e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

上村松園展

11月9

jo美人画の大家・上村松園の過去最大級の回顧展が京都国立近代美術館で開催されています。

心の機微も見落とさない観察力から生み出された作品からは、人物の表情やふとした仕草から香り立つような清澄な気品が漂い、狂女を題材にしたものでさえ「不気味」や「恐ろしい」といった言葉だけでは片づけられない優美さを感じさせます。

金剛流の謡曲を学んでいた松園は、『花がたみ』で描いている照日の前の顔に「十寸髪」の面を写生し、初代金剛巌氏の助言を元に、『焔』の六条御息所の白眼部分には絵絹の裏から金泥を施しました。
感情をあるがままに描くと卑俗になる恐れがありますが、あらゆるものを削ぎ落としたその先に最も核の部分が凝縮されている。当時スランプ中だったという松園に、古典が答えてくれたのです。

松園が理想の女性像とし、映画の題材にもなった『序の舞』は前期に、『焔』は後期に展示されるので、お見逃しなく。

2010年11月09日 | 芸能・アート | No Comments »

「序の舞」

10月25

butai 金剛能楽堂にて24日に行われた「先代宗家金剛巌 十三回忌追善能」にて、ご宗家・金剛永謹さんが「定家」を舞われ、ご子息・龍謹さんが「道成寺」を披かれました。
いずれも全く異なる描き方で人間の「執心」を採り上げた大曲です。

「道成寺」でのクライマックス、落下する鐘の中にシテが飛び入る名場面の前には、演者も観客も会場の全ての人が一体となって息を潜め、舞台の中央に向かって大きなエネルギーが集中するのを感じました。何かが大きく動く事よりも、それに至る「溜め」の部分にこそ醍醐味があると言っても過言ではないでしょう。

なお当能楽堂では、京都国立近代美術館にて始まる「上村松園」展(11/2~12/12)の特別文化講座として、松園の代表作「序の舞」について宗家によるお話と実演が11月6日に予定されています。

武藤順九『風の環』プロジェクト

10月18
『風の環』を横から撮ってみました。
『風の環』を横から撮ってみました。

ニューヨークで起きた同時多発テロの跡地「グラウンド・ゼロ」に設置が計画されている『風の環』の彫刻作品が、京の玄関口・京都駅の地下で31日まで公開されています。

「平和を実現するには」と問うた時、多くの人が「戦争や貧困を無くすこと」と答えるでしょう。誰もが頭では分かっているはずなのに、生まれ育った環境の異なるものを前にすると、得体の知れないものとして、つい壁を作ってしまいます。
想像を超えて「互いを知り、“違い”を受け入れ、歩み寄る柔軟さ」こそが最も身近で基本的な心のあり方ではないでしょうか。それが国や人種だけでなく、兄弟の間や駅で隣り合わせた他人同士といった小さな世界からであっても。
会場がショッピングモール内のため、撮った画像ではその魅力を十分に伝えられないのは否めませんが、この環を向かって右側から撮ると、人と人とが手を取り合っているようにも見えませんか?

23日のコンサートでは、作者の武藤順九氏も参加する予定だそうです。

京都セレクション

10月4
グリーンティーと栗きんとん
グリーンティーと栗きんとん

10月1日に京都駅ビル2階にオープンしたギャラリーカフェ「京都セレクション」(075-361-4401)に行って来ました。
ギャラリーは出入り自由で、10月のテーマは「和菓子と器の饗宴」。
精巧な工芸菓子の他、展示されている各月の和菓子は、菓子文化が京の歳時記に寄り添うように発展してきた様を今に伝えています。
喫茶スペースは床几からソファー席まで多彩で、ホテルグランヴィアのスタッフがスマートに応対してくれました。扱うお茶と、淹れ方の監修は宇治茶の丸久小山園。和菓子は、5店舗のものから選べます。
器や和菓子の紹介カードは持ち帰る事ができ、京都のどこで購入できるのかが分かるわけですね。

ガラス障子のディスプレイ用茶室では、日本のしつらいの中で京の伝統工芸品を総合的に展覧できます。
かつて茶室とは、茶の湯を媒体に日本の文化や伝統工芸を発信する総合芸術サロンでもありました。その喫茶文化は、茶室からカフェ&ギャラリーとなって現代生活へ溶け込みます。
電車に乗る前に、京都らしさのある落ち着いたお店でちょっと一服したい。
そんな時におすすめです。

老山白檀のストラップ

9月27

byakudan

香りのある生活、していますか?
香老舗・松栄堂の京都本店にて、「聞香を楽しむ会」に参加してみました。

日常の慌ただしさは香席の外に置いておき、無駄を省いた所作を指先まで集中して真似て程よい緊張感を楽しみます。自然と姿勢と呼吸も整っていくような…。
それぞれ聞いたお香は全く印象が違うのに、その順番を当てるのはなかなか難しいもので、隣り合わせた人と思わず顔を見合わせてしまいました。
社長自ら解説や質問への回答をして下さり、お土産のお香も頂きました。
 
帰りがけに老山白檀のストラップを購入し、時折気分転換にくんくんと香りを嗅いでいます。やすり等で削ると更に長く香りを楽しめるのだそうです。
次回の会は10月2日に開催されます。

上七軒歌舞練場ビアガーデン

8月30

beer上七軒歌舞練場ビアガーデンに行ってきました。
ここでは夏着物姿の舞妓さんが各テーブルを回り、隣に腰掛けて話しかけくれます。
別席には綺麗な芸妓さん達や、浴衣の旦那衆の姿も。

「おっしょさん(お師匠さん)が、『最近大人の色気が出てきた』って言ってくれはって、とっても嬉しいんどす~」。
普段は花街で見かけても少し遠巻きに眺めていた舞妓さんと、間近でお喋りできるチャンス。
ありきたりな話題じゃ勿体ない。事前に質問を考えておき、ここだけのプライベート話も聞き出しちゃう!?

ビアガーデンは今週末まで。今夏最後の思い出作りにどうぞ。

「清経」

8月17

816京都御苑の向かいにある金剛能楽堂にて、大文字送り火の直前に催される『大文字送り火能 ~蝋燭能~』。今年の演目は「清経」でした。
源氏に敗れ入水した清経の霊に向かって、都に残された妻は恨めしい気持ちをぶつけ、清経もまた、形見の髪を返してきた妻を嘆きます。

奇しくも五山の送り火の前日は終戦記念日。お盆はほんの僅かな間の魂の里帰り。
炎を眺める心の中は、「まだ行かないで欲しい。けど、送り出さなければならない。」。

清経」という曲は、もしかすると戦争で愛する人を失ってしまった人々の心にも染みるものなのだろうか。ふと思いました。

2010年8月17日 | 芸能・アート | No Comments »

「翁」に願いを

7月20
金剛能グッズ

金剛能グッズ

今年も金剛能楽堂の能面・能装束展を観に行って来ました。
やはり、一日2回ある解説の時間に合わせて行くと、興味が倍増します。

中でも年の初めや何かの節目の際に用いられ、神面として大切にされている「翁」の面は、能が成立する以前には呪師が儀式の際に掛けていたといい、人々は翁の面に向かってお願い事をしていたのだとか。
「現在は能役者が演じているけれども、その呪師の力が面に宿っているかもしれない。」とのこと。
この面が何百年という時を経て現在まで伝えられているところを思うと、生命力のような特別な力が宿っていても不思議ではありません。
思わず、翁の面の前で手を合わせてしまうのでした。

25日には「羽衣」等が演じられる定期能、お盆には「大文字送り火能 ~蝋燭能~」が予定されています。

2010年7月20日 | 芸能・アート | 1 Comment »

革新は核心にあり

6月15

pagong京友禅アロハシャツ「パゴン」で知られる亀田富染工場が、イタリア車のショールームを会場に、染めのアート展(~6/20 11~19時水曜休 075-322-2391)を開いています。

昨夏に始めて企画された「京友禅お化け屋敷」は、映画監督・林海象さんによる映画の特殊技術とサイケデリックな柄の友禅染で演出するもので、今年も7月中旬から開催予定だとか。今や、友禅染が人を脅かす存在になるとわ…。

纏う、広げる、包む、バラバラになる、つなぎ合わせる…。
古くから人々を魅了してきたのは、平面と立体で表情を変える柄行の面白さと美しさ。
伝統産業の無限の可能性は、最も核心的な部分に秘められているのですね。

和紙の緞帳

5月24

doncho約60年ぶりの補強大改修を終えた上七軒歌舞練場に今春から、和紙で作られた緞帳が設置されています。

在京の和紙造形作家・堀木エリ子さんとスタッフが制作にあたったもので、手漉き和紙の継ぎ目の無い大きさに驚くと共に、その上に施された様々な模様はどうやって作り出されるのだろうとこれまで不思議に思っていましたが、その正体はコウゾの茎だったんですね。
照明を当てると、縁起の良い「七宝柄」の意匠の中に、上七軒の紋「五つ団子」が柔らかな光を帯びて浮かび上がるようになっています。
まさに和紙だからこそ、演出は緞帳にまで及ぶようになったのです。

残念ながら、舞台イベントがある時しか公開されないのですが、チャンスがあれば是非観てみて下さいね。

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