e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

銘木と椿の競演

3月17

taizan 銘木商・泰山堂(新烏丸通丸太町上ル新富町304。075-213-0355)というところで椿展があると誘われ、お邪魔しました。
庭園に植わっている椿の木を回遊するのかと想像していましたが、畳敷きの小上がりのある、こじんまりとした数寄屋建築が会場でした。

染付とのコントラストが鮮やかな花の群れに迎えられ、ある花は燗鍋の口から枝を伸ばし、ある花は唐紙の版木を敷板に、またある花は仏手のような彫刻の指先に花を付けていました。
その品種も「月光」「赤城」「百合椿」「千寿」、そして雷光のように枝をうねらせた「雲龍」など、花びらの色から葉の形状まで実に豊富です。

美しい椿は寺院や庭園、お茶席の床の間など京都でたくさん出逢えますが、様々な古材や花器の絶妙な取り合わせで生けられた姿を一度に観られるのは新鮮でした。

「真の美しさに触れた時、人は心強くし、何度でも再生できる」
案内状にはそう書かれていました。

撮影は可能ですが拡散不可なので、ここでの椿の画像をお見せできないのが残念ですが、
この椿展は毎年3日間だけ開催されているそうなので、来年のご参考までに。

手のひらの国宝

3月9

mini
仁和寺で茶室の模型展が開かれているとの口コミを得て、行ってきました。

御殿の白書院を会場に、手の平サイズの茶室と茶道具等がずらり。
それも、豊臣秀吉黄金の茶室や千利休の待庵など、基本的に非公開で入ることのできない茶室ばかり。
ミニチュアが好きでよく観ますが、幻とされている茶釜や国宝の茶碗、茶懐石のそれは他で観た事がありません。

模型製作が趣味だった関山隆志さんが、24歳の頃に職場の茶道部で初めて茶道に触れたことからのめり込み、還暦を過ぎてから茶室の模型の製作を始められたそうです。
できるだけ実物を訪問し、交渉をして見学をさせてもらい、1/12のスケールに落とし込んでいるとのこと。
LED等の照明を組み込む事で陰影や奥行ができ、ミニチュアながら庭園の眺めに清々しさまで感じられるのが驚きです。

観る角度を変えると見える物が現れる遊び心もあって、何よりも楽しんで製作されているのが伝わます。
会場にいたスタッフ方やお客さんとも和気あいあいと楽しませていただきました。

この展覧会は3月7日で終了しましたが、2年前にも嶋臺ギャラリーで個展をされていたそうなので、またどこかで新作とともに企画があるかもしれませんね。

「京都ネイティブ」なお店

3月3

mago
京都マニアの友人に教えてもらった、京都御所に程近い「孫右ェ門」。

個人宅の庭に踏み入り縁側から靴を脱いで入店するようなスタイルに戸惑いながらも、庭に面したソファ席に身を沈めました。
ウヰスキー入りの濃厚なチョコタルトが、初めて飲む「二三味珈琲」によく合い、よく見るとタルト生地にも珈琲の豆が。

床の間にはお雛さま。こちらに住まわれているオーナーさんは、並河靖之七宝記念館のポスターを手掛けるグラフィックデザイナーだそうで、衣紋掛けの前には新古のデザイン本が並んでいました。
越して来られる前のお家は、祇園祭の岩戸山が立つ町内とのこと、テーブルクロスも祭つながりのものだったので、
「今年の祇園祭はどうなるんでしょうねえ」「さあ~何らかの形でしはるんちゃうかなあ~?」
と会話に花が咲き始め、カウンター越しに長らく話し込んでしまいました。

立て看板が無ければうっかり通り過ぎてしまうような入り口、椿が咲き長い路地を奥へと進む静かな高揚感と、意外にアットホームな居心地(家だけに)と手頃なお値段。
バーの時間帯に人を連れて行ったら喜ばれそうです。

家からお店への改装や置かれた小物にもセンスを感じて、久々に「京都ネイティブ」なお店に出逢えた気がします。

2021年3月03日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

どこで食べる?フレンチのお惣菜

2月23

french
おうちで食べるご飯を、公園のベンチで食べるテイクアウトをもうちょっとお洒落に、贅沢にしたい。

北白川のスーパー・ライフの裏手にある「ちょっとフランス」のお惣菜は、店名からしてまさしくそれ。
イートインがあってもおかしくないくらいの広さの店内には、キッシュ等の手作りの品が習ぶショーケースが2つ程あるだけ。

数種類ある分厚いサンドイッチに必ず挟まっているのは、新鮮なグリーンに鮮やかなキャロットラペ。
オリーブを散らしたサラダはニース風でしょうか。

襟を正してフレンチレストランに向かわずとも、手間暇かけたフランス料理が、おうちでワイン片手に味わえる幸せ。もうお箸でつまんじゃう?

三寒四温の折、暖かな晴天の日はお外に持ち出して、
寒ければ濃厚な栗のポタージュをおうちのお鍋で温めて。
オンラインでも注文できます。

2021年2月23日 | お店, グルメ | No Comments »

みやこの梅

2月17

ume
京都御苑を蛤御門から入り、南へ下がって行くと、桃林があります。
まだ桃の花は咲いていませんが、そこから更に下がると、ごくうっすらとピンク色の帯が見えてきます。
御苑の梅林は先週末(13日)の時点で3~4分咲き。中でも花をつけている木はほぼ満開でした。

梅林の東側には、白雲神社の幟が見え、毘沙門天を祀る祠をお参りしました。
音楽の神様として知られているので、音楽家の友人は定期的に訪れています。
社の裏側には、さすると怪我や病に効くという薬師石もありました。

駅から近く、行程差の少ない平坦な足元は、お年寄りや子供連れの人にも行きやすい梅の名所だと思います。
ベンチでは、読書やランチ女子会をしている人、柵越しに見える皇宮警察本部の車両を眺める男の子も。
歩くのが苦でなければ、御苑の南側から宗像神社、出水の小川と北上して、中立売休憩所で一休みするのもいいですね。

梅の香りを嗅ぐというよりは、梅の木の周りだけ1度ほど気温が暖かいような気がするのは私だけでしょうか。
白梅は枝にこぼれた雪のようで、夕陽を透かした白い花びらは、とても濃厚な香りを放っていました。
詳しい梅の品種や場所、咲き具合については、公式サイトでご確認くださいね。

2021年2月17日 | 神社, 観光スポット | 1 Comment »

「オンライン〇〇」生活

2月10
※画像はイメージです

※画像はイメージです

「オンライン〇〇」生活も定着してきました。

先週末は、学生時代の先輩方と「オンライン飲み会」に初参加。
お祝いごとの寄せ書きもオンラインで集めて発注できるんですね。

また、今年は茶道藪内宗家による「オンライン初釜」なるものも滑り込みで参加してみました。
事前に申し込めば、お茶席と同じ末富の薯蕷饅頭と干菓子、福引のくじが手元に届けられます。
自分が習っているのとは異なる流派で、そもそも宗家の茶室など茶道を学ぶ人でも易々と入れる場所ではありません。

自宅に居ながら燕庵の松籟を聴き、立ち昇る湯気を感じ、お正月らしい取り合わせの道具と太刀を振るような武家茶のお点前を鑑賞。
古田織部が好んだ燕庵は、現在のものは兵庫県有馬から移築されたもので、「燕」とは「くつろぐ」という意味があるそうです。
利休の待庵には3つの窓がありますが、こちらには10もあり、柄杓を蓋置に落とすタイミングで外から簾が巻き上げられてより明るくなる演出が楽しめます。
御家元直筆の色紙には「一花開天下春(一華開いて天下春なり)」の文字。これには「一塵起大地收(一塵起こって大地収まり)」という言葉が先立るようで、まさに現在の私達が願う春と言えるでしょう。

疎遠になってしまっていた人、会うに会えない距離感の人々と一瞬で繋がる事ができる。
行きたいけどなかなか足を踏み入れられないところに人目を気にせず入っていけるのもオンラインならでは。

ここのところ、音声による新たなSNSが話題になっていますが、どんなツールでも使う人同士の「一座建立」の気持ちで良い和(輪)を作っていきたいですね。

チョコレートに息づく職人技

2月3

hosashi
「ここはチョコレートの街か!」と思うほど、京都には国内外のチョコレート専門店がひしめき合い、バレンタインへの贈り物をどこで選ぶか悩ましいところです。
昔からずっと愛されてきた老舗で買う?誰もが知る有名ブランド店なら間違い無い?本場ベルギーから直輸入のお店?それとも豆の産地からこだわった品で差をつける!?
なんやかやと悩むふりして、味見という名目でチョコレート専門店をはしごしてしまいたいのが本音だったり。

今回は、「クラブハリエ」出身、世界大会でも実績のある小野林範シェフによる「ショコラトリー ヒサシ」へ。
桜色の暖簾をくぐった店内は既に数人が等間隔に並んで列を成していましたが、オンラインショップもあるようです。
葉っぱのように木のオブジェに個包装でぶら下がっているフィナンシェから最中のような「Monaショコラ」、世界大会優勝の「ボンボンショコラ」まで、実力派ショコラトリーながら、どこか親しみやすさを感じるラインナップです。

オリジナルチョコレート「GAIA(ガイア)」を使用した濃厚なソフトクリームは、やわらかいながらも粒々した感触があり、上質なチョコレートの粒子をそのまま味わっているかのよう。
底から発掘されるさくさくと軽いメレンゲが対照的な食感を楽しませてくれます。
500円というワンコインでパフェを越える充実感を味わえるイートインメニュー。テイクアウトも可能です。

2021年2月03日 | お店, グルメ | No Comments »

京都・文化財級トイレ

1月27

wc
トイレのおかげ」という児童書が何だか面白そうだったので、パラパラとページをめくっていたら、東福寺の東司と二条城本丸御殿にあるという畳敷きのトイレが紹介されていました。
いずれも現在は使用されておらず非公開なので、本の中でしか詳細を知る術はありません。

東福寺の東司は、「日本最古のトイレ」として有名で、使い方に作法があるのもご存じの方は多いと思います。
しかも室町時代の重要文化財建造物の最大級トイレ!内部は大・小用に分けられ、壁で仕切られていました。
この本にはその使い方の手順まで載っています。
多くの修行僧が利用するため、着衣を間違えないため紙に記号を書いて目印にします。
お尻をぬぐうのはなんと「躊(ちゅう)」と呼ばれる三角の長い棒!
水を流した桶を戻したら、最後に手は灰や土、橘の実の粉でもみ洗って終了です。
ここでの行為も修行のうちなので、所作にも細かな決まりがあるようです。

畳敷きのトイレは、江戸時代の武家屋敷などに作られたといい、二条城本丸御殿のは、引き出し式の砂雪隠。
使用後に砂で覆い、砂ごと取り除きます。その後の始末は、もしかしたらお堀に捨てられえいた可能性も…。

かねてより、トイレは国の文化や店の個性が現れる場所だと思っていましたが、まさか京都の話題が出てくるとは。
大人が読んでもたくさん発見があって面白い本だと思います。あっという間に読めます。

2021年1月27日 | 歴史 | No Comments »

やり直しは、何度でも。

1月20

7 大晦日に大掃除をしてお正月を迎え、七草粥を食べたかと思えば、元旦から2週間程で「小正月」。
そうこうしているうちに節分の足音がやってきて再び晦日と新春の気分へ。

家では靴を脱いでスリッパに履き替え、トイレでまた別のスリッパに履き替え、庭に出る時もつっかけに足を移す。
伝統芸能の世界では、扇子を自分の前に置くなど、結界としています。
どうして日本人はこんなに「区切り」たがるんでしょうね。

疫病退散や厄除けの行事も年がら年中多いこと多いこと。物凄い念の押しようです。
ともあれ、一年の計が三日坊主になりがちな者にとっては、気分新たに仕切り直しができるきっかけが何度もあるのは有難いことですね。

2021年1月20日 | 未分類 | No Comments »

「てづくりとうふ」ってこんな味

1月13

yuba
下鴨神社を少し北に行ったところにある「てづくりとうふ すがい」さんの豆腐は、昔から実家の食卓によく上がっています。
以前からずっと気になっていたのが、お店の二階。予約制で豆腐料理が頂けるのです。

ここなら家族水入らずの外食に安心だと、この機に上がらせてもらいました。
家庭のリビングのような寛ぎ感に、解説の添えられた絵画や書が飾られているなど、サロンの様な文化的な空気感もあります。
小グループで2~3組入れそうですが、一去年は、よく外国人の方がこの部屋で豆腐作りの体験をされていたそうです。

まずは濃厚な豆乳で喉を潤して、胡麻入りの豆腐から箸をつけました。瑞々しい菊菜をまとった白和えの美味しいこと。
時勢を反映して、湯豆腐は銘々に個別の鍋で温められたものを好きな頃合いでポン酢の小鉢に受け入れます。
スーパーで買う豆腐は角がきりっと固いものですが、ここの豆腐はほろほろとほどけていくようなやわらかさ。
そのまま体の一部になっていきそうな、自然で素朴な味。

豆腐だけでなく、葱や菜の花の鮮やかな翠や淡雪のようなおろし、だしを含んでも型崩れせず程良い堅さを保った大根。
ありふれた物のようでいて、素材の良さを感じさせるのはここの豆腐にも共通している気がします。
若ご主人でしょうか。語り口調も豆腐愛が止まらない様子で、豆腐業界にまつわる色んなお話をして下さいました。

噛み応えのある湯葉もとても美味しく、〆の湯葉丼は、滑らかなあんの中に湯葉が反物を散らしたようにたくさん入っていてお腹も満足。
商品の取り寄せも可能ですが、お昼時なら、昼のコースで揚げたての揚げ出し豆腐が食べられるそうですよ。

2021年1月13日 | お店, グルメ | No Comments »
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