e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「大市」に聞いてみた

11月21

maru お品書きは〇鍋コース一択のみという「すっぽん料理 大市」。
暖簾を潜った瞬間から、すっぽんの出汁で空気まで染まっているのではと思うくらいの濃厚な香りに圧倒されました。

坪庭のある渡り廊下を通って小部屋に入ると、低い天井の数寄屋造りの部屋には床の間に掛け軸が掛かっています。
まさしく「京都に昔からあるお店」の風情です。

ごうごうと湯気の上がる鍋の前で、仲居さんがてきぱきとした手つきで取り分けてくれます。
おそらく臭み消しと思われるお酒と生姜がふんだんに使われているようで、スープも濃い!
ぷりぷりとしているのは甲羅周辺にある「エンペラ」という部位でしょうか、身とともに食感はフグに似ていますが、より「肉を食べている感」があります。
リクエストした家族は、「うん、うん、うまい」と頷きながらハフハフと、ひとくち大の骨もしゃぶるように食べていました。

熱々の状態で食べるために2度同じ鍋が運ばれ、締めにオレンジ色の黄身が浮かんだ雑炊となって運ばれてきました。
大きな餅にかけて食べる雑炊も、濃厚な味わいで食べ応え十分。

そこで、ここに来るからには、ぜひお店に尋ねてみたいことがありました。
このお店をモデルにしているという漫画の3巻に収録されている「土鍋の力」の回を読んで予習してきたので、いざ仲居さんに質問をぶつけてみました。
「あ、あの…既に色んな方から尋ねられている事かと思いますが…漫画『美味しんぼ』に描かれているように、空の土鍋に水を張っただけですっぽんの出汁が溶け出すことってあるんでしょうかっ・・・!?」
「ありません。」
鮮やかな即答でした。
「毎日1000℃以上のコークスで土鍋を炊いてますから…鍋の寿命は3か月、もって1年というところなんです。」
漫画なので、何十年もすっぽん出汁を吸い続けたまま奇跡的に残っているという土鍋というエピソードは、だいぶ盛っているというということですね。
「かすかにすっぽんの味がするというのはあるかもしれませんが…」

お店を出る頃には、次のお客が囲炉裏で暖を取りながら談笑されていました。
「京都っぼさ」を売りにしている観光客向けのお店には真似できないだろうなあと思いながら、すっぽんのコンソメスープをお土産にしました。
オンラインショップもあるようですよ。

2023年11月21日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

島原・夕霧太夫の扇屋はどこ?

11月8

tayu 毎年11月の第2日曜日は「夕霧供養」が行われます。
寛永の三名妓の一人、京都・島原の「夕霧太夫」は清凉寺の付近に生まれ、その跡地には石碑が建てられています。
夕霧太夫は島原の「扇屋」に所属し、扇屋が大坂新町に移る際に伴いました。

大阪の大坂新町には、往時の大門跡や扇屋の跡地に石碑があり、また浄国寺には墓碑も建てられています。
しかしながら、京都の島原に扇屋の形跡はどこにもありません。

遊里に詳しい知人たちや、そのつてを辿ってみました。
すると、「自信あまりありませんが…」と古地図の画像を見せて下さいました。
江戸前期に成立した、遊里についての百科事典とも言える書『色道大鏡(しきどうおおかがみ)』のもの。
揚屋町の古地図で、「隅屋」の2軒南隣に「扇屋」の文字が確認できました。
もしかすると島原の扇屋は、拡張した現在の角屋の一部、もしくはそのすぐ南にあったのかもしれません。

専門知識は持ち合わせていないので想像の域を出ませんが、思わず久々に「角屋もてなしの文化美術館」の2階を予約して、角屋の周りも散策してきました。
件の古地図の箇所や角屋付近は民家等なのでここに掲載するのは控えますが、周辺には島原大門輪違屋(※通常非公開)を始め、歌舞練場跡記念碑きんせ旅館(※夜間営業。要事前確認)、島原住吉大社ご神木の大銀杏などが住宅地の中に点在しています。
ほとんど石碑のみですが新選組ともゆかりのある地域です。想像を膨らませながら、歩いてみてはいかがでしょうか。
(※画像は過去の太夫道中のものです)

本当の贅沢とは

4月3

han
白木が新しい高瀬船が停泊する史跡・一之舟入の高瀬川畔に、を眺めながらお食事できる素敵なテラス席を教えて頂きました。
飲食店を営む町家の2階「帆-HAN-」です。

カフェタイムのメニューはロゼシャンパンと濃厚な自家製プリンのみ。
春風を感じながら、外の川辺に見えるのは、記念撮影を楽しむ振袖姿の女の子たち。
舞い散る桜の花びらのなかでの嬉しそうな笑顔はこちらにも眩しいものでした。

絶好の満開のタイミング。
日本人の思う「贅沢」とは、お金をかけてめいっぱい飾り立てる事ではなくて、

「移ろう自然が美しく輝く今この瞬間を味わう」
「何もしない余白」
にある気がします。

昼会席(3日前までに要予約。8000円)とカフェタイム(14~17時)に利用できるのはオープニング期間の4月27日まで。
テラスの側にはワインと国産ウイスキーを扱うバーカウンターもあり、
これからの新緑の季節や夏の夜には、夜風にあたりながら飲むのも気持ち良さそうです。
オープンな川床とも違う隠れ家のような風情は、誰か大切な人を連れて行きたくなるかも。

2023年4月03日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

うさぎの宇治で年明け

12月28

manpuku 萬福寺にて『黄檗ランタンフェスティバル』が2023年の1月末まで開催されています。
訪れた時は平日の晩だったので、境内も駐車場もとても空いていました。
小籠包や綿菓子などの軽食やキラキラ小物を販売する屋台と即席の座席、日本の縁日とはひと味違うちょい派手な遊具もご愛敬。

中国風のBGMと赤、黄、紫…のカラフルなランタンに溢れた境内を回遊していると、時折色の無い光と闇だけで浮かび上がる伽藍を抜ける瞬間もあり、本来の禅宗寺院としての厳かさが際立ちます。

昼間訪れた人は「中華街みたいだった」そうですよ。
年が明けて華やかな新春風情を楽しむのもいいかもしれませんね。(動画はこちら)

さて、年末の大河ドラマ最終回で承久の乱の地の一つとして記憶に新しい「宇治」。
宇治神社には、祭神「菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)」が河内の国からこの地に向かう道中を一羽の兎が振り返りながら導いたという故事にちなんでうさぎをモチーフにした授与品があります。
世界遺産宇治上神社にも「うさぎおみくじ」があるのだとか。

朝は卯年のお参り、昼は宇治茶を楽しみ、夜は萬福寺でそぞろ歩きと、そんな新年のスタートを宇治でを切るのはいかがでしょうか。

駅の喧騒から離れて楽しむお茶

10月18


aotake

京都駅からそう遠くない距離感、落ち着いた風情でゆっくりとお茶を飲みたい。
そんなお店がありました。
京都駅から北東へ徒歩約8分の「aotake」です。

京都に古くから住む人の家を訪ねるように狭い玄関に入り、引き戸を開けて中へ。
22年に農林水産大臣賞玉露の部で受賞した京田辺市の茶園の手摘みの宇治玉露などの日本茶や中国茶など、四季折々の厳選された美味しいお茶やタルトを頂くことができます。
気軽に手に入るスナック菓子なら、家の冷蔵庫から出したお茶やジュースで流し込むようにぺろっと食べてしまいますが、旬の果物がぎゅっと詰まっていて手間暇かけて作られた食べ応えのあるお菓子には、それに見合った飲み応えのあるお茶や器がやはり合うような気がします。

2階の座敷では、お茶会や日本茶の淹れ方のプライベートレッスン、古建具活用講座などこれまで様々な催しがされてきたようです。
その中で「ふて゛文字教室」に興味があったので、参加してみる事にしました(詳細はまた後日)。

お店の隣の古民家前には「七条仏所跡」の駒札があり、近隣には紅葉さんぽが楽しめて煎茶道にゆかりのある渉成園もあります。
席数に限りがあるので、4名以上での利用の場合には、事前に連絡を入れることをおすすめします。

料金比較サイト初体験

9月22

ms
わざわざ京都市内のホテルや旅館に泊まるという機会が余り無いのですが、最近は高級ホテルが京都市内ににょきにょきと生え続け、お寺が運営する宿坊からコンドミニアム、町家の一棟貸し等、本当に選択肢が広がり、また競争も激しくなってきました。

あるとき京都市内で一泊することになり、ネットサーフィンで色んな宿と地図を交互に見るのを楽しんでいました。
すると、CMでよく耳にする「料金比較サイト」の数々が一斉に料金を表示してきます。
ものは試しと、当時その中でも最安のタイムセール中だった「agoda(アゴダ)」で恐る恐る予約してみることに。

今回宿泊してみたのは、「ホテルエムズエスト 七条」。
宿泊税は家族合わせて400円でしたが、一つ上のランクのお部屋が開いているとのことで、料金そのままでアップグレードして頂きました。
部屋も新しくてとってもきれい。写真を撮ろうとしたら、既に子供達がベッドの上で興奮気味に走り回っていました。
レストランはありませんが、持ち込んで飲食できるスペースが1階にあり、ホテル周辺にもコンビニやファーストフード店、和食やビーガン料理店等が点在しています。
客層も、若いカップルから家族連れ、外国人の方もおられました。
昼間は外出しっ放しで殆ど「風呂と寝る」だけの利用だったので、十分満足でした。

予約はクレジット決済にしていたので、鍵を渡すだけで追加料金も無くあっさりチェクアウト。
こんなに安いなんて、もしかして一人当たりの料金だったのでは…と最後まで疑いながら出て、後日クレジットカードの明細を見ました。
大人2名(子供は添い寝で0人扱い)で2,895円でした。そ、それでいいのか本当に…!?

2022年9月22日 | 町家 | No Comments »

宮津の海鮮グルメ

9月13

kane
天橋立が国内初の名勝に指定されてから2022年で100年。
しつこく丹後ネタを引っ張りますが、宿から徒歩で行けるお食事処もご紹介しておきますね。
旅に「食」は付きもの。お付き合いください。

夕食は宿のオーナーからの口コミで、七輪焼きと丹後の旬の一刻干し「カネマス」へ。
2階のお座敷を家族水入らずの貸し切りで利用させて頂きました。

保存のためではなく、魚本来の旨味を凝縮させるため、限りなく生に近く薄味に仕上げられた一夜干しです。
海鮮ならたくさん食べても罪悪感無し!子供達には香ばしく焼いたイカが人気でした。
食材も調味料もその土地のものにこだわり、「こどもピーマン」など野菜も色鮮やかで新鮮。締めは味噌を塗った焼きおにぎりでした。
女性杜氏が造られたという赤い日本酒「伊根満開」はまるで食前酒のように甘いので、お酒を初めて飲む人にも飲みやすいかもしれません。

翌朝は、「海味鮮やま鮮」で海鮮モーニング。
焼魚に煮魚、刺身…どれをメインに選ぶか悩むのが旅の贅沢。
卵かけご飯の白身は、ふわふわのメレンゲ状でした。
花街の町家のような外観で、上階はお稽古事に使われているようです。
向かいは、店主が現役レスラーという「プロレスバー」でした。

魚市もあるこの近辺は、京都市内の観光地の様に土産物屋が乱立するでもなく、地元の住居と溶け合う程良い観光地化が好感持てました。

丹後宮津の旧宅を観る・泊まる

9月5

mikami今回の丹後の旅で宿泊したのは、天橋立に程近い一棟貸しの「三上勘兵衛本店」でした。
外観は、漆喰に松の翠が映える商家の離れの佇まいですが、中に入ると綺麗にリノベーションされ、スタイリッシュな家具が配置されています。
まるで素敵な新築の家に引っ越したような気分で、一枚板のカウンターテーブルにカプセル式コーヒーメーカーやワイングラスも多数備わっています。
鍵を受け取ったら、チェックアウトまでここは宮津の我が家!

この宿の不思議な名前は、隣の「重要文化財 旧三上家住宅」の屋号に由来しており、宿のオーナーのおじい様の邸宅だったお屋敷だそうです。
宿泊の利用者には観覧券を頂くことができ、江戸時代に宮津城下で糸問屋や酒造業、廻船業などを営んでいた商家の賑わいと暮らしぶりを垣間見ることができます。
江戸幕府の巡見使、明治期には有栖川宮熾仁親王、小松宮彰仁親王の宿泊先にもなったそうで、旧家の花嫁衣装は今すぐにでも袖を通せそうなくらい刺繍が美しくて状態もいいものでした。
見学の間、子供達は庭園の縁側で亀の餌やりを楽しませてもらったようです。

この宿付近で利用したお食事処については、また後日。

波も人も穏やかな町、伊根町

8月25

ine 子供の頃から何度となく「海の京都」こと京丹後方面へ家族旅行をしていましたが、今回は伊根町へ。
ちょうど直前に幾つかのテレビ番組紹介されていたそうですね。

朝は「もんどり漁」が見学できると人気の舟屋ガイドさんによるツアーを利用したかったのですが、その日は催行無しだったので、まずは海上から伊根町を象徴する舟屋群を一望!
お天気が良ければ大型の遊覧船の甲板に出て、広い青空と伊根湾の狭間に立つのも良いですが、盛夏では日差しを遮る屋根付きの小型の海上タクシーがおすすめかもしれません。
映画『釣りバカ日誌』や朝ドラ『ええにょぼ』のロケ地となった場所等も教えてもらい、「サスペンスのロケも多く、毎回人が死んでます」とのジョークも飛びます。

昼食は今春開店したばかりの人気店「食事処うらなぎ丸」へ。11時過ぎの時点で既に数組が順番を待っていました。
毎朝定置網から水揚げされる魚介を使ったお造りも寿司もボリュームたっぷりの定食なので、家族でシェアすれば欲張りランチに。海鮮が食べられない人には唐揚げも。

徒歩で伊根町観光案内所へ戻って「舟屋3か所巡り」を申し込み、それぞれ趣の異なる舟屋に入らせてもらいます。
木造船が主流だった頃に、船が痛まないようガレージとして海上に設けられた舟屋。
ちゃぷちゃぷと優しく打ち付ける波音に、今すぐ蒼い海の中へ飛び込みたくなりました。

海底がすり鉢状で、青島という自然の防波堤によって年中波が穏やかな港町の伊根町。
昔ながらの漁暮らしとウォーターフロントの環境を活かしたお洒落なお店がさりげなく共存していて、京都市内の観光地とはまた違った落ち着きがあります。

今回は幼子連れだったので、宮津の宿泊先で休むべく昼過ぎで切り上げましたが、舟屋の民宿風の宿や、リノベーションされた宿、海を臨む素敵なカフェもまだまだたくさんあるようです。
また次回も続きを楽しみたいと、気持ちが穏やかになる風情の町でした。
その他の旅の記録はまた後日。

宇治で晩ごはん

6月29

afuhi 先日宇治を訪れた際に感じたのは、「いつの間にか、新しいお店がどんどんできている!」。
寺社が閉まる夕方になると、宇治橋商店街は軒並み暖簾を降ろし、昼間は抹茶ソフトクリームを片手にそぞろ歩きをしていた人達の姿もなくひっそりとしています。

夕食を採る場所を求めて歩いていると、「大阪屋マーケット」という横丁の風情の市場があり、どうやら多くの人がここに吸い込まれていったようです。
立て看板を見ると「SINCE 1962」とあり、「そんな前からあったの?」と自分達もついついその中へ。
10以上の店舗が入っており、営業日も様々。
ちょい呑みできる居酒屋の熱気もあれば、反対側には落ち着いたテーブル席のレストランもあり、駄菓子屋や整体医院まで入っています。
本格ナポリピッツァに強く惹かれたのですが友人の好みに合わず、次回は必ず行くと心中でキメて、市場を後にしてまたうろうろ。

薬膳料理 茉莉花」も残念ながら定休日という事で、行き着いたのが「afuhi uji」。
はるばる宇治へやってきた大原の野菜をふんだんに使った、おじや風リゾットとパスタのお店です。
町家のおざぶに歩き疲れたお尻をやすませて、豆タイル貼りのおくどさんにどっさりと置かれた野菜を眺めながら待ちます。
「大原野菜プレート」はまさに自分好みで、花束の様に鮮やかな多種多様な野菜が盛られ、オリーブオイルやミネラル豊富な塩、バーニャカウダソースを付けて歯応えを楽しみながら頂きます。
久しぶりにこんなご馳走サラダが食べたかったのです。
「茶粥風」のおじやんリゾットも、使われるお茶を緑茶か抹茶か選べるのは宇治ならでは。
塩加減もちょうど良く、鯛とも相性がよく、家でも真似して作ってみたくなりました。

平等院やお茶屋だけを巡って帰ってしまうのは勿体ない。
間もなく鵜飼も始まるので、夜も歩きやすくなるでしょう。
夕暮れの宇治川を歩いた後は、夜のお食事も楽しんでみてくださいね。

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