e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

鴨社資料館「秀穂舎」

5月2

shu 15日に京都三大祭である葵祭を控えている下鴨神社では、鴨社資料館「秀穂舎(しゅうすいしゃ)」にて 現在「葵祭展-みあれの神まつりを開催しています。
京都では、「まつり」や「賀茂祭」と言えば葵祭の事を指すと聞いてはいましたが、15日に行われる路頭の儀等を「葵祭」と呼び、先だって12日に斎行される御蔭祭を「賀茂祭」と区別していたとも言い、この二つの重要な神事に分けて様々な資料を展示していました。
古文書ばかりが並ぶ小さな資料館だと思っていたら、神社学問所絵師の邸宅だった社家建築が活かされており、神棚の間には御神像やお供えを、茶室には葵祭と御蔭祭の貴重なフィルムを上映し、展示室間にある式台には鞍や雨笠、防犯のための鎖帷子等が置かれ、芽吹いた若葉が風に揺れる庭では、泉川に面して禊場も設けられており、単調さで飽きさせない様な構成になっています。まるで祈りと学びに満ちた暮らしぶりを追体験しているかのようでした。
いずれの祭も見学した事はありましたが、度重なる河川の氾濫を逃れて移転するまでは、御蔭神社は現在の御蔭山の中腹よりも麓の河に挟まれた場所にあったということや、戦後の葵祭の復興があらゆる文化に多大な影響を与えていったこと、至近距離で観る十二単や舞人の衣装など、また更なる発見をさせて頂きました。
なお、7日までは「京都非公開文化財特別公開」期間中につき、拝観料が本殿や大炊殿等の特別拝観も込みとなった料金体制となっているので、ご注意を。

鷹峯の、その奥へ

4月24

hase 北大路橋西詰にある老舗の洋食屋「HASEGAWA」の姉妹店があると聞いていたので、鷹峯の山奥へ。対向車が来ても行き交う事ができるのか、本当にお店は存在するのかと心配になるくらい細い道をずんずん進んで、ログハウスらしき建物「山の上はせがわ」に辿り着きました。
意外にも車が数台停まっていて、既に何組かの女性グループが食後の女子会トークを楽しんでいる様子。おばちゃんに注文をして、誰かの別荘だったのかと想像しながら薪ストーブや吹き抜けの天井を眺めていると、立派な体格の猫ちゃんがのそのそと横切って、ダンボールの上に丸く収まっていました。
メニューを裏返すと、「熊肉あります」と鉛筆で手書きしたメモが無造作に挟まっており、外の屋根付きデッキでは、BBQやすき焼きができそうなテーブルがたくさん並んでいて、複数の家族グループでも賑やかに楽しめそうです。
食べ終わってお茶していると、小ぶりな焼き芋をサービスしてくれました。
お店の周辺には何も無い(と思われる)辺鄙な場所にありながら、キッチンからはハンバーグの種作りをする音が頻繁に聞こえてくる辺り、こんな不便な場所でもお客さんはコンスタントに訪れるのかもしれません。
入り口側のデッキにはハンモックもあり、ちょっと車で市内から奥へと移動するだけで、家族揃って俄か森林浴も楽しめそうなスポットです。

2017年4月24日 | お店, グルメ | No Comments »

セレブ御用達のお寺

4月17

yoshi 先週末に勝持寺を訪れた後、せっかくなので、そこから車を15分程走らせて善峯寺へ。
竹の里らしく、桜と竹林の合間を縫って走っていると、所々個人宅の軒先に朝堀り筍が並べられているのが視界に入ってきます。
境内は桜もさることながら、山肌のあちこちに春霧が立ち昇り、樹齢600年を経た「遊龍の松」は霧雨に打たれて新緑の鮮やかさが増し、まるで龍が息を潜めて横たわっているかのような枝ぶりで、思わず足を止めてしまうのでした。
通常のお寺の2、3倍の規模はあるかと思われる宝物館も、寺の紋と徳川家の紋を配した大層な品が多く、善峯寺がいかに「セレブ御用達の」お寺であった事が伺えます。
境内にはソメイヨシノより少し遅れて咲く枝垂れ桜の蕾も多く見られ、公式ホームページからの情報によると、今週末も名残の桜が楽しめるかもしれませんね。

花と西行の寺・勝持寺

4月10

shouji 交通の便の良い桜の名所は車では近付きにくいので、市の中心部から少し離れた「花の寺」こと勝持寺へ桜ドライブをしてきました。
雨天で足元がぬかるんでいるのもあって人数はそう多くなく、傘や木の葉に当たる雨音だけが響きます。
ここで出家したと伝わる西行法師ゆかりの「西行桜」をはじめ百本を越えるとされる桜さの木が植わっているのですが、西行と言えばかつての大河ドラマ『平清盛』で藤木直人さんが演じていたイケメン西行をついつい思い出してしまうのですが。
すっかり桜とぬかるみに気を取られて上下ばかり見て歩いていましたが、ふと目に留まった木に張った苔や、草の鮮やかな青さに、新緑の季節の便りを受け取ったのでした。
勝持寺周辺には他にも、大原野神社正法寺など桜の美しい寺社があるので、桜尽くしの一日を満喫できますよ。

甘い京土産と甘くない京土産

4月3

mabusi 手土産にはよく甘いものが選ばれますが、相手によっては甘くない物が好まれる事もありますよね。 京都駅直結のJR京都伊勢丹地下にある「紫竹庵」を通りがかったとき、「松風」と「味噌松風」という言葉が目に留まって、思わず立ち止まりました。 恥ずかしながら、松風とは京都で限られた2,3の店舗でしか買えないものだと思い込んでいたからです。 「味噌松風」を包んでもらっているついでに、「何か、お酒のあてになるものはありませんか?」と尋ねると「まぶし昆布」を薦めてもらいました。 大徳寺のほど近くに本店を構える紫竹庵は、大徳寺納豆を用いた商品を多数揃えていて、この味噌松風も例外ではありまぜん。 自分が受験生だった頃、やたら生の胡桃や大徳寺納豆を食べていた記憶があり、今思えば疲れた脳が欲していたのかもしれません。また、祖父が食べ物の味比べをする際に、合間に大徳寺納豆を口に放り込んでいたという思い出話も聞いていて、自分にとってはなんとなく記憶に残る珍味なのでした。 「これなら大徳寺納豆そのものほどきつくないし、卵かけご飯やペペロンチーノにしても」とのことで、お土産用とは別に自宅に追加で買ってしまいました。 帰り際にも「冷奴にするなら、これふって胡麻油かけて」との一言の通り、早速夕食タイムに再現。普通の塩昆布に比べてしっとりと細かく、胡麻や柚子の皮の香りが爽やかで複雑な味を生みだしながらもすっと舌の中へ溶け込んでいきました。

2017年4月03日 | お店, グルメ | No Comments »

伝統産業の未来と課題

3月27

dentou 存在は知っていたけど、いつも素通りしていた施設はありませんか?例えばオフィスビルに挟まれた「京都伝統工芸館」。
安価で気軽に使える大量生産品とは違い、伝統工芸品は作品の作り手と消費者の相互の感性や好み、環境や経済事情の合致など、実際に購入に至るまでのハードルがよりシビアです。
いくら貴重で優れた技術で作られたものであっても、惹きつけられるようなデザイン力が無ければ人の心を動かす事はできないし、既製品との品質の違いは、ただ展示しているだけでは伝わりません。
また、次世代の担い手が不足するのも、収入面あるいは業界によっては体力面での不安が大きな要因となっています。
展示されていた若手作家の作品は、家に置きたくなるような現代生活を意識した物が多く、その創意工夫がこれから高まる海外からの需要への足掛かりとなる事を願います。
この日は漆芸と金工芸、金属工芸、仏像彫刻の実演作業中で、繊繊なアクセサリーを製作している女性職人さんとお話しました。
「壊れてしまった髪留めでも、ちょっと直せばまた使えたりするんですよ」
「片方無くしたけど捨てられないイヤリングを、似たデザインでもう一つ作ってもらえたりするんですか?」
入場の際に、次回無料で入館できるチケットを頂いたので、再訪の際には、職人さんに話したい事や相談したい事を仕込んでお邪魔したいと思います。

ぼた餅の別名

3月21

bota お彼岸と言えば「ぼた餅(牡丹餅)」。秋には「おはぎ」(お萩)」と呼ばれる事も多いですね。
夏や冬の別称もある事をご存じでしょうか。
ぼた餅の餅は米粒を残す、つまり「搗かない」、転じて「つきが無い」。
月(つき)が見えないのは冬の北の窓だから「北窓(きたまど)」。
「搗かない」が「着かない」となって、夜は暗くていつ船が着いたか分からないから、夏は「夜船(よふね)」という言い回しがあるようです。
糯米と餡のみという素朴さで、春や秋に限らず名前を変えて年中街角で売られているほど人々から愛されているお菓子だと言えますね。
また、日本人はそのものすばりの名称を語らず、湾曲した表現を好むようです。
例えば、厚揚げ。
焼いて縞の様に焦げ目を付けた厚揚げを「虎」と呼び、「『雪』にしますか?それとも『竹』にしますか?」と相手に問う、というお江戸の例えを聞きました。
『雪』の様に真っ白な大根おろしを添えたものを「雪虎」、『竹』に見立てた青葱と一緒にしたものが「竹虎」と呼ぶそうです。
なんでも無いおかずが、なんとも雅やかな品に思えてしまう不思議。
物質的な貧しさを心の豊かさに代えてきた昔の日本人の工夫が、そこに現れています。

2017年3月21日 | グルメ | No Comments »

京都で大人なパンケーキ

3月13

yuki 「〇〇って流行ってるんやね~」と興味は持ちながらも遠巻きに見ていて、評判を伺いながら間合いを詰めていくのが京都人。
「「雪の下」っていうパンケーキ屋さん、行ってみて!」と友人に言わながら、「人気のパンケーキ店って長い行列を待たないといけないでしょ」と多少敬遠していましたが、「パンケーキ」というハイカラな食べ物で全国展開するお店が京都に本店を構えているという事に興味が湧いたのもあって、ようやく入店を果たしました(梅田本店もあるそうですが)。
平日の夕方だったため、京町家を改装した店内は満席近くでもゆったりとした時間が流れていて、席に案内されるまでそれ程待つ事はありませんでしたが、焼き上がりには時間がかかるとのこと。
シンプルな料理だからこそ材料の良し悪しは顕著に現れるもので、それが最も分かりやすいのが、香り。運ばれて来る時から漂っていた卵の香りは、ナイフとフォークをバウンスさせると温度と湿度を伴ってより口内に広がっていきました。
トッピングに選んだクリームチーズも、まるで生クリームの様になめらかな食感で、濃厚なのに軽やか。添えられた苺のコンフィチュールもえぐみが無く、余分なものが入っていない、まさに手作りの味わい。
絞り出した業務用生クリームがどっさり、お砂糖たっぷりのガーリーなパンケーキとは一線を画する「大人向けパンケーキ」は、全体的に甘さ控えめ。メニューにも熱く語られている通り素材へのこだわりが強く、パンケーキよりもむしろそれぞれの素材が主役なのでした。
かき氷やパンメニューもあり、これは他のメニューも期待できそうです。

2017年3月13日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

「伊セ藤」で差し飲みひな祭り女子会

3月6

isetou 今年のお雛様は名古屋から来た友人と、北大路新町を東に入った「伊セ藤」(075-492-0161)へ。 余り飲めない彼女の選択で、さらっとの飲みやすい伏見の酒「鶴正宗」を差しつ差されつ頂いたのは、菜の花の辛し和えにぬた、蛤のお吸い物など直球のお雛様仕立ての献立でした。 定番メニューとはいえ、やはり家庭で作る味に比べて雑味が無く、どこか洗練されているのは、下ごしらえの段階から丁寧に手が加えられているのでしょうか。 大徳寺や茶道宗家にも近い場所柄、お茶人さんもよく訪れるそうです。 カウンターと座敷の半個室のあるこじんまりした店内には、地元の人が一人で、あるいは数名で訪れている様子で、観光客らしいお客は見かけませんでした。 入口は水打ちされた路地奥の料亭風ですが、中は街角の小料理屋さんのような居心地の良さ。 コースでも3500円からとお手頃価格で、英語が話せるスタッフもいるので、コース仕立ての和食が初めての外国人客を連れて行くにもちょうど良さそうです。

2017年3月06日 | お店, グルメ | No Comments »

ビューティフルドリーマー

3月1

sengoku 戦国時代といえば、武将たちの勢力争いや親兄弟による紛争に政略結婚など、殺伐とした印象が頭をよぎりますが、現在京都文化博物館で開催中の展覧会のサブタイトルの『A CENTURY of DREAMS 』に惹かれました。 まるで実況中継を観ているような「川中島の合戦図屏風」、シックで美しい具足、文に現れる心情や切れ味良い花押に刀と拵。 夢とは欲のようなもので、文化も花開かせていきました。 終盤を飾る「洛中洛外図屏風(上杉本)」の傍らには、画面上を指で操作しながら拡大して鑑賞できるデジタル画面 も楽しめます。 金色に輝く雲間に見えるのは、乱世による荒廃から復興しつつある都人の営みと、相反する勢力同士が共存する世界。 「夢」。それは戦国時代を越え天下統一を果たした秀吉が遺した句にも登場します。 時の強者たちや宗教者が抱き続けた夢と、同じ時代を生きた市井の人々の夢とはいかなるものだったでしょうか。 一変して、ミュージアムグッズ店では、プリントシール機や京人形伝統工芸士がプロデュースした甲冑風のトートバッグ 、組み立てて直ぐに着用できるダンボール製の甲冑などなど予想を上回るセレクトでございました。

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