目印にできる、ボトルマーカーとしての珍しい商品もありました。
縦に細長い紅白の水引は、マンション住まいの人でも扉に下げるお正月飾りになるかと思い、少々気が早いけれど購入することに。
掛け紙に印刷された水引も一般的になってしまった現代ですが、心を形で表した立体感もまだまだ大切にしていきたいですね。

美の追求者・北大路魯山人

8月3
画像とイメージです。魯山人展とは関係ありません
画像はイメージです。魯山人展とは関係ありません

 京都国立近代美術館で「北大路魯山人の美 和食の天才」が開催中です。
どの器も、どんな料理をどの様に盛れば映えるだろうか、妄想が膨らむ一方で、お腹が空いてきてしまいます。
傲慢で気難しく毒舌とも評される一方で、家庭の温もりに飢えながらもそれを築いては壊してしまう不器用さ。特に究極の美を追い求めてきた人達は、その強欲さと純粋さ、そして孤独を理解できるからこそ、この複雑怪奇な魯山人を愛する事が出来たのだろうと思います。
そんな美食家が自らをぶつけた作品たちは、豪快な意匠の大鉢や金襴手の繊細な装飾、筆先でこちょこちょと描かれたかわいらしい魚や鳥たち。
彼の生い立ちから始まる波乱万丈な人生やそれが本人の人格に与えた影響を想像した上で観賞した時でも、理屈抜きに純粋に感性だけで向き合った時でも、北大路魯山人が多くの人の興味を惹きつけてやまないのは、彼が生みだした物の根底にどこか無垢なるものを感じられるからではないでしょうか。
会場を見渡した時に目に入る「器は料理の着物」や「持ち味を生かせ」といった言葉もそのまま胸の中にすっと入って来るのです。
今となっては魯山人が腕を振るった料理を食する事ができないのが悔やまれますが、きっとそれらも人間の本能をダイレクトに刺激してくる様なものだったのではないかと想像します。
最後に、この展覧会の出口を出る手前に、ある映像による面白い演出が用意されています。
これを観たらきっと和食を食べに行きたくなるはず。是非ご覧下さい。

「京町家ちおん舎」

7月13

tion ガラスの壺から奏でられる鈴虫の声に招き入れられたのは、三条衣棚を上がったところにある「ちおん舎」。
大店の商家の佇まいを色濃く残す京町家は、すっかり夏のしつらいになっていて、足裏にひんやりと感じる網代や庭から簀戸(すど)を抜ける風、そして眩しい日光を遮る薄暗さが心地良い。
広大な敷地の中には、多目的に使用できる広間や露地や水屋を有する4畳半の茶室、大きなまな板のあるキッチン等様々なスペースがあり、同じ日にそれぞれの空間で複数の催しが行なわれていても、互いを邪魔しない許容量があります。
京町家をイベントスペースとして開放している所はたくさんありますが、特筆すべきはここの催し内容のユニークさでしょうか。
最近の予定だけでも落語会にご近所さんが集うヨガのほか、「重ね煮」という調理法の料理教室や、氷水で点てたお抹茶で楽しむお茶席体験、「星ソムリエ講座」などなど、なんだかどれもひとクセあって気になるものばかり。
防空壕の跡が床から覗ける「J-spiritギャラリー」では、メイドインジャパンの作品を展示販売していて、この大きな京町家全体が、作家(アーティスト・デザイナー)や作り手(メーカー・職人)を育てる家なのですね。
ちなみに、この辺りは祇園祭の後祭の中心地。最も近くには役行者山があります。

京町家で「粋人」を育てる「常の会」

7月6
「常の会」

「常の会」

 身内の内祝いの扇子を買いに、大西常商店の暖簾を初めて潜りました。
美しく調えられた町家の一角に京都らしい色遣いの扇子が咲き並び、品の良さが漂います。
意外に手頃な値段だったので驚きましたが、ここが製造卸のお店だからでしょうか。
もう一つの来店目的が、こちらで初開催された文化イベント「常の会」。
茶室「常扇庵」では、お茶席に不慣れな学生さんも、銘々に浴衣姿でお茶を楽しんでいました。
2階の広間では、能楽師観世流シテ方・田茂井廣道さんが、昼の部では祇園祭の山鉾に関する演目を、夜の部では扇子にちなんで構成された「一福能」を。
能としては珍しくアンコールとして「土蜘蛛」も演じて下さり、盛大に投げられた蜘蛛の糸を観客も喜び被ったまま楽しんでいました。
会が終了した後も多くの人が残り、能楽師さん達のユーモラスで分かりやすいお能と扇、面に関するお話に耳を傾けていました。
こんなに盛りだくさんな内容なのに、参加費2000円で本当にいいんでしょうか?
謡をたしなんでいたという同商店の創業者・大西常次郎さんは、近所の人をこの家集め、毎晩サロンの様に楽しんでいたといいます。
そんな「粋人」が、今後も生まれていきますように。
次回の「常の会」は12月の中旬との事ですが、祇園祭に向けても様々な催しが予定されています。詳しくはお店のフェイスブックをご覧下さい。

茶道資料館「茶箱を楽しむ」

2月24

sado 茶道資料館の新春展「茶箱を楽しむ」。平日の静かな館内ながら、人の足が絶える事はありませんでした。
茶箱とは、お茶を点てるのに必要な道具を携帯できるようコンパクトに収納し、野点(いわゆる「アウトドア茶の湯」)の風情を楽しむもので、戦乱の世には武将達が陣中で、あるいは花見や紅葉狩りの席で用いられて来ました。
紐を掛けたり瓢箪型にしたりと、持ち運びに耐えうるように工夫されたデザインや、その茶箱が使われるシチュエーションを連想させる装飾、中の茶碗や道具は従来よりも小さく軽い事が求められるため、「見立て」(代用)で遊べる自由さなど、持ち主が楽しんで趣向を凝らしているのが伝わってきます。
長時間フライト中の飛行機内で茶箱を広げ、周囲の外国人乗客や客室乗務員らにお茶と菓子を振る舞い、拍手で喜ばれたという面白いエピソードもありました。
自分自身は茶箱はまだ持っていないけれど、手持ちのバスケットに茶碗や茶筅、ケーキ等を仕込み、夜桜の宴席や植物園の東屋で友人達と一服を楽しんだ事もあれば、スキー場のゲレンデで、スノーウェア姿でスキー板の上でお薄を点て、家族で冬山の絶景を楽しんだ事もあります。
またある知人のタクシー運転手さんは、車内に茶箱を供えていて、案内したお客様にお茶を点てる事もあったと聞きました。嬉しいサプライズですね。
その際にもてなした相手は、お茶の心得がある人だけでなく、お抹茶を飲んだ事も無いという人も。
日常と非日常、茶道という敷居もふっと跨いでしまえそうな装置です。
この時期に茶箱展が開かれたのも、間もなく訪れる花と新緑の季節に向けた、野点への誘いなのでしょう。
なお、茶道資料館のすぐ隣にある本法寺は琳派の祖・本阿弥光悦の菩提寺とされ、特別公開中です。併せてお楽しみ下さい。

皮革友禅染“tatt calf(たとかーふ)”

9月10

tatt まるで水彩画のように染め込まれた長財布。
明治41年に大阪の南船場で創業し、現在は京都市内に本社を持つ「浪速屋商店」が皮に友禅染の技法を施した“tatt calf(たとかーふ)”という「皮革友禅染」だそうです。
「友禅染め風のプリント」ではなく、友禅染めの高熱処理にも耐えられる様に開発された素材です。
伝統工芸品には興味があるけれど、いかにも!な和柄にはちょっと抵抗がある人にとっては、普段の小物として取り入れ易いデザインですね。
その財布を、9月9日におろしました。
なぜかと言うと、まあるく膨らんだ満月の日は、新しい財布を使い始めるのに縁起が良いと、小耳に挟んだからです。
しかも、今年の9月の満月の日は、月が最も地球に近づいて大きく明るく見えると言われるスーパームーンの日(同じく開運の大安もこの日です!)!
果たして、月の引力でお金を引き寄せることはできるのでしょうか!?

2014年9月10日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

遊狐草舎「現代の雄勝硯」展

3月24

yuko 「書」を生み出す硯・筆・墨・紙は「文房四宝(至宝)」と呼ばれ、そのもの自体も観賞の対象となってきました。
室町時代から600年もの歴史を誇り、仙台藩主・伊達政宗にも愛用され、かつては日本製硯の約9割を生産していたという宮城県石巻市雄勝町は、東日本大震災による津波で硯と共に工房や店舗も流されてしまい、現地に残る職人はたった一人のみと聞きます。
大徳寺に程近い古民家ギャラリー「遊狐草舎」では28日まで、若手デザイナーに依頼して製作された「現代の雄勝硯」展を開催しています。
シンプルでシャープなデザインの硯は、まるでスマートなビジネスマンの様な佇まいで、デスクに置いてあるだけでも端正な品があります。
もともと墨をする時の感触や香りが好きな事もあり、遊狐草舎という、柱や障子の直線と床板の柔らかな木目で構成された空間にも溶け込む様を見ていて、雄勝硯が欲しくなってしまいました。
スマートフォンケースにぴったり収まる程の薄さの硯は、古の日本人が携帯していた様に、”モバイル硯”として活用できそう。
中には、3Dプリンターでデザインを立体に起こし、それを職人が硯に仕上げたという作品も。
最先端技術で形状をそのまま再現する事はできても、硯の原料となる玄昌石の硬さや層状の目を見極めるのは、職人さんの手が記憶する経験があってこそ。
現代生活に活かせるデザイン力と職人技、インターネットの発信力の新しい相乗効果に期待しています。

小豆粥と土鍋行平

1月14

okayu 七草粥を食べてから約1週間後、今度は小正月と呼ぶ1月15日で小豆粥を頂き、厄除けや無病息災の願掛けを念押し!

お料理教室をされているマダムは、「お粥は土鍋行平(雪平)で炊くのが一番美味しい」と言っていました。
「口から蒸気が出て、土鍋だけど薄くて良く米が回る」のだそうです。
一般家庭では余り見かけなくなりましたが、「昔はどの家にもあったぐらい、よくお粥を炊いていた」といい、禅寺では今でも、毎月1日と15日に小豆粥を食す習わしがあるそうです。

和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された今、飽食の時代の中で、食べ過ぎで栄養が偏りがちな現代日本人も、外食が続いた後や海外旅行の後等に身体をリセット・お掃除するためにも、もっと日常の食卓にお粥を取り入れてもいい様な気がします。家族四人分でもお米一合くらいしか使わないので、身体にも家計にも優しいかも!?
また、土鍋行平は小さな子供の離乳食作りにも役立つともいいます。なんだか小豆粥と共に欲しくなってしまいました。

西村圭功漆工房

12月16

nisimura お茶の先生のご紹介で、上塗師・西村圭功さんの漆工房(075-202-6255)を訪ねました。
そのままインテリアとして飾れそうなモダンなデザインの茶箱や木目を生かした銘々皿に茶筅筒など、様々な作品を見せて頂きました。
離れて見ると黒一色の棗の数々も、手に抱いて眺めてみるとわずかな光を受けて微妙に刷毛目の違いが感じられます。
例えるなら、闇夜の池にほんの微かにさざ波が立ったかのよう。でも手触りはとてもなめらかで、その繊細さに吸い込まれてしまいそうです。
「漆黒」とはただ一面に真っ黒なのではなく、奥に何かを秘めているような、奥行きと艶がある色を表すのですね。
この日に合わせて設えて頂いたのでしょうか、床の間の大きな漆塗りの花器に目を奪われました。
生地を曲げて、その上から漆を何度も塗り重ねて固めたもの。漆芸の新たな可能性を物語ります。
閑静な住宅街に溶け込む築80年の町家の工房ギャラリー。ご自宅も兼ねているので、ご興味のある方は必ず事前にお問い合わせ下さいね。

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