e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「京町家ちおん舎」

7月13

tion ガラスの壺から奏でられる鈴虫の声に招き入れられたのは、三条衣棚を上がったところにある「ちおん舎」。
大店の商家の佇まいを色濃く残す京町家は、すっかり夏のしつらいになっていて、足裏にひんやりと感じる網代や庭から簀戸(すど)を抜ける風、そして眩しい日光を遮る薄暗さが心地良い。
広大な敷地の中には、多目的に使用できる広間や露地や水屋を有する4畳半の茶室、大きなまな板のあるキッチン等様々なスペースがあり、同じ日にそれぞれの空間で複数の催しが行なわれていても、互いを邪魔しない許容量があります。
京町家をイベントスペースとして開放している所はたくさんありますが、特筆すべきはここの催し内容のユニークさでしょうか。
最近の予定だけでも落語会にご近所さんが集うヨガのほか、「重ね煮」という調理法の料理教室や、氷水で点てたお抹茶で楽しむお茶席体験、「星ソムリエ講座」などなど、なんだかどれもひとクセあって気になるものばかり。
防空壕の跡が床から覗ける「J-spiritギャラリー」では、メイドインジャパンの作品を展示販売していて、この大きな京町家全体が、作家(アーティスト・デザイナー)や作り手(メーカー・職人)を育てる家なのですね。
ちなみに、この辺りは祇園祭の後祭の中心地。最も近くには役行者山があります。

京町家で「粋人」を育てる「常の会」

7月6
「常の会」

「常の会」

 身内の内祝いの扇子を買いに、大西常商店の暖簾を初めて潜りました。
美しく調えられた町家の一角に京都らしい色遣いの扇子が咲き並び、品の良さが漂います。
意外に手頃な値段だったので驚きましたが、ここが製造卸のお店だからでしょうか。
もう一つの来店目的が、こちらで初開催された文化イベント「常の会」。
茶室「常扇庵」では、お茶席に不慣れな学生さんも、銘々に浴衣姿でお茶を楽しんでいました。
2階の広間では、能楽師観世流シテ方・田茂井廣道さんが、昼の部では祇園祭の山鉾に関する演目を、夜の部では扇子にちなんで構成された「一福能」を。
能としては珍しくアンコールとして「土蜘蛛」も演じて下さり、盛大に投げられた蜘蛛の糸を観客も喜び被ったまま楽しんでいました。
会が終了した後も多くの人が残り、能楽師さん達のユーモラスで分かりやすいお能と扇、面に関するお話に耳を傾けていました。
こんなに盛りだくさんな内容なのに、参加費2000円で本当にいいんでしょうか?
謡をたしなんでいたという同商店の創業者・大西常次郎さんは、近所の人をこの家集め、毎晩サロンの様に楽しんでいたといいます。
そんな「粋人」が、今後も生まれていきますように。
次回の「常の会」は12月の中旬との事ですが、祇園祭に向けても様々な催しが予定されています。詳しくはお店のフェイスブックをご覧下さい。

茶道資料館「茶箱を楽しむ」

2月24

sado 茶道資料館の新春展「茶箱を楽しむ」。平日の静かな館内ながら、人の足が絶える事はありませんでした。
茶箱とは、お茶を点てるのに必要な道具を携帯できるようコンパクトに収納し、野点(いわゆる「アウトドア茶の湯」)の風情を楽しむもので、戦乱の世には武将達が陣中で、あるいは花見や紅葉狩りの席で用いられて来ました。
紐を掛けたり瓢箪型にしたりと、持ち運びに耐えうるように工夫されたデザインや、その茶箱が使われるシチュエーションを連想させる装飾、中の茶碗や道具は従来よりも小さく軽い事が求められるため、「見立て」(代用)で遊べる自由さなど、持ち主が楽しんで趣向を凝らしているのが伝わってきます。
長時間フライト中の飛行機内で茶箱を広げ、周囲の外国人乗客や客室乗務員らにお茶と菓子を振る舞い、拍手で喜ばれたという面白いエピソードもありました。
自分自身は茶箱はまだ持っていないけれど、手持ちのバスケットに茶碗や茶筅、ケーキ等を仕込み、夜桜の宴席や植物園の東屋で友人達と一服を楽しんだ事もあれば、スキー場のゲレンデで、スノーウェア姿でスキー板の上でお薄を点て、家族で冬山の絶景を楽しんだ事もあります。
またある知人のタクシー運転手さんは、車内に茶箱を供えていて、案内したお客様にお茶を点てる事もあったと聞きました。嬉しいサプライズですね。
その際にもてなした相手は、お茶の心得がある人だけでなく、お抹茶を飲んだ事も無いという人も。
日常と非日常、茶道という敷居もふっと跨いでしまえそうな装置です。
この時期に茶箱展が開かれたのも、間もなく訪れる花と新緑の季節に向けた、野点への誘いなのでしょう。
なお、茶道資料館のすぐ隣にある本法寺は琳派の祖・本阿弥光悦の菩提寺とされ、特別公開中です。併せてお楽しみ下さい。

皮革友禅染“tatt calf(たとかーふ)”

9月10

tatt まるで水彩画のように染め込まれた長財布。
明治41年に大阪の南船場で創業し、現在は京都市内に本社を持つ「浪速屋商店」が皮に友禅染の技法を施した“tatt calf(たとかーふ)”という「皮革友禅染」だそうです。
「友禅染め風のプリント」ではなく、友禅染めの高熱処理にも耐えられる様に開発された素材です。
伝統工芸品には興味があるけれど、いかにも!な和柄にはちょっと抵抗がある人にとっては、普段の小物として取り入れ易いデザインですね。
その財布を、9月9日におろしました。
なぜかと言うと、まあるく膨らんだ満月の日は、新しい財布を使い始めるのに縁起が良いと、小耳に挟んだからです。
しかも、今年の9月の満月の日は、月が最も地球に近づいて大きく明るく見えると言われるスーパームーンの日(同じく開運の大安もこの日です!)!
果たして、月の引力でお金を引き寄せることはできるのでしょうか!?

2014年9月10日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

遊狐草舎「現代の雄勝硯」展

3月24

yuko 「書」を生み出す硯・筆・墨・紙は「文房四宝(至宝)」と呼ばれ、そのもの自体も観賞の対象となってきました。
室町時代から600年もの歴史を誇り、仙台藩主・伊達政宗にも愛用され、かつては日本製硯の約9割を生産していたという宮城県石巻市雄勝町は、東日本大震災による津波で硯と共に工房や店舗も流されてしまい、現地に残る職人はたった一人のみと聞きます。
大徳寺に程近い古民家ギャラリー「遊狐草舎」では28日まで、若手デザイナーに依頼して製作された「現代の雄勝硯」展を開催しています。
シンプルでシャープなデザインの硯は、まるでスマートなビジネスマンの様な佇まいで、デスクに置いてあるだけでも端正な品があります。
もともと墨をする時の感触や香りが好きな事もあり、遊狐草舎という、柱や障子の直線と床板の柔らかな木目で構成された空間にも溶け込む様を見ていて、雄勝硯が欲しくなってしまいました。
スマートフォンケースにぴったり収まる程の薄さの硯は、古の日本人が携帯していた様に、”モバイル硯”として活用できそう。
中には、3Dプリンターでデザインを立体に起こし、それを職人が硯に仕上げたという作品も。
最先端技術で形状をそのまま再現する事はできても、硯の原料となる玄昌石の硬さや層状の目を見極めるのは、職人さんの手が記憶する経験があってこそ。
現代生活に活かせるデザイン力と職人技、インターネットの発信力の新しい相乗効果に期待しています。

小豆粥と土鍋行平

1月14

okayu 七草粥を食べてから約1週間後、今度は小正月と呼ぶ1月15日で小豆粥を頂き、厄除けや無病息災の願掛けを念押し!

お料理教室をされているマダムは、「お粥は土鍋行平(雪平)で炊くのが一番美味しい」と言っていました。
「口から蒸気が出て、土鍋だけど薄くて良く米が回る」のだそうです。
一般家庭では余り見かけなくなりましたが、「昔はどの家にもあったぐらい、よくお粥を炊いていた」といい、禅寺では今でも、毎月1日と15日に小豆粥を食す習わしがあるそうです。

和食 日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された今、飽食の時代の中で、食べ過ぎで栄養が偏りがちな現代日本人も、外食が続いた後や海外旅行の後等に身体をリセット・お掃除するためにも、もっと日常の食卓にお粥を取り入れてもいい様な気がします。家族四人分でもお米一合くらいしか使わないので、身体にも家計にも優しいかも!?
また、土鍋行平は小さな子供の離乳食作りにも役立つともいいます。なんだか小豆粥と共に欲しくなってしまいました。

西村圭功漆工房

12月16

nisimura お茶の先生のご紹介で、上塗師・西村圭功さんの漆工房(075-202-6255)を訪ねました。
そのままインテリアとして飾れそうなモダンなデザインの茶箱や木目を生かした銘々皿に茶筅筒など、様々な作品を見せて頂きました。
離れて見ると黒一色の棗の数々も、手に抱いて眺めてみるとわずかな光を受けて微妙に刷毛目の違いが感じられます。
例えるなら、闇夜の池にほんの微かにさざ波が立ったかのよう。でも手触りはとてもなめらかで、その繊細さに吸い込まれてしまいそうです。
「漆黒」とはただ一面に真っ黒なのではなく、奥に何かを秘めているような、奥行きと艶がある色を表すのですね。
この日に合わせて設えて頂いたのでしょうか、床の間の大きな漆塗りの花器に目を奪われました。
生地を曲げて、その上から漆を何度も塗り重ねて固めたもの。漆芸の新たな可能性を物語ります。
閑静な住宅街に溶け込む築80年の町家の工房ギャラリー。ご自宅も兼ねているので、ご興味のある方は必ず事前にお問い合わせ下さいね。

京友禅のワンピース

9月9

akika いつもは長引く夏の暑さも、今年の9月は意外にも早くから涼しくなって来たので、夏色の服はちょっと着づらくなってきたところ。
以前からレトロ柄か和柄のワンピースが欲しいと思っていたのですが、和柄や着物をリメイクした服はよく見かけるものの、
柄が過剰で派手だったり、センスが古かったりと、シルエットがきれいなものもなかなか見つかりませんでした。

でも、この秋出逢ってしまったんです。「AKIKA」の京友禅和柄ワンピース。
友禅染めの技術を活かしたアロハシャツで知られる「Pagong」のセミオーダーブランドです。
もみじや藤、菖蒲など四季折々の花々が一面に散らしてあるのに重い印象にならないのは、染めの発色の良さと配色デザインの妙でしょう。
画像では手持ちのベルトを合わせてみましたが、もともと軽いシルクでストンとしたAラインなので腰回りがカバーされ、
落ち着いた色味と流行に左右されない柄なので、幅広い年齢で長く楽しめそうです。

「AKIKA」の商品は西大路五条のPagong本店での扱いですが、一部は『Waこん』(075-256-8525)でも置いてあるそうです。

2013年9月09日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

「二葉葵展」

5月21

afuhi 今年の葵祭も快晴のもとに無事終了し、週末には上賀茂神社で「二葉葵展」が開催されました。
境内では「第3回葵・手づくり市」や渉渓園の特別公開(毎月第1、第3日曜)も同時に行われ、小雨にも関わらず多くの人が会場の庁屋に立ち寄っていました。
「二葉葵展」は、葵祭行列を飾る葵の葉が年々減少しその再生を目指す「葵プロジェクト」に賛同した表具師、左官職人、大工、空間デザイナー等の若手の職人集団「景アート」が主催しています。
宮司が作られた茶碗を初め、葵を模った皿や鏡、木のぬくもりを掌で感じるおもちゃの様なオブジェやテレビボード、ライブペインティングもありました。
葵の葉も、若手の「ものづくり」も、育て根付かせていくためには、職人だけではなく私たちも美しいものや丁寧に作られたものにたくさん触れ、作り手と共に技術と審美眼を養っていく必要があるように思います。
今年はあいにくの雨で、ならの小川のせせらぎを楽しむ川床茶席は見当たりませんでしたが、来年こそは体験してみたいと思います。

職人の手業と現代生活

1月23

shokunin 「現代生活に馴染む伝統工芸品」が、全国レベルで随分増えて来て、嬉しく思います。

中でも、手に届く価格帯が嬉しい「職人.com」の実店舗が昨秋できたと聞き、訪れてみました。
若手職人の作品がインターネットでも購入できる時代ではありますが、誰かへの贈り物は、やはり自分の目で見て手触りなどを確かめてみたいもの。
西陣の住宅地の中に佇む事務所兼用のギャラリーは、普通の町家なので(こたつもありました)、うっかり通り過ぎてしまうので要注意。
また、展示してある商品はほんのごく一部なので、事前に見たい商品をお店に相談してから訪れるのがおすすめです。

職人の手業の継承と質の維持、現代人のライフスタイルの変化、作り手と買い手から求められる価格帯のそれぞれを実現するのは、なかなか容易な事では無いかもしれませんが、応援していきたいですね。

2013年1月23日 | お店, 和雑貨, 町家 | No Comments »
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