e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「オンライン〇〇」生活

2月10
※画像はイメージです

※画像はイメージです

「オンライン〇〇」生活も定着してきました。

先週末は、学生時代の先輩方と「オンライン飲み会」に初参加。
お祝いごとの寄せ書きもオンラインで集めて発注できるんですね。

また、今年は茶道藪内宗家による「オンライン初釜」なるものも滑り込みで参加してみました。
事前に申し込めば、お茶席と同じ末富の薯蕷饅頭と干菓子、福引のくじが手元に届けられます。
自分が習っているのとは異なる流派で、そもそも宗家の茶室など茶道を学ぶ人でも易々と入れる場所ではありません。

自宅に居ながら燕庵の松籟を聴き、立ち昇る湯気を感じ、お正月らしい取り合わせの道具と太刀を振るような武家茶のお点前を鑑賞。
古田織部が好んだ燕庵は、現在のものは兵庫県有馬から移築されたもので、「燕」とは「くつろぐ」という意味があるそうです。
利休の待庵には3つの窓がありますが、こちらには10もあり、柄杓を蓋置に落とすタイミングで外から簾が巻き上げられてより明るくなる演出が楽しめます。
御家元直筆の色紙には「一花開天下春(一華開いて天下春なり)」の文字。これには「一塵起大地收(一塵起こって大地収まり)」という言葉が先立るようで、まさに現在の私達が願う春と言えるでしょう。

疎遠になってしまっていた人、会うに会えない距離感の人々と一瞬で繋がる事ができる。
行きたいけどなかなか足を踏み入れられないところに人目を気にせず入っていけるのもオンラインならでは。

ここのところ、音声による新たなSNSが話題になっていますが、どんなツールでも使う人同士の「一座建立」の気持ちで良い和(輪)を作っていきたいですね。

八瀬のもみじ

12月9

yase
先月末は名残りの紅葉を求めて歩き回りました。

叡電「八瀬比叡山口」駅から徒歩数分、「ケーブル八瀬」駅のすぐ手前にある「八瀬もみじの小径」はどんな所なのだろうと。
かつて「八瀬遊園」があった約3,700㎡の敷地が傾斜のある散歩道に整備されており、これまで「知る人ぞ知る紅葉の名所」だったようです。

やはり紅葉の盛りは過ぎていましたが、赤く染まった一面の落ち葉をふかふかと踏みしめる感触が、普段コンクリートの地面で固くなってしまっていた足裏に心地いい。
ラジオ塔や水力発電所の跡、平安遷都千百年記念橖が点在していて、寺社と紅葉がセットの場面が定番の京都としてはひと味違う景色です。

約300mの回遊路のあちこちにベンチがあり、周辺にもライトアップ期間中のみ昼から出店しているキッチンカーや臨時の休憩所もあるので、珈琲等の温かい飲み物やおにぎり、パニーニといった軽食も手に入ります。
これが紅葉の色付きの盛りであれば、お腹を満たしながら紅葉もお腹いっぱい味わえるスポットだと思いました。
近くに瑠璃光院エクシブ京都八瀬離宮への入り口もあり、電車の乗り換えの待ち時間を過ごすのにいい立地です。
来秋のご参考までに。

高雄の空気で元気をチャージ

11月11

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夏の貴船の川床に続き、この秋は高雄のもみじ床を目指しました。
高雄は古くからの紅葉の名所のため、例年なら渋滞を懸念して自家用車で向かうのをためらうところですが、今年は外国人観光客が少なく紅葉シーズン序盤という事もあり、車の流れは比較的スムーズでした。
ちょうど「高雄もみじちゃん祭り」の開催期間中だったので、屋根が開いたスカイバスが無料で運行していました。
1時間に2本というダイヤで、タイミングが合わず乗れませんでしたが、紅葉が彩る山間を走るのは、さぞ爽快な乗り心地だったと思います。

もみぢ家の川床で琴のBGMを聴きながら湯豆腐なんて、なんてベタなんだろうと思いつつ、やはり紅葉のグラデーションが映る川面と瀧の音が織りなす渓谷の風情は足を運んでこそ。
思っていたほどまだ寒くもなく、開けた景色に行き交う人々の表情も晴れ晴れとしています。
生活圏を離れて、澱みが濾過されたような冴えた空気を吸い込むと元気が出ます。
今年はそんな当たり前な事さえも気持ちを晴れやかにしてくれるのかもしれませんね。

お土産に、道中でもみじの天ぷらや鮎の佃煮を買って帰りました。
見頃はまだまだ続きそうです。11月の土・日・祝日の11時から夕方頃まで高雄の一部の地域は車両通行止めとなりますので、ご注意くださいね。

京都の街が美術館

10月13

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KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は体験されましたでしょうか。
京都市内のギャラリーのみならず、町家で、商店街で、寺院で、書店で、府庁など各地で展示される作品群は、時として周りの景色も借景として完成をみます。
普段は入れないようなところ、知らなかったところが会場になっていたりするので、普段アートに接する機会が多い人もそうでも無かった人でも、新たな街あそびとして楽しめます。
絵画には額縁が、掛け軸には表装があるように、作品をとりまく環境もアートのうち。小さな子供達にも肌感覚で感じてもらえるかもしれません。

写真家、著述家であり、かつて今出川通寺町西入ルにあった名物喫茶「ほんやら洞」の店主だった甲斐扶佐義さんの作品は、秋風に誘われて老若男女が集う鴨川三角州の周辺に登場。
また、京都駅ビルの空中径路には、京都で見つけた美女の肖像100点が並んでいます。
幅広い年齢層、国籍の女性達の美しい笑顔はもちろんのこと、その背景から撮影場所はどこか、ついつい想像を巡らせてしまいます。

途中で京都タワーを正面に臨むこの静かな会場は17時までですが、陽が傾いてきた昼と夜の合間の時間帯がおすすめです。

今年の地蔵盆は…

8月19

jizou
五山の送り火の翌週辺りの週末、京都市内のあちこちで地蔵盆が行われます。
お堂の中のお地蔵さんを出して祭壇に飾り、町内の子供達は円座して長~い数珠を繰り回したり、おやつをもらったりゲームをしたり。

幼い頃に住んでいたマンションの一角にお地蔵さんがあったので、広いガレージにゴザを敷いて大規模な地蔵盆が行われ、スイカを食べたり花火をしたり楽しんでいました。
現在のような猛暑も無く、夕方になればお風呂上りの子供達が浴衣に袖を通して再び集まり、大人達もビールや枝豆を片手にご近所さんと談笑。

お地蔵さんのいない町に引っ越してからは、夏の催しすら無く、同じ京都市民でありながら地蔵盆が憧れの行事となってしまいました。

京都に限らず滋賀、奈良、大阪、兵庫、福井でも行われている地蔵盆ですが、京都のはお地蔵さんの顔に白粉が塗られ、お化粧が施されているのが特徴なのだそうです。
行事は町ごとに異なりますが、子供達も参加してお地蔵さんのお顔や身体を洗い、夏日で乾かして再びお化粧を施します。
これは「荘厳」と呼ばれる仏像や仏堂を飾り立てる行為に相当するのだとか。
町内の子供達の健やかな成長を願う夏祭りだと思っていたのですが、地蔵盆(地蔵祭・地蔵会)は、町内で亡くなった人への供養や、町内に関する事への祈祷の場でもあったそうです。

道路を通行止めにして大集合する町もあれば、少子高齢化がすすみ大人だけで行うところもあり、継続が困難になって、お地蔵さんの魂を抜く「お性根抜き」を行い、その歴史に幕を下ろしたところも。、
それでも京都市歴史資料館に展示されていた「地蔵盆マップ」を観ると、大なり小なり、かなりの数の地蔵盆が今でも行われているようで、ちょっと安心しました。
今年はどうでしょうか。「遠くの親戚より近くの他人」ということわざが、ふと頭をよぎります。

9月10日にはギャラリートークも開催されます。
ちなみに、今年は「京のテレ地蔵盆」なるコンテンツが公開されており、地蔵盆とはご縁のない地域の人々も、壬生寺副住職によるお話や、数珠まわしの動画を観ることができます。

2020年8月19日 | お寺, イベント, 歴史 | No Comments »

2020年の祇園祭は②

7月29

sinme 31日で今年の祇園祭は幕を閉じます。
2020年の祇園祭も例外なく数々の神事が縮小や中止となり、山鉾建てや宵山の賑わい、山鉾や神輿の巡行も行われませんでした。

山鉾巡行と神輿の渡御に代わる「御神霊渡御祭」では、神霊を移した榊と神宝を持った列が氏子地域を練り歩きました。
これは、応仁の乱で多くの山鉾が焼けて復興が叶わなかった頃に、室町幕府から「神輿の修復が間に合わなければ、榊をもって代用とするように」とのお達しに基づいたものだそうです。
八坂神社の祭神は神籬に移され、それを白い神馬が運び、大政所御旅所や又旅社、神泉苑にて神事が斎行されました。
四条御旅所の前では、通りがかりの人達も手を合わせていました。
おそらく、今年は殆どの人が同じ願い事をしているのではないでしょうか。

人が殺到してはいけないので、巡行ルートは伏せられていましたが、
輿丁たは神輿を担ぐときの装束を身にまとい、肩寄せあって手拍子と「ホイット!ホイット!」の掛け声を挙げていました。
形を変えてでも、リスクを負っても神を送りたい気持ちが溢れてしまう。これもまた人の性ですね。

聖俗がせめぎ合い、疫病リスクを避けながら取材する事の難しさを考えさせられる2020年の祇園祭でした。

島原のオンラインお座敷

7月1

mai 日本最古の公許花街である島原。その如月太夫さんによる輪違屋でのお座敷模様がオンラインで中継されました。
太夫道中、かしの式、お茶のお点前、胡弓の演奏に、太夫にしか許されていない舞など…2500円という視聴料で、自宅に居ながらにして観られるとは信じられないひと時でした。
京都の住民ならではのミニツアーが人気の「まいまい京都」による前代未聞の企画です。
もとより信頼関係が築かれていたからこそ実現されたのでしょう。

帯を「心」の文字の形に結んで進む太夫道中は、嵐山の三船祭常照寺でも間近で拝見した事はありましたが多くの人に囲まれていたため、オンラインでは内八文字を描く高下駄の音まで静寂の中で聞き取る事ができました。
優れた教養を持つ最高位の遊女である太夫と客との、いわゆるお見合いの場でる「かし(仮視)の式」にて太夫が盃を鏡のように持ち上げると、自宅でTシャツ姿だった自分も思わず背筋を伸ばし、姿勢を正したくなるのでした。
実際のお座敷なら、きっと粗相が無いようにと緊張して沈黙していたかもしれませんが、チャット機能での参加者の反応がリアルタイムで流れるのもまた面白い。
かわいらしい禿ちゃんが運んできたお菓子を「美味しいです。」とコメントする人多々あり。

後半の質問タイムでは、如月太夫さんや輪違屋のご当主の声も初めて聞く事ができ、二人のウィットのきいたやり取りは、流石おもてなしのプロです。
参加者が次々と「夢のような時間」と書き込んでいた2時間は、あっという間に流れていきました。

なお好評により、見逃してしまった人には、2020年7月4日(土)まで「見逃し配信」で観る事ができます。

妙顕寺の桜

4月1

myoken

通院の予定があり自家用車で京都市内を走っていると、だいぶの開花が進んできているようです。
かつての混雑ほどでは無いものの、週末の四条通り沿いはそこそこの人々が往来していて驚きました。
祇園を離れ、堀川寺之内へ。本堂が広く開けていて人同士の接触も少なそうだと思い、妙顕寺で下車しました。
人影もまばらで静かな境内は、染井吉野が可憐に咲きこぼれ、枝垂れ桜はピンク色の蕾を膨らませて出番をひっそりと待っているようでした。
中に入ると、青い苔が美しい坪庭に出逢い、そこに流れ込んだ風に孟宗竹が微かに揺れていて何とも涼しげ。
いつもなら、訪れた感想を色々と書き連ねるところなのですが、どうも筆が進みません。
人が少ない所を観光してください、とは安易に申し上げられません。
ですが、今年の桜が散ってしまっても、桜の木や咲いている場所が突然無くなるわけではありません。
にわかに吹いた風に舞い散る花びらの奥に、うねるような幹の逞しさを観ていると、これらの桜は、私達が生まれるよりずっと前から毎年花を付けてきたのかもしれません。
人間が大騒ぎしている外の世界とは違う時間が流れているようでした。 →妙顕寺の桜の画像はこちら(e京都ねっと公式フェイスブック

伝統工芸品は「飾る」ものから「活用する」ものへ

3月24

miyako
岡崎のみやこめっせ地階で京都市の伝統産業74品目を紹介する「京都伝統産業ミュージアム(旧「京都伝統産業ふれあい館」)」がリニューアルオープンしました。
あいにく新型コロナウイルス対応のためオープニングイベントは縮小され、手に触れて体験できるはずの展示も眺めるのみとなっていましたが、伝統工芸品が平然と陳列されていた印象だった以前のレイアウトは、より回遊式でスタイリッシュになっています。
まるで「和」をメインコンセプトとしたセレクトショップ、ショールームのようで、奥の一角にある「マテリアルライブラリー」は、生産者と素材を探す人の出会いの場であり商談スペースでもありました。
職人の技と仕事を、博物館の様に展示・紹介するだけでなく、より現代人の暮らしに寄り添い、ビジネスとしての具体的な道筋を作り、継承に繋げていこうという狙いを感じます。
実演スペースでは、普段足を踏み入れられない工房で黙々と進められているであろう作業を間近に観せてもらう事ができ、実際に職人さんに話しかけている来訪者も。
網代編みのブリーフケースや、京金網とクリスタルビーズを組み合わせたポーチなど、新たな感性で編み直された工芸品には驚かされ、足を止めて見入ってしまいます。
年に3~4回企画展が開催される予定で、4月18日からは、6人の職人の家族写真を通して伝統工芸の事業・技術の「継承」を探る企画展「継ぐもの-In between crafts-」が始まります。
入場無料、入り口そばには「ミュージアムショップ」があるので、岡崎に来る毎に「ひと味違う」お土産探しにみやこめっせに立ち寄ってみるのもいいですね。

梅宮大社の神苑

2月26

ume
暖冬の影響なのでしょう、京都市内の梅が見頃となり早咲き品種の桜まで咲き始めているところもあるようです。
訪れた梅宮大社はその名の通り、鳥居の前から梅が出迎えてくれました。

神苑に入ると広い池が現れ、一気に視界が広がります。雨が上がったばかりで梅の枝にはたくさんの雫も連なっていましたが、やはり花が多く咲いている木ほど、近づくと香りが濃厚になります。
曇り空には紅梅が目を引きますが、実は白い南高梅の裏側のがくの部分も一回り小さな紅梅のようで可憐です。
足元には水仙の清らかな白、若草色の葉の中に混じっているのは…もう黄色い山吹が咲いている!?
今咲いている花々も美しいのですが、昨夏に見頃を終えて枯れた紫陽花の姿も、普段観る事が無いのでなんだか胸に残りました。

3月第1日曜日には「梅・産(うめうめ)祭」が斎行されます(今年は祭典のみ。梅ジュースの無料接待は中止です)。
まだ丸く膨らんでいる蕾もあったので、なんとか梅見も叶うのではないでしょうか。

神苑の花の開花状況はこちらで紹介されています。

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