e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「本物」に迫れる時代祭

10月19

heian  
今年の時代祭(22日)も居祭となりましたが、時代行列の衣装や祭具、御鳳輦が平安神宮に特別公開されています。
本殿前には御鳳輦と、天皇が降りた際に姿を隠すために使われる錦蓋や菅蓋、その上にかざす精巧な鳳凰が公開されています。
額殿においては甲冑はもちろんのこと、巴御前や吉野太夫に和宮など様々な女性の装束の一部が美しい刺繍を輝かせていました。

従来の時代祭で京都御苑に設置される有料観覧席では、周りに近代建築が写り込むことなく時代絵巻の世界に浸れますが、衣装や籠などをこれだけ間近に観られる機会はなかなかありません。
この特別公開を逃したら、次のチャンスは、例年通りの時代祭が斎行される際の当日の朝に行列出発に先立って行われる行在所祭の前後を狙うしか無いかもしれません。

話は少し逸れますが、直後にたまたま観たテレビ番組に、きゃりーぱみゅぱみゅさんが出演されており「美輪明宏さんに出雲阿国の生まれ変わりだと思う。と言われた事がある」と話されていました。
出雲阿国は「歌舞伎の祖」とされる女性芸能者で、着物の上に十字架のネックレスをかけ派手な衣装で踊る姿が描かれていたりします。
まさに平安神宮に展示されていた衣装そのものでした。
時代祭の雅やかな時代行列は、1万2000点にも及ぶ調度、衣裳、祭具に至るまで時代考証をされているので、最も本物に近いと思ってもいいでしょう。
それぞれの時代の潮流に翻弄されながら駆け抜けていった人々の歴史を改めて振り返りながら、令和の時代祭を待ちたいですね。

特別公開は24日まで。時代祭当日の22日には、神苑が無料公開されます。

老舗と芸術家の共鳴

10月13

kagi  
敬愛する画家(絵師?)山口晃さんの個展「山口晃-ちこちこ小間ごと-」を目当てに「ZENBI -鍵善良房- KAGIZEN ART MUSEUM」へ。

初めて山口晃氏の作品を目にしたのは、東京で開業したばかりだった六本木ヒルズで販売されていたポストカードでした。
東京と江戸が入り混じる緻密な描写の近代建築が、まるで大和絵のように描かれており、しかも画材は日本画の岩絵の具でもなく油彩なのでした。
帰京してすぐ購入した画集には拡大して観られるようルーペまでついているほど。

ここ最近では親鸞や伊藤若冲、冷泉家など歴史上の人物の生涯を描く仕事が多いようですが、その字と絵の達筆さに見え隠れするユーモアもさることながら、その原画の小ささに思わず目を丸くし、腰を屈めて覗き込んでしまいました。
この展覧会では、撮影もSNSへの投稿も可能です。

菓子匠・鍵善良房といえば十二代当主と親交の深い、木漆工芸の人間国・黒田辰秋の作品を山口氏の感性で展示した一角もあります。
個人的に大好きな作品で鍵善良房の手提げ袋に採用されている『好きなカフェー』も立体作品になって朱漆の振り出しと並んでいました。
理屈抜きで楽しめて、老舗と芸術家とが共鳴し合う京都の奥深い一面を考えさせられる展覧会でした。

ミュージアムショップ「Zplus」では、山口氏のアイデアスケッチをもとに鍵善良房が誂えた特製和菓子も。
また一冊、我が家に画集が増えました。

和菓子で摘む秋の七草と日本茶のアフタヌーンティー

10月5

camellia  
去年の緊急事態宣言中、門を閉ざした龍安寺から南に延びる道を歩いていると、立派なお屋敷に足が止まりました。
その時は「茶道体験カメリアガーデン」という表札だけ頭に記憶。
それから一年が経ち、偶然友人からのお誘いで初めて訪問することに。

「秋の和菓子と日本茶を楽しむアフタヌーンティー」として、日本茶4種と淹れ方の講座にペアリングとして合う和菓子の数々(秋の七草にちなむ)に、お点前で頂くお薄と特製の和菓子という贅沢な趣向です。
ここ最近はホテル等で和のアフタヌーンティーを見かけるようになりましたが、和菓子に特化したものは珍しい。
まずは茶そばで虫養いしつつ、六角ちきりや茶舗亭主が複数の急須で同時にお茶を淹れる姿に見入ります。
まったりとした玉露にはナッツ入りのお菓子、また香ばしいほうじ茶には柑橘のお菓子が合ったり、貴重な碾茶は玉露風に時間を長めにして淹れて飲む、とかに日本茶の楽しみ方について新しい発見が幾つもありました。
昨年オープンした「菓子屋のなさん」には伝統的な主菓子と、老舗の老松さんには新しい発想の和菓子を誂えるなど、遊び心がユニークだけと奇抜さは無く、ボリュームもいい塩梅です。

最初は緊張して堅かったお客同士も、茶会の間の会話も撮影も自由だったせいか、互いの好きな画像を見せ合ったり、分からないことをスマートフォンで調べて共有したりしているうちに「一座建立」の極みに達していたような…。
それぞれマニアック気質な人が多かったので、茶会の後も外でも話が尽きませんでした。
今後の催しの詳細は、公式SNSをご覧くださいね。

土地の記憶も継承する

9月15

shin
2年前、花街とそこでの景色をカメラに収める観光客とのニーズは果たして噛み合っているのだろうか、と疑問に思った事がありました。

現在、建物の老朽化や耐震性問題により宮川町歌舞練場が建て替えられるのに伴い、向かいの旧新道小学校の跡地と一体的に再整備する計画が進められています。
設計を担う隈研吾さんによると、1916(大正5)年の木造建築の大屋根のデザインを宮川町のシンボルとして踏襲し、元新道小はホテルとなりレストランを伎芸披露の場へ、また周辺には学校の歴史を伝えるスペースや児童館、多目的ホール、防災倉庫等多様な機能を備えた地域施設が新設されます。
劇場内部の唐破風は復元され、すだれ格子をデザインしたファザード、照明や幕を吊るす装置として使われていた竹すのこもホテルのホワイエに活用、小学校のファザードも再現されると共に外壁のタイルや枝垂桜も移築して活かされます。

ただ和モダンにリニューアルするのではなく、普段は花街との接点が無い観光客や地元に住まう人達と宮川町を繋ぎ、花街文化を継承していくためにICT技術を取り入れるという試み。
ICT(情報通信技術)とは、様々な形状のコンピュータを使い「IT(情報技術)」にコミュニケーションの要素を含めたもの。
川端通りと大和大路通りとの間には新たな小路「新道通」を通し、「“街の記憶の継承”と“新たな共存価値”の創造」を目指すのがこの事業のコンセプトだそうです。
これまでにも、宮川町お茶屋組合とNTT都市開発は京都から離れた場所からもインターネットを通して「京おどり」を好きな角度で観られるようにするVR配信サービスを行ってきました。

具体的には、観光客がホテルからの紹介で宮川町のお茶屋を訪れ、遠方にいる別のお客は分身ロボット「OriHime」を通して遠隔操作でお茶屋でのひと時をヴァーチャル体験。
その後実際に宮川町を訪れ本物を体験してもらうきっかけ作りに繋げるほか、この「OriHime」をによってインバウンド客への通訳も可能となるそうです。

まもなく宮川町歌舞練場は解体されますが、歌舞練場と旧新道小学校は3Dスキャンによって取り込まれた点部データを加工し作られる「デジタルアーカイブ」として閲覧できるようになる予定で、卒業生がまるで母校を訪れ内部を歩き回るかのようにいつでも観に行く事ができるそうです。

「勝つ」のでなく、「解き明かす」

9月7

kasouken
説明するまでもなく有名なテレビドラマ『科捜研の女』が大好きな家族と一緒に、初となる劇場版を観に行ってきました。
既にシーズン20とは驚異的な長寿番組ですが、映画化されるのは初めてのこと。

昔からこのドラマを観ている人にとっては、懐かしいキャストがてんこ盛りで、思わずニヤリとしてしまうこと受け合いです。
(ドラマをよく知っている人は、前情報無しで観た方が楽しめます。過去の放送が観たい人は公式サイト参照)
内藤剛志さんと金田明夫さんが掛け合うシーンでは、お決まり(?)のあのセリフも。

初めて観る人にとっては、合間に登場する京都のお店や紅葉の美しいロケ地が気になったり、主人公・榊マリコのエレガントかつパワハラすれすれの突破力で真犯人に迫っていく様は、最後まで引き込まれるはず。
科学捜査研究所ならではの多角的な分析が映画でも見どころになりますが、実在する世界最高性能の大規模施設まで登場するのは、素人でも興奮しました。

物語の終盤では、驚きの場面に意外な京都企業の登場や、榊マリコと土門刑事との甘いやり取りも…いやいや、この辺にしておきましょう。
未知なる敵に、ひるむ事なく諦める事なく人智の全てを駆使して(周りも大変)挑むマリコさんの強さは、見えないウイルスと生きる今の私達にも必要な姿勢のような気がします。
彼女にとっての「闘い」とは、相手を打ち負かす事ではなく、「解き明かす」ことなのでしょう。

余談ですが、「北山 下鴨店」という焼肉屋さんには、ロケスタッフが良く利用するのでしょうか、壁には沢口靖子さんからの年賀状や、内藤剛志さんの大きなポスターが貼られています。
お店の方に尋ねたら何かエピソードが聞けるでしょうか!?

日常と非日常の交差

8月31

mini2 京町家に宿泊ができる「庵」の「三坊西洞院町 町家」にて、展示会「京を楽しむ」が開催されました(※8/31で終了)。
前回仁和寺での個展でも拝見した関山隆志氏による精巧なミニチュア茶室と、6名まで利用できるという一棟貸しの京町家の中を見ておこうという好奇心から来訪。

会場は、持ち主が家業の刺繍の工房をアトリエに変えたもので、芥川龍之介氏も訪れた事があると聞いた事があります。
来客は途切れる事は無かったものの、平日に訪れたためか、1、2組去ってもう1組来られるという程良い流れでした。
さすがに各部屋の隅々まではチェックできませんでしたが、キッチンや床暖房の檜風呂もあるそうです。

京町家の茶室の中に展示されたミニチュア茶室は、拡大して撮影しても模型と分からない程に精巧で、遠くの庭の木々からのそよ風まで感じられそうな奥行き。
逆に手前の畳に置かれた茶道具は極小ながら質感まで本物そっくりなのです。
光の入り具合まで計算して作られているので、畳をぼんやりと照らす行燈の対称に月を臨む作品では、月光浴をしている気分に浸ってしまうほど。

上階には主に『うるわし屋』堀内明美氏の茶箱・茶籠のコレクションと、それぞれのそばに京都出身の画家・池田良則氏が柔らかいタッチで描いた京都の水彩風景画が展示されていました。
「こんな景色を眺めながら、家族や友人達とアウトドア茶会をしてみたい…」と思わず憧れてしまう演出です。
これからすごしやすくなる季節だし、チャレンジできるかな。

鷹山の復興、2021年は

7月14

gion
翌2022年の祇園祭山鉾巡行にて曳山姿で復活を予定している鷹山の歩みは、現在どうなっているでしょうか。
シンポジウム「祇園祭・鷹山の復興~2022年の山鉾巡行に向かって~」をオンライン視聴しました。

2020年に山の前後を飾る胴懸がお披露目され、更に寄付によってイランで製作されていた胴懸もついに完成。
手織りが美しい水引や、角房飾りも完成。
木部は文化財等の修復を担う安井杢工務店が施工し、京丹波町にある加工所では菊水鉾から譲り受けた櫓や放火鉾からの石持を修理。
船鉾から寄せられた車輪は、一度分解して使えない部分を交換。
屋根と引き綱が寄贈され、この5月にはご神体や懸装品の一部も取り付けられ、山としてほぼ完成形となった姿が報道陣に公開されました。

また、鷹山の曳山が実際に鉾町の路上で辻廻しや進行ができるのかを「立命館アート・リサーチセンター」が分析してシミュレーションするといった現代ならではの先端技術が復興への歩みを加速させているようです。
鷹山復興への気運は昭和期にも上がっていたそうですが金銭面で断念、2011年に再び声が上がり「鷹山の歴史と未来を語る会」が2012年に発足してから、様々な縁が繋って目標も2026年から4年も前倒しするまでになりました。
復原、修理のために必要となる「人・・物」問題の厚い壁をなんとかクリアして来れたのは、残され護られてきたご神体に宿る神の導きもあるのではないかとつい思ってしまいます。

疫病、自然災害を鎮めたいとの切なる思いで生まれた祭。
来年の鷹山の巡行は、夢の実現以上に、とても大きな意義を持つことになりそうですね。

このシンポジウムは8月末まで試聴できます(※申し込みは8/25まで)

元祇園・梛神社と綾傘鉾

7月6

nagi
新選組ゆかりの壬生寺の近くに「元祇園」と呼ばれる梛神社があります。
貞観年間、京の悪疫退散のため祭神・牛頭天皇こと素盞嗚尊を東山の八坂に祀る前に、一旦この地の梛の森に神霊を仮祭祀したのが由来とされています。

数分で一周できてしまうような広さの境内ですが、街中なので人足は絶える事が無く、今も地元の人々の信仰を集めている事が伺えます。
祇園祭の山鉾巡行の際に、神饌を供えたという御供石が安置されており、この石がもともとあったという下京区周辺には今でも「御供石町」「長刀切町」「悪王子町」という地名が残されています。
梛の実を模したまん丸のお守りの中に願い事を書いた紙を詰めて、ご神木の梛の木に吊るさせて頂きました。

先週末は梛神社で綾傘鉾の奉納囃子があったそうで、観て来た友人が動画を見せてくれました。
綾傘鉾と壬生の人々とがどういう関係性があるのか今まで疑問に思っていたのですが、ようやくその理由が判明しました。
素盞嗚尊が八坂の郷に遷座する際に、壬生村の住人が花を飾った風流傘を立てて、棒を振り、音楽を奏でて神輿を送った事が祇園会の起源ともいわれているそうです。
これまでにも、祇園祭に際して綾傘鉾の関係者が祈祷をしてもらったり、お囃子を奉納された事があるなど、古くから結びつきがあるのですね。

地囃子や棒振り囃子が神前で披露され、観客は目前で投げられた蜘蛛の糸も浴びる事ができたようです。
軽やかで澄んだ鉦の音は穢れを吹き飛ばし、本当に浄化の効果が期待できそうです。

一コマが語る物語

6月15

dora
以前伺ったカフェの床の間に、漫画『ドラえもん』の原稿の一部が額装されていました。
珍しいなぁと思っていたら、後に四条河原町下ル東側にある「寿ビルディング」5階の「TOBICHI京都」で「ドラえもん1コマ拡大鑑賞展」が開催されることに。

しずかちゃんの全身が描かれたコマが出迎える入り口には、開店前から数組が心待ちにしている様子。
国内外に大ヒットしている日本の漫画は数あれど、あらゆる世代の人が主要キャラクターの名前や性格まで知っている作品は稀有だと思いませんか。

油絵作品なら塗り重ねられた絵の具の盛り上がりが見えるものですが、こちらは漫画の原画の一部を拡大しているため、写植をする前の鉛筆書きのセリフや、ベタ(墨)塗りの筆跡まで、創作の息遣いが残ります。
つるつるの単行本のページを眺めるのとは違い、まるで出来上がったばかりの原稿をポップアートや線描画のようにも見える魅力がこの企画の狙いなのでしょう。

お楽しみの心ときめくグッズも多数あり、名言を吐いた吹き出しのあるコマをたくさんコラージュしたハンカチを買いました。

「なやんでるひまに、ひとつでもやりなよ」
「いっぺんでいいから 本気でなやんでみろ!!」
「せきたてちゃだめだよ。それぞれ自分のペースがあるんだから。」
「未来なんて ちょっとしたはずみでどんどんかわるから。」

アニメしか観ていなかった幼い頃は「ドラえもんってのび太くんを駄目にするくらい過保護やなぁ。」と呆れた事もありましたが、誰しも「やれやれ、世話の焼ける」と肩をすくめながらも寄り添ってくれる存在が幾つになっても欲しいものなのかも。
厳選された一コマが収められた話が収録された単行本も読みたくなるし、激励したい人にこの名言ハンカチを贈れば、まじまじと見入ってしまう事受け合いです。

失われゆく遊郭建築

4月21

hashimoto
夏目雅子さん主演の映画『鬼龍院花子の生涯』にも登場する橋本遊郭。
かつては82軒もの妓楼があったそうですが、10年以上ぶりに訪れてみると、遊郭の名残を感じさせる建造物は今も僅かに残っています。
橋本遊郭跡にある大店の一つが旅館「橋本の香」として生まれ変わっており、漢方エステや足裏マッサージが受けられるほか、500円で内部を隈なく案内してもらえます。

屋久杉の木目が美しい欄間やステンドグラス、今となっては容易に再現することが不可能な霜ガラスや色とりどりの豆タイル。
どこを切り取っても写真映えがする異世界は、寺社をお参りするだけでは見られません。一般の女性が敷居を跨ぐことができるのは、現在だからこそ。
贅を尽くした遊郭建築は基礎からしっかりと作られているので、長年風雨にさらされ地震を経ても周りの住宅よりも持っているのだとか。
文化財級の価値がありながら公的に保護保存される事もなく、その貴重な素材や意匠は取り壊され更地や駐車場になるなど徐々に失われてしまっています。
色街の遺産とも言える曰くつきの建造物を買い上げ保存に動き出せるのは、日本人よりも中国など海外の人の方が積極的なのかもしれません。

二軒隣の「旧第二友栄楼」も500円の追加で一緒に中に入らせてもらいました。
老朽化した築120年の妓楼を、中国茶を楽しむ茶楼に生まれ変わらせるために改装中で、軋む廊下や階段を進むと、前の持ち主が残した着物や古いカメラ等の雑貨がいっぱい。
これらの貴重な建築を活用し保存するためのクラウドファンディングが27日まで行われています。
物干し程の広さのバルコニーもあり、どんな風にこれから変貌していくのか、とても楽しみです。

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