e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

漢字ミュージアム再訪

2月11

kanji子供のリクエストで、「漢検漢字博物館・図書館(漢字ミュージアム)」を再訪。

漢字検定で前の級の試験を終えたその日のうちに次の級のテキストをせがみ、市販のドリルも嬉々として解いていた我が子ですが、それも最初のうち。最近では腰が重くなっていました。
本人の目当てはショップの漢字グッズでしたが、少しでも次の級へのモチベーションアップに繋がれば。

祇園界隈では、話題になっていた積雪は跡形もなく、前回よりも人の入りが増えていて、英語圏の外国人の姿も。
入館してすぐ、まるでノルマのようにせっせと万葉仮名スタンプで自分の名前を押しまくり、2階で  は問題を解いては採点していました。
まだひらがなも読めない娘も、あちこちタッチする仕掛けが楽しいようです。

毎年年末に清水寺で揮毫される歴代の『今年の漢字』を一挙に並べた企画展『今年の漢字展』。
今回の『金』は5度目の選出で、清水寺の貫主は毎度字体を変えているのだとか。
昨年開催のパリ五輪にちなんで、ルネサンス時代のフランスで作られていた額に模した額縁に収まっています。

2度目だから前回より短い滞在になるかと思いきや、結局同じくらいの1.5時間楽しみました。
『今年の漢字』を一挙に並べた企画展『今年の漢字展』は5月6日(火・祝)まで会期が延長されたので、まだまだ間に合います。
アイロンビーズで作るドット漢字などのワークショップ等も開催されているので、来訪の際は日程をチェックしてみてくださいね。

「生きた遺産」として守る道

2月4
teikoku

帝国ホテル京都(本棟)外観イメージ。※右側の建物は歌舞練場玄関部分。提供:帝国ホテル

祇園甲部歌舞練場に隣接した国の登録有形文化財の弥栄会館が26年春、「帝国ホテル 京都」として開業します。

「劇場建築の名手」と呼ばれた大林組の木村得三郎が手がけた弥栄会館は、90年近くの年月を経て建物の老朽化や耐震性の問題から劇場を含む大部分が使用されなくなっており、公的な補助だけでは維持が成り立たない状況だったといいます。

更地にして建て直すのは簡単ですが、景観継承の観点から南と西の外壁・躯体を残して改修・増築をし、「リビングヘリテージ(生きた遺産)」として新ホテルに生まれ変わるという、これまでにない挑戦が始まりました。

弥栄会館を囲う養生のすぐ外側には芸舞妓が夜遅くまで働くお茶屋、朝は眠る生活の場としての置屋があります。

方々のお茶屋を事前に訪ね回り、早朝の花見小路を100台ものダンプトラックがそろそろと徐行しながら現場に入りました。

屋上の社は八坂神社の修繕をする宮大工が行い、劣化した銅板屋根は銅板で忠実に再現、時間経過とともに工事前の屋根色になることを想定しています。

5ヶ月かけて約2万枚生け取りしたタイルは、裏のモルタルを剥がし表面を磨く等、一枚20~30分程かけて再利用。

建物の内側から解体作業を進めるため、土砂を2階部分まで積み上げてかさ上げし、重機一台で複雑な鉄筋を残しながら慎重に壁を剥がしていきました。

昨年『解体キングダム』というテレビ番組で弥栄会館の解体現場を紹介していましたが、それによると、弥栄会館の壁面を装飾していた宝相華がモチーフの「テラコッタタイル」という陶板は、旧帝国ホテルに使用されていたものと同じ常滑の工房で焼かれた可能性が高いという事が判明しました。

歌舞練場の耐震補強工事も同時進行される中、工事の責任者は安全祈願のために毎月八坂神社に出向いて手を合わせ、現在の進捗状況は約7割といい、予定通りとか。

「外側からでは進んでんのか分からへん」くらいの目立たなさで進むのが工事作業の理想だといいます。

開業までに花見小路を通りかかったら、400年の花街・祇園の人々と協力して守られる祇園のシンボルを、外から見上げてみたいと思います。

(画像:帝国ホテル京都(本棟)外観イメージ。※右側の建物は歌舞練場玄関部分。提供:帝国ホテル)

節分の日は何をする?

1月27

setubun 今年の節分は2月2日なので要注意です。
恵方巻に豆撒き、鬼踊り以外でも、京都の節分行事は多岐にわたります。

狂言や雅楽、舞楽を行い、弓矢で邪気を祓うところもたくさんありますが、六波羅密寺では六斎念仏の奉納をします。
千本えんま堂では「厄除けのこんにゃく炊き」、法輪寺では「だるま説法」、天龍寺山内では七福神を巡り、日向大神宮では天の岩戸を通り抜けます。
誓願寺では「大般若転読会」を、平安神宮や鞍馬寺では宮中儀式を再現します。
須賀神社の縁結びの文は効力あり(個人の感想です)。
五条天神社では、日本最古といわれる木版の宝船図が、節分の日に有料で授与されます。

昨年の節目で終了したと聞いていた「ひょっとこ踊り」は、どうやら今年も行われるようです。
花街練り歩きに繰り出すひょっとこ達について行けば、祇園の「おばけ」にも遭遇できるかもしれません。

改めて羅列すると、実にバラエティに富んでいますね。
せっかくの日曜日、春の先取りに節分行事を楽しんでみませんか?

東本願寺の隠れた名所

1月22

miya初弘法をぶらっと歩き、境内のおでんの屋台で腹ごしらえした後、シェアサイクルに乗って東本願寺へ。
「京の冬の旅」キャンペーンで東本願寺の宮御殿と桜下亭(ともに重文)が特別公開されています。

京都駅から徒歩約7分という立地でありながら「オーバーツーリズム」という言葉を感じさせないほど静かで広大な境内です。
ギャラリーに入り、奥の宮御殿へ。
赤い畳縁が珍しく、襖には宮中の行事を描いた大和絵が飾られています。
嵯峨野で鳴き声の良い鈴虫や松虫を籠に入れて楽しむ「撰虫(むしえらび)」や、初子の日に若松の根を引いて占い、若菜を摘む「子日遊(ねのひのあそび)」は初めて知りました。
傾斜した築山と池の水は、実は防火のため。今でこそ水を汲んで張っていますが、かつては琵琶湖とこの地との高低差を活かして引き込んでいたのだとか。
「用と美」を兼ね備えた池泉式庭園です。

撮影できるのはここまで、「桜下亭」へ進みます。
洗練された意匠の建物。大地震から逃れて東本願寺に保護された円山応挙の襖絵「稚松(わかまつ)図」「壮竹図」「老梅図」が三室に配され、それぞれがまるで人生のステージのようです。
隠居した門主がすごした部屋は、浄土真宗における阿弥陀如来の広大な救済を記した「本願海」の軸が床の間に下がり、随所に貼られた金箔は、経年による味わいの変化も見られます。
作者は不明ですが、亭内には犬やうさぎの姿も。
数寄屋風の意匠で、機織りの筬を模した欄間はかなりモダン。釘隠しは部屋の内外で異なり、梅の花弁をがくの側から表現するなど、いずれも他では見たことの無いデザインでした。

これらの建物が公開されるのは、「京の冬の旅」において42年ぶりといいます。
何度も前を通るので知ったつもりになっていた東本願寺でしたが、まだまだ知らない部屋が隠されていたのですね。
なお、京の冬の旅期間中の毎週金曜・土曜日はインターネットからの完全事前予約制で、「僧侶がご案内する特別拝観」も利用できます。

正月の趣向あれこれ

1月14

hanabiraお茶の初稽古に行ってきました。
慌ただしく始まった日常の世界から、釜の湯気が立ち昇る非日常の世界へ。

朱に蒔絵のおめでたい盃で、みんなでお屠蘇をいただきました。
重ねてある盃は一番下から取り、重ねたままの残りの盃を次の人に回します。
「悪鬼を『屠』り、死者を『蘇』らせる」という意味の生薬をお酒やみりんに入れて厄払い。

掛け軸には、それぞれ鼓と扇子を手にした男が楽しげに舞っていました。
新年に烏帽子姿で家の前に立ち、祝いの言葉を述べながら鼓を打つ者を「万歳」と呼び、これが漫才の由来とも言われているとか。
だからお正月に漫才の特番をやってるのか!!

結び柳は命の循環を現すそうです。
来年も再び健やかに集えるように願って、床の間に長く垂らすことが喜ばれます。
「いつも通り」でいられることの有り難さを、この数年は特に感じますね。

二條駿河屋の花びら餅はとってもやわらかくて、うっかり取り箸の跡が付いてしまうほど。
「茶席でいただく宮中のお雑煮」ですね。
菓子器もお正月の趣向で、独楽のような渦巻模様でした。

まもなく小正月ですね。
日本には気持ちを新たにリセットする風習がいっぱい。
この日の行事食べ物も参考にしてみてくださいね。

散り紅葉の絨毯

12月11

anraku今年の紅葉の色づきはゆっくりだったせいか、紅葉狩りの人出が分散されたと聞きます。
師走に入りましたが、まだ散り紅葉の絨毯の楽しみが残っていますよ。
SNS上のリアルタイムな投稿を検索しながら、安楽寺に行ってみることに。

石段がまるで赤い絨毯のように…とまでは積もっていませんでしたが、両脇は折り重なったふわふわの散り紅葉で華やかな朱色に染まっていました。
秋の特別公開期間は終了していたので中に入ることはできませんでしたが、紅葉が音もなく落ちる静寂をしばし眺めていました。

前日にX(旧Twitter)で観た安楽寺の山門前は、石段にもそれなりの散紅葉が積もっていたように見えたのですが、今日のはそれよりも絨毯のボリュームが減っているような。
どこへ飛んで行ってしまったのでしょうね。それともこれから積もっていくのでしょうか。
それでも、通りがかった海外からの旅人が、その静謐な空間に思わず立ち止まって溜息を漏らすほど。

すぐ近くにも茅葺の屋根と紅葉と白砂のコントラストが美しい法然院があり、安楽寺との間には小さな公園やカフェもあるので、静かな住宅地の中を散策する間の小休止もできます。
平日だったせいか、訪れる人も多くなく、一人もしくは少数のグループがぽつりぽつりと訪ねては去っていきます。
それぞれの山内に入ったときの、ひんやりとした清浄な空気とはらはらと舞い降りる紅葉、緑蒸す苔石畳にスタンプのように散りばめられた赤や黄色の葉の質感、鳥のさえずりが織りなす錦模様と空気感は、実際に足を運んでその身を置いてこそ。

散り紅葉の絨毯を観るには、散り始めた頃ではまだ積もるまでに至らず、積もっても雨に打たれると色褪せてしまうこともあるので、タイミングの見極めが難しいところですが、
来年の秋は、シーズンピークをずらして散り紅葉を味わってみませんか。

秋の嵐山「弾丸」訪問

11月20

arashiyamaようやく秋らしい寒さが、木々の端々を染め初めた平日に、嵐山福田美術館へ母と行く事になり、交通手段について思案していました。

ハイシーズンのマイカー乗り入れは混雑で動けなくなるので御法度、「電車で行けるところまで行く」「パーク&ライド」が鉄則です。
ですが、健脚でない人と一緒となると迷いが生じます。

嵐山駅より数駅手前まで電車、そこからタクシー移動を提案しようとすると、母の方でも独自に調べてくれた模様。
結局母の提案通り、いかりスーパー「ライクス常盤店」まで車で行きお弁当を買って、そこからタクシーで10分程ですんなり福田美術館に着く事ができました。

鑑賞後は川の畔で手漕ぎボートの景色を眺めながら二人でライクスのお弁当とデザートを食べ、渡月橋を度々通過する流しのタクシーを捕まえて帰路に着きました。

ここ数年は平日も週末と変わらない混雑を覚悟していましたが、たまたま人出がましだったのか、紅葉の色づきが遅いためなのか、行き先をピンポイントに絞ったためなのか、意外にもサクッと嵐山訪問する事ができました。

ちなみに福田美術館の若冲展は、来年1月19日まで開催されています。
紅葉狩りが落ち着いた頃に嵐山温泉と共に楽しむのもいいですね。

菓子と源氏で数寄あそび

11月13

kasi有斐斎 弘道館」と「旧三井家下鴨別邸」にて15日まで京菓子展が開かれています。今年のテーマはやはり「源氏物語」。

和菓子店でも茶会でも出逢えないような創作を凝らした菓子たちは、撮影もSNSへの掲載も可能です。
3つも賞を受けられた海外作家の作品は、自らの舌でその食感を試したい欲に掻き立てられました。
個人的に最も目に焼き付いたのが、第三十五帖「若菜下」から着想を得た「哀焔」。
形そのものは、「黄味しぐれ」を連想させますが、真っ黒な墨色の塊の中からマグマのように真っ赤なあんがその身を内側からうち破らんとしています。
まるで怨念でその心身を自ら蝕んでしまった六条御息所を思わずにはいられない。
さて、こんな意味深な菓子を誰に送りつけましょうかね?

選抜作品の中から、自分で選んだものを呈茶席でいただくことができます。
「あなたの前にあるその黒い茶碗は、俳優の佐藤健さんが飲まれたものなんですよ。」
有職菓子御調進所 老松」のご主人の軽妙な語り口からは、源氏物語に始まり、弘道館のしつらいや催しのこと、近隣の名所のこと、この茶室を訪れた著名人のエピソードまで話題が次から次へと飛び出してきます。
現代の数寄者として古典を楽しもうという意欲に溢れておられ、茶道経験のない人でもきっと楽しめるのではないでしょうか。

呈茶菓子は公式サイトで確認できますが、人気のものは売り切れることもあるので、午前中の静かな間に入られることをおすすめします。

夜の平等院鳳凰堂

10月22

byo先日、夜の平等院鳳凰堂の前で能楽の特別公演がありました。
夕方の宇治川周辺の観光施設も門戸を閉じ、昼間の喧騒も落ち着いたころの、夢うつつような風情もまたいいものです。

境内の茶房「藤花」で限定菓子「紫雲」と水出しの煎茶、お薄を頂きました。
さすが宇治は茶処、どれも美味しい。

「スーパームーン」前夜の演目は半能「頼政」と狂言「口真似」、能「羽衣 盤渉」。
「頼政」は、平安末期、宇治の合戦で平家軍が平等院に押し寄せ、自刃した源頼政の『平家物語』を題材とした演目です。
頼政の能面はこの曲だけに用いられる特殊なもの。年老い枯れながらも情念を感じさせる表情、窪んだ眼はライトの光を捉えて凄みがありました。

境内には頼政が自ら命を絶ったとされる跡「扇の芝」や、「源頼政の墓地」があります。

「羽衣」では、天女が羽衣を羽織った瞬間、平等院の屋根の鳳凰を背後に衣装の背一面に白い鳳凰の刺繍が現れ、思わずため息が洩れました。
正面からは両翼の羽が折り重なるような意匠となっており、装束展で観たときには気付かなかった新たな発見でした。

まさに天女が舞い上がろうという場面の直前、一羽の鳥が声をあげて飛び立ち、朧月夜だった空はいつしかすっかり晴れて月が青白い光を放っていました。

夜の平等院は特別拝観などの催しがあるときだけ入ることができます。
暗闇を進む砂利の音、虫の声、そして創建以来ずっとここに佇む鳳凰堂と水鏡。
きっと、忘れられない一夜となりますよ。

漢字は、神と交信することば。

10月16

kanjiおもちゃで釣られ「漢字検定受ける!」と言い出した子供のモチベーションアップになればと、祇園の「漢検 漢字博物館・図書館漢字ミュージアム」にお友達親子と初潜入。
小中高生と同伴の大人は入館料が割引になりました。

学校で漢字を習い始めたばかりの小学一年生らは、壁一面の漢字の歴史年表はそっちのけで、早速「万葉仮名スタンプ」で自分の名前を押すのに大人に混じって夢中になっていました。

スタンプの次に夢中になっていたのは、目の前を泳ぐ魚の漢字表記を当てる「漢字回転すし」。巨大なアガリの湯呑みに入って撮影タイム。
漢字にまつわる図書に触れられる図書室もありました。
ワークショップも企画されているので、ぜひ事前チェックをおすすめします。

まだ文字も書けない年長の子も、漢字クイズになっている引き出しを開閉したり、マグネットを貼ったり、それなりに楽しんでいるようでした。
最も古い漢字「甲骨文字」は、占いで神と交信するために生まれたのですね。

活字マニアのお子さんを持つママさんから、ミュージアムの一角に置いてある「『漢検ジャーナル』に、過去の出題問題が一部連載されてるんですよ」と教えてもらい、かき集めるように持って帰りました。

親子共に初めての漢検学習に、最初はなかなか難儀しましたが、今では読み書きできる字も増え、すっかり漢字の虜に。
試験日を待たずして、次の級のテキストも所望されています。
もうすぐ検定本番。今まで頑張ったから、楽しめるといいね。

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