e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

伝統を突き詰め未来を拓く

1月25

nendo   久しぶりにしっかりと雪が積もった平日の二条城
『「nendo×京都の匠展」-NENDO SEES KYOTO-」』の暗闇の会場の中では、人と行き交うこともなく作品を観ることができました。
nendo」というデザインオフィスの名前に馴染みの無い人でも、「2021年の東京オリンピック・パラリンピックの聖火台をデザインした」と聞くとピンとくるかもしれません。

風神と雷神を描かずして京指物と彫刻の技術で木格子を立体的に表現した宮崎家具の「風神雷神図屏風」。
「植治」の次期十二代・小川勝章氏が選んだ京都府亀岡市産の春日部石等の一部を内装用木材に切り替え、更に引き出しを仕込んで家具にすることで「外で鑑賞する庭石」から「屋内を庭園化」した石。
強度の高さと丈夫さが特徴の京提灯にあえて「弱さ」という因子を加え、竹ひごに関節の様な可動性を持たせることで「裏表をひっくり返して姿を変えられる」小嶋商店の提灯。
漆を塗り重ねて蒔絵を施すのではなく、逆に下地を削り出し、工業用技術「サンドブラスト」技術を用いて四季を表した十三代中村宗哲氏の4つの棗。
京釜師・十六代大西清右衛門氏の伝統技法と最新の金属加工技術を組み合わせた器や、まるで編んだような曲線と香りの変化や融合が楽しめる松栄堂のお香。
これらの作品群の面白さは製造工程にあり、会場各所に展示してある解説と映像はぜひとも観て頂きたいところです。

樂焼の十五代・直入さんの茶碗は、ワインやハーブティー等の色素をチューブを通して茶碗に染み込ませて色付けるなど、「器で飲む」はずが「器が飲む」という、茶目っ気のある展示でした。
「nendo」代表の佐藤オオキ氏は、大阪・関西万博の日本政府館の総合プロデューサーにも就任しており、京都のお隣の「府」で開催のイベントということで、これからの活躍が注目されますね。

京の底冷えに備えて

11月2

SILK DE KYOTO  
家の中では靴やブーツから解放され年中裸足でいたい自分でも、秋冬はさすがに足が冷えます。
とはいえ、靴下に足全体がすっぽり包まれると、時に暑くて脱いでしまうことも。そうなれば温活どころではありません。

たまたま和文化インフルエンサー・福満香織さんのインスタグラムを遡って見ていると、「SILK DE KYOTO」というブランドの靴下を発見。
早速ネット検索をして、レッグウォーマーが無いか探しました。
その昔、鍼灸師に「熱がこもりやすい人は、靴下よりレッグウォーマーの方が、余分な熱を放出してくれるからいい」と聞いていたからです。

「京都西陣の絹糸商が選んだつむぎシルク(絹紬糸)を使用」との謳い文句に俄然興味が湧きました。我ながら単純ですね。
外側はシルク100%、肌に触れる面はコットン100%ということは、化繊の肌着を着ると何だか落ち着かなくなる体質で綿ばかり選んできた自分にはうってつけです。
ふわふわとボリュームがあるものと、薄手でボトム下にも履けそうなものとを購入して現在愛用中です。
滑らかな肌触りがよく、鍋を食べて汗ばんだとき以外は布団の中でも暑くて脱ぐということはありませんでした。
かかとやふくらはぎは、つるつるとはまだいきませんが、いつもより保湿されている感覚はあるかな?

紅葉の美しい季節の到来は、「京の底冷え」の厳しさを足元から身をもって実感できることを意味します。
同じ敏感体質で、最近ふくらはぎの冷えに困っている父親にも「シルク肌着デビュー」としてプレゼントしようかな。

2021年11月02日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

テキスタイルが繋ぐ東西の縁

5月19

fin かつて京都を案内したフィンランド人夫妻から贈り物を頂きました。
北欧グッズの数々中にマリメッコのクッションカバーがあり、京都出身のデザイナー・脇阪克二氏(現「SOU・SOU」のテキスタイルデザイナー)による「ピック・ブーブー」の柄でした。
昨年からメールと手紙で互いにこのパンデミック下での近況を報告し合い、それぞれの家族の健康と平穏を祈りました。

お礼として、こちらからは日持ちのする宇治茶と、唐紙のレターブックを。
相手はとてもおしゃべりな人で、立て板に水の様な口調そのままに、話したいことが溢れすぎて便箋の裏側にまで文字が続くほどなので、
きっと便箋がたくさんいるだろうと思ったからです。
(ちなみに、息子さんは一行しか返信を書いてくれないと、嘆いておられました)

cocon烏丸にある「雲母唐長 四条店」を尋ねたのは随分前の事なのですが、上記の旨を伝えると、
レターブックの中に、フィンランド人デザイナー・Saana ja olli(サーナヤオッリ)が出がけた便箋が入っていると教えて頂きました。
奇しくも、送り先住所と同じトゥルクの出身のようです。
「マスクの仮置きに挟んで使ってください」との一文を添えて、唐紙の模様が透ける懐紙も同封しました。

そろそろ、届く頃かな。

2021年5月19日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

失われゆく遊郭建築

4月21

hashimoto
夏目雅子さん主演の映画『鬼龍院花子の生涯』にも登場する橋本遊郭。
かつては82軒もの妓楼があったそうですが、10年以上ぶりに訪れてみると、遊郭の名残を感じさせる建造物は今も僅かに残っています。
橋本遊郭跡にある大店の一つが旅館「橋本の香」として生まれ変わっており、漢方エステや足裏マッサージが受けられるほか、500円で内部を隈なく案内してもらえます。

屋久杉の木目が美しい欄間やステンドグラス、今となっては容易に再現することが不可能な霜ガラスや色とりどりの豆タイル。
どこを切り取っても写真映えがする異世界は、寺社をお参りするだけでは見られません。一般の女性が敷居を跨ぐことができるのは、現在だからこそ。
贅を尽くした遊郭建築は基礎からしっかりと作られているので、長年風雨にさらされ地震を経ても周りの住宅よりも持っているのだとか。
文化財級の価値がありながら公的に保護保存される事もなく、その貴重な素材や意匠は取り壊され更地や駐車場になるなど徐々に失われてしまっています。
色街の遺産とも言える曰くつきの建造物を買い上げ保存に動き出せるのは、日本人よりも中国など海外の人の方が積極的なのかもしれません。

二軒隣の「旧第二友栄楼」も500円の追加で一緒に中に入らせてもらいました。
老朽化した築120年の妓楼を、中国茶を楽しむ茶楼に生まれ変わらせるために改装中で、軋む廊下や階段を進むと、前の持ち主が残した着物や古いカメラ等の雑貨がいっぱい。
これらの貴重な建築を活用し保存するためのクラウドファンディングが27日まで行われています。
物干し程の広さのバルコニーもあり、どんな風にこれから変貌していくのか、とても楽しみです。

銘木と椿の競演

3月17

taizan 銘木商・泰山堂(新烏丸通丸太町上ル新富町304。075-213-0355)というところで椿展があると誘われ、お邪魔しました。
庭園に植わっている椿の木を回遊するのかと想像していましたが、畳敷きの小上がりのある、こじんまりとした数寄屋建築が会場でした。

染付とのコントラストが鮮やかな花の群れに迎えられ、ある花は燗鍋の口から枝を伸ばし、ある花は唐紙の版木を敷板に、またある花は仏手のような彫刻の指先に花を付けていました。
その品種も「月光」「赤城」「百合椿」「千寿」、そして雷光のように枝をうねらせた「雲龍」など、花びらの色から葉の形状まで実に豊富です。

美しい椿は寺院や庭園、お茶席の床の間など京都でたくさん出逢えますが、様々な古材や花器の絶妙な取り合わせで生けられた姿を一度に観られるのは新鮮でした。

「真の美しさに触れた時、人は心強くし、何度でも再生できる」
案内状にはそう書かれていました。

撮影は可能ですが拡散不可なので、ここでの椿の画像をお見せできないのが残念ですが、
この椿展は毎年3日間だけ開催されているそうなので、来年のご参考までに。

手のひらの国宝

3月9

mini
仁和寺で茶室の模型展が開かれているとの口コミを得て、行ってきました。

御殿の白書院を会場に、手の平サイズの茶室と茶道具等がずらり。
それも、豊臣秀吉黄金の茶室や千利休の待庵など、基本的に非公開で入ることのできない茶室ばかり。
ミニチュアが好きでよく観ますが、幻とされている茶釜や国宝の茶碗、茶懐石のそれは他で観た事がありません。

模型製作が趣味だった関山隆志さんが、24歳の頃に職場の茶道部で初めて茶道に触れたことからのめり込み、還暦を過ぎてから茶室の模型の製作を始められたそうです。
できるだけ実物を訪問し、交渉をして見学をさせてもらい、1/12のスケールに落とし込んでいるとのこと。
LED等の照明を組み込む事で陰影や奥行ができ、ミニチュアながら庭園の眺めに清々しさまで感じられるのが驚きです。

観る角度を変えると見える物が現れる遊び心もあって、何よりも楽しんで製作されているのが伝わます。
会場にいたスタッフ方やお客さんとも和気あいあいと楽しませていただきました。

この展覧会は3月7日で終了しましたが、2年前にも嶋臺ギャラリーで個展をされていたそうなので、またどこかで新作とともに企画があるかもしれませんね。

大福を願う帳面の寺

8月13

shuin
盛夏から晩夏へと向かう今日この頃。
曇っていて風のある日は、自転車でも意外と快適でした。
小さな街ながら、徒歩より早く車より小回りの利く自転車で巡っていると、思わぬ発見があります。

たまたま通りかかった大福寺というお寺に、若い人々が入って行くのを見て、立ち寄りました。
中にはおびただしい数のご朱印とご朱印帳。この若者たちは信者?それともご朱印マニア?
親指ほどの大きさのご朱印帳もあり、それに応じた規格の小さな小さなご朱印の札も月毎に用意されていました。
なぜこんなにたくさん扱っているのだろうと思っていたら、「大福」という縁起の良い寺号により、お正月には商売繁盛を願う商家の出納帳に寺の宝印を授与する習わしがあったそうで、それが「大福帳」の名の由来となっているそうです。

これも何かの縁と思い、ご朱印を求めることにしました。
令和二年の年号が入った五山の送り火の意匠です。
この朱の点は、おそらく今年の送り火で点火される地点かと思われます。
何十年か経ったころに、自分も子や孫に「あの年はこんなことがあって、送り火がね…」と語り継ぐ日が来るのでしょう。

表の鐘も搗かせてもらい、思わぬ迎え鐘となりました。
お参りの際には、事前に公式ツイッターのご確認を。

「空気をまとう」京和晒綿紗

5月26

sarasa 外出する日数が少なかったせいか、初夏を飛び越えて既に夏に入ってしまったかのような気候です。
エアコンをつける程でもないけれど、室内だとちょっと蒸し暑いときも。
巣ごもり生活の長い夜を快適にすごすため、寝具を旅館風に変身させるのも楽しいですね。

老舗寝具メーカー・大東寝具工業「ねむりの蔵」による「京和晒綿紗」は、国内わずか数台という稀少な和晒窯で4日間かけて繊維の奥にある不純物まで取り除いたあと、天然水で洗い流すなど全ての工程を国内工場で行い、柔軟剤を使わなくても洗うほどにふわふわの手触り。
一般の多重ガーゼ生地とは異なる独特の物作りの詳細は、ぜひ公式サイトをご一読ください。
ガーゼの寝具は、夏の寝汗を吸い取って放出させるので手触りもさらさら。
一日の終わりは肌もノーストレスにして、全体重を布団の中に委ねる幸せの時間に。

これから過酷な夏を迎える赤ちゃんを優しく包むギフトセットもあります。
綿のタオルより更に軽くて風を通すので、お風呂上がりも気持ちよさそうですよ。

2020年5月26日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

絆をつなぐ刀

5月11

youkan 二尊院や祇王寺にほど近いところに店舗を構える和菓子屋「京都一夢庵大ふへん堂 嵯峨嵐山店」。
全国の百貨店や博物館等で「刀剣武家ようかん」を観た事がある人も多いのではないでしょうか。

祇王寺は緊急事態宣言が解除されるまでの間は拝観を停止されているため、「模造刀お触り放題」のこの店も暫くは要予約制となっていますが、
インターネット販売は好調のようです。

今年の大河ドラマ縛りと味の種類で選びました。
これらをステンレス菓子切り「羊羹切日本刀ナイフ」で一刀両断するのがまた楽しいのです。
雛人形にも持たせられそうなこの小刀。収める袋も思案中だとか。
お茶席があれば、稽古に行けたら、何食わぬ顔をして抜刀するのに…!!

ちなみに、二尊院は5月15日(金)より一般拝観を再開されるそうです。

通販なら、遠く離れたところに住む人にもお届けできます。
日持ちもするので、6月21日の父の日のプレゼントにいかがでしょうか。

伝統工芸品は「飾る」ものから「活用する」ものへ

3月24

miyako
岡崎のみやこめっせ地階で京都市の伝統産業74品目を紹介する「京都伝統産業ミュージアム(旧「京都伝統産業ふれあい館」)」がリニューアルオープンしました。
あいにく新型コロナウイルス対応のためオープニングイベントは縮小され、手に触れて体験できるはずの展示も眺めるのみとなっていましたが、伝統工芸品が平然と陳列されていた印象だった以前のレイアウトは、より回遊式でスタイリッシュになっています。
まるで「和」をメインコンセプトとしたセレクトショップ、ショールームのようで、奥の一角にある「マテリアルライブラリー」は、生産者と素材を探す人の出会いの場であり商談スペースでもありました。
職人の技と仕事を、博物館の様に展示・紹介するだけでなく、より現代人の暮らしに寄り添い、ビジネスとしての具体的な道筋を作り、継承に繋げていこうという狙いを感じます。
実演スペースでは、普段足を踏み入れられない工房で黙々と進められているであろう作業を間近に観せてもらう事ができ、実際に職人さんに話しかけている来訪者も。
網代編みのブリーフケースや、京金網とクリスタルビーズを組み合わせたポーチなど、新たな感性で編み直された工芸品には驚かされ、足を止めて見入ってしまいます。
年に3~4回企画展が開催される予定で、4月18日からは、6人の職人の家族写真を通して伝統工芸の事業・技術の「継承」を探る企画展「継ぐもの-In between crafts-」が始まります。
入場無料、入り口そばには「ミュージアムショップ」があるので、岡崎に来る毎に「ひと味違う」お土産探しにみやこめっせに立ち寄ってみるのもいいですね。

« Older EntriesNewer Entries »