e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

和のアフタヌーンティーと非日常空間

6月26

tea
外資系ホテルが続々と進出を果たしているここ最近の京都ですが、フォーシーズンズホテル京都は、早い段階から京都の史跡を活かしたラグジュアリーなホテルを展開しています。
日本の外から京都という町のエッセンスをどの様に生かしているのか、興味はあるものの宿泊でもしない限り機会が無いと敷居が高いもの。
そこで季節の催しとして、宇治の銘茶をふんだんに使った「和のアフタヌーンティー」があると聞き、初めて足を踏み入れてみました。
ゆったりしたソファ席に落ち着くと、グラスに入ったまろやかなアイス玉露で幕開け。
ミニローストビーフバーガーやほうじ茶と栗のバターサンド等を摘まみながら小腹を満たし、宇治茶だけでなくロンネフェルト社の紅茶やオリジナルの中国茶もオーダーして、まさにお茶尽くしのひとときです。
抹茶とバニラのスコーンは、冷めないよう純白のナプキンにふっくらと包まれてサーブされました。
丸久小山園とフォーシーズンズホテル京都の焼き印入りのお茶のクッキーが入った、手の平サイズの可愛らしい茶箱はお土産に。
さすがにいいお値段はするのですが、別の日にアフタヌーンティーを予約していた友人は、「確かにそうだけど、お金に換えられないものがあります」と満足していたようでした。
非日常を楽しんだのち、ホテルを出ると左手には新日吉神宮が見え、いつもの京都の景色に戻りました。
アフタヌーンティーは今月いっぱいまでですが、平重盛の小松殿跡と言われている庭園「積翠園」の池の畔にある茶室「積翠亭」では、日本茶やシャンパン、日本酒のほか期間限定でかき氷も頂けるそうで、この夏の間に再びお洒落して伺いたいと思っています。

2019年6月26日 | お店, イベント, グルメ | 1 Comment »

お父さんも喜ぶバスまつり

6月19

bus   
前回の「一言コラム」で触れました「スルッとKANSAI バスまつり」。
昨年は台風の影響で見送られましたが、京都では7年ぶりの開催となりました。
25ものバス会社の車両が岡崎公園に大集合するというもの。
きっと、車が大好きな子供達があっちやこっちの車両に囲まれて興奮する様が見られるに違いないと想像しながら、いざ会場入りすると…おじさんがいっぱい!バスはどこ!?
そこにはバスの車両だけでなく、各バス会社のブースが建ち並び、それぞれオリジナルのミニカーやバスの備品、古い停留所の表示板などをフリーマーケットの様に展開しています。
鉄道ファンならぬバスマニアがこんなにいたとは。
もちろん小学生からベビーカーの子供達もたくさんいるのですが、黒山の人だかりと熱気に意表を突かれました。
平安神宮への参道の両脇に整列する様々な色や形のバスは乗車することができ、警察車両や屋根が開閉されるオープンバスは人気で長蛇の列です。
今年の4月に初登場し期間限定で運行中の「宇治茶バス」も、この機に乗り込んでみました。
宇治田原町にある正寿院の「猪目窓」を模したハート型の窓に、畳風の座席シート、茶壺や掛け軸に茶釜、手すりも竹模様です。
冗談ばかりと侮るなかれ。茶道裏千家の千玄室前家元も乗車した事のある由緒正しき?バスなんです。
これまでは9月に行われていたそうですが、なるほど、父の日の開催なら家族サービスをしながら自分のお買い物も気兼ねなく楽しめるというわけですね。
催しは15時半で終了しましたが、その後全てのバスが列を成して会場を出発し、鳥居をくぐって通過して行くとの事で、カメラ小僧たちに囲まれながら最後まで手を振って見届けました。

動画はこちら(近日公開)

2019年6月19日 | イベント | No Comments »

風立ちぬ

5月6

koi
今年は鯉のぼりを初めて買いました。
スーパーでも柏餅など端午の節句にちなんだ食品や、おもちゃに付いた鯉のぼりは多く見かけるのに、近所はマンションが多いためか鯉のぼりを揚げている様を見かけない事を、少し寂しく感じていました。
隣近所への遠慮か、もしもの雨天への懸念か、または室内や玄関に飾っているのかもしれません。
それでも唯一、マンションのベランダから立派な鯉のぼりがのぞいている家を見上げて、「ああ、やっぱりいいものだなあ…」と憧れたのがきっかけです。
変わらない日常風景に、季節の彩りが添えられるのです。

内心「おもちゃの鯉のぼりでいいやん」と考えていそうな家人には、「我が家には立派過ぎない?」と言われてしまいましたが、いいんです。自己満足です。
テレビを消して窓を開けていると、かすかに矢車が回る音が風と共に流れてきます。
姉妹で育ってきたため、窓の外で風を大きく飲み込んで泳ぐ鯉を眺めるのは新鮮。

鯉のぼりは、春のお彼岸が過ぎれば飾ってもいいといわれており、遅いところでは、旧暦の端午の節句に合わせて約1ヶ月遅れの6月上旬まで出している地域もあるそうです。
来年は、もう少し早く揚げてみようかな。

2019年5月06日 | イベント | No Comments »

京北で桜ドライブ

4月24

keihoku 先週末は、右京区京北にある宝泉寺の桜を観てきました。
京都市内よりも開花が遅く、シーズン終盤のお花見が楽しめます。
遠く坂の先の壁越しにピンク色の桜が溢れるように垣間見えてくると、期待値が上がります。
その割に「花より団子」とは言ったもので、着いてすぐさま東屋の日陰の中でぜんざいやよもぎ餅を頬張りました。
京北地域では、お正月に餅で納豆を餅で包んだ「納豆もち」を食べる風習があり、こちらもぱくり(味はそのままでした!)。
徒歩で一周できるほどの丘に、「観音桜」、「平安しだれ桜」、「金剛桜(うわみず桜)」、仁和寺から移植した「御室桜」、「楊貴妃」などの希少な桜が約20本あるそうで、子供が触れられる程の高さに枝を伸ばしたものや、桃色のシャワーの様な木がたくさんありました。
夕方になってからもぽつり、ぽつりと参拝者が絶える事はなかったのですが、不思議と静か、車で時間をかけて来て良かったと呼べるのどかな名所でした。
東屋に置いてあった「花降る里けいほく SAKURAめぐりマップ」によると、樹齢300超年とされる「黒田百年桜」をはじめに周辺にも美しい桜の木があくさんあるようで、紹介されているスポットは39箇所も!
また、夕方の帰路の高速が渋滞していたので、早めに京北に入って車で巡るのが正解かもしれません。
今年の「桜まつり」は終了しましたが、桜は自由に見学できるそうです。まだ間に合うかも!?

新名所・淀のお花見さんぽ

3月20

yodo
京阪「淀」駅の4番出口を出て、ピンク色の幟を頼りに歩くこと約10分。
早咲きの河津桜が水路沿いに延々と連なる淀緑地の入り口が見えてきます。
手を伸ばせば子供でも届く程の低木で、一面の花に埋もれるようにして写真撮影を楽しむ人がたくさんいました。
付近の住民によって植えられた河津桜2本が、水路沿いの淀緑地や京阪淀駅前のロータリー、淀城跡公園などにも植えられ、現在は約300本にもなったそうです。
鮮やかな若葉がのぞき始めているものの、見応えも十分。サギが足を浸す水面も、桜色に染まっています。
ところどころにベンチやブランコ、蕾が目立ってきた枝垂れ桜等があり、雨で湿って色濃くなった土の上では、菜の花などの花壇の花々も濃いピンク色の桜と共演していました。
孫橋脇には淀観光協会による期間限定の売店が設けられていたので、“京みそ焼き鯖寿し”をお土産に買い求めました。
近くの東屋に目をやると、お弁当を膝に載せてお花見を楽しんでいるグループも。
淀緑地東詰に近づくにつれて人の数はぐっと少なくなりますが、地元の人と行き交いながら静かなお花見散歩を楽しめます。
淀緑地周辺の散策手帳」によると、桜橋を中心にシダレザクラが満開になる4月が人も少なく穴場なのだそうです。
現在の桜の様子などリアルタイムな情報は、「淀さくらを育てる会」Facebookをご覧ください。

弱みを個性に花開く

1月23

kusama

祇園甲部歌舞練場を期間限定の現代美術館として開催されている『草間彌生 永遠の南瓜展』。
長所と短所は紙一重。視界が水玉で覆われるという幻覚に苦しめられた彼女は、その水玉を作品に昇華させる事で才能を開花させました。
自分にとっての弱点やコンプレックスを受け止め、強みに転換できて大成功をおさめた典型的な例と言えます。
まるで作品のうちの一つかと思うような草間そのものの個性も注目の的となっており、映画『草間の自己消滅』やドキュメンタリー映画『草間彌生 わたし大好き』も合わせて観てみたいところです。
水玉模様はもはや草間彌生を表すアイコンとなり、ルイ・ヴィトンとのコラボレーション「 ヤヨイ・クサマ コレクション」でも話題を呼びました。
この展覧会では水玉の他にかぼちゃや花のシリーズで展開されていますが、地上の花々を巻き込みながら宇宙へと吸い上げられていくような富士山のシリーズを目にするのは初めてでした。
個人的には「わが心の富士は語る」という題の木版画が、あたたかく素朴なスケッチのようで心に残りました。
同じモチーフで何通りにも反復、量産ができる版画作品や、カフェでの企画メニュー、ミュージアムショップの長蛇の列を見ると、商業的にも成功しているのがよく分かります。
なお、この美術館は館内に授乳スペースや子供用の便座もあり、親子連れもよく見かけました。
2月末で閉館予定なので、グッズを買いたい人は、早めの来場が良いかもしれません。

西陣の町の息遣い

11月13

miyako
生活スタイルの変化や相続、様々な事情で減りつつある京町家。
その建築物を外からの照明で煌々と照らすのではなく、地域住民の協力のもとで町家の内から外の通りに向けて照らし、家々の格子からもれだす「暮らしの灯り」を表現したライトアップイベントが「都ライト」です(今年度は11日で終了しました)。
ビロードを活かした着物のお手入れグッズの製作体験も行っている「天鵞絨(びろーど)美術館」や、かつて北野界隈を走っていたチンチン電車の映像を投影している翔鸞公園、機織りが並び普段は手織り体験もできる「奏絲綴苑」、そして、上七軒の名の由来となった7つの茶店のうちの一つと言われている元お茶屋を巡りました。
虫養いとして、地ビールや甘酒、コーヒーや麺類を提供するスポットも点在しています。
会場間は徒歩数分程ですが、住宅地を通る際、辺りはわずかな道案内の行燈のみで殆ど真っ暗なのですが、子供が母親を呼びかける声が家から聞こえてきたり、犬の散歩で立ち話をする声や通り過ぎる自転車のライトの音、じょうろを片手に路地へと消えてゆく人の姿など、西陣に住まう人々の息遣いがリアルに感じられました。
京都暮らしが長いとは言え慣れない町でもあり、幾つかの角で配布されているパンフレットの地図を手に見回していると、主催の学生さんが気にかけて歩み寄ってくれました。
今年で14回目を迎えた「都ライト」。嵐山や東山の「花灯路」イベントと同じくらい前から京都の大学生らの手によって引き継がれてきました。
京都らしい写真映えがするライトアップイベントのさきがけだと言えますね。

アートを多角的に発信する

11月5

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もとはスナック等が入る祇園の雑居ビルが、ギャラリーやカフェ、イベントスペースを内包した複合施設「y gion」として生まれ変わり、白く長い暖簾をたなびかせています。
イベント開催中は反対側に併設されたカフェのキッチンも稼働し、連動した企画が楽しめるようになっているそうで、訪れた当時は地球環境をテーマにした現代アート展に合わせて、なんと昆虫食の会が開かれていたとか。
なお、通常の企画展の期間中は「カカオ∞マジック」のローチョコレートメニューが楽しめるのでご安心を。
また、屋上には「sour」による期間限定ルーフトップバー「サワーガーデン」、5階にはレコードショップ「JAZZY SPORT KYOTO」、「CANDYBAR Gallery(キャンディバーギャラリー)」が入居しています。
DJターンテーブルやミキサーも備え、結婚式の2次会や忘年会といった利用もできますが、ただアートを並べるだけでなく、ビル全体で多角的に展開することをコンセプトとしているようです。
スペースの窓からは夕暮れの鴨川、カフェの窓からは東山と夜の海の様に波打つ瓦屋根を見下ろし、これもまた、京都の古美術の一面を見せてくれました。

国際化とバランス感覚

10月30

fat
駅の改札を出ると、目の前を魔女やモンスター達が通り過ぎていました。
階段でも、仮装した人々と何食わぬ顔ですれ違い、ただ姿かたちが異なるだけなのに思わず笑いがこみ上げます。
ハロウィンもすっかり日本の風物詩のようになってきましたね。
そんな折、かわいい魔女の顔がいっぱい並んだ、「ファットウィッチベーカリー」のブラウニーを頂きました。
NYのチェルシーマーケットに店舗を構える専門店の商品が、京都でも購入できるとのこと。
ブラウニーと言ってもココア色のものだけでなく黒糖や白あん味などもあり、ちょうど和菓子の松風をぎゅっと押し固めたようなむっちりとした食感なので、珈琲や紅茶だけでなく抹茶にも合いそうです。
贈り主はちょうど煎茶道の稽古場で、ハロウィンの趣向としてこのブラウニーが登場し、好評だったそうです。
昔から日本人は舶来物が大好き。採り込んで真似て、やがて日本独自の進化を遂げていきます。
数十年ほど前は、京都に東京資本のお店が入ると京都人が眉をひそめていた現象もありましたが、今は外国から人気ブランドが続々進出中、人も文化も国際化しています。
昔ながらの店が淘汰されてしまう、外国人労働者も当たり前、といった声も無きにしもあらずですが、
日本人として守るべきは何か、変わるべきは何か、いつだって問われるのは自分たちのバランス感覚なのだろうと思います。

2018年10月30日 | イベント, グルメ | No Comments »

西洋と東洋の感性

9月26

tuki
久しぶりに金剛能楽堂で能を観てきました。
能を鑑賞していると、つくづく日本人の感性を不思議に思います。
暗転する事なく明るいままで舞台装置が運ばれ、一行で済むような状況を長い節回しで延々と語り続ける。何者かよく分からない人物が現れ、物語の状況を解説する。
舞踏劇一つ取っても、西洋では声や動作が外側や天の方に向かって発せられるのに対し、東洋は内側に凝縮するように下へ下へ、または地を這うように平行に向かっていきます。
型にはまった最小限の動きの組み合わせで喜怒哀楽を表現し、演目の合間をひょうきんな空気で和ませる狂言でさえ、基本は摺り足です。
研鑽を積んで習得した様を表す「板につく」という言葉はそこに由来していると、聞いた事があります。
毎度のごとく、鑑賞中に何度か意識を失い、目を開けたまま寝ていた事に気付いて思わず姿勢を正してしまうのですが、それでも機会があれば観てしまう。
今回は特に尺の長い演目だったので、外に出る頃にはすっかり陽が落ち、向かいの京都御苑の木々の間から満月が望めました。
これもまた、雲一つない澄んだ夜空に神々しく光り輝くというよりは、黒い枝に覆われるように怪しく光る朧な月。能を観たあとは、やっぱりこんな月夜が気分です。

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