e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

町家のゲストハウスで同窓会

10月31

haru 学生時代の仲間と同窓会を開く事になり、集合した場所は古川町商店街の中にある「宿はる家Kyoto」という町家のゲストハウスでした。普段は一部屋ずつの貸出営業のようですが、こちらが大人数のため貸し切りとなりました。
備え付けの鍋や器の他に、持参した調理器具を持ち込み、商店街やその付近で買い出し。
自分達で鍋を作れば、お店を予約するよりも手頃で、二次会の店を探して寒空の下をうろうろする事もありません。
何より、「子供を預けられるか、それとも連れて行けるのか」と参加を躊躇しがちな子育て世代の人にとっては、他人の目を気にする事もなくすごせて、子供達はふかふかの布団の上で大喜び。
また、遠方からの参加者は飲んでもそのまま泊まれるので楽ちんです。
各部屋は「客室」というよりまさに「布団で寝るための部屋」。そう広くはありませんが、近くの銭湯に行ったり、商店街の中のバルに飲みに行ったり、知恩院での朝のお勤めに参加したり、はたまた本棚の美術書や漫画を畳の上に寝転んで読んだりと、京都での学生暮らしを連想させるような時間の使い方を楽しみたいところです。
商店街の中には、似た形態の旅館が点在しているようで、数世帯でそれぞれを行き来しても楽しいでしょうね。
紅葉の名所からも近い東山エリア内なので、これからの季節は人気が出そうですよ。

2016年10月31日 | お店, 町家 | No Comments »

商売人の大邸宅

10月17

rakuto 川端通りの七条~五条間を通ると東側に見える並木は棕櫚でしょうか、その後ろには柏原家住宅(洛東遺芳館)と呼ばれる大邸宅があります。
江戸期には更に広大な敷地を誇り、間取り図には蔵が5つも見られました。
円山応挙や歌川国芳など誰もが知る絵師の墨画や、指先程の雛道具に施された蒔絵など、毎春秋ごとに公開出来る収蔵品がある事を思うと、当然のことかもしれません。
婚礼調度のありとあらゆる小物に入った四つ目結びの家紋に見覚えがあると思ったら、やはり北三井家の娘がここに嫁いでいるとのこと。前回に引き続き、こちらでも三井家に繋がりがありました。
平日だった事もあり他に見学者がいないため、往時の暮らしに想像を巡らせながら、脳内で「豪商の娘ごっこ」もできてしまいます。
どの部屋からも庭が楽しめるよう、蹲などが巧みに配置されるなか、最も視界が開けて美しい庭を眺められる部屋には、大人が両手両足を広げても足りない程に重厚な仏壇が据えられていました。まるでご先祖様達に手入れした庭を楽しんでもらうかのような構図です。
これまでの財はご先祖様がお客と積み重ねてきた信頼の証、婚姻によって結ばれた横の繋がり。特に人の繋がりを大切にする商売人の姿勢が現れた邸宅でした。
すぐ近くにある「お辧當箱(べんとうばこ) 博物館」も内容と建築共に非常に面白いので、あわせてどうぞ。

『祇園祭・犬神人の「武具飾」

7月25

bugu 快晴下で後祭巡行や花傘巡行が行なわれ、祭神も八坂神社へと帰還し、残る祇園祭の行事もあと僅かとなりました。
毎年一度しかない祇園祭で、今年こそ見てみたいと思っていたのが、「武具飾」(16、17日)でした。
1974年まで、祇園祭の神幸祭・還幸祭には中御座の警護役として、弓矢町の町人による武者行列が参列していたといい、当時の甲冑が東山区弓矢町の松原通に面した商店や民家の軒先で展示されているというもの。
そもそも、弓矢町内には、「犬神人(いぬじにん)」と呼ばれ、神社領の清掃や警護、雑役を務めていた人々が近世になって移り住み、ここで神事や魔除けに使われる弓矢や弦走り(つるばしり。※鎧の胴体の正面部分)、僧の帽子などの皮製品を作って行商していたそう。
神輿を警護する犬神人の姿は、「洛中洛外図屏風」(上杉本)にも描かれているとい
うのです。
町会所の「弓箭閣(きゅうせんかく)」にも、多くの鎧兜や武具が蔵出しされ、古地図や武者行列を収めた古い写真に囲まれていました。
これまでにも甲冑の愛好家等から武者行列を復活させないかという声が何度か来ているそうですが、
「もともとは虫干しを兼ねて町内だけでやってたさかい、大ごとになって人がようけ来たら、対応できひん」と、何とも京都人的な発言。
観光イベントとしても大いに魅力的ですが、夏の盛りにこれらの重い武具14領を蔵から出し入れし、一領ずつを10カ所にしかるべき手順で飾るのは、高齢化が進む町内には体力的にも経済的にも負担がかかる事は目に見えています。
江戸時代からの「文化財級」とも言われるその甲冑は、行列を終える度に岐阜から専門の職人がメンテナンスに来るほど、大切に伝えられてきました。
博物館での保存も薦められるものの断り、町内の宝として自分達で守っていきたいという葛藤もみられます。
来年もまた、こうしてひっそりと行なわれるのでしょうか。

花紅柳緑

4月5

toko 春爛漫。先週土曜の京都は絶好のお花見日和でした。翌日曜日も雨は最小限に留まってくれて、は今も元気に咲き続けてくれているようです。
それにしても桜と同じだけ人がいます。
それぞれの方の地元にもきっと桜の美しいところはあるのでしょうが、わざわざこんな小さな古都に足を運んで観に来られるのは、やはり花の背景となる景色や建造物の趣によるのでしょう。
関東の方は「地元の桜まつりもお祭りの様で楽しいけれど、京都のしっとり感とは全く逆」とのこと。この「しっとり感」に妙に納得してしまいました。
まだ今年は桜並木を車窓からでしか観ていないので、ゆっくりと花を愛でられていないと嘆いていたら、ある町家の床の間で出逢えました。
これは山桜なのでしょうか、町中で一斉にふんわりと咲く染井吉野とは対照的で、枝ぶりがごつごつと野趣そのもの。
たった一枝なのに桜ってこんなに力強いものだったかと、薄明かりの中で吸い込まれるように眺めてしまいました。
掛け軸の字は「柳緑花紅(やなぎはみどり はなはくれない)」でした。
「花紅柳緑」を転じたもので、「自然のあらゆるものがそのままで真実を具現しているさま」を表しているそうです。
もう一つの桜は、この中にありました。

2016年4月05日 | 町家 | No Comments »

日本の手仕事を日常に

3月29

ruban  春に新生活を迎える人、または模様替えで気分を新たにしたい人は多いと思います。
部屋の中に和風のテイストを加えたいと思ったとき、最も取り入れ易いのが生活雑貨ではないでしょうか。最近訪れたお店をご紹介します。
明治45年創業、京都で生活用品卸しを営んできたカワタキが、「川端滝三郎商店」を初めて構えました。錦市場にもほど近く、京都のみならず日本全国の手仕事を日常に取り入れる事のできる40社以上もの調理器具や雑貨が揃っています。
また、そこから麩屋町通りを北へ上がって行った「瑠万Ruban」は、カフェ利用もできます。内外に数寄の風情あふれる町家で、古美術商をされていた方のものと聞いて納得。
高級過ぎずカジュアル過ぎず、女性目線だけれど「カワイイ」に傾寄らない塩梅の品揃えで、良いものを見てきた若い女性店主が、人にお勧めしたい物を紹介しているという印象を受けました。
店主本人も出産したばかりという事で、赤ちゃんグッズやこだわりの調味料も見受けられ、水引教室夏着物と浴衣の販売会等も企画されています。
日常生活においては、安価で気安く使える工業製品も使用していますが、人の手で作られたものは素材も様々で手触りも異なり、物を大切に扱う気持ちが美しい所作を生み、「心を潤す」力があると感じます。

2016年3月29日 | お店, 和雑貨, 町家 | No Comments »

隠れ老舗

2月23

torihatu  寒い夜は、仲間内で肩寄せ合ってつつく水炊きが何よりのごちそう。今回は「本家鳥初」を利用しました。
河原町三条より一筋上がった細い姉小路通りを西に入った目立たないところにあるため、創業から120年は経つという歴史がありながら、「こんな店あるなんて知らなかった!」という声をよく聞きます。長年京都に住んでいても、たまにこんな隠れ老舗に出逢えるのです。
一筋入っただけで街の喧騒が遠のき、暖簾をくぐれば別世界、繁華街のど真ん中に居る事など忘れてしまいます。
まずは薬味としょうが汁を加えた白濁スープで身体を温めると、かじかんだ指先に感覚が戻っていく心地よいしびれ。
綺麗に盛られた白菜は、軽くしゃぶしゃぶして繊維感を楽しむも良し、乳白色のスープに漂わせてとろとろの食感を味わうも良し。
骨付きのかしわは程良い歯応えと香りを醸し、「スープが美味しい」「白菜が甘いね」と各卓から聞こえて来る声にも一安心。
広間や個室、離れもありますが、何だか一日観光を終えて旅館の一室に辿り着いたかのような風情があります。
スープをたっぷりと吸い込んだ雑炊をよそう中居さんの手元を見ながら熱燗を頂いていると、布団を敷いてもらいたいくらい。
帰り際に、暖簾の隙間から見える広い厨房の大きな釜にも、重ねられた歴史を感じました。
「古き良き京都」を思い起こさせる風情が、ここにはまだ残されています。

2016年2月23日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

「あさ」生家跡とその周辺

2月8

asa 堀川通りに面するホテル「ルビノ京都堀川」が、現在放映中のNHK連続テレビ小説の主人公のモデル・広岡浅子の生家跡に建っているとして、話題になっています。
当ホテルで開催中のパネル展そのものは、朝ドラ関連というよりは、その時代の界隈の様子を収めた写真が主で、出水三井家の庭園にあったとされている石灯籠や庭石は裏手の駐車場の片隅にぽつんと建つのみですが、ロビー内で自由に持ち帰れる「SANKEI EXPRESS特別編 九転十起の女 広岡浅子伝」(産経新聞大阪本社編集局編集委員 石野伸子著)は、何故現代人から忘れ去られていた女傑が朝ドラの題材として起用されたのか、晩年に遺言をしなかったのは何故か、浅子の人生を詳細に掘り下げていて、一読の価値があります。
ルビノ京都堀川に残る石灯籠を確認できたら、帰り道はそのまま油小路通りを散策してみて下さい。
住宅が並ぶ通り沿いに琴や三味線の老舗があったり、もしかしたら浅子女史が駆けまわっていた頃からあったのではないかと想像力を掻き立てられる様な、時を経た風格のある町家が点在していたりして、静かに胸が踊ります。
観光地化されていない、新旧入り混じった京都の素の姿もまた魅力。
なお、主人公の姉が嫁いだ大坂の両替商・山王寺屋のモデルとなった天王寺屋五兵衛の遺構が残る松殿山荘が見学会を予定しています。ご予約はお早めに!

2016年2月08日 | イベント, 町家 | No Comments »

0歳からの伝統工芸品

12月8

aeru 『0から6歳の伝統ブランドaeru』の京都直営店『aeru gojo』が先月オープンしたとあり、テレビやネットショップで気になっていた商品を実際に観てみたくて、足を運んでみました。
お店の場所は駅前や繁華街には無く、いわゆる碁盤の目の中。絹糸・綿糸を扱う明治4年創業の「糸六」のある京町家の1階にありました。
「(和菓子の)末富さんの向かい」と言った方が分かりやすい人もいるかもしれません。
帳場の様な空間に、子供から大人まで和様を問わずに使えそうな漆塗りのお食い初めセットや、「こぼしにくいコップ」の京都限定品などが並びます。
正直なところ、「ちょっとしたプレゼント」にするには、なかなかのお値段。
売り手と買い手、職人さん達にとって三方良しとするには、やはりそうなるのでしょうが、「一生ものを贈る」という意気込みであれば、むしろお手頃な価格設定だと言えるかもしれません。もちろん、修繕して使い続ける事も可能。
看板商品とも言える「こぼしにくい器」は、特に砥部焼のものは電子レンジや食器洗い洗浄機、オーブンにも入れることができ、子供だけでなく、赤ちゃんを抱きながら片手で離乳食を食べさせる事の多いママさんにとっても安定感があって使いやすいそうです。
しばし迷った結果、「愛媛県から手漉き和紙のボール」を、甥っ子へのクリスマスプレゼントにする事にしました。
まだ赤ちゃんである彼にとっては、初めて触れる和紙となるかもしれません。
指で突き破って穴だらけにしても、中に入っている鈴の音の変化を楽しんだり、職人さんに漉き直してもらう事もできるそうです。
触る事が大好きな赤ちゃん。和紙の手触りや籐の木で編まれた形から生まれる不規則な動きなど、ゴムやプラスチック製のおもちゃには無い楽しさを感じてくれるかもしれない。
喜んで遊んでくれるといいな。

2015年12月08日 | お店, 和雑貨, 町家 | No Comments »

京都リピーターの常宿

10月13

kawa  京都が大好きだという知人夫婦が何組かいます。
そのうちの一組の熟年夫妻は東京在住で、いつも同じホテルを取り、特に予定も立てずに京都を訪れては、思いつくままに出かけたり部屋でのんびりしたりして過ごしているそうです。
もう一組は30代半ばの働き盛りで近畿在住。こちらは毎度異なるホテルを予約していたそうですが、今回は気分を変えて「川嶋旅館(075-351-2089)」という宿にしてみたというので、覗かせてもらう事にしました。
四条通りから一本南に下がった綾小路通りは、仕事帰りに立ち寄るバルの様な飲食店が多く、学生の多い繁華街のチェーン店とは違って濃い賑わいをみせていました。
予約した部屋が一泊8500円と聞いていたので、正直なところボロボロの旅館を想像して向かったのですが、目の前に現れた宿は、明治34年創業の風格を感じさせる佇まい。
確かに階段はかなり急で、畳を踏みしめると少々足が沈む感触はありますが、町家らしく床の間や違い棚のしつらい、坪庭の眺めも楽しめます。テレビやエアコンも完備。
ただし、各部屋の仕切りは襖一枚なので、貴重品や手荷物の管理は自己責任。
お風呂に向かう半屋外の廊下を通るため、冬は寒さに耐えなければなりませんが、それでも静かで交通の便や錦市場に歩いて出かけられるという立地の良さを考えると、京都リピーターにはありがたい旅館だと言えるでしょう。
これから迎える紅葉の観光シーズン、宿の手配はお早めに!

2015年10月13日 | 町家 | No Comments »

「音を織り、織りから聞く」

9月24

piano 大徳寺に程近い多目的スペース「遊狐草舎」にて、「織物とピアノ」をテーマとした映像とひょうたん笛、手回しオルゴールとトイピアノの音色を味わう催しがありました。
中国雲南省の徳宏州に暮らすタイ族はその昔、夜に男子が想いを寄せる相手の家の前でひょうたん笛を奏で、女子は機織りの音で自身の人柄を表現したといいます。
織り上がった品は結婚の際にお披露目され、その織目や端の処理の美しさを見て、花嫁の器用さや、どのタイミングで男性が訪れていたのかを推し量るのだとか。
そう語るおばあさん達が織機に腰掛け、両手両足を巧みに動かして独特のリズムを奏でながら織る姿を映像で観ていると、どこかパイプオルガンの演奏光景に似たものを感じます。同様にピアニストの寒川晶子さんも、織り姿がピアノを弾いている様に見えたと話していました。
このテーマに合うとして提供された藤田織物の帯は、今主流の機械では無く職人の手作業で立体的な造形をしており、それを寒川さんが「五線譜に書き込まれた音楽のよう」と表現していたのが、とても腑に落ちました。
作者が空けた穴に応じて、ころころと涼やかな音を響かせる手回しオルゴールもまたしかり。
「演奏会」「音楽会」と聞くとどこかのホールで、観客が身体全体で聴く事に集中するのも好きですが、人の息遣いや虫の声が聞こえてくるような小さな空間で、座布団に腰をおろしながら繊細な音を紡ぎだしたり実験的な試みができるのも、これからのクラシック界に面白い広がりをもたらしてくれるのではないでしょうか。

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