e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

パスザバトン京都祇園店

8月24

pass 元は料理旅館、その後天ぷら店となっていた祇園新橋にある伝統的建造物が、京都市へ寄贈され、この夏に新感覚のセレクト・リサイクルショップとして再活用される事になりました。
国の重要伝統的建造物群保存地区内の白川沿いに建つこの2階建ての木造建築は、明治時代中期に建てられたといい、保存活用を、との所有者からの意向を受けて「民間の自由な発想で、京都の文化を世界に発信する施設として蘇らせる」事を目的として活用する事業者が初めて公募された例となりました。
この店は「思い出の品」を所有者の思いと共に引き継ぐ人へ橋渡しするというコンセプトで、「安さ」を求めるリサイクルではありませんが、デッドストックとして倉庫等に眠っていた日本各地の陶器と豆菓子を組み合わせた商品(ミニ絵本付き)は、お土産としても、アンティーク入門としても記念に購入できる価格でした。
この店の家賃は、景観保全のための基金にも積み立てられるそうで、売り上げは出品者と店で折半し、出品者が希望すれば児童福祉や環境等に寄付する仕組みも設けられています。
カフェも併設され、内装は随分と現代的に変わってしまった感はありましたが、これも古いものと新しいものを融合させ、受け継いでいく為の良い塩梅を模索する現代の京都の姿でしょうか。
店内にいた外国人旅行者達の目にはどの様に映っていたのか、気になるところです。

「京町家ちおん舎」

7月13

tion ガラスの壺から奏でられる鈴虫の声に招き入れられたのは、三条衣棚を上がったところにある「ちおん舎」。
大店の商家の佇まいを色濃く残す京町家は、すっかり夏のしつらいになっていて、足裏にひんやりと感じる網代や庭から簀戸(すど)を抜ける風、そして眩しい日光を遮る薄暗さが心地良い。
広大な敷地の中には、多目的に使用できる広間や露地や水屋を有する4畳半の茶室、大きなまな板のあるキッチン等様々なスペースがあり、同じ日にそれぞれの空間で複数の催しが行なわれていても、互いを邪魔しない許容量があります。
京町家をイベントスペースとして開放している所はたくさんありますが、特筆すべきはここの催し内容のユニークさでしょうか。
最近の予定だけでも落語会にご近所さんが集うヨガのほか、「重ね煮」という調理法の料理教室や、氷水で点てたお抹茶で楽しむお茶席体験、「星ソムリエ講座」などなど、なんだかどれもひとクセあって気になるものばかり。
防空壕の跡が床から覗ける「J-spiritギャラリー」では、メイドインジャパンの作品を展示販売していて、この大きな京町家全体が、作家(アーティスト・デザイナー)や作り手(メーカー・職人)を育てる家なのですね。
ちなみに、この辺りは祇園祭の後祭の中心地。最も近くには役行者山があります。

京町家で「粋人」を育てる「常の会」

7月6
「常の会」

「常の会」

 身内の内祝いの扇子を買いに、大西常商店の暖簾を初めて潜りました。
美しく調えられた町家の一角に京都らしい色遣いの扇子が咲き並び、品の良さが漂います。
意外に手頃な値段だったので驚きましたが、ここが製造卸のお店だからでしょうか。
もう一つの来店目的が、こちらで初開催された文化イベント「常の会」。
茶室「常扇庵」では、お茶席に不慣れな学生さんも、銘々に浴衣姿でお茶を楽しんでいました。
2階の広間では、能楽師観世流シテ方・田茂井廣道さんが、昼の部では祇園祭の山鉾に関する演目を、夜の部では扇子にちなんで構成された「一福能」を。
能としては珍しくアンコールとして「土蜘蛛」も演じて下さり、盛大に投げられた蜘蛛の糸を観客も喜び被ったまま楽しんでいました。
会が終了した後も多くの人が残り、能楽師さん達のユーモラスで分かりやすいお能と扇、面に関するお話に耳を傾けていました。
こんなに盛りだくさんな内容なのに、参加費2000円で本当にいいんでしょうか?
謡をたしなんでいたという同商店の創業者・大西常次郎さんは、近所の人をこの家集め、毎晩サロンの様に楽しんでいたといいます。
そんな「粋人」が、今後も生まれていきますように。
次回の「常の会」は12月の中旬との事ですが、祇園祭に向けても様々な催しが予定されています。詳しくはお店のフェイスブックをご覧下さい。

持ち寄りパーティーへのお土産

6月22
あのん 祇園
あのん 祇園

知人宅へのお土産として、本オープン(6/22)を控えた「あのん 祇園 (075-551-8205)」で、ちょこっと買い物をさせて頂きました。
四条通りから巽橋へと抜けるまでの間にある、もとは個人が住まわれていたという「祇園の町家」ですが、ガラス張りの扉と大きな窓の開放感が、敷居の高さを感じさせずに入れます。
おはぎを主力にしている食品メーカーの京都店舗という事で、選んだのはやはり「京おはぎ五色」。
五色とは、くろあん・しろあん・きなこ・まっちゃ・赤飯の事で、京都産の原材料も多く用いられているとのこと。
何より小ぶりな赤飯のおはぎがお祝い事に相応しく、購入の決め手になったのです。
もう片方は、「あんマカロン」。まるで洋菓子と和菓子のいいとこ取りですね。
フォークも要らず、手を汚さずにあんこが食べられるのって、意外とパーティーへの差し入れに便利かもしれません。
自然な甘みの和菓子が好きなおばあさん、洋菓子に目が無いお孫さん、そんな組み合わせの「女子会」もできそうな、店内の茶寮(カフェ)も次の機会に利用したいと思います。

2015年6月22日 | お店, グルメ, 町家, 花街 | No Comments »

木島櫻谷旧邸

3月17

oukoku 京都の商家に生まれ、明治~昭和初期に京都画壇で活躍した日本画家・木島櫻谷(このしまおうこく)が晩年に暮らした住宅が、今月末までの週末に限り特別公開されています。
円山四条派の流れを汲み、主に動物を写生的に描く画風ですが、京都画壇で人気を二分したという竹内栖鳳の雄々しい虎・獅子図に比べると、櫻谷の獅子図は手並みも柔らかく、どこか人の顔を連想させるものでした。
邸内は住居としての和館と、作品展示や商談に使われた和洋折衷の洋館、80畳もの画室から成り、随所に櫻谷自身のこだわりが反映されています。
この時期ならではの雛人形や、櫻谷が孫のために図柄を手描きした花嫁衣装、絵の題材となった鹿が角を研いだという木が残されており、また、レトロな電話室を設けた画室には、櫻谷が邸内の庭園で家族と楽しく過ごす映像が映し出され、櫻谷が家族や自然の生き物を慈しんでいた空気がまだここに残っているかのようです。
芸術を生業とする人にとって、自分が生きている間に画業が評価され、家族や同志に囲まれて豊かに暮らせたのは、とても幸せな事だったろうな、と素直に思いました。

平野の家 わざ 永々棟「ひな茶会」

3月2

hina 梅香る北野天満宮の近くにある「平野の家 わざ 永々棟」は、大正~昭和期の日本画家・山下竹斎の邸宅兼アトリエとして大正15年に建てられた木造建築。
その後、映画の時代考証や道具等の美術品を扱う高津商会社長の邸宅として使われた後、数寄屋大工の棟梁・山本 隆章氏の手に渡り、建築に関わる職人や技術者の若手育成のため、先人大工らがその建物に残した伝統技術と材を引き継ぎながらも、現代に合うものを盛り込んで再生されました。
京の手仕事と文化の高い美意識を育む活動の一環として、毎春雛展が開催されています。
その人気行事「ひな茶会」では、小学生と中学生の女の子たちが可愛らしい晴れ着姿でお薄を振る舞ってくれました。
お点前が始まり、銘々皿の代わりに運ばれて来たのは、雛飾りの小さなお膳。
上に乗っている和菓子は、雛人形を模した定番「引千切」なのですが、なんと通常の三分の一程のミニミニサイズ!蒔絵を施した小さな小さな塗りのお椀の中には、桃色の金平糖が入っていました。
柄杓がやっと入る程の茶釜や水指、棗に棚まで、あらゆるものがひと周り小さいけれど、ちゃんと茶道具として機能や風情があります。
ふっくらとした手でお茶を点てている表情も真剣そのもの。
年長の子になるにつれて仕草がより娘さんらしくなり、女の子が女性へと成長していく様を見届けている気分になります。
あちこちにお雛さんが飾られた茶室の内外には、華やかなおべべを着た女の子やその親御さん、お祖母さんらしき人も見られて、まるで永々棟全体がひな祭会場のようでした。
なお、永々棟から徒歩圏内にある櫻谷文庫(旧木島櫻谷住宅)も公開されており、こちらでもお雛さまが飾られています。

近又の料理教室

1月27

kin 料理好き男子に誘われ、「近又」さんの「ミニ料理教室」に参加してきました。
こちらは、ご主人の語りに耳を傾けながら、頂いたテキストにメモを取って調理のコツを学ぶスタイルです。包丁を持たず、エプロンも不要です。
料理テキストを開くと、京懐石の献立が先付から水物までフルコースで書かれており、なんと半分以上の調理風景を目の前で見せてもらう事ができ、最後はお座敷で実食できるのです。
鮟鱇の肝や鴨ロースの下処理、彩りとして添える小さな青菜類など、懐石料理というものがいかに手間暇かけて丁寧に作られているのかがよく分かります。
食材の甘さや色の鮮やかさ、切り口の繊維の美しさ、表面の照り。それぞれに理由があり、美味しいからといって勢いに任せてバクバク食べてしまっては勿体無い、ゆっくり味わって食べなければ、と自然に思うようになるはず。
参加者は近畿一円や関東からのマダムのリピーターが多く、食べる事も作る事も好きな方ばかり。帰りに近くの錦市場で食材を買い、早速家で実践される事も多いのだとか。
「懐石なんか、家庭で作るかしら?」と構える事無かれ。食材の切れ端の活用法や、他の食材を炊いたり継ぎ足したりして繰り返し使える煮汁のレシピなど、「家で和食を作って欲しい」と願うご主人の語り口からは、家の台所でも活かせそうなお話も色々と出てきます。
まずは、からりと揚がる天ぷらの衣作りからチャレンジしてみたいと思いました。
実際に近又の料理場で料理人から学べる「京懐石の料理実習」の方も盛況で2月分は満席ですが、それ以降の「ミニ料理教室」や6月の「料理実習」はまだ席に余裕があるそうです。

太閤山荘・古田織部美術館

12月2

oribe  紅葉の色付きも人出も山を越えた模様ですが、JR東海の今年のキャンペーンポスターが源光庵だったこともあり、鷹峯は大賑わいだったとか。
その源光庵から更に北の住宅地へ入ったところに、今年開館した「太閤山荘・古田織部美術館(※現在臨時休業中です)
既に紅葉の見頃は過ぎていましたが、色とりどりの散り紅葉が、龍門瀑を連想させる庭の石組では飛沫を上げる滝の様に、美術館となっている蔵への渡り廊下では白木を彩る刺繍の様に、表情を変えて楽しませてくれました。
現在の展示品は古田織部の時代の、堺の茶人達の茶道具や消息等で、今までドラマや漫画でも知り得なかった数寄者達の名前も多く連ねられています。
箱モノの美術館で観賞するのとは違い、鷹峯に住まう茶人の家を訪ね、お茶をよばれ、そこのコレクションを見せて頂いているような感覚。
太閤山荘の向かいから急な坂道を降りたところにある「紅葉谷庭園」は、まだ整備途中といった様子でしたが、池に対面して配されたベンチを覆う桜とおぼしき木々や、手漕ぎボートを見ると、来春・来秋には鷹峯で静寂と自然を味わえる穴場となりそうな予感です。
翌2015年は、古田織部が大坂夏の陣の後に徳川秀忠によって切腹を命じられ、その生涯を閉じてから400回忌にあたり、また本阿弥光悦が徳川家康より鷹峯の土地を拝領した「琳派誕生」の年でもあります。
今年も残すところあとひと月となり、まもなく「琳派400年記念祭」の幕開けです。

水原房次郎 蔵美術館

11月10
水原房次郎 蔵美術館
水原房次郎 蔵美術館

  宇治市内に新たに「水原房次郎 蔵美術館」が開館したと聞いて、訪れてみました。
会場は、古くから製茶業を営んでいた旧家・藤川市左衛門邸の、もとは製茶の作業場だったという築300年近い土蔵を改装したもので、太い梁や藁の苆を散らした荒壁もそのままの風情を活かしてあり、数々の風景画とも溶け込んでいました。
福岡で生まれ、戦後は宇治にアトリエを構えて約50年を過ごし、画業ひと筋だったという洋画家・水原房次郎さんの作品は、地元や江ノ島、奈良等の国内の風景のみならず、欧州や南米を渡り歩いた軌跡で主に構成されていました。
一貫した作風というよりは、日本を出て遭遇した色や光、ステンドグラスの影響を受けながら、筆致や書き込み具合を変えてみたり、年齢を重ねる毎に意欲的に、大胆になっていくのが伝わってきます。
キャンバスの端に描かれた青空のパキッと突き抜ける様な爽快感、素早いタッチながら熟れて遠くに漏れている光をも映した描写が非常にリアルな柿の実…作品の一部は公式ホームページからも観る事はできますが、その色遣いや対象物の特徴を捕える巧さは、実際に間近で対峙しなければ知り得ません。
この蔵美術館のある宇治市白川付近は、主に玉露を生産する農家が点在しているそうで、京都府の茶業研究所もあります。観光客で賑わう宇治橋商店街の風情とは違う、京都の茶処としての地元色が表れた静かな趣きでした。
個人宅の敷地内にあり、期間限定の開館という事で、次回は春の公開までのお楽しみとなりそうです。

「京町家空感 千香月(ちかげ)」

6月16

chikage 相国寺、同志社大学の近くに佇む京町家『京町家空感 千香月(ちかげ)』さん。
大正時代の町家をリノベーションし、より寛げる空間へと生まれ変わりました。

格子戸の扉を開けると、石畳が敷かれた路地が中へと続いていきます。
1階では『草木染めのうちかざり展』を開催。
自然の色合いをいかした草木染めのうちかざりと町家の空間を楽しんでいただけます。
また、予約制で『タロットセラピー』というものをされています。
色と香りのタロットで心を癒し、暮らしをより楽しく豊かにする、気楽に楽しんでいただけるカウンセリングです。

オーナーのお人柄と町家の佇まいが織りなす癒しの空間に、ぜひお近くにお立ち寄りの際はお訪ねください。
京町家空感 千香月(ちかげ) http://www.iroka-chikage.com/

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