e-kyoto「一言コラム」

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京薩摩と無常

1月26

satuma ただいま開催中の「細密美!明治のやきもの~幻の京薩摩~」展。
残念ながら、ポスター画像だけでは京薩摩ならではの「はんなりした」色遣いが十分に再現されているとは言えないので、実際に間近で観賞される事をおすすめします。
淡い色調ながら壺やティーカップセットの一面に花々が咲き乱れる様は、昔の少女漫画の背景を連想してしまいました。
モチーフは祇園絵や美人画といったものですが、日本特有の美意識とも呼べる余白は殆ど埋められ、「海外受けする東洋的なもの」を意識して焼かれた輸出品です。いわゆる京焼とは趣が全く異なりますが、内側から滲み出る様にやわらかな輝きを放つ金彩は、日本画にも通じる品の良さがあります。
また、本薩摩を展示した一角は、敢えて色を抑えた白地の作品が並べられ、それぞれが見事な透し彫りでびっしりと埋め尽くされ、本家の風格を示していました。
これだけの技術力と生産量を誇っていたにも関わらず、急速な工業化や戦争で京都においてはわずか数十年の間に多くの窯元が廃業し、現在の粟田口界隈を歩いても当日の賑わいを伺い知る事はできません。文化というものにとって、世相や流通がいかに大きな影響を及ぼすのかを思い知らされます。
幾つかの作にはルーペが設置してあるように、この人間離れした、というかむしろ機械ではできないからこその精緻な装飾。是非とも虫眼鏡持参でご鑑賞下さい…と言いたいところですが、これらのむせかえる様な作り込みように、たぶん、酔います。

2016年1月26日 | 芸能・アート

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