職人の未来を繋ぐ
他の漆器の産地に比べて高価なものが多く、いわゆる「高級品」として知られている京漆器。
美しい蒔絵や光沢に目を奪われますが、その下にある木地の土台を担うロクロ木地師は、京都に独りしかいません。
北山の檜や京都府産の漆を使い、製作工程も全て京都で行うなど、常(日常使い)の京漆器作りを通して将来の職人達の仕事も生み出していこうという「アサギ椀プロジェクト」が始動しました。
発案者の故・石川光治氏の意思を受け継ぎ、京都でただ一人のロクロ木地師の西村直木さん、塗師の西村圭功さんと石川良さん、漆精製業の堤卓也さんらが進めており、その取り組みを紹介する展覧会が19日まで「The Terminal KYOTO」にて開かれています。
既に滋賀県の日野椀が、妙心寺のこども園に器を納めているように、京都の保育園でアサギ椀を子供達に使ってもらおうという計画も進められています。
アサギ椀の子供椀は、あえて幼い子が扱いやすくするような細工はせず、大人の椀がそのまま小さくなっただけの姿かたちをしています。
落としても投げつけても割れにくいプラスチック容器と違って、落とさないようにこぼさないように両手で包み込み、漆が剥げないように箸やフォークをやさしく当てるなど、物を大切に扱う姿勢が自然と身に付くよう、しつけの意味も込められているのだそうです。
幼い我が子にも、食洗機で洗えるプラスチック容器で食事をさせる事が多いのですが、それでもいつも同じ食器では味気ないと思い、手洗いが必要な木地の椀や割れないよう注意が必要な陶器の小皿なども、料理に合わせて出しています。
同じ素材、同じ色で統一された西欧の食器とは違い、様々な素材の器で食事を取るのも、日本文化の豊かさの現れだからです。
サンプルのアサギ椀を掌で撫でながら「やはり雑貨店で買うものとは値段が違う…でも痛んでも塗り直して末永く使えるし、入金は椀を受け取る2か月先でいいみたいだし、子供の小さな指先でも感じ取るものがきっとあるだろう…」と悶々と思案した末に予約を入れる事にしました。
小ぶりで軽い漆のお椀は、外でお茶を点てる時にも便利かもしれません。手元にやってくる桜の季節が楽しみです。