e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

一つの送り火

8月18

myo 16日の局地的豪雨は台風11号をしのぐ程の影響力でした。
京都府内各地で被害が出ている一方、雨後は何も無かったかの様に元の状態に戻っているところもあり、奇妙な感覚を覚えます。
それでも、五山の送り火の保存会の人々は火床をシートで保護する等、万全な対策で今年も荘厳な夜景を見せてくれました。
毎年異なる場所から観るようにしているのですが、今年は家族親戚と共に近所の「妙」を観るため、宝が池スポーツ公園(宝が池公園運動施設)へ。
視界が開けているため、目の前の大きな「妙」が点火されると、朱に燃える火床や人影もはっきりと見えています。
人の流れに乗って少し移動すると、「大文字」や「船形」も拝む事ができました。
両手を合わせた後も炎は揺らぎ続け、しばらくすると何か掛け声が聞こえて、次々と鎮火。
立ち昇る水蒸気の中を、懐中電灯の灯りが文字に沿って降りていきます。
炎の祭典と言うより、儀式と言う方が近しい。ライトアップでは味わえない静かな高揚感です。
複数の送り火が見える場所を追い求めるのもいいけれど、一つの送り火だけを、炎が生まれて燃え盛り、消えて暗闇に帰るまで、じっと見届けるのもいいな、と思いました。
一人暮らしとおぼしきご高齢の女性が、点火時間に合わせて、独り杖をつきながら公園へとゆっくりと歩いていく姿が、今でも目に焼き付いています。

2014年8月18日 | 未分類 | No Comments »

亀屋則克の「浜土産(はまづと)」

8月12

hama  台風11号の影響を受けた京都の町ですが、去年の教訓が生きて早急に復旧が進み、いつも通りに五山の送り火を迎えられそうです。
川床の真下まで水没する鴨川の報道には驚愕しましたが、「京の七夕」の最終日には、台風の事が嘘の様に、たくさんの浴衣の人々が町中を歩く光景にも驚きました。
そんな水の脅威とは裏腹に、京都盆地の中で生まれ育った者としては、昔から水辺、特に海に対して憧れがあります。
この夏、丹後の久美浜へ旅立つお盆過ぎには、そろそろクラゲが出て海には入れないかな?と思案していたところに、ふと夏の便りが。
蛤に琥珀羹を流し込み、真ん中に塩気の浜納豆を一粒入れた、亀屋則克さん(075-221-3969)の「浜土産(はまづと)」です。
京都の夏の和菓子として、もうすっかり知られるところですが、まるで磯辺で採った蛤を籠に載せ、檜の葉を添えてさっと出したかの様な、ざんぐりとした風情は、やっぱり嬉しいもの。
この涼菓を考案した初代も、京から遠い海の汐風を想い起こしていたのかも。
かつて友人たちが浴衣の茶会を開いた時には、このお菓子がブリキのバケツいっぱいに入っていて、それを一人ずつ取り回し、片方の貝殻ですくいながら頂いたものです。
「浜土産」の販売は5月から9月中旬まで。画像は丸籠ですが、磯馴籠(そなれかご)に入ったものも、また楽し。

2014年8月12日 | お店, グルメ | No Comments »

プロジェクションマッピング・二条城

8月4

nijo   祇園祭五山の送り火との間に新たな夏の風物詩とした登場した「京の七夕」(11日まで開催中)も、今年で4回目を迎えました。
最初の日曜日は生憎の雨にも関わらず、たくさんの浴衣姿と傘の花が堀川会場を彩っていました。
堀川の東側にある京都国際ホテル内の屋台村では、ハワイアン生演奏とフラダンスの舞台を楽しみながら、冷房の利いたテーブル席で食事ができるので、家族連れには堀川会場がお奨めかもしれません。
一方、堀川の西側で夜間に一部開放されている二条城では、二の丸御殿の形状に合わせてプログラミングした映像を投影するプロジェクションマッピング「荘厳なるあかり」が行なわれています。
城内に反響する音楽に合わせて、まるで車寄が動いているかの様に見えたり、壁面に花火や紅葉が散ったり、文字が浮かんだりする度にさざ波の様な歓声が挙がります。
国宝である建築物の、豪華な欄間彫刻を活かした投影によって浮かび上がらせる事で、その対象となる建物や事物に新たな価値を生み出し、保存継承に繋げていく事がこの「プロジェクションマッピング」という最先端技術の役割なのだろうと理解しました。
期間中、夜間の二条城は無料で入城できるので、代わりに一口募金(200円毎に記念カンバッチ進呈)をしてきました。
いち早く動画でご紹介したいところですが、皆さんには是非現地に足を運んで生の迫力を楽しんで頂きたいので、公開はまた後日に。

禊の社

7月28

mitarasi 土用の丑の日を目前に控えた夏の日。賑やかな下鴨神社の駐車場を眺めながら「京都っ子は御手洗祭が好きやなあ。」と思いつつ、やっぱり自分の足も御手洗池に向かっていました。
夜は長~い行列ができますが、お昼時は並ぶ事もありませんでした。
下鴨神社の井上社(御手洗社)は、葵祭で斎王・斎王代が禊祓をする事で「禊の社」として知られていますが、かつてはこの社の前身とも言える「唐崎社」があり、平安時代に葵祭の斎王が祭の後で斎戒を解くためにお参りしていたそうです。
1470年の文明の乱の兵火によって焼失してしまいましたが、御手洗社へ合祀されるまでは、葵祭等の官祭では唐崎社、下鴨神社独自の祭の時には御手洗社で斎戒の解除の為の神事が行われていたそうです。
井上社と同じく水の女神・祓の神様の「瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)」を祀る「唐崎社」は、高野川と賀茂川の合流する辺りから東側に鎮座していたそうで、そんな姿を想像して出町柳の三角州を眺めると、川の飛び石まわりで遊んでいる子供達と、御手洗池の冷たい水に喜ぶ子供達の姿が重なったりもして。
こんこんと湧くお水をゴクゴクと頂き、夏越神事で流してもらう「人形」を奉納する頃には、気分もすっきり。暑さもすっかり忘れていました。 動画はこちら

昭和に復活を遂げた山鉾たち

7月23

hoko 今年の祇園祭の粽は全て、休み山・布袋山で購入しました。公式ホームページによると、引き続き後祭の宵山でも14時から粽や安産御守等を販売予定のようですね。

今回の後祭と大船鉾の復活が良い呼び水となって、本格的に動きだしたのが、もう一つの休み山・鷹山です。
地元有志による「鷹山の歴史と未来を語る会」が2012年に発足、2014年には囃子方が結成され、前祭宵々山にはお囃子の公開練習を開くまでになりました。来夏には屋外でも鷹山のコンチキチンが聴ける様になるかもしれません。
最後の巡行参加から200年目を迎える2026年までに山を復興させ、巡行に復帰するという目標も挙がっています。

昭和になって復活を遂げた山鉾には、四条傘鉾菊水鉾蟷螂山綾傘鉾(何故か昭和53年前後がラッシュのようです。)』があります。
一つの時代にこれだけの山鉾が蘇ったという事は、2009年には祇園祭と山鉾行事がユネスコの世界遺産に登録されたこの平成の時代にも、まだ見ぬ祇園祭の姿が見られる楽しみがありそうですね。

2014年7月23日 | 神社 | No Comments »

能楽・金剛流と宝生流

7月14

noh 京都を拠点に「龍門之会」を主宰する能楽・金剛流の若宗家・金剛龍謹さんと、東京で「和の会」を主宰する宝生流宗家・宝生和英さんの、流派を越えた合同演能会がありました。
それぞれ「謡宝生(うたいほうしょう)」「舞金剛(まいこんごう)」と呼ばれるのにふさわしい演目で、鍛え上げられた若い二人の声は鋼の様に美しく、橋掛かりの揚幕の奥から観客を魅了していた様に思います。
日本の伝統文化や芸能が外国人や日本の若者にも受け入れられているとはいえ、芝居やライブを観に行く感覚で能を観に行くという人はまだ十分に多いとは言えず、普段から接点の無い人にとっては今なお敷居が高く感じている人も多いかもしれません。
しかしながら不思議なもので、突発的に表れて一世を風靡す様な流行は、数年経てば忘れ去られてしまうのに、一見重くてとっつきにくい印象の伝統芸能の世界は、何百年という年月を生き延びているのも事実。
その違いがどこにあるのかと考えてみた時に、その文化を「守りたい」と願う人々が演じる側にも観賞する側もあるという事ではないか、と思いました。
そのどちら側の人間も、世代交代を繰り返していきます。変えてはいけないこと、進化した方が良いことを模索しながら、若い二人はこの先も新たな境地と支持者を開拓していかなくてはなりません。
これから先も、金剛流と宝生流のコラボレーションに注目していきましょう!
能に触れてみる一つの入口として、まずは能面・能装束講座で能楽堂の中に入ってみる事から始めてみてはいかがでしょう?
能「小鍛冶」に登場する刀匠・三条小鍛冶宗近と共に名剣「小狐丸」を打った「相槌稲荷」は、京都の三条粟田口にあり、また、祇園祭の長刀鉾の先に付けられ疫病邪悪を祓う長刀も、宗近の作と伝わるそうです。

2014年7月14日 | 芸能・アート | No Comments »

樂美術館『定本 樂歴代』

7月8

raku 京を代表する陶芸師・樂吉左衛門家の歴代の作風が知りたくて、樂美術館を訪れました。
樂歴代」との表題通り、展示は初代の長次郎から始まるものと思っていたら、最初に出迎えてくれたのは、田中宗慶という人物の茶碗でした。
田中宗慶は初代・長次郎の妻の祖父とされ、樂家にとっては「家祖」という位置付けになっていました。因みに長次郎の父・元祖「阿米也(あめや)」は中国・福建省から渡来したとされる陶工で、楽吉左衛門家の2代目を嗣いだのは長次郎の子ではなく、田中宗慶の次男・常慶です。
あえてまずは茶碗を眺めて観たままに感じ、それから解説、銘を見るようにして、歴代の楽焼を観覧してみます。
初代の特徴を踏まえながら、時代の流れを汲んだ作風を表したり、逆にまったく反対の価値観を編み出してみたり、それぞれに創意工夫や葛藤が滲み出ているようです。
450年の歴史を追いながら、そして当15代まで辿り着いても…長次郎の作品が見当たらない!と思ったら、別の部屋に銘「面影」が佇んでいました。その姿はまるで土からそのまま出てきたかの様な、他の歴代茶碗とも違う存在感を放っていました。
轆轤を使わず「手捏ね(てづくね)」によって成形されるため、代々の当主はその手から伝わる感触で歴代の息遣いを感じてきた事でしょう。
「聚楽焼」から始まった樂焼は、現在でもなお「今焼」であり続けているのですね。
本展覧会では、樂家と互いに影響を受け合った本阿弥光悦の作品の他、樂家妻女の作ではないかと言われる尼焼、三代・道入の弟で堺にて樂茶碗を焼いたとされる道樂、四代・一入の庶子で玉水焼を開いた(現在は閉窯)一元という人物達の存在にも注目です。

2014年7月08日 | 芸能・アート | No Comments »

現代の時代劇

7月1

kaneyo 「この映画、面白かったよ」。との評判を聞いて、「超高速!参勤交代」を観て来ました。
思わずニヤリとしてしまうタイトルに違わず、大いに笑わせて頂きました。
京都でもロケが行われているので、時代劇でお馴染みの八幡市・流れ橋や糺の森、金戒光明寺など、どこかで見た景色に出会います。現代風だけど、展開は王道な時代劇。
最も心に残った「政(まつりごと)」をおろそかにして、いわきの土を殺すでないぞ。」の一言。
ただの歴史エンタ-テイメント映画では無い事を物語っています(ちなみに最も笑ったのは”山びこの術”)。
以前「時代劇の衰退」という言葉をよく耳にした記憶がありますが、現在でも歴史物のドラマや映画の新作は出ているので、「果たして本当にそうなのだろうか?」と思ってしまいました。
一方、「5万回斬られた男」福本清三氏が初主演を務める「太秦ライムライト」(関西先行上映中)も観てみました。
殺陣(たて)の稽古も空しくリストラされる大部屋俳優達に取って代わり、CGで後から合成される刀の刃先。
「時代劇の斜陽」というより、製作のプロセスや訴求の仕方が変化してきているのかもしれません。
現代人にも通じるストーリーやアイデアで、幅広い年齢層に受け入れられる時代劇に、時代考証や殺陣など、日本映画ならではの歴史や文化の厚みを基盤とする時代劇。
これらを評価できる程、昔ながらの時代劇を観てきた訳ではありませんが、個人的にはどちらも支持したいというのが正直な感想です。
ともあれ、上映前の腹ごしらえには、「京極 かねよ」で鰻丼を食べて行くのが我が家の定番になりつつあります。
映画全盛期だった昭和の京極通り界隈では、そんな人もたくさんいたのでしょうね。

2014年7月01日 | お店, グルメ | No Comments »

浦安の舞

6月23

kekkon ここ数年の間に、京都の町中に幾つもの結婚式場ができています。
その数、その勢いには戸惑いすら感じるほど。
そんな中で先日、身内の結婚式が貴船神社でありました。
快晴と緋色の傘に導かれて進む花嫁行列。市内中心部よりも涼しく、たっぷりの緑の中で参列者も清々しい面持ち。
居合わせた観光客には、外国の方も多かったのでしょう、本殿の中から後ろを振り向くと、外から式の様子を伺う人がたくさんいました。
神前で巫女さんが舞う「浦安の舞」は、昭和天皇御製の歌が歌詞になっているとの宮司さんのご説明を受けました。
「浦安」は「心安」とも書き、「心安の国」とは日本国の美称だそうです。
世の中が平穏であるためには、一人一人の心が平穏である事が基本。
貴船の水の神様から恵まれる一滴の水が集められて貴船川となり、鞍馬川や宇治川、桂川等と合わさって大阪湾へと注がれていくように、結婚式とは新郎新婦だけのものではなく、神様や親族へ報告をするためのものであり、新たに誕生した夫婦という一つのユニットから世界の平和を願う儀式なんですね。
「天地(あめつち)の神にぞ祈る朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を」。おめでとう。

「京町家空感 千香月(ちかげ)」

6月16

chikage 相国寺、同志社大学の近くに佇む京町家『京町家空感 千香月(ちかげ)』さん。
大正時代の町家をリノベーションし、より寛げる空間へと生まれ変わりました。

格子戸の扉を開けると、石畳が敷かれた路地が中へと続いていきます。
1階では『草木染めのうちかざり展』を開催。
自然の色合いをいかした草木染めのうちかざりと町家の空間を楽しんでいただけます。
また、予約制で『タロットセラピー』というものをされています。
色と香りのタロットで心を癒し、暮らしをより楽しく豊かにする、気楽に楽しんでいただけるカウンセリングです。

オーナーのお人柄と町家の佇まいが織りなす癒しの空間に、ぜひお近くにお立ち寄りの際はお訪ねください。
京町家空感 千香月(ちかげ) http://www.iroka-chikage.com/

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