e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

京都薪能プレ公演

5月3

higasi 大型連休はいかがおすごしでしょうか。
平安神宮で行なわれる京都薪能まで一カ月を切り、そのプレ公演として5日には京都文化博物館の別館で、21日には岡崎公園(旧神宮道)にて、ダイジェスト版の能や狂言が無料で行なわれます。
先月は、京都を拠点とする金剛流の定期能が、特別に東本願寺の能舞台で開かれました。
白書院に面した能舞台のそばでは新緑がゆらぎ、謡の合間に鳥の囀りも聞こえてくるような開放的な空間でも、演者の鍛えられた声はよく通ります。
英語の解説を手にしていても難しいのでは、と気になっていた隣のポルトガル人カップルも、狂言では周りと同じようにくすくすと肩を揺らせていたので安心しました。
8名程の装束姿のちびっこ達も舞台に並び、それだけで花見の風情を想像させるという珍しい計らいも。
もともとは神々に奉納するため、お能や狂言は主に外で演じられてきました。
暮れゆく空の下、炎を揺らす風を感じながら、昼と夜の狭間のひとときに身を置いてみてはいかがでしょうか。

神様のゴールデンウィーク

4月25

iwami 伏見稲荷大社の稲荷大神は、一足先にゴールデンウィークに入っておられます。
先日の神幸祭で神輿に乗って本社を出発し、東寺近く(JR京都駅南西方)にある文字通り「御旅所」にて3日還幸祭までバカンス中なのです。
ご鎮座されている間、氏子達は様々な芸能を奉納してもてなします。
先週末に行なわれた石見神楽もそのうちの一つ。  動画はこちら
こちらでは島根県浜田市由来の石見神楽の短縮版とも言える内容で、須佐之男命(すさのおのみこと)が大蛇を退治する場面で、程良い尺度で楽しむ事ができました。
大蛇は、獅子舞を長~い蛇腹にしたような形をしていて、とぐろを巻いたり串団子のようになったり、酒を樽ごと豪快に取り込んで飲み干し酔い潰れたりと、まるで台風の様に形状を変えて観客を楽しませます。 動画はこちら
聞こえてくるリズミカルなお囃子に誘われて、裏手に住む近所の子供達も窓際で小躍り。
境内には幾つかの屋台からいい匂いが漂い、29日の夜にもマジックや六斎踊りが披露さます。
また、3日の環幸祭(おかえり)では、五基の神輿が数々のの供奉列奉賛列を従えて東寺にて僧侶による「神供」を受け、約2時間氏子区域を巡行した後に伏見稲荷大社の本殿へと還られます。

京都は春画の発祥地

4月19

shun 少し前の話題になりますが、細見美術館で10日まで開催されていた春画展が観たくて滑り込んで来ました。
宴会で賑わう屋形船の上で行為に及んだり、周りに台詞が書いてあったり、婦女が巨大な蛸に襲われたり、なぜか鯉のぼりの中で戯れたり、武者の鎧の一部が手でめくれるようになっていたりと、これまで観た事の無い日本絵画の世界が開かれたようで、新鮮な気分に。
本当は、京都が春画の発祥地だというのに、です。
葛飾北斎や歌川国芳、喜多川歌麿など誰もが知る絵師達が描いている事にも驚き。
成人以上を対象とした映画や漫画等を観ていて感じるのは、男性向け、或いは男性作家による作品の場合は、男女が交わっている部分を強調するのに対し、女性を対象としたものはそこまで直接的では無いような気がします。
春画においても「その部分」がグロテスクな程詳細に描かれているものが多いのは、やはり絵師が男性ばかりだからでしょうか。
これは現代の日本において女性の性がまだ開放されていないと考察すれば良いのか、それとも男女の性差によるものなのか分かりませんが、もし女性絵師が早くから活躍していたとしたら、春画はどの様に発展していただろうか、そんな事を考えながら会場を後にしました。

2016年4月19日 | 芸能・アート | No Comments »

金属で紡ぐ生命

3月22

wata 写真を見た瞬間、是非とも行きたいと思った個展があります。
27日まで清課堂ギャラリーで開催中の「鈴木祥太金工展『循環』」。
錫器・金属工芸品の老舗・清課堂の離れにある茶室の陰に咲く、金属の花。
着色をしない金属の色みは、枯れたような、それでもまるで畳に根を張り、そこから生えてきたかの様な生命感があり、今にも綿帽子から離れようとする綿毛は実に精巧緻密で、思わず息を吹きかけたくなってしまいます。
金属は「人工のもの、無機質で冷たいもの」という一般的なイメージはすっかり覆されてしまいます。
水を吸い上げた花の瑞々しさや鮮やかさ、芳しさとは異なるけれども、辺りの空気を変えてしまう存在感は生花と同じ。
動植物の様に血管や道管があるわけでは無いけれど、確かに金属も、もとから地球上に存在する自然のものであり、錫や真鍮で形作られたこの蒲公英やあざみにも一筋の何かが流れているのではないかと思わせます。
人はなぜ、リアルに限り無く近づくことにこんなにも惹かれるのでしょうか。
作家本人もとても若い事に驚きでしたが、この先どんな花を咲かせてくれるのかが楽しみです。

京薩摩と無常

1月26

satuma ただいま開催中の「細密美!明治のやきもの~幻の京薩摩~」展。
残念ながら、ポスター画像だけでは京薩摩ならではの「はんなりした」色遣いが十分に再現されているとは言えないので、実際に間近で観賞される事をおすすめします。
淡い色調ながら壺やティーカップセットの一面に花々が咲き乱れる様は、昔の少女漫画の背景を連想してしまいました。
モチーフは祇園絵や美人画といったものですが、日本特有の美意識とも呼べる余白は殆ど埋められ、「海外受けする東洋的なもの」を意識して焼かれた輸出品です。いわゆる京焼とは趣が全く異なりますが、内側から滲み出る様にやわらかな輝きを放つ金彩は、日本画にも通じる品の良さがあります。
また、本薩摩を展示した一角は、敢えて色を抑えた白地の作品が並べられ、それぞれが見事な透し彫りでびっしりと埋め尽くされ、本家の風格を示していました。
これだけの技術力と生産量を誇っていたにも関わらず、急速な工業化や戦争で京都においてはわずか数十年の間に多くの窯元が廃業し、現在の粟田口界隈を歩いても当日の賑わいを伺い知る事はできません。文化というものにとって、世相や流通がいかに大きな影響を及ぼすのかを思い知らされます。
幾つかの作にはルーペが設置してあるように、この人間離れした、というかむしろ機械ではできないからこその精緻な装飾。是非とも虫眼鏡持参でご鑑賞下さい…と言いたいところですが、これらのむせかえる様な作り込みように、たぶん、酔います。

2016年1月26日 | 芸能・アート | No Comments »

ロックスターが京都で見せる表情

1月18

rock  日本人で初めてザ・ビートルズを撮影した日本人写真家・長谷部宏さんが、写真集『ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN』を発刊するのを記念した写真展
デヴィッド・ボウイ、ニール・ヤング、ボン・ジョビ、KISS、クイーン、マドンナ、U2など洋楽雑誌『MUSIC LIFE』で被写体となった大物アーティスト達が京都や東京に奈良、倉敷等を訪れ、新選組や学ラン、寿司職人のコスプレをするものもあれば、龍安寺の石庭を静かに眺めていたり、東大寺の前で膝をついて真剣に拝んだり、あるいはごく普通の地味な姿で街並みに溶け込んだり。
ぞれぞれの作品に一枚ずつ添えられた取材の記録も興味深い。
人気者ゆえに撮影場所への制約があったり、行動が奔放だったりアーティストとしてのプライドがあったり、実際に会ってみると印象が違っていたりと様々な気付きを経て、オンとオフが入り混じった彼らの一面を引き出すために工夫が凝らされていた事でしょう。
京都での撮影は、ツアー等で来日した彼らが観光目的で訪れる事が多かったようで、やはり金閣寺清水寺は定番のよう。渡月橋や老舗旅館の前でポーズを取っているところからはリラックスし、また開放感ある表情が読み取れます。
驚く事に、この展覧会の展示作品は撮影OK、ツイッターやフェイスブック等での拡散もOKなのです。
この写真集。ロック好きな方へのバレンタインプレゼントにいかが?

花から現れる自分自身

12月21

ikebana 先週末、「生け花で楽しむお正月」という催しのお誘いを受けました。
生け花に関してはほぼ初心者だったので、お正月に飾れる生花のみならず花器や剣山も持ち帰れて、お食事付きというのは魅力的。
たくさんの流派があり、生け方等が異なる印象の生け花ですが、眞田佳子先生は京都未生流とのこと。とても自然体な方で、こう生けたい、という自分の希望を伝えると、「例えば、この枝をこちらに持って来られてはどうでしょう?」と、提案するような柔らかさで導いて頂きました。
同じ花を使っていてもそれぞれに全く異なる趣があり、作品を観てから生けた人を見ると、妙に納得できてしまう不思議。
「生ける」という行為は、花の持つ個性を活かす事で、自分の個性が生かされるのかもしれません。
また、茎を切り、花びらに触れ、葉を落とすという行為は、自らの指先で命そのものを感じ取る時間でもあります。
銘々の作品を飾った後は、会場である「ちきりや茶寮」の、お正月に因んだお料理を味わいながら先生達との話の花を咲かせました。
だしをしっかり効かせた和洋の皿が少しずつ、それでも全10品と盛りだくさんで、懐石料理とフルコース料理の両方を堪能したかの様な満足感。
更には、「ご家庭でもできるものを」と、献立の中の一つ「鯛の蒸し魚 葱油ポン酢ソース」のレシピも配られ、料理長が作り方を解説して下さいました。
次回は2月20日の開催で、打田漬物の社長さんから「京都の三大漬物(千枚漬・しば漬・すぐき漬)」の話と共に、糠床の作り方も学べる内容だそうです。

琳派イメージと日本人のDNA

11月24

richard この連休、日本美術好きな人達はこう感じたはず。
「どうして琳派展をあちこちで同時にするんだ!!」
もちろん、数日で巡るにはその方が効率良いのかもしれませんが、お陰で昼間の紅葉狩りができず…という人もいたかもしれません。
京都国立近代美術館の「琳派400年記念「琳派イメージ」展も最終日だったため、飛び込んで行きました。
代表的な琳派作品をアレンジした屏風やドレス、グラフィックもあれば、琳派の影響を受けているように見えてくるものもあり、琳派イメージは無意識のうちに日本人のDNAに刷り込まれているのではないかと感じさせられました。
その後は野村美術館に向かう予定が、その日はどうしても車での移動だったため、案の定渋滞にはまって動けず。
入館時間を過ぎてしまいましたが、なんとか入れて頂く事ができ、「利茶土窯30周年 記念展 利茶土の茶陶 “EAST MEETS WEST in KYOTO”」のみ拝見してきました。
「利茶土窯」と命名した裏千家現大宗匠・千宗室氏からのお墨付きの作品や、「グランドキャニオン」と銘の付いた茶碗など、茶陶家・利茶土ミルグリムさんは、出身のアメリカと創作拠点の日本の二つの国の異なった文化や考え方の違いを表し、それぞれの陶技や特徴、美しさを合わせた創作をしています。
自らと異なるものと対峙したとき、相手の特徴を理解し、歩み寄って新たな道を模索すること。
周りの勢いに呑まれず、自らを振り返ること。
世界情勢が不穏な今こそ、そんな姿勢が必要な気がします。

2015年11月24日 | 芸能・アート | No Comments »

パロディで受け継がれる琳派

11月16

taro 話題を呼んだ「琳派からの道 神坂雪佳と山本太郎の仕事」展の「マリオ&ルイ―ジ図屏風」。
実際に観に行くと、砲弾や亀のキャラクターもゲーム画面のドット(点)で表わされていて、「Cool Japan」を売り出す日本のアニメ・ゲームイベント会場に飾れば、ファンが喜びそう!?
琳派作品でよく見られる住吉浜と青海波の合間からのぞく信号機も可愛らしくて、手ぬぐいとして製品化して欲しいとまで思ってしまうような遊び心のある扇面や茶碗の他、源氏物語の中で、猫の仕業で露わになった女三宮の姿を柏木が目撃する「若菜」の章を、赤い糸と共に描かれた猫のぬいぐるみやサッカーシューズ等の現代のモチーフに置き換えた屏風など、古典をかじった事のある人なら、尚更にやりとさせられるはず。
神坂雪佳の作品も、また、琳派のパロディと言える山本作品のいずれも、日本の古典文学や芸術への教養を持つ事で更に深い考察が楽しめる事でしょう。
もともと琳派も作家同士の師弟関係では無く、私淑、いわゆるパロディの様な形で受け継がれてきたもの。
今年に入ってから、そこここで開催されているマジメな琳派イベントでお腹いっぱい気味な人には、ちょっと肩の力を抜いて楽しんで頂きたいと思います。

2015年11月16日 | 芸能・アート | No Comments »

雨の恵み。琳派展

11月9

rin 観光にはちょっぴり不便な雨模様。でも、悪い事ばかりではありません。
京都国立博物館の「混雑状況 Twitter」を見てみると、「待ち時間0分」となっていたので、ここぞとばかりに向かいました(ちなみに、朝は混む傾向のようです)。
行列ができるほど人気の展覧会に行く計画を立てる時は、週間天気もあわせてチェックしてみるのも混雑回避の策かもしれませんね。
8日まで公開されていた俵屋宗達・尾形光琳・酒井抱一によるそれぞれの風神雷神図屏風が勢揃いした空間もユニークで壮観でしたが、全期間にわたって全巻が初公開されている全長13.56メートルの「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」が最も心に残りました。
宗達の下絵と光悦の書の競作で、横へと進行する絵巻は正に映像が流れるスクリーンのよう。「鶴がアニメーションの様に舞い降りる」という解説の表現は言い得て妙でした。
この展覧会は23日の祝日まで開催されており、宗達筆の重要文化財作品を展示している醍醐寺との共通割引も実施されています。
お土産になるようなミュージアムグッズも多彩ですが、目に留まったのが琳派のパターンをモチーフにしたはんこ。
今回の展示作品を思い出しながら、ハガキに余白を残し、何度かインクを変えてポンポンとたくさん押すだけで、琳派風の年賀状が作れそうな気がしました。

2015年11月09日 | 芸能・アート | No Comments »
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