e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「動く美術館」たる所以 

7月8

gion

今年の祇園祭は山鉾の建つ姿が見られないので、代わりに京都文化博物館での特別展『祇園祭 -京都の夏を彩る祭礼-』展に行く事にしました。

入館してすぐ手を消毒し、モニターで自分の体温をチェックして、ビニール幕越しに入場券を購入。
会場前では名前と連絡先を記入した紙や自分の手でもぎった半券を手渡しではなく専用箱に投入。

いつもなら人混みを気にしながら落ち着かない気分で観ていた懸装品の数々や、空を仰いで遥か高いところにある鉾頭、船鉾のご神体・神功皇后の神面、各鉾町によって意匠の異なる籤の小箱など、普段は間近に観る事のできないものが目の前に。
金具の一つ一つ、屋根裏に至るまで、精巧な彫刻、名立たる絵師による下絵と本作、目の詰まった重厚な刺繍、舶来品を購入した事を記録した古文書などに、
「これは鉾町のパトロンだった糸へん業の旦那さん達が競い合うわけやわ」「そら修復にお金かかるわ…」といちいち圧倒されていました。
西脇友一氏による緻密な『祇園祭山鉾絵図』の原画の小ささには驚き。昭和60年完成という古さを感じさせないデザイン性も負けてはいません。

平日の空いた会場の中で、目の不自由な人がお連れさんと静かに語らいながら鑑賞されていました。
今年は祭の熱気や鉦の涼やかな音色を直接体感する事は叶わないけれども、何か肌で感じるものを求めていらっしゃったのでしょうか。

最初はまだ慣れない様式に戸惑いながらの会場入りでしたが、いつの間にか自分がマスクを付けていた事も忘れていました。
願わくば会場に祇園囃子を流してもらえたら…なんて思ってしまいましたが、駄目かな…!?

島原のオンラインお座敷

7月1

mai 日本最古の公許花街である島原。その如月太夫さんによる輪違屋でのお座敷模様がオンラインで中継されました。
太夫道中、かしの式、お茶のお点前、胡弓の演奏に、太夫にしか許されていない舞など…2500円という視聴料で、自宅に居ながらにして観られるとは信じられないひと時でした。
京都の住民ならではのミニツアーが人気の「まいまい京都」による前代未聞の企画です。
もとより信頼関係が築かれていたからこそ実現されたのでしょう。

帯を「心」の文字の形に結んで進む太夫道中は、嵐山の三船祭常照寺でも間近で拝見した事はありましたが多くの人に囲まれていたため、オンラインでは内八文字を描く高下駄の音まで静寂の中で聞き取る事ができました。
優れた教養を持つ最高位の遊女である太夫と客との、いわゆるお見合いの場でる「かし(仮視)の式」にて太夫が盃を鏡のように持ち上げると、自宅でTシャツ姿だった自分も思わず背筋を伸ばし、姿勢を正したくなるのでした。
実際のお座敷なら、きっと粗相が無いようにと緊張して沈黙していたかもしれませんが、チャット機能での参加者の反応がリアルタイムで流れるのもまた面白い。
かわいらしい禿ちゃんが運んできたお菓子を「美味しいです。」とコメントする人多々あり。

後半の質問タイムでは、如月太夫さんや輪違屋のご当主の声も初めて聞く事ができ、二人のウィットのきいたやり取りは、流石おもてなしのプロです。
参加者が次々と「夢のような時間」と書き込んでいた2時間は、あっという間に流れていきました。

なお好評により、見逃してしまった人には、2020年7月4日(土)まで「見逃し配信」で観る事ができます。

初めての町家暮らし

6月22

machiya またまた縁あって、今度は北大路にある借家にも滞在していました。
今年の春先から初夏にかけての1か月間、家族で初めての京町家暮らしです。

台所はIHコンロ、寝室はベッドといった、現代人の暮らしに合わせてリノベーションされた町家だったのですが、玄関から入ってすぐの土間だったであろう場所にタイルを敷いたダイニングスペースだったので、食事や走り庭の台所での炊事は靴やつっかけを履き、プライベートな部屋に入る時はそれらを脱ぎます。
動線を考慮した現代向きの造りでは無いので、一日に何度も家の中でつっかけを脱いだり履いたりする必要があります。
昼でも薄暗く、門前の部屋と壺庭に面した窓を開放しておくと風が流れてひんやりと気持ちがいいのですが、底冷えの京の冬ではエアコンだけだと肌寒くなるかもしれません。
台所のシンクの横、おそらく昔なら井戸を置いたと思われる場所に冷蔵庫や洗面台があるので、お風呂を一歩出ると洗面所は無く、脱衣の際には後付けのアコーディオンカーテンで目隠しをします。
階段もとても急勾配で、そんな「ちょっとずつ不便」なところに、妙に町家らしさを感じたりもしました。

駅の方へ歩けば北大路ビブレ(滞在中は1階のみの営業でしたが)や北大路商店街に鴨川、反対側に歩けば新町商店街や児童公園があり、なんでもコンパクトに揃ってとても便利な立地。
2階の床の間のある座敷は余り使う事が無かったのですが、週末の外食の代わりに仕出しを頼んでみたりと、普段通りの生活を送りながらも非日常感を味わえる不思議な感覚。
京都観光リピーターの中で、ホテルでも旅館ウィークリーマンションを選ぶ人達の気持ちが少し分かるような、貴重な体験でした。

2020年6月22日 | 町家 | 1 Comment »

うどん、寿司、フレンチの「三密」

6月17

asahi
以前より外に出る事に対する罪悪感が少し和らいだと思ったら、雨が窓を濡らす季節の到来。
時々は窓を開けて湿気でこもった空気を入れ換えながら、しばらく雨音に耳を傾けるのは悪くありません。

子供達が大好きな唐揚げやエビフライの弁当も、ちょっと飽きた。大人用のお弁当はフレンチにしてみるのもいいかも。
「へぇ、たまにはいいね!なんてお店なん?」
「えーと、千本丸太町の『阿さひ』」。
フレンチのお店とは思えない店名です。正式には「阿さひ et Rive gauche (あさひ エ リヴ・ゴォシュ)」。
昼間はうどんと寿司のお店として営業されているそうで、
狙っているのか外装に無頓着なのか、お弁当が入っていたビニール袋もお寿司屋さん柄で笑いを誘います。

パテの乗ったスライスバゲットやテリーヌなど手の込んだおかずがこれでもかというくらい、ぎゅっと詰まっているので、
男性には小ぶりかと思う折詰でも十分にお腹いっぱい。
ぜひワインに合わせて、大人だけの家飲み時間を。

2020年6月17日 | お店, グルメ | No Comments »

瑞穂の国のシリアル

6月10

pon
抹茶ポン」なるお菓子を頂きました。
「へえ~お赤飯以外にもこんな商品作ったはるんや」と、赤飯とお餅で有名な「鳴海餅」と混同してしまいましたが、正しくは西院にある大正12年創業の「鳴海屋」の商品でした。
よくある棒状のポン菓子ではなく、一粒ずつのパラパラタイプ。
「スプーンで食べるんやろか。大粒やけど、何かにふりかける?」と裏の表示を見ると、「おすすめの召し上がり方」として、「ミルクをかけてシリアル風にお召し上がりください」とのこと。
これは美味しそう!
翌朝、トーストを乗せる平皿の代わりに、シリアル用のやや深めのボウルをサーブ。やっぱり白い器の方が色合いが優しく映えます。
シリアルは、食べる直前に牛乳を注いで、サクサクの粒感と香り、牛乳に溺れてふやけたやわらかい食感を同時に楽しむのが身の上。
100%国産のうるち米の香ばしさ、甘いけどしつこくない砂糖蜜、宇治産の抹茶に食塩という原材料のシンプルさ。
舌で粒の塊を押し潰すと、全てが溶け合った抹茶ミルクがじゅわっと溢れてジューシー。
他にも、「黒糖ポン」や「しょうがあられ」、「ものすごく辛い七味サラダ(おかき)」等もあるそうで、京都のええもんを取り扱うお店が一丸となった復興プロジェクト”SAVE THE KYOTO”にも参加しているようです。
ワンパターンだった朝の食卓風景がちょっと華やぎました。

2020年6月10日 | お店, グルメ | No Comments »

京都に鴨川があって良かった。

6月2

saryo
自粛が段階的に明けつつあるとのニュースを聞くだけで、ずいぶん気持ちも軽く明るくなりますね。
重い課題が解決された訳ではありませんが、いつ終わるか分からなかった暗いトンネルの先に一筋の光が見えただけでも希望としたいところです。

久しぶりに賀茂川に出てみて川辺に腰掛け、夕方の涼しい風にあたりました。
もしも「京都らしい景色」を尋ねられたら、きっと迷わず「鴨川(賀茂川)」と答えます。
賀茂川があるおかげで街中でも広い空と、こんもりと茂る緑に触れられるから。
家族と外を歩けるという何でも無いことが本当に幸せだと、周りの人も実感していたに違いありません。

まだまだしばらくはテイクアウト生活を続けます。
普段は敷居の高いお店でも、お求めやすい価格でお試しできるのがお弁当の魅力。
お弁当というと、揚げ物と濃い味付けが主流ですが、下鴨茶寮「おうち料亭」は塩分控えめ、あっさりした味付けを求める方向けです。
天婦羅おむすび等が入った「和牛すき焼きと贅沢おにぎり」は、1,800円(税抜)。
これにお吸い物も追加してもらって、温もりをプラス。

配達が可能なエリアもあるので(有料)、元気を出して欲しい人への差し入れにもいかがでしょうか。

2020年6月02日 | お店, グルメ | No Comments »

「空気をまとう」京和晒綿紗

5月26

sarasa 外出する日数が少なかったせいか、初夏を飛び越えて既に夏に入ってしまったかのような気候です。
エアコンをつける程でもないけれど、室内だとちょっと蒸し暑いときも。
巣ごもり生活の長い夜を快適にすごすため、寝具を旅館風に変身させるのも楽しいですね。

老舗寝具メーカー・大東寝具工業「ねむりの蔵」による「京和晒綿紗」は、国内わずか数台という稀少な和晒窯で4日間かけて繊維の奥にある不純物まで取り除いたあと、天然水で洗い流すなど全ての工程を国内工場で行い、柔軟剤を使わなくても洗うほどにふわふわの手触り。
一般の多重ガーゼ生地とは異なる独特の物作りの詳細は、ぜひ公式サイトをご一読ください。
ガーゼの寝具は、夏の寝汗を吸い取って放出させるので手触りもさらさら。
一日の終わりは肌もノーストレスにして、全体重を布団の中に委ねる幸せの時間に。

これから過酷な夏を迎える赤ちゃんを優しく包むギフトセットもあります。
綿のタオルより更に軽くて風を通すので、お風呂上がりも気持ちよさそうですよ。

2020年5月26日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

仕出しは「日常の中の非日常」。

5月18

akoya
今年の母の日は、「阿古や」(075-441-3988)の仕出しを頼んで、家に両親を招待しました。

時間通りに運ばれて来た木箱には、塗りの弁当箱のほか、人数分のお椀と椀種。それにおつゆの入ったアルミのポットが付いています。
「写真を撮って、自分のブログに紹介させてもらってもいいですか?」と尋ねると、
「ああ~どうぞ。うちはネットでも余り情報が出てこないので…。」

お弁当や飲み物をセッティングしたら、コンロで温めた吸い地を、種を入れた椀に張ります。
湯気と木の芽の香りが台所に広がり、高揚した気分とともに食卓に運びます。
皆で揃って蓋を開けた時の鮮やかさ。
赤くて艶のあるもの、瑞々しい緑。素材の良さだけでなく、それらを活かすための丁寧な手作業が加えられているから。
お弁当におすましも付いて、これで3000円とはお値打ちではないでしょうか。

自宅あるいは宿泊先なら、子連れでも互いに気が楽です。
泊まりがけなら、帰りも気にせずごろんと横になってくつろいでもらうのもいいでしょう。

容器類は翌日取りに来られるので、再び木箱に納めて返却します。
「昨日はいい写真撮れましたか?」

仕出しは「日常の中の非日常」。来月の父の日の演出への、一案です。

2020年5月18日 | お店, グルメ | No Comments »

絆をつなぐ刀

5月11

youkan 二尊院や祇王寺にほど近いところに店舗を構える和菓子屋「京都一夢庵大ふへん堂 嵯峨嵐山店」。
全国の百貨店や博物館等で「刀剣武家ようかん」を観た事がある人も多いのではないでしょうか。

祇王寺は緊急事態宣言が解除されるまでの間は拝観を停止されているため、「模造刀お触り放題」のこの店も暫くは要予約制となっていますが、
インターネット販売は好調のようです。

今年の大河ドラマ縛りと味の種類で選びました。
これらをステンレス菓子切り「羊羹切日本刀ナイフ」で一刀両断するのがまた楽しいのです。
雛人形にも持たせられそうなこの小刀。収める袋も思案中だとか。
お茶席があれば、稽古に行けたら、何食わぬ顔をして抜刀するのに…!!

ちなみに、二尊院は5月15日(金)より一般拝観を再開されるそうです。

通販なら、遠く離れたところに住む人にもお届けできます。
日持ちもするので、6月21日の父の日のプレゼントにいかがでしょうか。

龍安寺参道商店街を上ル下ル

5月8

sasaya
縁あって、GW中は龍安寺近くで個人が所有する町家を借り、家族だけで滞在していました。
とはいえ、周辺の寺院はことごとく拝観休止である事は知っていたので、外出したのは殆ど食事に関する時だけ。
例年なら多くの人で賑わっていたと思われる龍安寺参道商店街も、空いているお店はちらほらで、
主にテラス席のあるところや他客との距離が取れるお店、お持ち帰り専門で営業をしているところが殆どでした。

妙心寺と龍安寺に挟まれたエリアは、タバコ屋とパン屋が一緒になったようなベーカリーショップ、何でも揃い高齢者にとって便利そうな小規模スーパーがあり、住宅地への横道に目をやると遠くで子供達が路上で遊んでいたり、通りすがりのおじいさんに話しかけられたりします。
住宅に埋もれて見落としそうな駄菓子屋さんもひっそりと開店中。嵐電の踏切の音がことさら響くような静けさと相まって、まるで昭和から時が止まったかのようなノスタルジックな気分になりました。
それでも、大正期創業という「さくらいや」というスーパーにはとようけ茶屋の商品が置いてあったので思わず買って帰り、宿のフライパンでお揚げさんを焼き、醤油をたらして楽しみました。

お土産には笹屋昌園の「本わらび餅 極み」を。
本わらび餅の出来立ての美味しさを味わうための「SASAYASHOEN CAFE&ATELIER」が話題となったお店の本店です。
国産本蕨粉の中でも、希少で雑味が少ないという国産最高ランクの本蕨粉を使い、機械を使わず銅鍋の中で練り上げるのはきっと骨が折れる作業のはず。
箱に流した状態のわらび餅をスプーンでぐいっ力くすくい取り、添付のきなこや抹茶を付けて食べますが、むしろ何も付けなくてもおいしい。
このすっきりとした透明感と清涼感は、和菓子が苦手という人にもおすすめです。

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