e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

理想の住宅建築「聴竹居」

4月30

chochiku 建築家・藤井厚二が「真に日本の風土・気候にあった日本人の身体に適した住宅」を追い求めて、京都府乙訓郡大山崎の地に建てた実験住宅「聴竹居」。
自らその住み心地を検証、改善を重ね、完成形と言える第5回目の住宅であり、夏は床下や屋根の通気口を開けて風を通す事で約5度も室温を下げ、冬は隙間風を通さない様に工夫された大きな窓から低い太陽の光を居間の奥深くまで取り込めるよう、家の向きまで計算されています。
和と洋のデザインの良いところを違和感無く調和させ、かつ機能性も持たせた美意識と技術はさることながら、窓からサンルーム(縁側)を通して豊かな緑を望む子供達の勉強部屋や、配膳口で繋がった台所と食堂、洋装・和装の客人をもてなす事を考慮した客室や畳の間が一つの居間を中心に配置され、程よく区切りながらも人々が一つに集まれるような設計が何より印象的でした。家族の笑い声が聞こえてくるような、まさに理想の家。

なお、内部の撮影は特別公開時はできない(外観のみ可)ので、通常の見学日に合わせて事前に申し込んで下さいね。

『熊野(ゆや)』と「地主桜」

3月4

yuya 世阿弥の娘婿・金春禅竹の作とも言われ、能を代表する曲の一つ『熊野(ゆや)』。
能楽金剛流宗家の長男・金剛龍謹さんによる「龍門之会」で初めて鑑賞しました。

故郷にいる母の病を案じながら、清水での花見の宴で舞い、勤めを果たす平宗盛の愛妾・熊野。
面はわずかにうつむき、心の曇りを写しだしているかのようです。
鼓の音が突然の村雨を表し、雨に打たれて散る桜を母の姿に重ね、扇で受けとめる情景が美しい。
翌日、『熊野』に登場する「地主桜」があるという地主神社に足を運んでみました。
清水の舞台の近くにあり、なおかつ縁結びのパワースポットとして人気の神社のため、若い女性や外国人旅行者で混み合う中で、
『熊野』の村雨降る感傷に浸る事は叶いませんでしたが、「えんむすび祈願さくら祭」でも謡曲「熊野」を聴く事ができるようです。

地主権現の、親と子の縁を結ぶ働きのためか、宗盛から帰郷の許しを得た熊野。無事に母の顔を見る事はできたのでしょうか。

平安神宮・節分祭

2月5

daina 旧暦によると、立春は一年の始まり。その前日の節分は大晦日に当たり、この頃に年賀状を送る人もいます。
汗ばむような陽気と快晴のもと、京都の各地が節分祭で賑わい、平安神宮では宮中で行われていた年中行事「追儺式」を再現した「大儺之儀(だいなのぎ)」が行われました。
大極殿下斎場にて、方相氏や陰陽師、殿上人らが四方を祓い清め、邪鬼たちを退けてめでたしめでたし…と思いきや、今度は応天門から茂山社中の扮する邪鬼たちが再び境内に侵入!
舞いながら観客を大声で脅かし、あちこちから悲鳴(むしろ歓声?)が涌きます。
そこで裃姿の年男・年女や芸舞妓が福豆を鬼たちにぶつけて応戦、今度は完全に追い払いました。
それだけ、年男や年女には困難を打破するパワーに満ちあふれているという事でしょうか。
両手を広げ、大騒ぎで福豆を拾った後は、全国の崇敬者からの祈願が集められた「火焚串」約4万本を焚き上げる浄火を静かに眺めます。
天まで届け、みんなの願い。寒い風の中にも暖かな日差しを感じて、春の第一歩です。

八坂神社・かるた始め

1月8

karutaお正月にかるた遊びなんて、母親が若い頃の時代の話…と思っていましたが、年末のおもちゃ屋さんに様々な種類のかるた札やゲームが一角を彩っていて驚きました。
年が明けて八坂神社の「かるた始め式」を観に行くと報道陣と黒山の人だかりで、最初のうちは、両手を伸ばして撮影する人々のデジカメ画面越しに観るのがやっと。
競技かるたとは異なり、かるた姫達は勢いよく札を払うというよりは、そっと押さえるような仕草に見えました。
これは、奉納する「日本かるた院本院」が、競技的というより文化的なかるたを重んじるため、試合の勝敗よりも王朝の雅を表しているのでしょう。
かるたの団体にも、日本津々浦々、色々な組織があるのですね。例えば「京都府かるた協会」では1月20日に「京都新春初心者かるた大会」が開催されます(1月16日申込締切)。
競技かるた未経験者でも、小倉百人一首を全て暗記していなくても参加できるそうなので、興味のある方は問い合わせてみてはいかがでしょうか?

「一平茶屋」のかぶら蒸し

11月20

ippei 今月末より「吉例・顔見世興行」が始まります。その南座のすぐそばに、かぶら蒸しを名物としている京料理屋「一平茶屋」(075-561-4052)があります。
大正時代からその地に馴染んで佇んでいるためか、意外に見落としている京都の人も。

かぶらを描いた特製の染付の器のつるりとした手触りは、たっぷりのあんにかぶらが溶け込んだ、その滑らかな舌触りと巧くリンクしています。
「ぼちぼち聖護院(かぶら)も出てきましたねえ。」
夏でもかぶら蒸しを食べに来るお客さんもいるそうですが、これから迎える底冷えの季節にこそ、蕪の繊細な甘みが身体に染み渡り、きゅんと縮こまった身体をほっとゆるめてくれそう。
締めには、刻んだ三つ葉とやわらかでしっとりとしたおじゃこが載ったご飯で、お腹はぽかぽか。

京都らしいものを食べたいけど、手頃で気の張らないお店が好みの人に。予約がおすすめです。

PIECE OF PEACE

11月12

kin 幼い頃、最もよく遊んだおもちゃが「レゴ®ブロック」でした。
15周年を迎えた京都駅ビルを会場に開催された「ビルドアップジャパン レゴ®ブロックステーションKYOTO」(~11/11)では、「レゴ®ブロック」約30万ピースで720時間かけて制作したという長さ4.8mの「京都駅ビルモデル」が展示してあり、そばで覗き込む子供達に交じって、かつて「レゴ®ブロック」で遊んだであろう大人達も夢中になってカメラを向けていました。  →動画はこちら
また、同じく奈良の「法隆寺」や京都の「金閣寺」の再現もあり、これまた子供の頃に使っていたものと同じピースでできているとは思えない程の精巧さ。
これは世界遺産条約採択40周年を記念したチャリティーアートエキシビジョン「PIECE OF PEACE」(渋谷パルコにて12/3まで)のサテライト記念展示だったようです。
全長約4mの巨大ジンベエザメやサンゴ礁に泳ぐ熱帯魚、ベンチに腰かけたお爺さんに至るまで、あらゆるものが一つ一つのピースを組み合わせ、積み上げて創り出されています。
ということは、私達も世界を形作る一つのピースであるとも言えますね。

ものの価値とは?

10月23

sikunsi秋季の展示が開催中の北村美術館で、四君子苑の公開が始まりました。国の登録有形文化財である四君子苑は、春・秋共に公開時期が短い(28日まで)ので、見逃さないように訪れたいと思っています。
茶道具や骨董品、芸術品には、その由来や希少性等によって時折驚くような値段が付いている事があります。
「ものの価値」とは不思議なもので、数字や星の数で左右される事もあれば、贅沢品を持つ人を「無駄遣いだ」と非難する人が、底値を追い求め安価で質の悪いものを使い捨てにしているという場合もあります。
また、ある物が世間から見ればさほど高い評価を受けてなくても、手にした本人の目的に適い心から惚れ込んだものであれば、それも十分に価値があるとも言えます。
お金を払うという事は、それを作った会社や職人さんに賛同し、応援する投資行為であるとも聞きました。
そうなると、高いか安いか、という基準よりも用途や目的に沿っていて、「適正価格」「適材適所」を知るバランス感覚の問題でしょうか。
ものの価値が分かるようになるために、あらゆるものに「自分の眼で」触れて、そのバランス感覚を磨いていきたいと思います。

“和楽団 ジャパン・マーベラス”

8月27
音魂2012
音魂2012

空気を震わせ、身体に打ち付け、そして心を揺さぶる和太鼓のグループが9月に京都にやってきます。
福岡県飯塚市で、戦前の炭鉱労働者の慰霊の為に演奏された川筋太鼓を前身とする“和楽団 ジャパン・マーベラス”。
和太鼓を中心に篠笛・三味線・琴・尺八など本来のスタイルを活かしながら、これまでに無いパフォーマンスで竹響き(竹太鼓)も合奏します。
これまでの公演で世界17国、国内30都道府県を飛び回るなか、ブラジルの青年がメンバーに加わり、新たな展開の予感です。

全身全霊のパフォーマンスが国境を越え、世界中の人たちに「マーベラス(素晴らしい)!」と言わしめるのは、太鼓が最も原始的な楽器であり私たち人類が根底で繋がっている事を、その軽快なリズムが教えてくれるから。
熱く力強い響きは五感を呼び醒まし、文字通り私たちの心を鼓舞します。

「平清盛」展

6月18

bunpaku プレゼントコーナーでもご紹介した「NHK大河ドラマ50年特別展 平清盛」展に行ってきました!
歴史ドラマの面白さは、誰もが史実(結末)を知っている上で、その過程がどう描かれるかにあるところ。
数百年~一千年近くの時を隔てながら、それぞれの立場での正義や野心、迷いや葛藤、そして家族を思う心は現代人と変わらず、平家・源氏一門が時には大家族のように、時には若い社長が率いる中小企業の様にも見えてきます。
当展では、平家に起こった出来事をニュース形式で分かりやすく紹介しながらも、清盛肉筆の経やその息子・重盛が厳島神社に奉納したと伝わる大鎧、清盛の孫で6歳にして壇ノ浦で入水した安徳天皇の産衣と伝わる装束など、その人物の息づかいが感じられるような品々が驚くほど綺麗に修復・保存されている事に敬意を感じずにはいられません。
ちなみに、「平○○」「源××」「△△天皇」といった似通った名前が多数出てくるので、ドラマと共に楽しみたい人は、NHK大河ドラマの公式ホームページにある「登場人物相関図」をプリントアウトして行く事をおすすめします。図録は、ぜひともご自宅のテレビの傍らに。
レンタルできる音声ガイドの声は深キョン(清盛の妻・時子役)です!

2012年6月18日 | 芸能・アート | No Comments »

南座「玉三郎”美”の世界展」

5月28

minami坂東玉三郎さんが主演の舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』(~5/27)を観て来ました。
ポスターやあらすじを見て勝手に悲劇だと思い込んでいたのですが、終始くすくす笑いが沸き起こり、最後は一抹の寂しさがほろ苦い風刺劇でした。
玉三郎さんの生舞台を観るのは初めてだったので、これまで抱いていたクールな印象からは予想していなかったひょうきんな声色とコミカルな演技が新鮮。
講談の様な小気味好い口調と動作が絶妙なタイミングで繰り出される様は、まるで緩急のある川の流れのようで、きっと稽古を重ねる度に綿密に計算し尽くされてきたのでしょう。
南座では現在「玉三郎”美”の世界展」が開催中で、誰でも気軽に南座に入って見学する事ができます。豪華な衣装や素材にこだわった小道具、蒔絵を施した鏡台のある楽屋の再現を通して、日頃から美しいもの、手間をかけて作られたものに触れる事で自身の意識を高め、それを舞台で昇華する事で、劇場まで足を運んだ観客へと還元していこうという心意気が伝わってきます。
次回の坂東玉三郎特別公演は、『壇浦兜軍記 阿古屋』『傾城』の傾城二題が上演されます。

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