e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

能楽師の美しき陰影

8月9

ryumon 今年も金剛能楽堂の「龍門之会へ。
宗家長男の金剛龍謹氏が主催する会で、最初の仕舞はまだ年少さんの金剛宣之輔くん、続く舞囃子を8歳になったばかりの金剛宣之輔くん、仕舞を26世宗家・金剛永謹氏が担うなど、3世代にわたる共演を観ることができました。

舞台を踏み始め、人前でも堂々と、一生懸命に声を上げる宣之輔くん。
背後に親が控えているとは言え、舞台に立てば一人というプレッシャーを感じながらも凛々しく舞を見せる宣之輔くん、
今日までの鍛錬で鍛えられた声が舞台に響き渡るのが心地よく、すっかり安定感のある龍謹さん。
人間国宝として認定されたばかりの金剛永謹氏の所作には年月を重ねて枯れた風情すら感じさせます。

会を通して舞台の照明が変わったわけでもないのに、少年達の顔や衣装は眩しいほどに輝かしく、年を経るごとに陰影を帯び円熟味を増していく能楽師の一生を観るような景色でした。

後半の演目「殺生石」は、通常は後シテが狐の姿で演じられるのですが、金剛流古来の小書(特殊演出)「女体」として、玉藻前という高貴な女性の姿で舞われました。
狐の冠をかぶり、最後は舞台袖へと走り去るのですが、視界の狭い面に足袋を身に着けているとは思えない程の足の速さに、暫し終演後も茫然としてしまいました。

最近では友人の小学生の娘さんが金剛流の謡を習い始めました。
もとよりダンスが好きで、能の仕舞とも平行しながら夢中になって稽古しているとのこと。
冬の発表公演が今から楽しみです。

なお、毎年8月16日の五山送り火の日には、「大文字送り火能 ~蝋燭能」が行われます。
金剛能楽堂の目前の京都御苑内から大文字の送り火を観ることができます。

「清経」

8月17

816京都御苑の向かいにある金剛能楽堂にて、大文字送り火の直前に催される『大文字送り火能 ~蝋燭能』。今年の演目は「清経」でした。
源氏に敗れ入水した清経の霊に向かって、都に残された妻は恨めしい気持ちをぶつけ、清経もまた、形見の髪を返してきた妻を嘆きます。

奇しくも五山の送り火の前日は終戦記念日。お盆はほんの僅かな間の魂の里帰り。
炎を眺める心の中は、「まだ行かないで欲しい。けど、送り出さなければならない。」。

清経」という曲は、もしかすると戦争で愛する人を失ってしまった人々の心にも染みるものなのだろうか。ふと思いました。

2010年8月17日 | 芸能・アート | No Comments »

「翁」に願いを

7月20
金剛能グッズ

金剛能グッズ

今年も金剛能楽堂の能面・能装束展を観に行って来ました。
やはり、一日2回ある解説の時間に合わせて行くと、興味が倍増します。

中でも年の初めや何かの節目の際に用いられ、神面として大切にされている「翁」の面は、能が成立する以前には呪師が儀式の際に掛けていたといい、人々は翁の面に向かってお願い事をしていたのだとか。
「現在は能役者が演じているけれども、その呪師の力が面に宿っているかもしれない。」とのこと。
この面が何百年という時を経て現在まで伝えられているところを思うと、生命力のような特別な力が宿っていても不思議ではありません。
思わず、翁の面の前で手を合わせてしまうのでした。

25日には「羽衣」等が演じられる定期能、お盆には「大文字送り火能 ~蝋燭能」が予定されています。

2010年7月20日 | 芸能・アート | 1 Comment »

京都金剛家のルーツ

7月29
たくさんチラシを持って帰りました。
たくさんチラシを持って帰りました。

金剛能楽堂の能面・能装束展観に行って来ました。

他流派とは異なり、金剛家の能装束には家紋が入っている事が多いのは、京都金剛家はかつて近江源氏の武家であった事に由来するそうです。浅井・朝倉連合軍が織田軍に敗れた事で京都御所へ逃れ、そこで禁裏御能を発展させました。
来月には大文字送り火能「蝋燭能が行われます。
「綾鼓」というちょっとコワイ演目を鑑賞した後は、能楽堂向かいの京都御所へ移動し大文字の送り火を眺めれば、より味わい深いものとなりそうです。

「紅葉狩」飲み過ぎ注意!?

11月30

e京都ねっと「プレゼント」でも好評の金剛能楽堂蝋燭能「紅葉狩」を観に行って来ました!
とても分かりやすい内容の演目で、平維茂が狩装束で神剣を振るい、鬼女と斬り合う勇壮な姿に見とれてしまいました。
女性の誘いに応じ、ついついお酒を飲み過ぎてうたた寝するうちに、本性を現した鬼女に襲われかける…「能は現代人にも通じるテーマを持つ」と聞いた事がありますが、この演目の心はいかに!?
12/12(日)には能面・能装束講座が行われる予定です。
お手頃な料金(1000円)で、家元による解説を聞く事ができるなんて、嬉しいですね。

2004年11月30日 | 芸能・アート | No Comments »

コワーイ演目「鉄輪」

8月23

金剛能楽堂蝋燭能を観に行ってきました!
ゆれる蝋燭の炎と月明かりのように青白いライトに照らされる薄暗い舞台で演じられたのは「鉄輪」。
自分を捨て後妻を迎えた夫を恨み、恋しさと恨めしさにさいなまれながら鬼へと変化していく女の姿が、前半から後半へと付け替えられた面に現れています。
この蝋燭能は11/26にも行われます。演目は「紅葉狩」。
能楽堂で販売している「対訳でたのしむ」シリーズ(檜書店)が分かりやすくておすすめです。 カジュアルに能鑑賞を→8/28に京都駅ビル薪能
金剛宗家・龍謹君の演技を観たい→9/26の定期能

2004年8月23日 | 芸能・アート | No Comments »