e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

琳派イメージと日本人のDNA

11月24

richard この連休、日本美術好きな人達はこう感じたはず。
「どうして琳派展をあちこちで同時にするんだ!!」
もちろん、数日で巡るにはその方が効率良いのかもしれませんが、お陰で昼間の紅葉狩りができず…という人もいたかもしれません。
京都国立近代美術館の「琳派400年記念「琳派イメージ」展も最終日だったため、飛び込んで行きました。
代表的な琳派作品をアレンジした屏風やドレス、グラフィックもあれば、琳派の影響を受けているように見えてくるものもあり、琳派イメージは無意識のうちに日本人のDNAに刷り込まれているのではないかと感じさせられました。
その後は野村美術館に向かう予定が、その日はどうしても車での移動だったため、案の定渋滞にはまって動けず。
入館時間を過ぎてしまいましたが、なんとか入れて頂く事ができ、「利茶土窯30周年 記念展 利茶土の茶陶 “EAST MEETS WEST in KYOTO”」のみ拝見してきました。
「利茶土窯」と命名した裏千家現大宗匠・千宗室氏からのお墨付きの作品や、「グランドキャニオン」と銘の付いた茶碗など、茶陶家・利茶土ミルグリムさんは、出身のアメリカと創作拠点の日本の二つの国の異なった文化や考え方の違いを表し、それぞれの陶技や特徴、美しさを合わせた創作をしています。
自らと異なるものと対峙したとき、相手の特徴を理解し、歩み寄って新たな道を模索すること。
周りの勢いに呑まれず、自らを振り返ること。
世界情勢が不穏な今こそ、そんな姿勢が必要な気がします。

2015年11月24日 | 芸能・アート | No Comments »

パロディで受け継がれる琳派

11月16

taro 話題を呼んだ「琳派からの道 神坂雪佳と山本太郎の仕事」展の「マリオ&ルイ―ジ図屏風」。
実際に観に行くと、砲弾や亀のキャラクターもゲーム画面のドット(点)で表わされていて、「Cool Japan」を売り出す日本のアニメ・ゲームイベント会場に飾れば、ファンが喜びそう!?
琳派作品でよく見られる住吉浜と青海波の合間からのぞく信号機も可愛らしくて、手ぬぐいとして製品化して欲しいとまで思ってしまうような遊び心のある扇面や茶碗の他、源氏物語の中で、猫の仕業で露わになった女三宮の姿を柏木が目撃する「若菜」の章を、赤い糸と共に描かれた猫のぬいぐるみやサッカーシューズ等の現代のモチーフに置き換えた屏風など、古典をかじった事のある人なら、尚更にやりとさせられるはず。
神坂雪佳の作品も、また、琳派のパロディと言える山本作品のいずれも、日本の古典文学や芸術への教養を持つ事で更に深い考察が楽しめる事でしょう。
もともと琳派も作家同士の師弟関係では無く、私淑、いわゆるパロディの様な形で受け継がれてきたもの。
今年に入ってから、そこここで開催されているマジメな琳派イベントでお腹いっぱい気味な人には、ちょっと肩の力を抜いて楽しんで頂きたいと思います。

2015年11月16日 | 芸能・アート | No Comments »

雨の恵み。琳派展

11月9

rin 観光にはちょっぴり不便な雨模様。でも、悪い事ばかりではありません。
京都国立博物館の「混雑状況 Twitter」を見てみると、「待ち時間0分」となっていたので、ここぞとばかりに向かいました(ちなみに、朝は混む傾向のようです)。
行列ができるほど人気の展覧会に行く計画を立てる時は、週間天気もあわせてチェックしてみるのも混雑回避の策かもしれませんね。
8日まで公開されていた俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一によるそれぞれの風神雷神図屏風が勢揃いした空間もユニークで壮観でしたが、全期間にわたって全巻が初公開されている全長13.56メートルの「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が最も心に残りました。
宗達の下絵と光悦の書の競作で、横へと進行する絵巻は正に映像が流れるスクリーンのよう。「鶴がアニメーションの様に舞い降りる」という解説の表現は言い得て妙でした。
この展覧会は23日の祝日まで開催されており、宗達筆の重要文化財作品を展示している醍醐寺との共通割引も実施されています。
お土産になるようなミュージアムグッズも多彩ですが、目に留まったのが琳派のパターンをモチーフにしたはんこ。
今回の展示作品を思い出しながら、ハガキに余白を残し、何度かインクを変えてポンポンとたくさん押すだけで、琳派風の年賀状が作れそうな気がしました。

2015年11月09日 | 芸能・アート | No Comments »

D&DEPARTMENT KYOTO

11月3

d  仏光寺の境内に、デザイナーのナガオカケンメイさんや京都造形芸術大学の学生らがギャラリーを併設したセレクトショップ「D&DEPARTMENT KYOTO」を開店して、もうすぐ一年になろうとしています。
もとは物置として使われていた和合所を改装して販売されている品は、京都の伝統工芸品や調味料、雑貨等、流行や時代に左右されずに愛されてきたものたち。
おそらくどこかのお店で使われていたと思われる岡持ちや木のお盆、昨年営業を終了した「京都国際ホテル」の名前が裏に入ったノリタケの白いお皿、実験用のシャーレに書籍など、新品からアンティークまで、アイデア次第で新たな価値を生み出しそうなわくわく感で満ちていました。
隣のお茶所は、仏光寺で採れたかりんで作ったドリンクや京都の名産を上手くアレンジして取り入れた軽食や甘味が楽しめます。
京都店は、「ロングライフデザイン」をテーマに、物販・飲食・観光を通して地域の「らしさ」を見直す「D&DEPARTMENT」プロジェクトの10 店舗目に当たり、山梨や富山などの他の店舗の情報が掲載されている専用誌もここで読む事ができます。
単なる名産の寄せ集めではなく、セットメニューのお茶や添えられた塩昆布も丁寧に作られていて京都らしさがちきんと感じられ、ショップで見かけた調味料や器も使わており、それが地域の「らしさ」を現代生活に取り込むインスピレーションを与えてくれるので、思わずお茶所から再びショップに戻ってしまったほど。
「防火用」と書かれた赤いバケツを衝動買い。そう、京町家の軒先でよく見かけるアレです。
年末のお掃除用や、傘立てとして使ってみようかな。

お神酒シャーベット

10月26

omiki 今年の時代祭は平日の斎行だったため、観に来れなかった人も多かったかもしれませんね。
しかし来年は土曜日なので、鞍馬の火祭と併せて今から宿泊先を押さえているという人もいるでしょう。
時代祭ゆかりの話題という事で、平安神宮オリジナルのお神酒「橘酒」(商品画像は、Facebook版e-kyotoをご覧下さい。)。
非常に飲みやすいのですが、まるでデザートワインかと思う程にとっても甘~いお酒。
そこで別の器に移して冷蔵庫で凍らせ、シャーベット状にして食後のデザートにしてみたら…狙い通り!
冷やす事で甘さが抑えられ、シャリシャリした食感が口直しにぴったり。好評でした。
もともと農耕民族である日本人の主食・お米から造られるお酒や餅は、神前にお供えする神饌の中でも、特に重要なもの。
神事の後には必ず直会(なおらい)という儀式があり、神様に供えられた御神酒をお下がりとして戴くことで神様から力を頂いたり、神様と人、また人と人を結びつけてきました。
お神酒シャーベットなら、洋食フルコースの食後酒にも応用できそう。これも「神人共食」か!?

心を立体的に表現する水引

10月19

oosima 親戚の結婚を控え、祝儀袋を買いに「大嶋雁金屋」を訪れました。
普段ならデパートや文具店、コンビニでも気軽に求められる物のですが、昔から室町の呉服屋さんご用達の老舗と聞いて、どんな所だろうと好奇心が湧いたためです。
小笠原家から直伝の折型を守る老舗、となると敷居が高いのでは、との心配は無用でした。
ショーウインドーには、職人さんがお遊びで作ったと思われる水引製の、スポーツ選手の人形達が展示されていました。隣にはマジメに作った、こぼれんばかりの梅や松を載せた水引の宝船。お店の方も自然体で、筆耕もお願いしました。
改まった形で結婚祝いをお金で贈る場合は、新郎宛の目録には「松魚(しょうぎょ)」、新婦宛には「五福」と書くそうで、後で調べてみると、それぞれ肴と呉服を表しているそうです。
なお、京都では、お祝いの品を持っていくのは正式には結婚式当日ではなく「大安の日の午前中」と決まっていて、その日のために準備した目録や祝儀袋、袱紗等を並べるとなかなか壮観です。
店内には、立派な光沢を放つ華やかな祝儀袋もあれば、キューピー人形の付いた、ちょっと砕けた楽しい出産祝いの祝儀袋も並べられています。もちろん、どの水引飾りも職人さんの手作業によるもの。
色とりどりの水引の輪っかを自分の飲み物の容器に掛けて目印にできる、ボトルマーカーとしての珍しい商品もありました。
縦に細長い紅白の水引は、マンション住まいの人でも扉に下げるお正月飾りになるかと思い、少々気が早いけれど購入することに。
掛け紙に印刷された水引も一般的になってしまった現代ですが、心を形で表した立体感もまだまだ大切にしていきたいですね。

京都リピーターの常宿

10月13

kawa  京都が大好きだという知人夫婦が何組かいます。
そのうちの一組の熟年夫妻は東京在住で、いつも同じホテルを取り、特に予定も立てずに京都を訪れては、思いつくままに出かけたり部屋でのんびりしたりして過ごしているそうです。
もう一組は30代半ばの働き盛りで近畿在住。こちらは毎度異なるホテルを予約していたそうですが、今回は気分を変えて「川嶋旅館(075-351-2089)」という宿にしてみたというので、覗かせてもらう事にしました。
四条通りから一本南に下がった綾小路通りは、仕事帰りに立ち寄るバルの様な飲食店が多く、学生の多い繁華街のチェーン店とは違って濃い賑わいをみせていました。
予約した部屋が一泊8500円と聞いていたので、正直なところボロボロの旅館を想像して向かったのですが、目の前に現れた宿は、明治34年創業の風格を感じさせる佇まい。
確かに階段はかなり急で、畳を踏みしめると少々足が沈む感触はありますが、町家らしく床の間や違い棚のしつらい、坪庭の眺めも楽しめます。テレビやエアコンも完備。
ただし、各部屋の仕切りは襖一枚なので、貴重品や手荷物の管理は自己責任。
お風呂に向かう半屋外の廊下を通るため、冬は寒さに耐えなければなりませんが、それでも静かで交通の便や錦市場に歩いて出かけられるという立地の良さを考えると、京都リピーターにはありがたい旅館だと言えるでしょう。
これから迎える紅葉の観光シーズン、宿の手配はお早めに!

2015年10月13日 | 町家 | No Comments »

京の老舗宝飾店

10月5

nara ここ最近、身の回りでお祝いごとが多いので、冠婚葬祭用に真珠の指輪を買う事になりました。
そこで知人に紹介してもらったのが、江戸の文化文政期から京都で暖簾を掛けている「奈良甚」というお店。
和菓子や漬物の老舗はよく聞きますが、「京都の宝飾店の老舗」とは珍しいと思いませんか?
「奈良」は創業者の出身地が由来で、江戸の頃には珊瑚やべっ甲などを扱っていたそうです。かつては六角富小路東入ルに本店を構え、和風のショーウインドウのある木造建築の写真が掲載された昔の雑誌を見せて下さいました。その雑誌に紹介されている他のべっ甲屋さんなどは、時の流れの中でもう廃業してしまっているようです。
この本店も戦争の疎開で取り壊されてしまい、職人さんも各地へ旅立ち、現在では跡形も無く駐輪場となってしまっているのが非常に残念ですが、今も近くのビルの二階で営業されているのは代々店主の命が繋がってこそ。
小さな店内で「いつまでやるか分からへんけど…」と呟くご当代の事務机の隣に据えられた和箪笥と、奥からワンちゃんの元気な鳴き声が聞こえてくる暖簾は、往時の名残なのでしょうか。
この指輪を機に、今でも京都で細々と商う老舗の存在に触れられたのが嬉しく思いました。

2015年10月05日 | お店 | No Comments »

萬福寺宝善院の普茶料理

9月28

fucha 黄檗宗の精進料理「普茶料理」と言えば、黄檗宗大本山の萬福寺の食堂や付近の白雲庵、京都市内の閑臥庵等がありますが、今回は萬福寺塔頭の宝善院に行ってみる事にしました。
揃いの染付の器でテーブルセッティングされた本堂の一角には、「清流無間断(せいりゅうかんだんなし)」という禅語の軸や花が飾られています。
赤ちゃん連れである事を伝えていたので、有りがたい事に子供用の布団も敷いておいて下さいました。
精進料理と言うと修行の一環で静かに食べる印象がありますが、普茶(あまねきの茶)は法要・行事の御礼のおもてなし料理という事で、色どりも華やか、大皿料理を分け合って食べるという賑やかな印象があります。
お寺の奥さまは、「油炸(味付天麩羅)」を出す時にはあえて中身を明かさず、食べた人に推測してもらうようにしているとか。
メロンの天麩羅はさすがに誰も言い当てられず、応え合わせに驚嘆の声をあげてしまいました。
もっちりとしたごま豆腐もとても美味しく、全体にあっさりしているのに食べ応えがあって箸が進んでしまいますが、ちゃんと普段から「五観の偈(ごかんのげ)」を意識して感謝しながら頂かないといけませんね!
自分達以外には誰もいないお堂の中、滋味深い食事を味わう傍らで、お庭のそばで赤ちゃんがすやすやと眠る時間は、平和そのもの。
帰りは廣化庭に配置された干支の守り本尊像を銘々に巡って手を合わせました。
今年はもう終了してしまいましたが、煎茶道・方円流の献茶・煎茶席や、鈴虫の音色と松茸を楽しむ夜間拝観もされているそうです。

2015年9月28日 | お寺, イベント, グルメ | 1 Comment »

「音を織り、織りから聞く」

9月24

piano 大徳寺に程近い多目的スペース「遊狐草舎」にて、「織物とピアノ」をテーマとした映像とひょうたん笛、手回しオルゴールとトイピアノの音色を味わう催しがありました。
中国雲南省の徳宏州に暮らすタイ族はその昔、夜に男子が想いを寄せる相手の家の前でひょうたん笛を奏で、女子は機織りの音で自身の人柄を表現したといいます。
織り上がった品は結婚の際にお披露目され、その織目や端の処理の美しさを見て、花嫁の器用さや、どのタイミングで男性が訪れていたのかを推し量るのだとか。
そう語るおばあさん達が織機に腰掛け、両手両足を巧みに動かして独特のリズムを奏でながら織る姿を映像で観ていると、どこかパイプオルガンの演奏光景に似たものを感じます。同様にピアニストの寒川晶子さんも、織り姿がピアノを弾いている様に見えたと話していました。
このテーマに合うとして提供された藤田織物の帯は、今主流の機械では無く職人の手作業で立体的な造形をしており、それを寒川さんが「五線譜に書き込まれた音楽のよう」と表現していたのが、とても腑に落ちました。
作者が空けた穴に応じて、ころころと涼やかな音を響かせる手回しオルゴールもまたしかり。
「演奏会」「音楽会」と聞くとどこかのホールで、観客が身体全体で聴く事に集中するのも好きですが、人の息遣いや虫の声が聞こえてくるような小さな空間で、座布団に腰をおろしながら繊細な音を紡ぎだしたり実験的な試みができるのも、これからのクラシック界に面白い広がりをもたらしてくれるのではないでしょうか。

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