e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

島根県の津和野と祇園祭

7月10

sagi

祇園祭は2019年で1150年の節目を迎え、奉祝行事として島根県の津和野町に継承された祇園祭鷺舞神事の里帰り奉納が行われました。(動画はこちら)
「里帰り」というのは、津和野の鷺舞は、天文(1542)年に京都から山口を経て伝わってきた国の重要無形民俗文化財なのだそうです。
戦乱や天災などにより何度も中断を余儀なくされた京都の祇園祭行事は、他府県の祭にも広く影響を与えていますが、かつての京都祇園会の姿を、山陰の小京都が今に伝えているというわけです。
どうやら「笠鷺鉾」なるものが約600年前には存在していたようで、鷺舞はその周りで踊られていたものだったようです。

棒振りが舞い、羯鼓(かんこ)が鳴り、雄雌つがいの鷺が真っ白な羽根を広げるたび、歓声が上がります。
そういえば、かささぎは織姫と彦星の逢瀬の橋渡しをした鳥だったような。
10分ほどの神事で物足りないくらいでしたが、七夕気分も味わいました。

津和野の鷺舞はこの日限りですが、逆輸入のように参考にして復興された鷺踊りを子供達が舞う姿が16日の宵宮神賑奉納行(鷺踊りは19時半頃から)や10日のお迎え提灯24日の花傘巡行で観る事ができます。

師から弟子へ。親から子へ。

7月3

asagi
子供用に注文していた「アサギ椀」がようやく完成したとの連絡があり、受け取りがてら塗師の西村圭功さんの新しい工房を見せて頂く事にしました。
前回お邪魔した鞍馬口の京町家の工房ではなく、新大宮商店街に構えたという「新工房」へ…て、看板も何も無い、元呉服店の名残りのショーウインドウがシャッターの間から覗いている古い建物でした。

見た事の無い道具ばかりで、長い人毛を板で挟みカットしては繰り返し使える刷毛はアイデアもの、木地を削るためのロクロには、ミシンの様なペダルが付いています。
それぞれの工房での分業が当たり前の業界ですが、それをここに集約する事で後継者を育てているのです。
休日だったため、他の職人さん達が作業する様子は見られませんでしたが、お弟子さんが作ったアサギ椀を掌ですくい上げて見ます。
覗き込んだ椀の底に、うっすら刷毛目が濡れたような光沢をたたえます。大量生産品にはみられないこだわり。
漆器作りは、日々変動する気候に応じて使う漆の配合を変えたり、乾燥庫に濡れたふきんを入れて湿度を微調節し、15分ごとに様子をみたり。
それはもう気の遠くなるような手のかかりようで、「好きでなければできないだろうな…」の一言です。

さて翌朝、アサギ椀におすましを入れ、1歳の子供に出してみました。
小さな手では上手く扱えなくてひっくり返さないか、恐る恐る様子をみていましたが、片手で縁を掴んでからもう片方の手を添えたり、腕を伸ばして両手で持ってみたり、意外に上手に持つ事ができました。
成長の具合にもよるのでしょうが、プラスチックの食器を使っていた時は、少々置き方も乱雑でした。いつもより薄い縁に触れた事で、無意識に扱い方を少し変えたのでしょうか。
漆器の手触り、重さ、薄さ、色。小さな指で何か感じ取ってくれているかな。

なお、祇園にあるデザインスタジオ「スフェラ」では、西村圭功さん他「京都の4人のクラフトマン」に焦点を当てた展覧会が7/28(日)まで行われています。

和のアフタヌーンティーと非日常空間

6月26

tea
外資系ホテルが続々と進出を果たしているここ最近の京都ですが、フォーシーズンズホテル京都は、早い段階から京都の史跡を活かしたラグジュアリーなホテルを展開しています。
日本の外から京都という町のエッセンスをどの様に生かしているのか、興味はあるものの宿泊でもしない限り機会が無いと敷居が高いもの。
そこで季節の催しとして、宇治の銘茶をふんだんに使った「和のアフタヌーンティー」があると聞き、初めて足を踏み入れてみました。
ゆったりしたソファ席に落ち着くと、グラスに入ったまろやかなアイス玉露で幕開け。
ミニローストビーフバーガーやほうじ茶と栗のバターサンド等を摘まみながら小腹を満たし、宇治茶だけでなくロンネフェルト社の紅茶やオリジナルの中国茶もオーダーして、まさにお茶尽くしのひとときです。
抹茶とバニラのスコーンは、冷めないよう純白のナプキンにふっくらと包まれてサーブされました。
丸久小山園とフォーシーズンズホテル京都の焼き印入りのお茶のクッキーが入った、手の平サイズの可愛らしい茶箱はお土産に。
さすがにいいお値段はするのですが、別の日にアフタヌーンティーを予約していた友人は、「確かにそうだけど、お金に換えられないものがあります」と満足していたようでした。
非日常を楽しんだのち、ホテルを出ると左手には新日吉神宮が見え、いつもの京都の景色に戻りました。
アフタヌーンティーは今月いっぱいまでですが、平重盛の小松殿跡と言われている庭園「積翠園」の池の畔にある茶室「積翠亭」では、日本茶やシャンパン、日本酒のほか期間限定でかき氷も頂けるそうで、この夏の間に再びお洒落して伺いたいと思っています。

2019年6月26日 | お店, イベント, グルメ | 1 Comment »

お父さんも喜ぶバスまつり

6月19

bus   
前回の「一言コラム」で触れました「スルッとKANSAI バスまつり」。
昨年は台風の影響で見送られましたが、京都では7年ぶりの開催となりました。
25ものバス会社の車両が岡崎公園に大集合するというもの。
きっと、車が大好きな子供達があっちやこっちの車両に囲まれて興奮する様が見られるに違いないと想像しながら、いざ会場入りすると…おじさんがいっぱい!バスはどこ!?
そこにはバスの車両だけでなく、各バス会社のブースが建ち並び、それぞれオリジナルのミニカーやバスの備品、古い停留所の表示板などをフリーマーケットの様に展開しています。
鉄道ファンならぬバスマニアがこんなにいたとは。
もちろん小学生からベビーカーの子供達もたくさんいるのですが、黒山の人だかりと熱気に意表を突かれました。
平安神宮への参道の両脇に整列する様々な色や形のバスは乗車することができ、警察車両や屋根が開閉されるオープンバスは人気で長蛇の列です。
今年の4月に初登場し期間限定で運行中の「宇治茶バス」も、この機に乗り込んでみました。
宇治田原町にある正寿院の「猪目窓」を模したハート型の窓に、畳風の座席シート、茶壺や掛け軸に茶釜、手すりも竹模様です。
冗談ばかりと侮るなかれ。茶道裏千家の千玄室前家元も乗車した事のある由緒正しき?バスなんです。
これまでは9月に行われていたそうですが、なるほど、父の日の開催なら家族サービスをしながら自分のお買い物も気兼ねなく楽しめるというわけですね。
催しは15時半で終了しましたが、その後全てのバスが列を成して会場を出発し、鳥居をくぐって通過して行くとの事で、カメラ小僧たちに囲まれながら最後まで手を振って見届けました。

動画はこちら(近日公開)

2019年6月19日 | イベント | No Comments »

遺跡のある動物園

6月12

en
京都市動物園は、全国で2番目となる1903年に開園し110年以上の歴史があります。
また、平安期に建立されたとされる法勝寺跡の一部であり、ちょうど観覧車の辺りには八角九重塔が建っていたといいます。
暑さを心配していましたが、木陰や屋根のある休憩スペース、霧が降り注ぐミストシャワーもあり、時折日陰でお茶を飲み休憩しながら園内を巡りました。
ちなみに、借りられるベビーカーは18台分とのことです。
ここに来たのは、もしかすると子供の頃以来かもしれません。かつては、どこの動物園も水族館も殺風景なものでした。
子供心に「ここの生き物たちは、退屈しないんだろうか。幸せなんだろうか」と思ったものですが、京都市動物園は2015年にリニューアルオープンを果たし、図書館カフェやバイキングレストランも併設されました。
背の高いキリンを渡り廊下から見下ろしたり、歩く猛獣を自分の頭のすぐ上で観る事ができたり、より生き生きとした生き物たちの生態を観られます。
ペンギンもいたのは驚きでした。
人気アニメや劇団、美術館と協同したイベントを催したり、夜間開館や動物の入る温泉を企画したり、昨年12月にはニシゴリラの赤ちゃんが生まれたりと、何かと話題も尽きません。
昨年は、琵琶湖疏水を引き込んだ「京都の森」内のせせらぎで蛍の飛翔が確認できたそうですが、今年は姿を見せてくれるでしょうか。
なお、16日には近くの岡崎公園で「バスまつり」も行われます。動物好きな子も、車好きな子も、岡崎に集まれ~!

2019年6月12日 | 観光スポット | 1 Comment »

駅近の山荘・白龍園

6月5

haku  
京都通あるいはリピーターの中で、紅葉の名所は新緑の季節にこそ訪れるのが鉄則です。
秋の特別拝観で人気急上昇中の白龍園も、初夏に傾き始めたこの季節は、とても静かでした。
時折は叡電の車輪の音こそすれ、聞こえてくるのは、鳥のさえずり、水流、庭を手入れする鋏の音、自分の足音。
所有するアパレルメーカーが、その土地の神を祀り手作りで庭園を創り上げ、数年前まで顧客に対してのみ公開していたそうです。
つつじの盛りは過ぎていますが、あちこちの蹲や東屋の花入れに可憐な花が生けられ、おもてなしが感じられました。
園の向かいにある「河鹿荘」はぜひ併せて立ち寄ってみてください。
囲炉裏が二つある古民家の風情で、喉を潤しながら外の新緑を眺められます。
冬になると、子供連れのお客には、灰吹きを体験させたりする事もあるそうですよ。
白龍園、河鹿荘ともに、二ノ瀬駅からから徒歩7分という立地ながら、山深い集落を訪れたかのような錯覚は、京都市の真ん中では味わえない魅力です。
白龍園に入るには、通常は出町柳駅にて拝観券を購入する必要がありますが、この春は白龍園でも拝観券を販売しています。

「リアル」に迫る意味とは

5月29

yoshimura

2日まで開催中の『吉村芳生 超絶技巧を超えて』展は、ぜひ、間近で実物を観て頂きたい展覧会です。
風景や革靴など、題材とする写真を小さな升目に分解し、升ごとに色の階調をつけて塗り潰す様に描き写すという、気が遠くなるような手法です。
1年間毎日描き続けた365枚の自画像や、新聞の紙面を1文字に至るまで全て書き写した上に自画像を重ねたものなど、来館者が「何やってるの、この人…。」と思わず漏らしていましたが、ごもっともです。

展覧会フライヤーのトップ画像にも採用されている藤の題名は『無数の輝く命に捧ぐ』。東日本大震災が起こった年に生まれた作品です。
無心になって鉛筆を動かしているその境地は、写経に似た感覚があるような気がします。
この一見機械的にも見える単調で緻密な技法ですが、吉村氏は「機械が人間から奪った人間の感覚を取り戻す」と語っています。
こちらの作品は、未完成のままの絶筆の作品とは異なり、下書きのような藤の線がうっすら端に向かって白い背景の中に消えていくのが気になりました。

街並みや新聞紙、草花等どの題材も、ごくありふれたものばかり。一つ一つの線や色の重なりの繰り返しによって構成されているのは、私達生物やその営みも同じです。
もしかすると、その事をより強く意識するようになったのは、モノトーンの作風から脱し、180色の色鉛筆を手に花々を描くようになってからなのではないか、と勝手に考えています。
決して描く対象物そのものになる事は無いけれど、極限まで対象物にリアルに近づく事の意味とは何なのでしょうか。

2019年5月29日 | 芸能・アート | No Comments »

祇園祭の新休憩スポット

5月22
きものステーション・京都

きものステーション・京都

「京都経済センター」がこの春、「京都経済センター SUINA(すいな)室町」として新装開店しました。

約1100平方メートルの大規模書店や、その周囲や地下1階に飲食店が集まり、「モリタ屋」が営む食料品店には驚きました。
勿論「きものステーション・京都」も健在で、若い感性でラインナップされた店内は明るく、また和室の小上がりもあり、和裁などのワークショップも参加できるようです。
男女の浴衣と共に展示してあった、丸い籠のショルダーバッグは、和装でも洋装でもコーディネートが楽しめそうでした。

二階に上がり、「ポケモンセンターキョウト」への入り口に至る空間が広々としていると思ったら、ここ四条室町はちょうど祇園祭シーズンになると「鉾の辻」とも呼ばれる最も賑わいのあるところ。
そう考えただけで、お囃子が流れる鉾町の風景が目に浮かんでくるよう。_

祭りの熱気から抜け、涼みがてらこのビルに入ってお土産を選び、また山鉾が建ち並ぶ様を眺められるスポットとなること間違いなしですね。

2019年5月22日 | お店, グルメ, 和雑貨 | No Comments »

川床でカレーランチ

5月14

ina
南座のイベントを体験しようと現地に降り立ったものの、日程を間違えて準備日に来てしまいました。
間抜けな自分を慰めるべく、昼食を川床で取ろうと思い立ち、先斗町を北へ南へぶらぶら。

独りでコース料理は勿体ないので、「京都牛 稲吉」にて「カレーランチ」を頂く事に。
春を通り越して初夏並みの日差しがさんさんと降り注いでいたため、床には出ずに店内で涼しく食事している人もちらほら。
日傘を挿しても良いとの事でしたが、少々の暑さくらいならなんのその、それより鴨川の畔で川床を満喫したい!という方は、帽子をお忘れなく。
上品な佇まいのお店で、和服のお運びさん達の接客も自然なので、こちらは一人でも緊張もせず。

牛肉の旨みが溶け込んだカレーを頬張りながら、対岸でジョギングをする人、家族でサイクリングをする人などをぼんやりと眺めます。
遅めのランチタイムだったので、グラスに浮く氷同士がかすかに触れ合う音が聞こえるくらい静かで、うっすらかいた汗が風と共に額の熱を連れ去っていきました。
京都牛懐石のお店という事で、香合の様な小鉢の中には「牛肉の甲州漬け」。
歯応えのある肉から、ワインやみりんの優しい香りが漂い、コース料理への想像が膨らみます。
気になるお値段は、ソフトドリンクと共に2千円ちょっと。
次回は家族や友人を誘って、京都牛懐石を頂きたいと期待しています。

2019年5月14日 | お店, グルメ | No Comments »

風立ちぬ

5月6

koi
今年は鯉のぼりを初めて買いました。
スーパーでも柏餅など端午の節句にちなんだ食品や、おもちゃに付いた鯉のぼりは多く見かけるのに、近所はマンションが多いためか鯉のぼりを揚げている様を見かけない事を、少し寂しく感じていました。
隣近所への遠慮か、もしもの雨天への懸念か、または室内や玄関に飾っているのかもしれません。
それでも唯一、マンションのベランダから立派な鯉のぼりがのぞいている家を見上げて、「ああ、やっぱりいいものだなあ…」と憧れたのがきっかけです。
変わらない日常風景に、季節の彩りが添えられるのです。

内心「おもちゃの鯉のぼりでいいやん」と考えていそうな家人には、「我が家には立派過ぎない?」と言われてしまいましたが、いいんです。自己満足です。
テレビを消して窓を開けていると、かすかに矢車が回る音が風と共に流れてきます。
姉妹で育ってきたため、窓の外で風を大きく飲み込んで泳ぐ鯉を眺めるのは新鮮。

鯉のぼりは、春のお彼岸が過ぎれば飾ってもいいといわれており、遅いところでは、旧暦の端午の節句に合わせて約1ヶ月遅れの6月上旬まで出している地域もあるそうです。
来年は、もう少し早く揚げてみようかな。

2019年5月06日 | イベント | No Comments »
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