e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

リハーサルは宵山で

7月16

tigo 祇園祭宵山期間中の15日に、長刀鉾でしめ縄切の練習がありました。
本番だと見物客が多くて見える場所を確保するにも苦労しますが、リハーサルだとゆったり観られるのがいいですね。

お稚児さんは遠く八坂神社の方を見据えてお辞儀をし、落ち着いた表情で真剣をしっかと握り、無事一刀両断すると、周辺から拍手が湧きました。
断つ所作を2回も披露し、最後は再び首を垂れて太刀を押し頂き終了。
その後一行はタクシーで八坂神社へ。

宵山の3日間、長刀鉾の稚児たちは様々な行事の合間を縫って毎日八坂さんへ社参されるそうで、なんとまあお忙しいこと。
手を清めて社殿での祈祷の後、石段下の交差点で一瞬だけ記念撮影も行われました。

そのまま一行は長刀鉾町まで徒歩で歩き始めます。
稚児は手を引かれますが、素手で直接触れるのではなく、白い布越しに。
道中、冠が乱れたのでしょうか。手直しは傘や大団扇でその様子が見えないように隠された状態で行われました。
始まったばかりの歩行者天国も、お稚児さんの列をつつがなく通すために開かれます。

御祈祷中は上がっていた雨が、八坂さんから離れていくうちに土砂振りに戻り、長刀の文字の入った番傘の花がたくさん開きました。それらを出迎えるように長刀鉾からはお囃子が始まりました。

綾傘鉾四条傘鉾でも、お囃子の合間に17日の山鉾巡行で本番を迎えるくじ改めの所作の練習を公開しているようで、眺めていると本番に向けて応援したい気持ちが自然と湧いてきます。

興味を持って深堀りすれば、知れば知るほど知らない情報が出てくるのが京都です。
この日の動画は後程アップ予定です。

古門前でコーヒーを。

7月3

loto 祇園さんこと八坂神社の氏子地域は広範囲にわたります。
中でも17日の神幸祭で祇園祭の神輿が通る古門前通りは、画廊美術商懐石料理店等が並び、祇園の中でも落ち着いた大人向けのエリアといった趣きです。

その一角にある「Cafe Loto Kyoto」は、アート巡りの合間の喉を潤すのにちょうど良いスタンディングカフェ。

大理石のカウンターに淡いグリーンが目を引くエスプレッソマシンは、シアトルのMavam製。開店当初は、京都のコーヒー店で初めて導入されたものだそうです。
香しい珈琲豆の香りの中で、今までに見たこともない動きに目を奪われてしまいました。

訪れたのは6月も下旬、ベリーが鎮座するタルトが水無月に見えてしまい、アイスカフェラテと共に頂きました。
細い路地を抜ける風、さくさくのタルト生地と果実の酸味、ミルクに溶け込むビターなコーヒーを交互に行き来する、ささやかだけど深い幸せ。
季節の果物のジュースや、抹茶を楽しむイベントもあります。

マドレーヌ等の焼き菓子は、このカフェをプロデュースした料理研究家・武田雅代さんの手作り。2階は料理研究所武田サロンとなっていて通常は非公開ですが、「ウェルカムセット」をオーダーすると上がらせてもらえるのだとか。

お土産には、限定帆布バッグ入りのコーヒドリップバッグのセットも。
一澤帆布とのコラボはとても珍しいそうですよ。

更に注目していただきたいのは、しつらいだけでなく公式インスタグラムの投稿に散りばめられた、京都に息づく職人技などの文化に触れられる話題です。
古門前に足を運ぶ人々の審美眼にかなうカフェでした。

扇子屋めぐりのススメ

6月26

sensu新しい扇子が欲しいけど、果たしてどこで買おうかな。
自分の行動範囲からGoogleマップで検索してみると、有名どころから知らないお店まで、様々な扇子屋さんがヒットしました。

初訪問したのが五条通り下ルの「伊藤常」さん。
仰ぎ用として紙扇子で探したつもりが、 憧れの香木の扇子に目が留まり。
白檀はさすがに2万超えでしたが、香りは強くない方が好みだったのでお手頃な方を選び、別売りの房に付け替えてもらって自分好みにカスタマイズさせてもらいました。
事前にネットショップも拝見していましたが、こういう楽しみは店頭ならではですね。

「自分の扱いが雑なのか、袋に入れても鞄で毎日持ち歩いているうちに数年で痛めてしまう」と嘆くと、「2、3本を使い分ける方も…」と。高価なものは二の足を踏んでしまいますが、それもありかもと思い、今度は「大西常商店」さんにも足を伸ばしてみることにしました。

久々の訪問、変わらず素敵な店構えです。
こちらでは上品な広沢があり、京都らしく骨数の多い紙扇子にしました。
起こした風にうっすら良い香りも載っています。
奇しくも、どちらも「常」が屋号に付いていますが、女将さん曰く特に親戚関係では無いそうです。

扇子選びで実感したのは、百貨店やオンラインで自由自在に選ぶのも便利だけど、それぞれのお店の佇まいも風情の一つで、心なしか値段も二、三千円代からとお値打ちな気がします。
より風を起こせるサイズに変えてみるもよし、材料が全て国産の「京扇子」にこだわるもよし。
扇子選び、扇子屋巡りはこれからも初夏の楽しみになりそうです。

日本文化の砦としての花街

6月5

siryo 先月開館した「祇園 花街芸術資料館」へ。
1時間程で見学する予定が、気がつくとトータル4時間弱も長居していました。

場所はお馴染みの祇園甲部歌舞練場やギオンコーナーに隣接する八坂倶楽部内です。

舞妓さんが手にする籠の中身や化粧道具、月毎に替える簪や帯に忍ばせる懐中時計などを間近で拝見できます。着物も帯も、さすが本物ばかりで、花街が日本の文化のみならず伝統工芸を維持するための砦となっていることに気づかされます。

五世井上八千代さんが舞い、京舞について、また自身の襲名に至るまでを語る映像もつい最後まで観ていました。どの瞬間を切り取っても凛とした女性の美しさを表していて惹き込まれるのです。

国産ウイスキーやソフトドリンクをおつまみと庭の新緑と共に楽しめるバーもあり、今なら割引価格で静かにくつろぐことができますよ。

花見小路を歩く観光客が急増したとはいえ、お茶屋に縁のある人やお金を落とす人はそう多くはないでしょう。
美しい芸舞妓さんと出会える瞬間は、たまたまそこを横切っていく姿を追うときだけ。
彼らは決してその世界観を侵そうと徘徊しているのではなく、「もっと知りたい」だけなのです。

そんな人達がツアーではなく自分達のペースで花街の文化やしきたりに触れ、間近で舞を眺め一緒に記念撮影(別料金)できる施設がようやくできたと思いました。
ここを利用することで、花街という「ハレ」と「ケ」が同居する独特の世界への理解が深まり、維持していくための一助となることを願います。

ちなみにポスターのあの美しい人は「華奈子(はなこ)」さん。
会場には彼女の別の写真も展示してあり、あの大人っぽさとは違う少女のような表情が見られますよ。

京都人からみた葵祭

5月15
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(※画像は過去のものです)

京都人からみた葵祭の印象とは。

「あ、もうそんな季節か」と気づくのが装束行列(「路頭の儀」)の約1か月ほど前に発表される「斎王代」の発表の記者会見でしょうか。

「今年はどこぞのご子女がしゃはるんやろ」
「あら、べっぴんさんやねえ」

から始まり、その後は大型連休に気を取られたまま5月に入り、「斎王代女人列御禊神事」で再び思い出すものの、「競馬神事」や「流鏑馬神事」が葵祭の関連行事である事に気付かないまま15日の葵祭当日を迎える人も少なくないと思います。

斎行されるのは毎年「5月15日」と固定されているのですが、日付まではっきりと認識しているお祭はお盆の「五山の送り火」ぐらいで、必然的に平日開催の割合が多くなるため、仕事の合間の休憩中や就業後に観たニュースで「今日は葵祭やったんか」という声も。

どちらかというと観覧席は観光客用で、地元人はぶらぶらと歩きながら眺めるスタイル。
うっかり人の波の中を自転車で紛れてしまうと動けず、交通規制により回り道をしなければなりません。
行列が通る沿道のお店の人達は、商売にならないのか、店頭に立っていつもとは違う外の景色を眺めている人たちもけっこういるものです。

一方、京都に根差した企業や伝統芸能の世界に関わる人達の中では、室礼の中に葵祭の要素を盛り込んだり、鯖寿司を食べたり、祭に関わる人達の着付け等の裏方で大忙しの人たちもたくさんいるのです。。
友人は学生の頃に女人役を体験し、白塗りの集団がバスに乗って移動する様はとてもシュールだったそうですよ。

つつじの丘で与謝野晶子に出逢う

5月1

keage 桜に代わって約4,600本のつつじが咲き誇る蹴上浄水場の一般公開(4月29日で終了)は、京都の晩春の風物詩の一つです。

ポコポコと花の半球が山肌を埋める鮮やかさは、三条通りを走る車の窓からでも確認できるほど。
いざ場内に入ってみると、思った以上に広さも高さもあることに気が付きます。

早くも初夏の湿気を含んだ空気のなかで、鼻を近づけなくても漂ってくる花の香り。
近所でも見かける身近な花ながら、初めて知るツツジの香り。

「ツツジのトンネル」を潜り抜け、息の切れる階段を登るなか、歌集「みだれ髪」や『源氏物語』の現代語訳でも知られる歌人・与謝野晶子の歌碑に出逢います。

晶子の筆蹟を写した歌は、
「御目ざめの鐘は知恩院聖護院 いでて見たまへ紫の水」。

与謝野晶子と鉄幹の思い出の旅館「辻野」が、かつてこの蹴上浄水場の敷地内に建っていたそうですね。

高台の広場に出てみると京都市内を一望でき、眼前にはインクライン、遠くに五山の送り火の「妙」「法」も見渡せます。
「絶景かな、絶景かな」のフレーズで有名な南禅寺の三門までも見下ろせてしまいます。

飲食ブースにはキッチンカーやテントのあるベンチが並び、各地からやってきたグルメもレベル高め。実店舗にも足を運んでみたくなりました。

思えば小学生だった頃、疎水沿いの通学路にはツツジが連なっていました。
ぶらぶらと歩きながら、花の付け根からラッパを吹くように蜜を吸ったりしたものです。
ツツジは、時間がゆっくりと流れていたあの頃の思い出の花です。

宇治市に『ニンテンドーミュージアム』

4月24

nin 宇治市小倉町に2024年3月末までに完成予定と発表されていた
ニンテンドーミュージアム』。
主にトランプや花札の製造や、ゲーム機の修理業務を行っていた任天堂宇治小倉工場をリノベーションし、過去に発売した商品を展示することで当社のものづくりに対する考えを紹介する資料館なのだそうです。

4月になったらお友達親子と一緒に見学して、
宇治茶平等院もご案内しようとわくわくしているのですが、これまでに現地に2度足を運んで撮影した2月中旬時点でも外観は特に変わらず、新しい公式発表も無い様子。

空撮写真により判明した、屋上に描かれている「ハテナブロック」はもちろん地上から見えません。かろうじて、「スーパーマリオブラザーズ」の背景に出てくる「雲」がちらっとだけ。
近くに大きな駐車スペースは整備されている様子でした。

近鉄小倉駅から徒歩6分、JR小倉駅から徒歩8分という立地ではありますが、観光向けのお店はまだ僅かですが、近くに奈良街道が南北に通り、それに沿って宇治茶関連のお店や、巨椋神社隣には「玉露製茶発祥之碑」という石碑がある静かな住宅地です。

なんとGoogleマップではオープン前から高評価が付いている不思議。
それだけファンの期待が高いのでしょうね。

オープニングスタッフの求人を見てみると「勤務開始日 2024/6/1~」とのこと。
まだまだ正式なオープンは先のようですね!

アートとビジネス

3月20

kiki 2011年の東日本大震災の直後に京都に移住したという現代美術家・村上隆による大規模展覧会『村上隆 もののけ 京都』。
「京都では8年ぶり」「日本での個展はこれが最後かも」「出展作品の9割近くが新作の大作(未完成もあり)」など話題が尽きません。

現職や金箔で華やかな展覧会場の中には、世にも珍しい「言い訳ペインティング」が各所に漫画の吹き出しのように展示されています。
その一つによると、美術館側から多数の新作を「無茶ぶり」され、その資金調達のために「ふるさと納税」制度について勉強したとのこと。

そこで返礼品としてトレーディングカード(トレカ)付き入場券が誕生し、この初の試みの結果、総支援額は3億円を突破、京都市内在住・通学の学生(高校生・大学生)の入場料無料化が実現しました。

日本では、欧米に比べてアートを投資などビジネスの対象として捉える行為をタブー視し、眉をひそめるする人も少なくないでしょう。
とはいえ、我が国においては優れた芸術を生み出す作家であっても、その作品や演奏だけで食べて行くのは難しく、自分の腕を磨くより、お金を回す勉強をした方が、金銭的にはよっぽどリターンがあるのが現状です。

身近にいる芸術家達を見て、いつも思います。
「他の人にはそう真似できないことをやっているのに、もっと報われてもいいのではないか」と。

「フラワー」など、村上ワールドはグッズとしても大量生産できるデザインでありながら、こちらに迫って来るようなエネルギッシュな力強さがあります。

村上作品に初めて出逢う人にとっては、その奇抜さに「なんやこれー」と戸惑うかもしれませんが、「風神雷神ワンダーランド」や「洛中洛外図」「もののけ洛中洛外図」、「 五山くんと古都歳時記」など京都にゆかりのあるそれぞれの作品群は、奇をてらうものでもなく、過去の名作の模倣でもなく、みやこに育まれた系譜への敬意を村上流に表現したものであると感じられるのではないでしょうか。

この展覧会は「観て終わり」ではありません。
4月1日からはαステーション(FM京都)にて村上隆氏がレギュラーDJ を務めるラジオプログラム『MONONOKE RADIO』が始まるそうですよ(「radiko」で聴くのもおすすめ)。

京都の名建築、明治村にあり。

3月11

meiji小京都」と呼ばれる町は日本各地に見られますが、それとは別に、かつて京都にあった建造物がたくさん移築されているのが愛知県犬山市にある「博物館 明治村」です。

約100万㎡という広大な敷地内を、日本初の一般営業用電気鉄道であった「京都市電」が来場者を乗せて走り、「京都七条巡査派出所」のそばにある「市電 京都七条駅」に停車します。
この赤レンガのタイル張りがモダンな派出所は、西本願寺前に建っていたのだそうです。

河原町三条で創業、後に御幸町通に移転して営業していたという「京都中井酒造」。
現在明治村で甘味処としても利用できる京町家の一角には「岩竹」という銘柄の酒瓶と酒樽が据えてありました。
樽には「京都中井酒造ゆかりの酒」、瓶のラベルには伏見区下鳥羽の「三宝酒造」とあります。
京都中井酒造も三宝酒造も廃業もしくはその住所では既に営業されていない様子ですが、
御幸町二条には「清酒 岩竹」とだけ書かれた看板が残っているようです。

聖ヨハネ教会堂」は「日本聖公会京都五条教会堂」として、明治40年から昭和38年に解体されるまで京都に存在していました。
外観こそ洋館そのものですが、内部の天井には京都の気候に合わせて竹のすだれが採用されています。
この堂々たる佇まいの洋館が河原町通五条にあったのかと、想像が膨らみますね。

他にも北区小松原北町にあったという茶室「亦楽庵」「宮津裁判所法廷」など、これら京都にゆかりのある建造物の多くが登録有形文化財に指定されています。
機会があれば、ぜひ注目してみてくださいね。

鴨川さんぽの寄り道

3月6

kamo 先週ご紹介した「ストックルーム」に行くのに、どこかお昼を食べられるところは、と思っていたら、同じ建物の上階へ若い女性たちが続々と上がって行くのが見えました。

窓から鴨川は見れそうに無いけど、『かもがわカフェ』。
階段を登ってちらっと店内を一望させてもらうと、何だかいい感じ。
ミニシアター系の映画やら落語の会やら、壁を埋め尽くす数々のポスターやフライヤーを眺めながら待ってみる事にしました。

頂いたのは、揚げ餅と大根の優しい味のスープに、
大原産の長葱を牛肉で巻いた韓国風の照り焼き、ライチ茶などなど。

残念ながらランチは2月で終了だそうで、今後は珈琲に特化した喫茶がメインになるようです(軽食メニューは有り)。
思いのほか食事にありつけるまで時間を要したので美味しそうな珈琲を頂くいとまが無くなってしまいましたが、今月より珈琲豆の卸しもされるようなので、そちらとを次のお目当てにしようと思います。

せっかちな人には向きませんが、鴨川さんぽの後にゆっくりするひと時を求めて何度となく足を立ち寄る人もきっと多いのでしょう。なんと今年の5月で20周年、お雛様の日に新装オープン。
落語の会がある日に、珈琲片手に耳を傾けてみるのもいいかもしれません。

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