e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

泉涌寺悲田院と煎茶道東仙流

10月20

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今秋の「京都非公開文化財特別公開」は、かつて無いほどの長期間にわたって開催されています(※場所により期間は異なります)。
泉涌寺悲田院は、大門の手前を右に折れて、奥まったところに朱門が静かに佇む塔頭で、聖徳太子が身寄りのない老人や子供を収容する福祉施設として設けたのが始まりとされています。
坂道を登った甲斐あって、駐車場の奥から京都市街が見渡せます。

こちらには土佐光起筆の襖絵のほか、本堂では、宝冠を被り座しているもの、起立しているもの、逆手に印を結んでいるもの、3つの姿の阿弥陀如来像が見られます。
近年に快慶作と判明したという宝冠阿弥陀如来坐像は、非常に端正で、他所の仏で観るように無表情でも微笑んでいるでもなく、ニュートラルなお顔です。
頭の珍しい宝冠は、皇室ゆかりの寺院であることに配慮して創作されたのでしょうか。

また、泉涌寺悲田院は煎茶道東仙流の拠点であり、縁あって稽古場でお茶を頂く機会を得ました。
煎茶道は茶道と比べると自由な会話も多く、サロンの様な趣があります。

外は雨。指先で持つほどの小さな茶椀には、菊と鉄線を組み合わせた悲田院の紋が染め付けられています。
葉を弾く雨粒の音を耳の後ろで聞くのと、数滴のお茶の雫を舌に転がすのが重なり合うような、不思議な感覚でした。

こちらの拝観は11月1日まで。
今年の泉涌寺の「献菊祭」では、月輪未生流の華展などとあわせて東仙流のお茶席が11月7日(土)と8日(日)に設けられるそうです。

京都の街が美術館

10月13

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KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」は体験されましたでしょうか。
京都市内のギャラリーのみならず、町家で、商店街で、寺院で、書店で、府庁など各地で展示される作品群は、時として周りの景色も借景として完成をみます。
普段は入れないようなところ、知らなかったところが会場になっていたりするので、普段アートに接する機会が多い人もそうでも無かった人でも、新たな街あそびとして楽しめます。
絵画には額縁が、掛け軸には表装があるように、作品をとりまく環境もアートのうち。小さな子供達にも肌感覚で感じてもらえるかもしれません。

写真家、著述家であり、かつて今出川通寺町西入ルにあった名物喫茶「ほんやら洞」の店主だった甲斐扶佐義さんの作品は、秋風に誘われて老若男女が集う鴨川三角州の周辺に登場。
また、京都駅ビルの空中径路には、京都で見つけた美女の肖像100点が並んでいます。
幅広い年齢層、国籍の女性達の美しい笑顔はもちろんのこと、その背景から撮影場所はどこか、ついつい想像を巡らせてしまいます。

途中で京都タワーを正面に臨むこの静かな会場は17時までですが、陽が傾いてきた昼と夜の合間の時間帯がおすすめです。

次はもみじの川床で

10月7

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だいぶ涼しくなりましたが、まだ半袖に羽織りもので過ごせるくらいですね。

先月の話になりますが、貴船の川床「右源太」に行きました。
連休中で渋滞が起こっていましたが、川の上のお座敷なら、昼の日差しは遮っても空気の流れと川のせせらぎはせき止めません。
水面までは、足の長い人なら届きそうな距離感でとても涼しく快適でした。
奇をてらうことなく旬の素材を生かし、少しずつ味わう献立で誰の口にも合いそうです。対照的に、お子様用プレートはハンバーグやフライドポテトにそうめんなど、食べきれないほどのボリュームでした。
どちらにも出されるそうめんは、まるで絹糸のように細い!

現在は叡山電鉄一部の運休区間を京都バスが運行しており、混雑を避けるためか乗らずに歩いて下山している人も多く見られましたが、車道ではくれぐれもご注意ください。

今シーズンの貴船や鴨川などの川床営業は終了しましたが、10月からはジビエ等を頂く鍋料理の登場です。
なお、高雄の川床は紅葉の季節も利用できるので、今年は川床からの紅葉狩りを楽しみたいと思っています。

京都のお宮参り

9月30

omiya
先送りにしていた子供のお宮参りのため、連休中の下鴨神社へ。
賑わいを取り戻した境内には白無垢の花嫁さんの姿もありました。

「暑さ寒さも彼岸まで」とは言い得たもので、夏の名残りの暖かな日差しで白砂は眩しく、秋風は衣装をまとった幼子にも優しく吹いています。
男の子の額には「大」の字を書き、女の子には「小」の字を書く風習があり、それぞれ「大きく力強く育つように」、「優しく育ちますように」という思いが込められています。

一緒に下げるお飾りとして、安産祈願でも知られる犬の張子は、子供の健やかな成長を願い、3歳までは子供の身代わりとなって災厄から守ってくれるそうです。
おもちゃとしても使えるでんでん太鼓は、裏表や角のない、やわらかな子に育つように。

待合にて、甥っ子の時よりも早く案内されたので、産児を抱く役の義母が羽織る着物の準備でわたわた。
それでも和気あいあいとしたチームワークで、親戚から頂いた紐扇を着物にたくさんぶら下げました。
(事前に取り付けておくのがおすすめですね)

昔は幼くして子供が亡くなる事が多かったため、生まれてから何度も子供の健やかな成長を祈る行事がたくさんありますね。
今年は混雑を避けるため、七五三のご祈祷の受付を11月に限らず幅広い期間に拡大して受け付けている神社もあると聞きます。
きっと特別な思いで挑む親御さんも多いかもしれません。
子供たちの未来が、明るいものでありますように!

山間部への観光は要注意

9月24

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4連休はいかがお過ごしでしたでしょうか。

貴船の川床なら風通しも良いし、京都市中心部よりも涼しいだろうと思い、予約を入れていました。
2日前にお店から予約確認の電話があった時点では、貴船の気温は23度、道も渋滞しているとのこと。
同行者には、調節しやすい服装で来てもらうように伝え、全員叡山電車で向かう事にしました。

ところが、土砂崩れの影響により路線の一部が運休のため、結局は市原駅近くから臨時で出ている京都バスで貴船口まで直行することに。
行き方が分かっていても、交通機関のホームページは当日までに一読しておかないといけませんね。反省です。
貴船口からお店のマイクロバスが出迎えてくれましたが、やはり連休真っただ中。貴船神社の駐車場付近で詰まってしまいました。
「ちょっとほぐして来ますね。」と、車を降りて対向車を誘導する運転手さんが頼もしい。

帰りも再び貴船口から市原まで京都バスに乗車したのですが、中は往路よりも大混雑。
連休のため覚悟はしていたものの、これは貴船に限らず、嵐山や京都の人気店、他府県のキャンプ場まで全国的に渋滞と行列は発生していたようです。
みんな、考えることは一緒。今まで何かと控えていましたものね。

川床でのお食事は終始快適にすごさせてもらいました。その話はまた後日。

言の葉を集めて

9月16

souyu
前回お話したコテージの部屋の隅に、さりげなく小冊子が並べられていました。

『桑兪(そうゆ)』と読むそうで、誰もが知る京都の料亭「和久傳」 が発行しているもの。
京丹波は和久傳の創業の地でもあります。もう随分前の創刊のようですが、これまでその存在を知りませんでした。
文筆家・白洲信哉氏や臨済宗相国寺派管長の有馬賴底氏といった錚々たるメンバーによる、いわばエッセイ集です。

「兪」とは楡(ニレ)の木の事で、桑も楡も糸や紙の原料となる植物だそうです。
いわば、この冊子は言の葉の、あるいは言葉という形となる以前の記憶の粒子の集合体と言えるでしょう。

SNSを開けばコメントが付き、掌のスマートフォンや乗り込んだタクシーのモニター画面からは新着ニュースや広告が表示され、動画を再生すればテロップが流れる。
日々言葉の洪水にさらされていながら、私達の「ことば」は果たして深化しているのでしょうか。
物書きをする身として自分の語彙力や人生経験の少なさを改めて実感し、こんな文章を自分も綴る事ができたらと思いながら閉じました。

短い滞在で一部しか目を通せなかったのですが、短編集なので読書離れしていた人にも好きなところから読み進めやすいかもしれません。
京丹後市にある「和久傳ノ森」のレストランや、オンラインショップでも購入できます。

雑用は家に置いてこよう

9月8

heron

先月の夏休みは、京丹後市久美浜町にある「ウォーターサイドコテージ Heron」へ。
山間の田んぼや海の暮らしが見える漁村を抜け、小さな商店が軒を連ねる一角を曲がると、突然世界が変わります。

たった2つの客室は久美浜湾へと注ぎ込む栃谷川に面していて、向かいの材木商(現在は画家のアトリエだとか)が所有する小船が顔を出しています。
家人は、皆がまだ寝静まっている早朝にむっくり起きて、久美浜公園へ散歩に出掛けました。
きっと気持ちいいだろうなあと思いつつ…こちらは二度寝して、朝日を浴びながらのヨガ。

ここのスタッフは、ホテルのように仰々しいお辞儀はしません。
自然がすぐそばにあるけど、不便ではない距離感。
その土壌に育まれた食材の持ち味を引き出した、程良いボリュームの欧風家庭料理。
よくあるふわふわの大きなゲストタオルではなく、軽くて湯上りの肌に爽やかなオーガニックのリネン。
そんな小さな驚きとくつろぎが本当のおもてなしである事を知っているからです。

まだ蟹の季節には早いけど、客室のテラスの椅子に腰掛けて虫の鳴き声と夜風の中でゆっくり読書する。
行ったばかりなのに、そんな妄想が早くも湧いてくるのでした。

付近には、酒蔵や寺院に豪商のお屋敷、車で牧場や海水浴場、温泉も。
GO TOトラベルキャンペーン」に対応した割引宿泊プランもありますよ。

麒麟はくる?

9月1

kirin
大河ドラマ『麒麟がくる』の放映再開を前に、亀岡の「麒麟がくる 京都亀岡大河ドラマ館」へ行ってみました。
歴史好きというより、この作品のファンのための施設という印象で、公式ホームページの内容を立体化したもの。
実際に使用された衣装やその製作意図、物語にリアリティを与える美術に触れることができ、「なれルンです」コーナーでは、自分の顔を撮影して甲冑姿等の画像に嵌め込む事ができます。
平日の閉館前だったせいもあり、お客はまばらでした。「密」どころではなさそうです。

明智光秀とその娘・細川ガラシャについては、ゆかりの自治体が何年も前から大河ドラマに採用されるよう働きかけていたので、製作会見があった2018年には
「とうとう実現したか!関係者の喜びもひとしおだろう」と思っていました。
放映が開始された2020年。そしてロケも放映も一時休止となってしまったのはご存じの通り。
町おこしどころか丹波亀山城址も当面の間見学が休止され、もしかするとこの大河ドラマ館の客足はまだ去年の予想水準にはまだ達していないかもしれません。
個人的には、錚々たる出演者たちの直筆サインがおすすめです。それぞれに個性があって美しく、見入ってしまいました。

さて、本編では「たま」こと細川ガラシャもいよいよ赤子姿で登場しました。
実は、明智光秀が若い頃の消息は資料が乏しく、具体的な足跡は京都に入ってからのものが多いと聞きます。
これからの展開に注目すると共に、「本能寺の変」への出陣の起点となった亀岡にもまた足を運んでみたいと思います。

大福を願う帳面の寺

8月13

shuin
盛夏から晩夏へと向かう今日この頃。
曇っていて風のある日は、自転車でも意外と快適でした。
小さな街ながら、徒歩より早く車より小回りの利く自転車で巡っていると、思わぬ発見があります。

たまたま通りかかった大福寺というお寺に、若い人々が入って行くのを見て、立ち寄りました。
中にはおびただしい数のご朱印とご朱印帳。この若者たちは信者?それともご朱印マニア?
親指ほどの大きさのご朱印帳もあり、それに応じた規格の小さな小さなご朱印の札も月毎に用意されていました。
なぜこんなにたくさん扱っているのだろうと思っていたら、「大福」という縁起の良い寺号により、お正月には商売繁盛を願う商家の出納帳に寺の宝印を授与する習わしがあったそうで、それが「大福帳」の名の由来となっているそうです。

これも何かの縁と思い、ご朱印を求めることにしました。
令和二年の年号が入った五山の送り火の意匠です。
この朱の点は、おそらく今年の送り火で点火される地点かと思われます。
何十年か経ったころに、自分も子や孫に「あの年はこんなことがあって、送り火がね…」と語り継ぐ日が来るのでしょう。

表の鐘も搗かせてもらい、思わぬ迎え鐘となりました。
お参りの際には、事前に公式ツイッターのご確認を。

「動く美術館」たる所以 

7月8

gion

今年の祇園祭は山鉾の建つ姿が見られないので、代わりに京都文化博物館での特別展『祇園祭 -京都の夏を彩る祭礼-』展に行く事にしました。

入館してすぐ手を消毒し、モニターで自分の体温をチェックして、ビニール幕越しに入場券を購入。
会場前では名前と連絡先を記入した紙や自分の手でもぎった半券を手渡しではなく専用箱に投入。

いつもなら人混みを気にしながら落ち着かない気分で観ていた懸装品の数々や、空を仰いで遥か高いところにある鉾頭、船鉾のご神体・神功皇后の神面、各鉾町によって意匠の異なる籤の小箱など、普段は間近に観る事のできないものが目の前に。
金具の一つ一つ、屋根裏に至るまで、精巧な彫刻、名立たる絵師による下絵と本作、目の詰まった重厚な刺繍、舶来品を購入した事を記録した古文書などに、
「これは鉾町のパトロンだった糸へん業の旦那さん達が競い合うわけやわ」「そら修復にお金かかるわ…」といちいち圧倒されていました。
西脇友一氏による緻密な『祇園祭山鉾絵図』の原画の小ささには驚き。昭和60年完成という古さを感じさせないデザイン性も負けてはいません。

平日の空いた会場の中で、目の不自由な人がお連れさんと静かに語らいながら鑑賞されていました。
今年は祭の熱気や鉦の涼やかな音色を直接体感する事は叶わないけれども、何か肌で感じるものを求めていらっしゃったのでしょうか。

最初はまだ慣れない様式に戸惑いながらの会場入りでしたが、いつの間にか自分がマスクを付けていた事も忘れていました。
願わくば会場に祇園囃子を流してもらえたら…なんて思ってしまいましたが、駄目かな…!?

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