e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

太閤山荘・古田織部美術館

12月2

oribe  紅葉の色付きも人出も山を越えた模様ですが、JR東海の今年のキャンペーンポスターが源光庵だったこともあり、鷹峯は大賑わいだったとか。
その源光庵から更に北の住宅地へ入ったところに、今年開館した「太閤山荘・古田織部美術館(※現在臨時休業中です)
既に紅葉の見頃は過ぎていましたが、色とりどりの散り紅葉が、龍門瀑を連想させる庭の石組では飛沫を上げる滝の様に、美術館となっている蔵への渡り廊下では白木を彩る刺繍の様に、表情を変えて楽しませてくれました。
現在の展示品は古田織部の時代の、堺の茶人達の茶道具や消息等で、今までドラマや漫画でも知り得なかった数寄者達の名前も多く連ねられています。
箱モノの美術館で観賞するのとは違い、鷹峯に住まう茶人の家を訪ね、お茶をよばれ、そこのコレクションを見せて頂いているような感覚。
太閤山荘の向かいから急な坂道を降りたところにある「紅葉谷庭園」は、まだ整備途中といった様子でしたが、池に対面して配されたベンチを覆う桜とおぼしき木々や、手漕ぎボートを見ると、来春・来秋には鷹峯で静寂と自然を味わえる穴場となりそうな予感です。
翌2015年は、古田織部が大坂夏の陣の後に徳川秀忠によって切腹を命じられ、その生涯を閉じてから400回忌にあたり、また本阿弥光悦が徳川家康より鷹峯の土地を拝領した「琳派誕生」の年でもあります。
今年も残すところあとひと月となり、まもなく「琳派400年記念祭」の幕開けです。

お火焚き祭

11月20

ohitaki 前週末、稲荷山への月参りでいつも立ち寄っている薬力さん(薬力大神)に、黒山の人だかり。
その日は薬力さん、隣のおせきさん(おせき大神)のお火焚き祭だったようです。

昔は、主に火を扱うお商売をやっている家々でされていたというお火焚きですが、今では各地の神社で観られるだけになってきました。
共に小さな祠ながら、普段からたくさんのお供えがありましたが、細い参道や茶店いっぱいの人の多さから、今でも多くの人々の信仰を集めている事が伺えました。
配られた祝詞を詠み、護摩木を火にくべ、お下がりに赤飯やおこし、お火焚き饅頭にみかんを頂き、最後に残り火で無病息災の焼きみかんをさせて頂き、なんだか得した気分に。

以前から、この焼いたみかんはどんな味がするのだろう…と密かに想像を巡らせていましたが、味は普通のみかんでした!

水原房次郎 蔵美術館

11月10
水原房次郎 蔵美術館
水原房次郎 蔵美術館

  宇治市内に新たに「水原房次郎 蔵美術館」が開館したと聞いて、訪れてみました。
会場は、古くから製茶業を営んでいた旧家・藤川市左衛門邸の、もとは製茶の作業場だったという築300年近い土蔵を改装したもので、太い梁や藁の苆を散らした荒壁もそのままの風情を活かしてあり、数々の風景画とも溶け込んでいました。
福岡で生まれ、戦後は宇治にアトリエを構えて約50年を過ごし、画業ひと筋だったという洋画家・水原房次郎さんの作品は、地元や江ノ島、奈良等の国内の風景のみならず、欧州や南米を渡り歩いた軌跡で主に構成されていました。
一貫した作風というよりは、日本を出て遭遇した色や光、ステンドグラスの影響を受けながら、筆致や書き込み具合を変えてみたり、年齢を重ねる毎に意欲的に、大胆になっていくのが伝わってきます。
キャンバスの端に描かれた青空のパキッと突き抜ける様な爽快感、素早いタッチながら熟れて遠くに漏れている光をも映した描写が非常にリアルな柿の実…作品の一部は公式ホームページからも観る事はできますが、その色遣いや対象物の特徴を捕える巧さは、実際に間近で対峙しなければ知り得ません。
この蔵美術館のある宇治市白川付近は、主に玉露を生産する農家が点在しているそうで、京都府の茶業研究所もあります。観光客で賑わう宇治橋商店街の風情とは違う、京都の茶処としての地元色が表れた静かな趣きでした。
個人宅の敷地内にあり、期間限定の開館という事で、次回は春の公開までのお楽しみとなりそうです。

日本と台湾

11月5

taiwan 先週末の連休に訪れた台湾。
同じ文化ベースがあり、日本とよく似ているけれど、どこか違うところが面白い。
同じ島国なのに、この違いはどこから生まれるのでしょうか?

京都では、台湾や香港等の観光客を対象とした着物レンタルが盛況です。
「京都らしい景色の中で、日本らしい格好、体験をしてみたい」という、本場を求める気持ちはよく分かります。
インターネット等の通信・流通網の発達で世界が狭くなり、旅先で出逢った美しい装束や美味しかった食べ物を、自分の国で手に入れられるこの頃。
でもそれは、異国への思い出や憧れを呼び起こすスイッチにはなり得ても、再び同じ感動を得られるとは限りません。

文化の違いを生む一番の影響力は、やはり地理的条件の違いではないかと思います。日本と台湾の場合は、気候でしょうか。
現地の雑誌には、日本の紅葉や温泉を巡る記事もよく見かけました。
その土地で生まれ、育まれた物や文化は、やはりその土地で味わうのが一番楽しいもの。

今回の台湾の旅でお世話になった人々が京都に来る事になったら、ぜひ本物の京都を味わって頂けるよう、精一杯もてなしたいと思います。

2014年11月05日 | 未分類 | No Comments »

映画『舞妓はレディ』

10月28
試写会の資料

試写会の資料

映画『舞妓はレディ』を観て来ました。
高枕にパジャマで寝る先輩舞妓、私服姿で朝食を取るお茶屋の人々、芸妓の住むマンションなど、テレビのドキュメンタリーでも映らない光景がリアル感を抱かせるものの、男衆や女将達がパパイヤ鈴木氏の振付で踊る様は完全にミュージカルの世界です。
もともと周防監督が20年前に「京都で舞妓のなり手が減少している。」という報道を観たのが、この映画を製作するきっかけだったそうですが、現在の花街では、舞妓になりたい女の子はいても、襟変えをして芸妓として続ける子が少ない、という話を聞いた事があります。
芸妓として独り立ちするためには、置屋のバックアップに頼らず、多くのお客を持ち、また季節毎に着物を変えるだけの経済力も必要です。
教授の助手・西野君のセリフにありましたが、舞妓は芸妓になる前の見習いなので、昔の舞妓は今程人気が無かったそうです。それが今では舞妓の方がアイドル並の人気ぶり!
芸事も話術も洗練された芸妓さんに憧れるけれど、それを目指して精進する舞妓さんの、まだ成長過程の「おぼこい」姿が、現代人の共感を得ているという事でしょうか。
厳しい芸事の世界を重くなり過ぎない軽快なタッチで描きつつ、日々を頑張って生きている人々をホロリとさせる、「応援歌」のような作品です。

2014年10月28日 | 花街 | No Comments »

京都国立博物館「平成知新館」

10月20

tisin 京都国立博物館にリニューアルオープンした平常展示館「平成知新館」。
延べ床面積約1万8千平方メートル。夜の海の様に薄暗く広大な空間の中に、大きな仏像が佇む姿は圧巻でした。
どっしりと腰を下ろす仏さんを見る度に、そのお膝の中に座りたくなるのは私だけでしょうか?
一階には、金属工芸や書、染色などの伝統工芸品が部屋毎に陳列され、それらが王朝文化、武家文化、町衆文化の中心であった京の都で培われ、洗練を重ねて来た事を目に見える形で伝えます。
吹き抜けになった館内は、地上4階まで続く階段を上がりながら、別の角度から各階を眺める事もできます。
記念展として「京へのいざない」展が開催されており、神護寺蔵の伝源頼朝像や雪舟の「天橋立図」等(※現在は第2期の展示内容に変わっています)前後期に分けて国宝62点、重要文化財130点を含む400点以上を展示するとあって、まさしく京のお宝いいとこ取り!お腹いっぱいになりました。
博物館には、各寺社や個人に代わって文化財を安全に保管・補修、分析して、そこから解釈されたメッセージと共に公開するという役割があります。
平成知新館だけで1時間半程の時間を費やし、大人気の「国宝 鳥獣戯画と高山寺」展は入場待ちが60分とあったので、特別展はまた別の機会に伺う事にしました。
当館のツイッターによる混雑情報を見ていると、平日の開館後〜お昼時か、夕方が狙い目…かな!?

大徳寺孤篷庵と小堀遠州

10月14

koho 小堀遠州ゆかりの大徳寺孤篷庵が珍しく特別公開されていました。
ここを現代に当てはめて例えるとすれば、名古屋城天守閣や二条城二の丸庭園、南禅寺金地院の茶席、経緯などを手がけた人気デザイナーが、仕事から離れ、自分自身が楽しむために作った遊び心溢れるデザイナーズ建築といったところでしょうか。
庭の刈込みや石の造形を生かした配置で水平線を現し、想像力を働かせれば、まるで一艘の船に乗っているような気分になれます。白い胡粉で磨かれていたという「砂ずりの天井」は外の光を反射して、その杉板の木目がまるで揺らぐ水面を映しているかの様に見えたのだとか…。
しかも初公開の直入軒は、扁額書いたのが松花堂昭、茶室「忘筌」を再興したのが松平不昧公という、「数寄者ブランド」とも言うべき著名人物の名前が出てきます。
この貴重な機会を逃すまいと、閉門直前にも行列ができており、現代人もなお憧れる空間の演出家しての小堀遠州の人気ぶりが伺えました。
千利休、古田織部と続く茶人ブーム。次もやはり、小堀遠州でしょうか。

宇治茶のテーマパーク

10月7

ujicha 

80年以上行われてきたという「宇治茶まつり」。午前中は宇治茶を育んできた自然や茶祖、茶筅に感謝を捧げる厳かな儀式で幕を開けます。
「茶壺口切り式」では、茶壺の中で大切に熟成されていたお茶の封印が解かれ、宇治川の水と合わせて茶祖に供えられました。
儀式の後は、塔の島を中心とした一帯は宇治茶のテーマパークに!
今年は京都文教大学の学生が主催する「親子で楽しむ宇治茶の日」が同時開催された事もあって、気まぐれな雨にも負けずたくさんの親子連れが、京田辺市や木津川市等の宇治茶産地のお茶を楽しんだりしていて、スタンプラリーの景品交換所には長い傘の列ができていました。
茶券(茶席が混んでいる場合は、お菓子だけ持ち帰ることも可)を片手に訪れた宇治市観光センターのセルフサービスの緑茶でさえも一定のクオリティを感じるところは、さすが京の茶どころ。
点心席として訪れた宇治茶道場「匠の館」で出されたお茶も、甘みがあってとても美味しく、思わずお代わりするほど。
あちこち巡っている間に、落成式を終えたばかりの平等院鳳凰堂を拝観する時間が無くなってしまったので、次回のお楽しみとしました。

酔芙蓉の寺・大乗寺

9月30
大乗寺の酔芙蓉

大乗寺の酔芙蓉

 朝に白い花をつけ、それが午後から夕方にかけて徐々に淡いピンク色に変化していき、最後はまるでお酒に酔ったかのように濃く染まってしまい、そしてたった一日で枯れてしまう不思議な花・酔芙蓉
法華宗の大本山・本能寺の末寺である大乗寺は、300年以上の歴史を持つものの檀信徒が殆ど無く、廃寺同然の荒れ寺だったところを現住職・岡澤海宣住職夫妻が移り済み、50代にしてツルハシ一本での参道造りから寺の復興を図ってきたそうです。
住職夫妻の詩吟の弟子から寄贈されたのを機に1996年から植え始められたという酔芙蓉は、現在では約1500本にもなりました。
境内は小規模ながら、酔芙蓉の小道は殆どが自分の背丈よりも高く成長し、誰かに肩を叩かれたかな、と振り返ると酔芙蓉の葉だった、という程に密集しています。
休憩所でお茶を頂き、お寺の方とのんびり語らっていると、無料で開放されているのが申し訳無いくらい。
色づき具合は気温や太陽の光に左右されるそうで、濃い色に染まった花が観たい人は、拝観時間を過ぎても自由に見学しても良いそうです(ただし、外灯はありません)。
まだまだつぼみもたくさんあったので、今月末から来月にかけて満開の景色が観られそうです。
急こう配の石段があるため、ある程度階段を登れる脚力と虫除けスプレーは必須ですが、柔らかく繊細な八重の花びらと、アットホームなおもてなしは、きっと訪れる人の心をほぐしてくれると思います。

創作料理 佳久

9月25
創作料理 佳久
創作料理 佳久

 京都人が、他府県や外国からの客人を案内する際に悩むのが、“京都らしい”お食事処
高級料亭はそう頻繁にあちこちのお店を利用するわけでも無いし、人数分をご馳走する様な場合にはお財布にも厳しい。かといっておばんざいのお店だと、自宅の食卓に上がるおかずを外で食べるようなもので、これは旅行者同士で楽しんで頂きたいという気も…。
また、地元人よりも旅行客の方がよっぽど京都の観光地やお店にも詳しいという状況も多々ある中で、「メディアに取り上げられる有名店よりも、京都人が普段使いする美味しいお店」を求めている人も少なくないのではないでしょうか。
そこで、我が家がよく「気張らないおもてなし」に利用させて頂くのが「創作料理 佳久」(075-231-9671)です。
物腰柔らかに話す店主がきびきびと動くライブ感を楽しむカウンター席や、程よい賑わいの中でお酒を酌み交わすテーブル席があり、隣の離れには襖で仕切ったお座敷もあるので、外国人やちびっこ達、親族を交えたの集まりにもお世話になりました。
美味しいお食事(あんかけ類がおすすめ!)もコースの場合、「向付」「煮物」「揚物」「焼き物」…と懐石料理の要素を感じられる品々で楽しめて、4000円からとお値打ちなので、もてなされる側にも負担の無い範囲で収まりますね。
高級過ぎず砕け過ぎず、「ちょうど良い塩梅」ものこそ、なかなか見つけにくいもの。若いご主人がそのところを上手く押さえて頑張っておられるんだな、といつも思います。

2014年9月25日 | お店, グルメ | No Comments »
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