e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

下鴨神社の蹴鞠初め

1月6

kemari  下鴨神社の蹴鞠初めを観て来ました。
飛鳥井流の作法に則り 、毬を落とさず長く続ける事を心がける勝敗の無い遊びです。
鹿皮を裏返して縫い合わせた毬は、中が空洞で重さは100~150g程度。ほんの少しの風でも流れてしまうと言います。
サッカーのリフティングとは違い、王朝装束を身にまとい、足裏を見せないようにできるだけ地面に近い所で蹴って、毬を送る時には「ありい」、受ける時には「おう」と声を掛ける等、様々な作法の制約があるので、ラリーを長く続けられるのは、かなりの熟練を要しそうです。
この独特の掛け声は、それぞれが毬の中にいるという神様の名前を指しているのだとか。
白峯神宮や一般公開時の京都御所など、寺社で奉納される事の多い蹴鞠ですが、「依頼があれば一般のご邸宅でも致します」とのこと。
サッカーW杯やオリンピックでの前座でもやってくれたら、国内外の方から喜ばれるんじゃないかな~なんて、ちょっと期待してみたり。
なお、「蹴鞠保存会」では、白峯神宮にて毎月二回日曜日に練習を行っているそうです。
下鴨神社の蹴鞠初めの動画はこちら

西村圭功漆工房

12月16

nisimura お茶の先生のご紹介で、上塗師・西村圭功さんの漆工房(075-202-6255)を訪ねました。
そのままインテリアとして飾れそうなモダンなデザインの茶箱や木目を生かした銘々皿に茶筅筒など、様々な作品を見せて頂きました。
離れて見ると黒一色の棗の数々も、手に抱いて眺めてみるとわずかな光を受けて微妙に刷毛目の違いが感じられます。
例えるなら、闇夜の池にほんの微かにさざ波が立ったかのよう。でも手触りはとてもなめらかで、その繊細さに吸い込まれてしまいそうです。
「漆黒」とはただ一面に真っ黒なのではなく、奥に何かを秘めているような、奥行きと艶がある色を表すのですね。
この日に合わせて設えて頂いたのでしょうか、床の間の大きな漆塗りの花器に目を奪われました。
生地を曲げて、その上から漆を何度も塗り重ねて固めたもの。漆芸の新たな可能性を物語ります。
閑静な住宅街に溶け込む築80年の町家の工房ギャラリー。ご自宅も兼ねているので、ご興味のある方は必ず事前にお問い合わせ下さいね。

上賀茂神社「鎧着初式」

11月26

yoroi 先週末の上賀茂神社は、結婚式に七五三、そして「鎧着初式」で賑やかでした。

鎧廼舎(よろいのや)「うさぎ塾」が主催する「鎧作り教室」で手作りされた鎧兜を着たちびっこや大人武者達が練り歩いてお披露目する「鎧着初式」。
武者行列は、母の手に引かれ足元もおぼつかない幼児からハーフの女の子、アメリカ人留学生に髭を立派に蓄えたお年寄りまで、色づき始めた木の葉よりも華やかです。
組紐で編まれたその気品ある色遣いと美しい立体感に、鎧兜もまた伝統工芸品である事を改めて実感しました。
平安鎌倉期の伝統儀式「鎧着初式」に倣い、代表の子供達が一人ずつ、烏帽子を外した頭に兜を被せられ、緒を締めます。
新たな装いとなった子供は神前にて、それらを作ってくれたご両親や大人たちへの感謝の言葉を捧げます。
子供や孫が健やかに成長するように、と心を込めて作られた鎧兜を身にまとい、さっきより引き締まった表情で歩く姿を見ると、自分も将来子供に手作りの鎧兜を贈りたいと思いました。

いつか成人するまで、いやその後々も、この先の人生にはきっと色んな事が起こるかもしれません。
でも大丈夫、その鎧兜がきっと守ってくれるよ。  
鎧着初式の動画はこちら

「邦楽アンサンブル みやこ風韻」

11月11

fuin 今月末まで開催されている「京都文化祭典・京都の秋 音楽祭」のプログラムのうち、「邦楽アンサンブル みやこ風韻」の公演に行って来ました。
主に日本の伝統楽器である箏や三絃、尺八に琵琶等で構成された、言わば「邦楽のオーケストラ」です。
京ことばで歌う「みやこ・キッズ・ハーモニー」の愛らしさ、9本の尺八のみで演奏する「竹の群像」、登場回数は少ないものの他に類を見ない鼓の効果的な合いの手。
普段は何かの伴奏の様に、単体で聴く事の方が多い和楽器ですが、こうして集合体として聴くと、それぞれのパートが持ち味を活かして共鳴し合うので、楽器が持つ個性や音色の美しさがより際立つような気がします。初心者にはむしろ分かりやすく、聴きやすく感じられるのではないでしょうか。
佐々木千香能さんの歌声や大谷祥子さんの箏、藤舎理生さんの篠笛など、「ほんまもん」の放つ音は艶があって、濁り無く澄み渡るように響きます。
美しくしなやかな踊りが、日々のトレーニングで鍛えられた肉体から生み出されるように、彼女達の紡ぎだす音もまた研鑽の積み重ねに裏付けられている事を物語ります。
人の息や指先に込められた力が音となって発せられ、指揮者によってそれらが束になり大きなうねりとなる様を場の空気ごと味わえるのは生演奏ならでは。
「みやこ風韻」は、2014年の1月25日と11月14日にも公演が決まっているそうです、その他のスケジュールについてはホームページもしくは075-371-8972までお問い合わせください。

旧武徳殿

10月23

butoku 22日に時代祭が行われた平安神宮を中心に、美術館や図書館、イベントホールなどが立ち並ぶ岡崎は、京の文化ゾーンと言えます。
その中で、観光スポットでないゆえに、ちょっと足を踏み入れにくかった武道センターで、先日「形柔道」の世界選手権が日本で初開催と聞いて、潜入してみました。

武道センターの隣にある旧武徳殿は、国内唯一の武道の専門学校だったもので、平安宮の大極殿を模し、今では入手不可能とされる巨大なヒノキ材を用いて建設された明治期の大規模木造建築で、国の重要文化財に指定されています。
「平安道場」とも呼ばれるこの旧武徳殿は、平成19年には東儀秀樹さんによる雅楽のチャリティコンサートが開かれるなどの保存運動の甲斐あって、老朽化や修復の維持管理困難による廃棄処分の危機から逃れ、青蓮院の将軍塚に移築、大護摩堂として再生される事が決まっています。平成26年7月の完成を目指して工事が進められているそうです。

なお、現在の旧武徳殿の外観だけは自由に見学する事ができます。

日本と中国

10月15
manpuku

宇治の黄檗山万福寺

 初めての中国旅行から帰国しました。
最近の政治情勢から、現地の中国の人々と上手く交流できるかちょっぴり心配でしたが、それは全くの杞憂に終わりました。
とりわけ台湾の対岸に位置する福建省の廈門市は、昔から茶葉の貿易で栄えた街で、お茶に関するお店や喫茶文化が盛んな土地柄だったため、日本茶道のお点前を簡単にお披めしたところ、現地の人々は興味津々!
もともと緑茶も紅茶も麺類も中国から世界に広まっていったもの。共通の文化が世界各地で独自の文化に育ち、それがまた互いを惹き付ける潤滑油となっているのです。
一碗のお茶という文化を挟んで、賑やかで楽しい時間が流れていきました。

出国直前に、万福寺での「月見の煎茶会」に参加してみましたが、今年没後250年を迎えた煎茶道の中興の祖・高遊外売茶翁は、自ら僧籍を離れて庶民にお茶を売り、振る舞いながら禅の教えを説いたといいます。その境地に少し触れられたような気がしました。
世界平和のための秩序は必要ですが、もっと大切なのは、相手をもっと知りたいという気持ちや、互いの違いを理解しようと歩み寄る姿勢なのではないかと思います。

お寺でトイピアノ演奏会

9月24

piano 大徳寺玉林院でのトイピアノ演奏会に行って来ました。
40cm四方くらいの小さな小さなピアノは、おもちゃとは思えない程、音の鳴り始めは金属の様に澄んで鋭く、その後はコロコロとした丸みも感じるような、やわらかな響き。それは、木琴のものとも、オルゴールのものとも違う繊細な音色でした。

ここが会場となった経緯には幾つかの理由があり、まずは京都出身のピアニスト・寒川晶子さんが玉林院の保育園に通っていたという縁のほかに、「トイピアノの為の組曲」を作曲したアメリカの音楽家・ジョン・ケージ氏が、コロンビア大学で仏教学者の鈴木大拙氏に「禅」について学んだという共通点があります。
ジョン氏がそうであったように、即興演奏では本堂の外から聞こえてくる葉擦れや、にわかに勢いづいたかと思うと急に静まる蝉の鳴き声、観客席にいる赤ちゃんの声にも寄り添うかのように、じっと耳を澄ませながらの演奏が続きました。
ふと彼女の両手でトイピアノが本堂から縁側に持ち出されると、観客もつられて外に出て目を閉じ耳を傾けます。

「自然の中でピアノを弾いてみたい。」と話していた寒川さん。
グランドピアノに比べて持ち運びやすいトイピアノなら、夢ではないかもしれません。
京都のどこかでまた、こんなコンサートが開かれますように。

松殿山荘

7月22

imayou 宇治市の木幡に、財団法人松殿山荘茶道会が維持保存する広大な庭園と小間(草庵式)・広間(書院式)17の茶室を備えた「松殿山荘」があります。
松殿山荘は院政期の関白・藤原基房の邸宅跡で、大正~昭和にかけて弁護士で数寄者であった高谷宗範が自ら設計し作り上げてきた建築郡で、2階の眺望閣からは豊かな緑と、京都西山や比叡山に生駒山等を見渡せるとは、なんとも贅沢。
日本と西洋の文化が溶け合う空間には、随所に「方(四角)」と「円(丸)」のモチーフが見られ、「心は円満に丸く行いは常に正しく四角く」という方円の考えを目に見える形で説いています。
自然の中に身を委ねながらもどこか緊張感がある方が、日本人にとっては心地が良いのでしょう。
その30畳もの大書院を舞台に、狩平安~鎌倉期に流行した歌謡「今様」を、公募で参加する男女の歌人が狩衣姿で詠み合う「今様合(いまようあわせ) 松殿十五ケ日」が、この松殿山荘で11月1~15日に開かれます。
現在、「梁塵秘抄」の「遊びをせんとや生まれけむ…」に代表される様な今様の歌や、出演参加する歌人を募集しています。もちろん見学も可能です。
お問い合わせは、090-3496-9383(日本今様歌舞楽会・太田)まで。

千家十職

6月25

CIMG4693 表千家北山会館の「千家十職展」を観に行ってきました。
代々、千家好みの茶道具を製作してきたそれぞれの家では、次の、そのまた次の代の為に良質な陶土や竹林を確保したり、逆に遥か先代の作品の修理を依頼されたり、作品を表面的に眺めただけでは分からない、人の目に触れないところにこそ真摯に心を砕いている姿勢を垣間見ることができます。
戦争や跡継ぎの早世など、時代の潮流の中で家筋を存続させるだけでなく、伝統と品質をも守り続けなければいけないというプレッシャーは相当なものでしょう。

茶道に馴染みが無い人にとっては、足を踏み入れにくいかもしれませんが、依頼主の意向と茶の湯の世界のルールというそれぞれの制約の元に製作された茶道具は、作家の意図が自由に創作された芸術作品と比べると、「用の美」を感じる分、分かりやすいとも言います。
「お茶の知識は無いけれど、見てみたい」という人は、可能なら茶の湯体験をしてから観に行くと、それぞれの用途などが分かってより楽しめるのではないでしょうか。

2013年6月25日 | 芸能・アート | No Comments »

「二葉葵展」

5月21

afuhi 今年の葵祭も快晴のもとに無事終了し、週末には上賀茂神社で「二葉葵展」が開催されました。
境内では「第3回葵・手づくり市」や渉渓園の特別公開(毎月第1、第3日曜)も同時に行われ、小雨にも関わらず多くの人が会場の庁屋に立ち寄っていました。
「二葉葵展」は、葵祭行列を飾る葵の葉が年々減少しその再生を目指す「葵プロジェクト」に賛同した表具師、左官職人、大工、空間デザイナー等の若手の職人集団「景アート」が主催しています。
宮司が作られた茶碗を初め、葵を模った皿や鏡、木のぬくもりを掌で感じるおもちゃの様なオブジェやテレビボード、ライブペインティングもありました。
葵の葉も、若手の「ものづくり」も、育て根付かせていくためには、職人だけではなく私たちも美しいものや丁寧に作られたものにたくさん触れ、作り手と共に技術と審美眼を養っていく必要があるように思います。
今年はあいにくの雨で、ならの小川のせせらぎを楽しむ川床茶席は見当たりませんでしたが、来年こそは体験してみたいと思います。

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