e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

お神酒シャーベット

10月26

omiki 今年の時代祭は平日の斎行だったため、観に来れなかった人も多かったかもしれませんね。
しかし来年は土曜日なので、鞍馬の火祭と併せて今から宿泊先を押さえているという人もいるでしょう。
時代祭ゆかりの話題という事で、平安神宮オリジナルのお神酒「橘酒」(商品画像は、Facebook版e-kyotoをご覧下さい。)。
非常に飲みやすいのですが、まるでデザートワインかと思う程にとっても甘~いお酒。
そこで別の器に移して冷蔵庫で凍らせ、シャーベット状にして食後のデザートにしてみたら…狙い通り!
冷やす事で甘さが抑えられ、シャリシャリした食感が口直しにぴったり。好評でした。
もともと農耕民族である日本人の主食・お米から造られるお酒や餅は、神前にお供えする神饌の中でも、特に重要なもの。
神事の後には必ず直会(なおらい)という儀式があり、神様に供えられた御神酒をお下がりとして戴くことで神様から力を頂いたり、神様と人、また人と人を結びつけてきました。
お神酒シャーベットなら、洋食フルコースの食後酒にも応用できそう。これも「神人共食」か!?

心を立体的に表現する水引

10月19

oosima 親戚の結婚を控え、祝儀袋を買いに「大嶋雁金屋」を訪れました。
普段ならデパートや文具店、コンビニでも気軽に求められる物のですが、昔から室町の呉服屋さんご用達の老舗と聞いて、どんな所だろうと好奇心が湧いたためです。
小笠原家から直伝の折型を守る老舗、となると敷居が高いのでは、との心配は無用でした。
ショーウインドーには、職人さんがお遊びで作ったと思われる水引製の、スポーツ選手の人形達が展示されていました。隣にはマジメに作った、こぼれんばかりの梅や松を載せた水引の宝船。お店の方も自然体で、筆耕もお願いしました。
改まった形で結婚祝いをお金で贈る場合は、新郎宛の目録には「松魚(しょうぎょ)」、新婦宛には「五福」と書くそうで、後で調べてみると、それぞれ肴と呉服を表しているそうです。
なお、京都では、お祝いの品を持っていくのは正式には結婚式当日ではなく「大安の日の午前中」と決まっていて、その日のために準備した目録や祝儀袋、袱紗等を並べるとなかなか壮観です。
店内には、立派な光沢を放つ華やかな祝儀袋もあれば、キューピー人形の付いた、ちょっと砕けた楽しい出産祝いの祝儀袋も並べられています。もちろん、どの水引飾りも職人さんの手作業によるもの。
色とりどりの水引の輪っかを自分の飲み物の容器に掛けて目印にできる、ボトルマーカーとしての珍しい商品もありました。
縦に細長い紅白の水引は、マンション住まいの人でも扉に下げるお正月飾りになるかと思い、少々気が早いけれど購入することに。
掛け紙に印刷された水引も一般的になってしまった現代ですが、心を形で表した立体感もまだまだ大切にしていきたいですね。

京都リピーターの常宿

10月13

kawa  京都が大好きだという知人夫婦が何組かいます。
そのうちの一組の熟年夫妻は東京在住で、いつも同じホテルを取り、特に予定も立てずに京都を訪れては、思いつくままに出かけたり部屋でのんびりしたりして過ごしているそうです。
もう一組は30代半ばの働き盛りで近畿在住。こちらは毎度異なるホテルを予約していたそうですが、今回は気分を変えて「川嶋旅館(075-351-2089)」という宿にしてみたというので、覗かせてもらう事にしました。
四条通りから一本南に下がった綾小路通りは、仕事帰りに立ち寄るバルの様な飲食店が多く、学生の多い繁華街のチェーン店とは違って濃い賑わいをみせていました。
予約した部屋が一泊8500円と聞いていたので、正直なところボロボロの旅館を想像して向かったのですが、目の前に現れた宿は、明治34年創業の風格を感じさせる佇まい。
確かに階段はかなり急で、畳を踏みしめると少々足が沈む感触はありますが、町家らしく床の間や違い棚のしつらい、坪庭の眺めも楽しめます。テレビやエアコンも完備。
ただし、各部屋の仕切りは襖一枚なので、貴重品や手荷物の管理は自己責任。
お風呂に向かう半屋外の廊下を通るため、冬は寒さに耐えなければなりませんが、それでも静かで交通の便や錦市場に歩いて出かけられるという立地の良さを考えると、京都リピーターにはありがたい旅館だと言えるでしょう。
これから迎える紅葉の観光シーズン、宿の手配はお早めに!

2015年10月13日 | 町家 | No Comments »

京の老舗宝飾店

10月5

nara ここ最近、身の回りでお祝いごとが多いので、冠婚葬祭用に真珠の指輪を買う事になりました。
そこで知人に紹介してもらったのが、江戸の文化文政期から京都で暖簾を掛けている「奈良甚」というお店。
和菓子や漬物の老舗はよく聞きますが、「京都の宝飾店の老舗」とは珍しいと思いませんか?
「奈良」は創業者の出身地が由来で、江戸の頃には珊瑚やべっ甲などを扱っていたそうです。かつては六角富小路東入ルに本店を構え、和風のショーウインドウのある木造建築の写真が掲載された昔の雑誌を見せて下さいました。その雑誌に紹介されている他のべっ甲屋さんなどは、時の流れの中でもう廃業してしまっているようです。
この本店も戦争の疎開で取り壊されてしまい、職人さんも各地へ旅立ち、現在では跡形も無く駐輪場となってしまっているのが非常に残念ですが、今も近くのビルの二階で営業されているのは代々店主の命が繋がってこそ。
小さな店内で「いつまでやるか分からへんけど…」と呟くご当代の事務机の隣に据えられた和箪笥と、奥からワンちゃんの元気な鳴き声が聞こえてくる暖簾は、往時の名残なのでしょうか。
この指輪を機に、今でも京都で細々と商う老舗の存在に触れられたのが嬉しく思いました。

2015年10月05日 | お店 | No Comments »

萬福寺宝善院の普茶料理

9月28

fucha 黄檗宗の精進料理「普茶料理」と言えば、黄檗宗大本山の萬福寺の食堂や付近の白雲庵、京都市内の閑臥庵等がありますが、今回は萬福寺塔頭の宝善院に行ってみる事にしました。
揃いの染付の器でテーブルセッティングされた本堂の一角には、「清流無間断(せいりゅうかんだんなし)」という禅語の軸や花が飾られています。
赤ちゃん連れである事を伝えていたので、有りがたい事に子供用の布団も敷いておいて下さいました。
精進料理と言うと修行の一環で静かに食べる印象がありますが、普茶(あまねきの茶)は法要・行事の御礼のおもてなし料理という事で、色どりも華やか、大皿料理を分け合って食べるという賑やかな印象があります。
お寺の奥さまは、「油炸(味付天麩羅)」を出す時にはあえて中身を明かさず、食べた人に推測してもらうようにしているとか。
メロンの天麩羅はさすがに誰も言い当てられず、応え合わせに驚嘆の声をあげてしまいました。
もっちりとしたごま豆腐もとても美味しく、全体にあっさりしているのに食べ応えがあって箸が進んでしまいますが、ちゃんと普段から「五観の偈(ごかんのげ)」を意識して感謝しながら頂かないといけませんね!
自分達以外には誰もいないお堂の中、滋味深い食事を味わう傍らで、お庭のそばで赤ちゃんがすやすやと眠る時間は、平和そのもの。
帰りは廣化庭に配置された干支の守り本尊像を銘々に巡って手を合わせました。
今年はもう終了してしまいましたが、煎茶道・方円流の献茶・煎茶席や、鈴虫の音色と松茸を楽しむ夜間拝観もされているそうです。

2015年9月28日 | お寺, イベント, グルメ | 1 Comment »

「音を織り、織りから聞く」

9月24

piano 大徳寺に程近い多目的スペース「遊狐草舎」にて、「織物とピアノ」をテーマとした映像とひょうたん笛、手回しオルゴールとトイピアノの音色を味わう催しがありました。
中国雲南省の徳宏州に暮らすタイ族はその昔、夜に男子が想いを寄せる相手の家の前でひょうたん笛を奏で、女子は機織りの音で自身の人柄を表現したといいます。
織り上がった品は結婚の際にお披露目され、その織目や端の処理の美しさを見て、花嫁の器用さや、どのタイミングで男性が訪れていたのかを推し量るのだとか。
そう語るおばあさん達が織機に腰掛け、両手両足を巧みに動かして独特のリズムを奏でながら織る姿を映像で観ていると、どこかパイプオルガンの演奏光景に似たものを感じます。同様にピアニストの寒川晶子さんも、織り姿がピアノを弾いている様に見えたと話していました。
このテーマに合うとして提供された藤田織物の帯は、今主流の機械では無く職人の手作業で立体的な造形をしており、それを寒川さんが「五線譜に書き込まれた音楽のよう」と表現していたのが、とても腑に落ちました。
作者が空けた穴に応じて、ころころと涼やかな音を響かせる手回しオルゴールもまたしかり。
「演奏会」「音楽会」と聞くとどこかのホールで、観客が身体全体で聴く事に集中するのも好きですが、人の息遣いや虫の声が聞こえてくるような小さな空間で、座布団に腰をおろしながら繊細な音を紡ぎだしたり実験的な試みができるのも、これからのクラシック界に面白い広がりをもたらしてくれるのではないでしょうか。

京のお昼間接待コース

9月14

hana 他府県の知人達が京都に来たので、「花咲 錦店」に案内しました。
以前に食通の方から教えてもらっていたお店で、実は、京都でも有名な料亭での修行経験を持つ人が腕をふるっているそうです。
最初のうちは一皿毎のボリュームが少な目かな?と感じますが、終盤になるとしっかりお腹も膨れて良い加減になります。
締めは、珍しく漬物のお寿司。じゃこご飯にも変更できます。
一番手頃な3300円のお昼の会席「柏木」コースを選び、適度にビール等を頼んでも、6名で3万円ちょっと。お土産に手作りのちりめんじゃこを一人ずつ頂けるのも心憎い演出中です。
中でも、かぼちゃのあんにぶぶあられをまぶし、あんかけにしたひと品は人気のメニューらしく、あちこちから「美味しい…」と匙ですくいながらしみじみと呟く声が。
細い路地を進めば町中の喧騒も感じさせず、肩ひじ張らずに寛げる個室に明るい和服の仲居さん、舞妓さんや芸妓さんを呼ぶ事もできるそうで、
「京都らしさのあるお店の和食で、もてなしたい」「できれば財布にも優しく…」というニーズに特化したお店を目指しているのかもしれません。
お店の人に見送られた後は、すぐそばの錦市場をぶらぶら歩き、「大国屋」の「ぶぶうなぎ」をお土産に持たせて、疲れたら「SOUSOU在釜」で一服。
客人にも楽しんで頂けたようでした。

車椅子で京都観光

9月7

cabik 手を上げタクシーを停めると、何だか普通の車両と形状が違う。
自分の前に踏み台が伸びてきて、後ろには車椅子ごと乗車できる仕様になっていました。
キャビック」という、送迎や福祉、京都観光を担うタクシー会社で、料金も運賃のみとのこと。京都のタクシーでPiTaPaやドコモiDにも対応しているのは珍しい。
今年の敬老の日は21日。連休の真ん中なので、身近なお年寄りに何か喜ばれることはできないかと考えている人も多いかもしれません。
足の悪い高齢者なら移動は楽にしてあげたいし、連れて行ってもらう方も、余り周りに気を遣わせたくないと思うもの。
少子高齢化が進み、東京オリンピックとパラリンピックを控えている日本にとって、こういうタクシーが増えていくのは必然的な流れでしょうね。
老若男女にハンディキャップのある人、妊婦やお子様連れの人と、様々な人々がいる中で、相手の立場でものを考えるのは意外と難しいものです。
やはり実際に体験した人が世間に生の意見をどんどん挙げていくのが、良き社会作りに繋がっていくのだろうと思います。
相手への思いやりや感謝はそのままに、誰でも気兼ねなく自然に観光を楽しめるようになるといいですね。

2015年9月07日 | 未分類 | No Comments »

伏見稲荷大社の呈茶所「松の下茶屋」

8月31

matu 非公開文化財特別公開の際に何度か公開されていた伏見稲荷大社のお茶屋の一部が、6月から呈茶所「松の下茶屋」として開放されています。
お品書きはお茶と和菓子のセット(1200円)のみで、訪れた時の飲み物は、抹茶と水出し煎茶、グリーンティーの中から選ぶようになっていました。
もとは当社の官舎であったのが後に料亭として使われ、再び大社が買い取ったという経緯があり、御所由来と言われるその風格漂う造りやしつらいに名残があります。
洋間もある屋敷の廊下を渡って大広間に足を踏み入れると、眼前に緑豊かな庭園が広がりました。
稲荷山から降りて来たばかりの火照った身体に、氷を浮かべた冷たいお薄や、甘みが濃厚に引き出された煎茶が喉をすうっと通り抜けていきます。
境内はたくさんの人で賑わっていますがこちらは静かで、かといって客足が絶えることも無く、すっかりお茶を飲み干した客人達は、銘々にぼんやりとお庭を眺めながら、心身を潤している様子。
5名以上の希望があれば、二階でお茶席を開いて下さるそうです。
お昼は賑やかなお稲荷さん参道の茶店できつねうどんや稲荷寿司などを食べ、お山を巡った後は松の下茶屋で庭と茶碗の緑でクールダウン、という参拝計画もいいですね。
土日と祝日、毎月1日限定の営業です。

パスザバトン京都祇園店

8月24

pass 元は料理旅館、その後天ぷら店となっていた祇園新橋にある伝統的建造物が、京都市へ寄贈され、この夏に新感覚のセレクト・リサイクルショップとして再活用される事になりました。
国の重要伝統的建造物群保存地区内の白川沿いに建つこの2階建ての木造建築は、明治時代中期に建てられたといい、保存活用を、との所有者からの意向を受けて「民間の自由な発想で、京都の文化を世界に発信する施設として蘇らせる」事を目的として活用する事業者が初めて公募された例となりました。
この店は「思い出の品」を所有者の思いと共に引き継ぐ人へ橋渡しするというコンセプトで、「安さ」を求めるリサイクルではありませんが、デッドストックとして倉庫等に眠っていた日本各地の陶器と豆菓子を組み合わせた商品(ミニ絵本付き)は、お土産としても、アンティーク入門としても記念に購入できる価格でした。
この店の家賃は、景観保全のための基金にも積み立てられるそうで、売り上げは出品者と店で折半し、出品者が希望すれば児童福祉や環境等に寄付する仕組みも設けられています。
カフェも併設され、内装は随分と現代的に変わってしまった感はありましたが、これも古いものと新しいものを融合させ、受け継いでいく為の良い塩梅を模索する現代の京都の姿でしょうか。
店内にいた外国人旅行者達の目にはどの様に映っていたのか、気になるところです。

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