言の葉を集めて
前回お話したコテージの部屋の隅に、さりげなく小冊子が並べられていました。
『桑兪(そうゆ)』と読むそうで、誰もが知る京都の料亭「和久傳」 が発行しているもの。
京丹波は和久傳の創業の地でもあります。もう随分前の創刊のようですが、これまでその存在を知りませんでした。
文筆家・白洲信哉氏や臨済宗相国寺派管長の有馬賴底氏といった錚々たるメンバーによる、いわばエッセイ集です。
「兪」とは楡(ニレ)の木の事で、桑も楡も糸や紙の原料となる植物だそうです。
いわば、この冊子は言の葉の、あるいは言葉という形となる以前の記憶の粒子の集合体と言えるでしょう。
SNSを開けばコメントが付き、掌のスマートフォンや乗り込んだタクシーのモニター画面からは新着ニュースや広告が表示され、動画を再生すればテロップが流れる。
日々言葉の洪水にさらされていながら、私達の「ことば」は果たして深化しているのでしょうか。
物書きをする身として自分の語彙力や人生経験の少なさを改めて実感し、こんな文章を自分も綴る事ができたらと思いながら閉じました。
短い滞在で一部しか目を通せなかったのですが、短編集なので読書離れしていた人にも好きなところから読み進めやすいかもしれません。
京丹後市にある「和久傳ノ森」のレストランや、オンラインショップでも購入できます。