e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

職人たちの技光る、竹の指輪

2月19

take
錦市場に程近い竹の雑貨店「ばんてら」は、店内の半分は竹を利用したアクセサリー等の生活雑貨、もう半分は生活空間にも馴染みそうな茶道具が占めていました。
長岡京市の竹材工芸「高野竹工」がもともとの工房で、京都府内産の良質な竹で、伝統的な茶道具のみならずインテリアや内装材にも展開しているそうです。
茶道具の世界では、しばしば国宝・重文クラスの寺社の古材を再利用することが喜ばれ、その縁から生まれ、SNSで話題になったという金閣・銀閣の古材の名刺入れもありました。
表千家・裏千家それぞれ歴代の家元の好みの形の茶杓を一本ずつ再現し、ずらりと収納したセットはマニアック!お稽古で教えるために買う人もいるそうです。

竹のアクセサリーとして、指輪が最も取り入れやすいかと思い、「炭」「茜」「若草」「山吹」といった日本の伝統色5種の中から、「藍色」を選びました。
どの色も地味過ぎない程良い発色と光沢で、ネイルをしていない素の指にも華やかさが加わりました。
とても軽くてすっと指を通るけど作りが緩いわけでもない、たおやかな編み目が優しい表情です。
宝石をとめるツメでニットやタイツを引っ掛けてしまう事もないし、小さい子を持つママさんパパさんも安心してつけられそうですね。
失礼ながら、
「この指輪は、端材を再利用したものなのですか?」と尋ねてみると、
「いえ、この製品のために、竹の皮を一枚一枚漆で染めて、職人が編み合わせんているんです。」
とのことでした。それでいてお値段は2000円もしないなんて、いいのでしょうか。
人前でつけてみるのが楽しみです。誰か気付いてくれるかな。

2020年2月19日 | 和雑貨 | No Comments »

福田美術館の美しい人

2月12

hukuda
江戸から昭和にかけて京都で活躍した画家を中心に、絵画約1500点を所有する福田美術館が2019年10月に嵐山の大堰川の畔に開館し、現在は「美人のすべて」展を開催中です。

「美女」ではなく「美人」とあるので、尼さんや女装の美男子まで登場するのですが、目玉は発見されたばかりで初公開となる上村松園の「雪女」の貴重な原画です。
シングルマザーとして生き、画壇では嫌がらせを受ける事もあったという時期に描かれた作品といい、同じ空間に並ぶ松園の作品群の中でもひときわ異彩を放っていました。
松園の表現する凛とした女性達と、長らく所在が確認されていなかったという木島櫻谷の大作「婦女図屏風」で描かれる女性達を見比べてみるのも面白いかもしれません。
作品を控えめに引き立てる表装も見どころで、なんと禁止マークの付いていない作品については、写真撮影が可能です。

蔵をイメージしたという各展示室を巡りながら、全ての展示作品に一貫して感じるのは、指先にまで宿る仕草の美しさ。
現在の女性でこんな仕草を見かけることってあるでしょうか。
と、思っていたら、ミュージアムショップには今回の美女デザインのハンドクリームが販売されていたのでした。
チョコレートも3種類あったので、他の人と被らないバレンタインの贈り物がしたい人にも良いかも…!?

もう一度、初詣

2月5

9 『「今度、九頭竜大社ってとこお参りに行こうと思ってるねん」。

知人からそう聞いて、
「それって、八瀬にある結構新しい神社みたいな所ちゃう?また感想教えてね」と返しました。
随分前に通りがかって、手を合わせて以来です。
その時は特に祭礼も無かったので、地元の年配らしき方がぽつぽつと拝礼されている静かなお宮でした。
知人が節分直前に伺った時には、月初めで賑わっていたようです。
40代くらいの比較的若い参拝者が多く、それぞれ何かお商売をされているような雰囲気の人が多かったとの印象。
聞くところによると、日本電産の創業者が経営に行き詰まっていた頃、九頭竜大社の神主から助言を受けた後に大量の注文が入り、以来ずっとお参りを続けているのだとか。
また、知人の旦那さんも、ここ最近経営で何かと気をもむことが多く、縁あって気分転換にここを訪れることにしたそうです。
おみくじは大吉や小吉といった括りではなく、開祖の言葉が綴られているようです。どんな言葉が巡ってくるかもまた運命か!?
境内に白蛇が這ったような岩があり、「他の人がしてたみたいに撫でてから、今朝から痛みを感じていた腰を撫でてみたら、なんか楽になったわ~」と明るい声で話していました。
節分には豆撒きも賑やかに行われていたようです。
立春は春のスタート地点。もう一度、お正月のような清々しい気分を味わうのもいいかもしれませんね。疫病退散!福は内!

煎茶道東仙流の初煎会

1月27

sencha

泉涌寺悲田院に拠点を置く煎茶道東仙流の初煎会に同伴させて頂きました。
枝ぶりが見事な松や薔薇、椿からは柳がまるで湧き流れるように、あちこちに花が生けられ、一幅の軸には「一枝春」の文字。
思わず「梅一輪 一輪ほどの暖かさ」という俳句を連想したのですが、後で調べてみると「一枝春」を含む言葉は幾つかあるようです。
例えば漢詩『長恨歌』では、亡くなり仙女となった楊貴妃が涙をこぼす様を春の雨に濡れた梨の花の一枝になぞらえた表現があり、泉涌寺に楊貴妃観音がある事から、こちらの解釈が近いでしょうか。
(※後に、陸凱の『范曄に贈る』という詩からの言葉で、「江南には何も贈るものが無いので、梅の一枝と共に春をお届けします」との意だそうです。「春を贈るなんて、この方は贈り物の達人だな」と思って掛けさせていただきました、との事でした)
茶道ではお菓子を食べ切った後にお抹茶を頂きますが、煎茶道では一煎目と二煎目の間に、二条駿河屋製のできたての雪餅を頂きました。
例年は玉露も飲むそうですが、今年は丸久小山園の最上級の煎茶「的的」。旨みを舌で転がすようにゆっくりと。
お菓子が「雪」なら、急須からしたたるこの甘露は雪解け水か。
一煎目は香りが広がり、葉の開いた頃に出す二煎目は、甘くなった口の中にちょうど良い、しっかりとした味わいでした。
お茶席の後は別の部屋に移り、「ピリカ・レラ」というグループの竪琴ライアーの生演奏と会場のホテルグランヴィア京都のフレンチを皆で一緒に楽しみました。
煎茶道は茶道程細かな規則が無いそうで、主人のサロンを訪れるような趣だそうです。

指先ほどの小さな一椀から、たった3文字の言葉から、心身を潤す春の訪れ。

会場は隔年で変わるそうで、来年は稽古場のある泉涌寺で行われるそうです。

茶の湯の面白さとは?

1月21

tea 今年は2カ所の初釜に参加しました。
片方は、初心者を主に対象とした、ミニレクチャーがメインのゆるやかな茶会。
もう片方は、長年習っている稽古場が主催の本格的なもの。

それぞれに同席した友人達に共通するのは、「お茶を習うのは二の足を踏むけれど、茶会は参加してみたい」という思いでした。
前者に参加した友人は、「お茶は大好きだから、作法に縛られずに自由に飲みたい」といい、後者にここ数年毎年共に参加している友人は、
「稽古に通うのは敷居が高いけど、伝統工芸品など日本の美しいものに触れるのは楽しい」といいます。

確かに、細かいルールは茶の湯が敬遠される要因でもあり、習う者にとっても煩わしい一面でもあるのは否めません。
けれど、道路交通法という規則があるから人も車もスムーズに流れているし、学生服という制約があるから毎朝の服選びが不要になるどころか、かえって銘々の個性が浮き彫りになるのです。
その昔、「自分の好きなテレビゲームを茶会で表現するとしたら、菓子はこんなんで、茶室のしつらいはあんなんで…」と妙な妄想を膨らませた事もあります。

「縛りがあるからこその面白さがあるんだよ」と伝えたいけれど、敷居の手前に立つ友人達にそれを理解してもらうのは難しいかもしれません。
それでも、来客に不要な気を遣わせない和やかさを作るのも、亭主のおもてなし力のなせる技なのでしょう、両者とも退席する頃には、晴れやかな笑顔を見せていたので、「楽しめたみたいで、良かったな」と安心しました。

2020年1月21日 | 芸能・アート | No Comments »

『麒麟がくる』の予習

1月15

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大河ドラマ放映前の頭の整理として、『まっぷる 明智光秀』出版記念「明智光秀講座」を受講してきました。

明智光秀という人物像の裏表、人物相関図に加えて、本能寺の変から時代を遡るという珍しい構成ながら、観光ガイドブック『まっぷる』らしい親しみやすさで、知りたい情報がうまくまとめられています。
日本史を語る上で京の地は避けて通れないと言っても過言ではありませんが、特に若い頃の資料が少ないと言われる光秀の足跡が分かるのが主に京都だと言われています。
本能寺の変が勃発した市内はもちろん、京都大河ドラマ館が開館した亀岡市、織田信長没後に羽柴秀吉と対決した長岡京・大山崎、信長の命で平定した丹波等々、京都府内や周辺にもゆかりの地がたくさんあります。
5月の連休中に開催される「亀岡光秀まつり」に、あるいはそれまでに亀岡に是非とも足を運んでみたいと思いました。

講座の最後に、明智光秀は、制圧した土地で善政を敷くという仕事を実直に行っていた万能型の武将であり、だからこそ信長に重用されたのだろう、また、比叡山の焼き討ち等、様々な戦の後処理も担っており、家臣を案じる彼の手紙には、一人一人、下々の者の名前まで書かれ、自分の守るべき人々を思うがこそ、信長を討つという手段を選んだのかもしれない、との結びでした。

早速この本を頼りに、帰りの足で光秀の首塚に立ち寄り、塚を守る「餅寅」で「光秀饅頭」を家へのお土産にしました。

お洒落な腹帯

1月6

anzan ここ数年、毎年初詣には大阪・摂津国一之宮の坐摩神社、京都・山城国一之宮の下鴨神社を訪れています。
下鴨神社の入り口へと続く車の行列を目の当たりにして混雑を覚悟していたものの、広い境内では人の流れも意外にスムーズで、思った程のストレスは感じませんでした。

お賽銭にする小銭を持ち合わせていない事に気付き、賑わう売店を歩いていると、干支や年始の縁起物や色とりどりのお守りの中に、淡い珊瑚色のレースをあしらった安産の腹帯とお守りが目に留まりました。
神社で頂く腹帯は「木綿のさらし」といった素朴なものが殆どですが、こちらの帯は端が赤ちゃんの健康的な血色のような色の波々で、同色の双葉葵のレース編みが付いていて、上品かつとても可愛らしかったからです。

ここ下鴨神社東殿の祭神・玉依媛命が鴨川で禊をしているときに、上流より流れついた丹塗の矢を拾い床に置いたところ、矢が美しい男神となって結婚、子を授かったとの神話は有名です。
もちろん昔ながらの錦糸の美しい織物のお守りも好きなのですが、下鴨神社のは芸能人に紹介されたりと、乙女心をくすぐるデザインも多く、女性達が大挙して求めるのも納得です。

掌にころんと隠れる巾着型のお守りはサシェのようで、真っ新の産着に添えて贈っても映えそうですね。

ここにも天神さん

12月25

ne 年が明けてからでは参拝客が増えるかもしれないと思い、一足先に狛犬ならぬ「狛ねずみ」がいる大豊神社をお参りしてきました。

哲学の道からちょっと脇道に入っていく様な感覚で、既に同じ事を考えている人達でしょう、ちらほら参拝客の後ろ姿が見えてきます。
住宅地に溶け込み、こじんまりとして鹿ケ谷・南禅寺一帯の産土の神らしい雰囲気です。
神社の背後は椿ヶ峰と呼ばれ、その梅ヶ峰からの御神水で手を清めて境内をそぞろ歩きしていると、所々に椿をはじめ色んな品種の植物が植えられています。
境内摂社の大国社へと向かうと、ねずみの一瞬の動きを写し取ったような可愛らしい狛ねずみが、小さな祠を守っていました。

子宝や安産のご利益でも知られるねずみさん。しかも、ここの御祭神は少彦名命ですが、後に応神天皇や菅原道真公も合祀されているという事は、受験生のお参りの穴場?
887年の創建ながら、現代人のお願いごとにもぴったりなお宮さんではありませんか。真っ直ぐ天に向かって伸びるご神木にも忘れずタッチ。

境内で拾った銀杏を傍らに置き、澄んだ音色の水琴鈴のお守りと安産用にねずみが描かれたお守りを受けると、「きれいな銀杏が残ってましたね。良いご神徳がありますように」と言って頂きました。
20分程でお参りが済んでしまったのですが、ここも干支にちなむ神社として、年明けは大賑わいになるのでしょうか。

京都観光に天気予報を活用する

12月17

tenki もうすぐクリスマス。イルミネーションイベントの日の空模様や降雪の有無など、お天気が気になる人もいることでしょう。

気象予報士と京都検定1級の資格を持つ京都観光ガイド「京都旅屋」の吉村晋弥さんに、天気予報を活用するこつを教えて頂きました。
今日、色んな天気予報サイトがありますが、ここではそれらの元データとなっている気象庁のホームページでのお話です。
コンピューターが出すデータから、短期予報は一日3回、週間予報は一日1回の11時のみ、2週間予報は14時半頃、1ヵ月予報は木曜日、3ヶ月予報は毎月下旬の25日頃に更新されているそうです。
特に、最新情報をチェックするなら、朝5時と17時に注目するのが良いようです。
ここ数年の台風被害は深刻なもので、気になる人は4、10、16、22時の情報や、海外の台風予報を参考するのも手です。
日本では円形で表示されますが、他のサイトではこれまでの進行履歴を地図上に線で表しているものもあるそうです。
普段私達が「風が強いな」と感じるのは、風速5m/秒程から。風速が2倍になると、その圧力は2倍ではなく2乗の4倍となるので、気を付けて欲しいとの事でした。
ゴルフをする人からの「降水量1ミリとなると、一体フィールドはどういう状態なのか?」という質問には、「1平方mの地面に1リットルの水を撒いた様なイメージ」。とても分かりやすいですね!
コンピューターがはじき出すとは言え、気象予報士の判断次第で、工事現場や高速道路で除雪車やその為の資材を発注するなど、多額のお金が動くという責任も発生します。
私達が毎日目にしている予報は、気象予報士が銘々に頭を悩ませながら発せられているものなのです。
当然ながら、空模様を知りたい日が遠ければ遠い程予想が難しくなるので、気象庁ホームページでは「信頼度(A、B、C)」というユニークな項目が設けられており、例えば
「くもり 確率40% 信頼C」という判定があれば即ち「分からない」という事なのだという面白い裏情報も教えて頂きました。
丹波太郎」「山城次郎」「比叡三郎」という京都独特の気象用語も話題に登り、大いに盛り上がりました。
2019年12月17日 | イベント | 1 Comment »

おしるこの癒し

12月10

take 寒い外から帰宅したら、すぐに着替えて温かい飲みものでほっとしたいですね。
生姜のぴりりとした刺激もいいけれど、疲れてひたすら甘いものが欲しい時にはお汁粉です。

京華堂利保さんの箱を開け、筍や松茸を模した、ずっしり重たい懐中最中「たけの露」を取り出します。
お湯を注ぎ、少しふやけたところを開くと、淡い小豆色の粉の中にお湯が流れ込んでいきます。

掌に抱かれた温かい椀の中には、明かりが映り込んでぴかぴかと光る餡のお池。 匙を沈め、その照りごと口に運びます。 さらさらのさらし餡が舌の上に流れ込み、そのきめ細かな粒子の一粒一粒に餡と砂糖の粒が乗っているかのような甘さ。 洋菓子のそれとは異なる風情です。

すっかり口の中が甘くなったら、ふやけた最中の皮をはむはむと噛んで香ばしさを感じます。
椀の中に篭っていた温もりは、すっかり懐の中へと移ってゆきました。

あとはぼんやり、椀に残った粒子の波跡を眺める、冬のひと休み。

2019年12月10日 | お店, グルメ | No Comments »
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