e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

妙顕寺の桜

4月1

myoken

通院の予定があり自家用車で京都市内を走っていると、だいぶの開花が進んできているようです。
かつての混雑ほどでは無いものの、週末の四条通り沿いはそこそこの人々が往来していて驚きました。
祇園を離れ、堀川寺之内へ。本堂が広く開けていて人同士の接触も少なそうだと思い、妙顕寺で下車しました。
人影もまばらで静かな境内は、染井吉野が可憐に咲きこぼれ、枝垂れ桜はピンク色の蕾を膨らませて出番をひっそりと待っているようでした。
中に入ると、青い苔が美しい坪庭に出逢い、そこに流れ込んだ風に孟宗竹が微かに揺れていて何とも涼しげ。
いつもなら、訪れた感想を色々と書き連ねるところなのですが、どうも筆が進みません。
人が少ない所を観光してください、とは安易に申し上げられません。
ですが、今年の桜が散ってしまっても、桜の木や咲いている場所が突然無くなるわけではありません。
にわかに吹いた風に舞い散る花びらの奥に、うねるような幹の逞しさを観ていると、これらの桜は、私達が生まれるよりずっと前から毎年花を付けてきたのかもしれません。
人間が大騒ぎしている外の世界とは違う時間が流れているようでした。 →妙顕寺の桜の画像はこちら(e京都ねっと公式フェイスブック

伝統工芸品は「飾る」ものから「活用する」ものへ

3月24

miyako
岡崎のみやこめっせ地階で京都市の伝統産業74品目を紹介する「京都伝統産業ミュージアム(旧「京都伝統産業ふれあい館」)」がリニューアルオープンしました。
あいにく新型コロナウイルス対応のためオープニングイベントは縮小され、手に触れて体験できるはずの展示も眺めるのみとなっていましたが、伝統工芸品が平然と陳列されていた印象だった以前のレイアウトは、より回遊式でスタイリッシュになっています。
まるで「和」をメインコンセプトとしたセレクトショップ、ショールームのようで、奥の一角にある「マテリアルライブラリー」は、生産者と素材を探す人の出会いの場であり商談スペースでもありました。
職人の技と仕事を、博物館の様に展示・紹介するだけでなく、より現代人の暮らしに寄り添い、ビジネスとしての具体的な道筋を作り、継承に繋げていこうという狙いを感じます。
実演スペースでは、普段足を踏み入れられない工房で黙々と進められているであろう作業を間近に観せてもらう事ができ、実際に職人さんに話しかけている来訪者も。
網代編みのブリーフケースや、京金網とクリスタルビーズを組み合わせたポーチなど、新たな感性で編み直された工芸品には驚かされ、足を止めて見入ってしまいます。
年に3~4回企画展が開催される予定で、4月18日からは、6人の職人の家族写真を通して伝統工芸の事業・技術の「継承」を探る企画展「継ぐもの-In between crafts-」が始まります。
入場無料、入り口そばには「ミュージアムショップ」があるので、岡崎に来る毎に「ひと味違う」お土産探しにみやこめっせに立ち寄ってみるのもいいですね。

「日本の洋食器」

3月18

okura
週末になるといつも賑わう岡崎公園も、催しが無いせいかひっそりとしていましたが、細見美術館の様子はガラガラに空いているというわけでも混雑しているでもなく、以前とそう変わらない気がしました。
ここは館内が展示室ごとに一旦外に出て移動する設計なので、ちょうど新鮮な空気を吸って良い気分転換ができるのが気持ちいいです。

さて、現在開催中なのが、「華めく洋食器 大倉陶園 100 年の歴史と文化」。
ビジネスよりも、日本が誇れる洋食器文化を発信する事を念頭に置かれた大倉陶園のものづくり。老舗ホテルやレストラン、皇室でも重用されてきました。
そう聞くと優雅な花柄模様を連想しますが、ホテルニューグランドのコーヒーセットの様に、富士山と波を版画の様なシンプルな線と面で表現したものもあります。
生物をリアルに再現した陶彫も製作されており、秋刀魚などの魚はとても珍しい。魚特有のぬめりまで感じられます。

藍色の水彩画のような、透明感のある「岡染」は、観た事がある人も多いかもしれません。
今上天皇(徳仁親王殿下)のお箸初めの儀で使用されたという食器セット一式は「岡染ベアー」と称され、小熊やでんでん太鼓、横笛が描かれていて、思わずこちらの頬が緩みました。
決して外国の真似では終わらないどころか、名立たる海外の名窯にも引けを取らない職人技と美意識が光る「日本の洋食器」の逸品がそこにはありました。

福田美術館の美しい人

2月12

hukuda
江戸から昭和にかけて京都で活躍した画家を中心に、絵画約1500点を所有する福田美術館が2019年10月に嵐山の大堰川の畔に開館し、現在は「美人のすべて」展を開催中です。

「美女」ではなく「美人」とあるので、尼さんや女装の美男子まで登場するのですが、目玉は発見されたばかりで初公開となる上村松園の「雪女」の貴重な原画です。
シングルマザーとして生き、画壇では嫌がらせを受ける事もあったという時期に描かれた作品といい、同じ空間に並ぶ松園の作品群の中でもひときわ異彩を放っていました。
松園の表現する凛とした女性達と、長らく所在が確認されていなかったという木島櫻谷の大作「婦女図屏風」で描かれる女性達を見比べてみるのも面白いかもしれません。
作品を控えめに引き立てる表装も見どころで、なんと禁止マークの付いていない作品については、写真撮影が可能です。

蔵をイメージしたという各展示室を巡りながら、全ての展示作品に一貫して感じるのは、指先にまで宿る仕草の美しさ。
現在の女性でこんな仕草を見かけることってあるでしょうか。
と、思っていたら、ミュージアムショップには今回の美女デザインのハンドクリームが販売されていたのでした。
チョコレートも3種類あったので、他の人と被らないバレンタインの贈り物がしたい人にも良いかも…!?

煎茶道東仙流の初煎会

1月27

sencha

泉涌寺悲田院に拠点を置く煎茶道東仙流の初煎会に同伴させて頂きました。
枝ぶりが見事な松や薔薇、椿からは柳がまるで湧き流れるように、あちこちに花が生けられ、一幅の軸には「一枝春」の文字。
思わず「梅一輪 一輪ほどの暖かさ」という俳句を連想したのですが、後で調べてみると「一枝春」を含む言葉は幾つかあるようです。
例えば漢詩『長恨歌』では、亡くなり仙女となった楊貴妃が涙をこぼす様を春の雨に濡れた梨の花の一枝になぞらえた表現があり、泉涌寺に楊貴妃観音がある事から、こちらの解釈が近いでしょうか。
(※後に、陸凱の『范曄に贈る』という詩からの言葉で、「江南には何も贈るものが無いので、梅の一枝と共に春をお届けします」との意だそうです。「春を贈るなんて、この方は贈り物の達人だな」と思って掛けさせていただきました、との事でした)
茶道ではお菓子を食べ切った後にお抹茶を頂きますが、煎茶道では一煎目と二煎目の間に、二条駿河屋製のできたての雪餅を頂きました。
例年は玉露も飲むそうですが、今年は丸久小山園の最上級の煎茶「的的」。旨みを舌で転がすようにゆっくりと。
お菓子が「雪」なら、急須からしたたるこの甘露は雪解け水か。
一煎目は香りが広がり、葉の開いた頃に出す二煎目は、甘くなった口の中にちょうど良い、しっかりとした味わいでした。
お茶席の後は別の部屋に移り、「ピリカ・レラ」というグループの竪琴ライアーの生演奏と会場のホテルグランヴィア京都のフレンチを皆で一緒に楽しみました。
煎茶道は茶道程細かな規則が無いそうで、主人のサロンを訪れるような趣だそうです。

指先ほどの小さな一椀から、たった3文字の言葉から、心身を潤す春の訪れ。

会場は隔年で変わるそうで、来年は稽古場のある泉涌寺で行われるそうです。

茶の湯の面白さとは?

1月21

tea 今年は2カ所の初釜に参加しました。
片方は、初心者を主に対象とした、ミニレクチャーがメインのゆるやかな茶会。
もう片方は、長年習っている稽古場が主催の本格的なもの。

それぞれに同席した友人達に共通するのは、「お茶を習うのは二の足を踏むけれど、茶会は参加してみたい」という思いでした。
前者に参加した友人は、「お茶は大好きだから、作法に縛られずに自由に飲みたい」といい、後者にここ数年毎年共に参加している友人は、
「稽古に通うのは敷居が高いけど、伝統工芸品など日本の美しいものに触れるのは楽しい」といいます。

確かに、細かいルールは茶の湯が敬遠される要因でもあり、習う者にとっても煩わしい一面でもあるのは否めません。
けれど、道路交通法という規則があるから人も車もスムーズに流れているし、学生服という制約があるから毎朝の服選びが不要になるどころか、かえって銘々の個性が浮き彫りになるのです。
その昔、「自分の好きなテレビゲームを茶会で表現するとしたら、菓子はこんなんで、茶室のしつらいはあんなんで…」と妙な妄想を膨らませた事もあります。

「縛りがあるからこその面白さがあるんだよ」と伝えたいけれど、敷居の手前に立つ友人達にそれを理解してもらうのは難しいかもしれません。
それでも、来客に不要な気を遣わせない和やかさを作るのも、亭主のおもてなし力のなせる技なのでしょう、両者とも退席する頃には、晴れやかな笑顔を見せていたので、「楽しめたみたいで、良かったな」と安心しました。

2020年1月21日 | 芸能・アート | No Comments »

ここにも天神さん

12月25

ne 年が明けてからでは参拝客が増えるかもしれないと思い、一足先に狛犬ならぬ「狛ねずみ」がいる大豊神社をお参りしてきました。

哲学の道からちょっと脇道に入っていく様な感覚で、既に同じ事を考えている人達でしょう、ちらほら参拝客の後ろ姿が見えてきます。
住宅地に溶け込み、こじんまりとして鹿ケ谷・南禅寺一帯の産土の神らしい雰囲気です。
神社の背後は椿ヶ峰と呼ばれ、その梅ヶ峰からの御神水で手を清めて境内をそぞろ歩きしていると、所々に椿をはじめ色んな品種の植物が植えられています。
境内摂社の大国社へと向かうと、ねずみの一瞬の動きを写し取ったような可愛らしい狛ねずみが、小さな祠を守っていました。

子宝や安産のご利益でも知られるねずみさん。しかも、ここの御祭神は少彦名命ですが、後に応神天皇や菅原道真公も合祀されているという事は、受験生のお参りの穴場?
887年の創建ながら、現代人のお願いごとにもぴったりなお宮さんではありませんか。真っ直ぐ天に向かって伸びるご神木にも忘れずタッチ。

境内で拾った銀杏を傍らに置き、澄んだ音色の水琴鈴のお守りと安産用にねずみが描かれたお守りを受けると、「きれいな銀杏が残ってましたね。良いご神徳がありますように」と言って頂きました。
20分程でお参りが済んでしまったのですが、ここも干支にちなむ神社として、年明けは大賑わいになるのでしょうか。

京都から世界へ発信するドーナツ

11月20
  • koe 京都人のパン好きが知られてから、まるで朝ごはんの連想ゲームでもするかのようにパン屋も珈琲店も劇的に増えました。
今度は…ドーナツです。
たまたま「koe donuts (コエ ドーナツ)」の前を通りかかり、3月のオープン当時、建築家・隈研吾氏が無数の竹籠を天井にあしらった内装が話題を呼んでいたのを思い出しました。
こだわりのドーナツ専門店の中でも、こんな有名建築家が手掛けているのはさすがアパレル企業プロデュースといったところですが、「オーガニック」「天然由来」「地産地消」に配慮したドーナツを日本から世界に発信していこうという意気込みの現れなのだそう。
ちなみに、この籠は嵐山の竹を用いた六ツ目編みの籠なのだとか。いっそのこと、この籠をトレイ代わりにドーナツを入れたいくらい。
販売スペースは通常のパン屋程なのですが、その奥はテーブルやカウンター席に電源コンセント付きのスタンド席、子供用の椅子に、なんとドーナツ工房まで。
やたら広い店内に気後れしながらも、カウンター席に腰掛けて、若いスタッフさんがドーナツをデコレーションをする様を眺めながら頂きました。外国人客も気軽に利用しています。
有機小麦やグラニュー糖、美山の牛乳、卵を材料に、玄米油で揚げられるというドーナツは、やや小ぶりですが、みっちり詰まった食感で食べ応えがあり、見た目もお洒落。
お皿で頂く限定メニューの方は、生地にもシロップが染み込んでいて、こちらはドーナツというより、しっかり甘さを楽しむケーキかパンケーキかの様にボリューム満点でした。

欲張って両方頼んでしまったため、食べ切れずに後悔してしまったので、次回はテイクアウトを楽しもうと思います。

京焼と清水焼

11月13

somei
素明窯」三代目・井上路久さんのお話は、とても分かりやすく、親しみのあるものでした。
日本の数ある焼き物の中で、定義や特徴が曖昧とされている京焼・清水焼。
もともと「土もの」の陶器が作られていた我が国では釉薬をかける風習がありませんでしたが、「石もの」とされる磁器においては、豊臣秀吉による朝鮮出兵を機に現地の優秀な陶工達を連れて帰り、各藩で抱えました。
後に京都に集められ、京都においては陶器も磁器も発展する事になったためです。
京都では陶土が採れないため、必然的に器は「薄づくり」となりましたが、その分、高度な技術が磨かれていきました。

清水焼とは京焼の一部かと思っていましたが、「京焼」と「清水焼」は一対のものだそうです。
初代・清水六兵衛は五条坂に窯を開き、明治の陶芸家・楠部彌弌(くすべやいち)は、山科の清水団地で創作しました。
五条坂近辺だけでは場所が足りなくなって日吉や今熊野へと範囲が広がり、「清水焼」だけでなく「粟田口焼」や「音羽焼」といったその土地に由来した窯も開かれていきました。

陶磁器は、資産価値が高いという事で日本画より人気があるそうですが、床の間や仏壇が日本の住宅から減ってきているため、需要も下がって来ているといいます。
従来なら、展示してある器を見て、「どんな作家だろう?」と解説に目をやるのが当たり前でした。
そこで若手作家がアイドルや俳優並みのいで立ちでカメラに収まり、逆に「この男子が作る器ってどんなだろう?」と興味を持ってもらおうという目的で、「うつわ男子-UTSUWA DANSHI-」という焼き物ユニット(?)を立ち上げられました。
その「うつわ男子」の展示会が夜間拝観中の清水寺経堂で「祈り」をテーマに行われます。
なんと、1100ものぐい呑みが無料で配られるとの噂です。

色とりどりのリボンを結んで

11月6

ribbon 京都高島屋で特別展『「りぼん 250万りぼんっ子 大増刊号」』が開催中です。
大河漫画とも言うべき池野恋先生の『ときめきトゥナイト』など、ちょうど自分や妹が読んでいた頃の作家の作品が中心だったので、付録の数々がとにかく懐かしい!
紙やビニールといった限られた素材ながら、レターセットや小物入れなど、女の子にとって実用的な工夫が凝られていたのを子供ながらに感じていました。実家の部屋を探せば、まだ思い出の付録が出てくるかもしれません。
女性客のお連れの男性達は、付き合いで同行しているのだろうと思いきや、物語の登場人物の話をしていたりして、結構男性の読者も一定数いるのだと気付きました。
ひときわ知名度の高い「ちびまる子ちゃん」のコーナでは、誰しも原作アニメそれぞれの笑いが再び込み上げてくるはず。
基本的に殆どの展示が撮影も可能で、人気作家たちがこの展覧会の為に書き下ろしたカラーイラストが嬉しい。
『ハンサムな彼女』や『ママレードボーイ』の吉住渉先生がカラーイラストを描く様や、『有閑倶楽部』の一条ゆかり先生からのメッセージ動画も流れます。
『りぼん』と言えば、可愛らしい丸いお目目に、半楕円形の口元の女の子を連想させ、それらは現在の『りぼん』の漫画にも受け継がれていましたが、岡田あーみん先生の『ルナティック雑技団』や柊あおい先生の『星の瞳のシルエット』やジブリ映画にもなった『耳をすませば』等のそれぞれの作風を見ていると実に個性が際立っていて、まさに黄金期と呼べる時代に、毎月楽しみにリアルタイムで読んでいたことが幸福だったのだと感じました。
長蛇の列をなすミュージアムショップは時間の都合で泣く泣く諦めましたが、京都高島屋内で使えるお買い物優待券も頂けたので、『りぼん』展はお買い物の前に立ち寄るのがおすすめです。

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