e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

祇園でおもてなしを学ぶ

6月6

maruyama 自宅で料理教室をされているマダムの主催で、「祇園丸山」の建仁寺店で昼間のお食事会をしました。
この様な料亭では、予約の際に苦手や食材やアレルギーの有無はもちろんのこと、どの様な用途での利用なのかも尋ねられます。
今回は参加メンバーの中でお祝いごとがあり、また訪れた先月は五月の節句だったので、床の間には立派な鎧兜や矢屏風に弓太刀、そして「萬歳」と書かれた屏風が出迎えてくれました。
坪庭の蹲から流れてくる水の音に耳を澄ませていると、「綺麗だな、と感じるお庭は、実は相当な手間がかかっているものなんですよ」と先生。
食事も季節のもの、鯛や赤飯などのめでたい趣向のものを、温かいものは温かく、冷たいものはひんやり舌触りも良く、それぞれが清楚に盛りつけられ、非常に正統派な京料理屋という印象を受けました。(またこの手のお店のお手洗いは広い!)
ところで、幸か不幸か、インターネットの急速な普及によって、お店に限らず物品や不動産関係、医療機関まで、あらゆるものが評価の対象として晒され、自分の財布を開かずとも、事前に口コミ評判を得られて当たり前となっています。
あるとき街角の飲食店で、食べ物がこびり付かないよう予め濡らしてある木の箸を、「お箸が濡れていて気持ちが悪いので交換して下さい」と言っていたり、「器に何かが付着している」と、金継ぎが施された器を指差している人を見かけたりすると、ネットの口コミとは書き手次第で左右される危ういものだな、と思わざるを得ません。
全ての評判を鵜呑みにする読み手は多くないでしょうが、「おもてなし」とは、至れり尽くせりの一方通行なサービスや評価の対象ではなく、双方の掛け合いでつくられていくもの。
通された部屋のしつらいや食材の取り合わせ、間合いの取り方にどんな気配りが巡らされているのか、目に見えないとこをも汲み取って、感謝の思いで返せるような良いお客になっていきたいですね。
言葉に代わり、お皿に乗せて伝えたいこと。このお食事会は、先生の課外授業だったのかもしれません。

2016年6月06日 | お店, グルメ, 花街 | No Comments »

吉田山大茶会

5月31

kan 先週末の京都は茶会ラッシュだったようで、大徳寺のあちこちの塔頭では利休忌に因んだ月釜が、神護寺でも「神護寺茶会」という催しが行なわれたようです。そんな中で、吉田山大茶会に初めて行って来ました
吉田神社境内で、様々な団体や店舗が銘々の趣向で茶会やお茶の販売をしており、京都の宇治茶はもとより、静岡の天竜茶や、台湾茶など、300種類以上のお茶が集結して賑わいをみせていました。
軽食もあり、テイクアウトの中国茶のミルクティーや冷たいライチ紅茶で喉を潤しながら、茶器を買ったり、韓国茶道の茶席にも参列したりと、ここでは朝から夕方までティータイムです。
軽トラックの荷台に畳を敷き、売茶翁さながらにお茶をふるまうところや、急須と合体させた湯呑みなどの、独創的な試みにも触れてみたり。
毎年参加されているというお茶好きな方からのアドバイスは、「早めに会場入りして、まずは予約を入れること。人気の茶席はすぐに完売してしまう」だそうです。
今回も38ものブースが出典しており、会場には全体マップが一か所でしか掲示されていなかったので、行きたいお店を探すのに少々時間がかかりました。
事前に出展者リストをプリントアウトして、行きたいところをチェックしてから効率よく巡るのがおすすめです。来年のご参考に。

ひと手間を加える

5月25

monaka 友人の家に大人数で集まった時、よく手土産にするのが、「アイスクリームの最中詰め」。
事前に先方の冷凍庫のスペースを空けてもらうか、時間指定のクール便で届けるという手間はありますが、スプーンですくって最中種に載せるという行為が、ちょっとしたエンターテイメントになって、パーティー気分を盛り上げます。
最中の種は、和菓子店や製餡所で餡と皮をセットにしたものを購入するという手もあるのですが、和菓子の老舗などへの麩焼種や懐中しるこの種を製造する「種茂商店」に問い合わせてみると、「割れや欠けのあるB級品を、工場の前で一袋100円でお売りしていますよ」と親切に教えて頂きました。
(※在庫品に限り一般販売されていて、購入の際は、必ず来店前に電話やFAXで一報入れて下さいね)
アイスはバニラや抹茶がおすすめですが、色んな味のミニカップの詰め合わせをめいめいの好みで選んで詰めても楽しいと思います。
今まさに、挟んだばかりの最中にかじりつくと、高級もち米の香ばしさと抹茶アイスクリームのなめらかさやほろ苦さや冷たさが、パリパリとした食感と交互に押し寄せます。
余った最中種を持ち帰った友人宅では、ご両親が早速アイスを詰め、サトウキビ密糖をかけて楽しまれたようです。
デザートを一から作る程の手間はかからないけれど、こんなひと手間を加えるだけでも十分「気張らないおもてなし」になるのではないでしょうか。

2016年5月25日 | お店, グルメ | No Comments »

定食屋で学生気分

3月14

re 先日タクシーのレシートを受け取る際に、運転手さんから「実は、現在2台しか走っていない “二葉葵”マークの車両なんですよ」と教えられました。
昨年の上賀茂神社の式年遷宮を記念して走行を始めたもので、好評に付き延長走行なのだそうです。
という訳で、記念品を受け取りがてら上賀茂神社をお参りしました。
帰りに昼食で立ち寄った定食屋「リバース」(075-721-7322)。
学生時代をこの辺りで過ごした人からは「懐かしい!」という声が上がりそうな昔ながらの洋食屋さんで、一歩入ると一斉に男子学生やサラリーマンの視線が集中し、大いに気後れしましたが、めげずに定食を注文。
値段は500円前後で非常にお手頃ながら、運ばれて来た品のボリュームに動揺していると、ホールを手伝っている真面目な接客ぶりの学生さんが、ご飯量を減らして値段を下げてくれました。
揚げ物たっぷり、既にマヨネーズまでかかっていてコテコテ!
部活の合間でしょうか、ジャージ姿でかき込んでいる男の子達を眺めながら味噌汁を飲んでいると、サービスエリアで食べる揚げ物定食とはやはり違って、「お母さんが息子達を応援している」かのようなメニューだと感じました。
禁煙ではないため、女性同志には入るのに勇気がいるかもしれませんが、上賀茂神社の桜が咲く頃、再び学生気分を味わいにいかがでしょうか。

隠れ老舗

2月23

torihatu  寒い夜は、仲間内で肩寄せ合ってつつく水炊きが何よりのごちそう。今回は「本家鳥初」を利用しました。
河原町三条より一筋上がった細い姉小路通りを西に入った目立たないところにあるため、創業から120年は経つという歴史がありながら、「こんな店あるなんて知らなかった!」という声をよく聞きます。長年京都に住んでいても、たまにこんな隠れ老舗に出逢えるのです。
一筋入っただけで街の喧騒が遠のき、暖簾をくぐれば別世界、繁華街のど真ん中に居る事など忘れてしまいます。
まずは薬味としょうが汁を加えた白濁スープで身体を温めると、かじかんだ指先に感覚が戻っていく心地よいしびれ。
綺麗に盛られた白菜は、軽くしゃぶしゃぶして繊維感を楽しむも良し、乳白色のスープに漂わせてとろとろの食感を味わうも良し。
骨付きのかしわは程良い歯応えと香りを醸し、「スープが美味しい」「白菜が甘いね」と各卓から聞こえて来る声にも一安心。
広間や個室、離れもありますが、何だか一日観光を終えて旅館の一室に辿り着いたかのような風情があります。
スープをたっぷりと吸い込んだ雑炊をよそう中居さんの手元を見ながら熱燗を頂いていると、布団を敷いてもらいたいくらい。
帰り際に、暖簾の隙間から見える広い厨房の大きな釜にも、重ねられた歴史を感じました。
「古き良き京都」を思い起こさせる風情が、ここにはまだ残されています。

2016年2月23日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

究極の抹茶バウムクーヘンとは

2月15

baum 日本を訪れる外国人観光客が増え、観光地でも駅前でもお土産屋さんでも、またはドラッグストアにおいても抹茶菓子や竹細工、和柄の小物で溢れかえる今となっては、「日本土産」なのか「京都土産」なのかは裏の表示を注意深く見なければ見わけがつかなくなって来てしまいました。日本産かどうかすら怪しいものも…。
国内外に関わらず「京都好き」とは言いながら、「和風なら、美味しければ、何でもいいやん」という感覚の人が買い手にも作り手にも多いという実態。
抹茶のバウムクーヘンも京都の和洋菓子屋(それ以外の業種からも)から続々と発売され、京都で挙式する人の中には、「京もの」の引き出物や内祝いとして比較検討する人も多いのではないでしょうか。
一層一層が熟練の職人の手作業で焼かれている抹茶のバウムクーヘン「究極のバウムクーヘン」は、宇治茶の老舗・丸久小山園の抹茶の風味や新鮮な緑色を、熱や光等で損ねないよう工夫されており、ふわふわした食感よりもしっとりと目の詰まったものが好み、という人におすすめです。
保存料等の添加物を含まないため、素材の風味が直に飛び込んでくる「ユーハイム」らしい抹茶のバウムクーヘンです。
素材を吟味して手作りしている分、お値段もちょっとプレミアムもの。
主にインターネットでの販売(数量は限定的です)だし、人に差し上げるものは失敗したくない、できれば事前に味見したい、という方は、丸久小山園の西洞院店の喫茶メニューにあるので、そこで食べてみるのも一手でしょう。
小さめカットに見えても、どっしりと食べ応え十分です。

2016年2月15日 | お店, グルメ | No Comments »

節分とだるまさん

2月2

daruma 節分に見られるのは、鬼やおかめばかりではありません。
「だるま寺」で知られる上京区の法輪寺は、お守りから木像に絵画、建築にとあらゆるものが「だるまだらけ」なのは想像通り。
更に茶席のお菓子も、表で売られているお焼きもだるま型の「だるまスイーツ」!そして、茶道具までも雪だるま柄とは。
京都のお寺には珍しく、横たわった涅槃の姿の釈迦像や、いわゆる「トイレの神様(仏様)」としてお札で代用される事の多い烏枢沙摩(うすさま)明王像も、この機会に拝見する事ができます。
境内のあちらこちらで老若男女がご奉仕されており、子供連れのご近所さんの訪問も多い様子。
壁に九年面したとも言われる達磨大師の厳しい座禅修行のイメージとは裏腹に、参拝者とお坊さん達との距離が近く、和やかな空気が感じられました。
受付の方が「毎回いいお話で面白くて、和尚さんのファンなの!」と言う「だるま説法」は、最終が20時からとなっていますので、夜のお詣りも楽しめますね。

お酒をチョコに注いで

1月5

choco この10年程で京都に急増したと感じるものが幾つかあります。
イタリア料理店、結婚式場、珈琲店、パン屋、そしてチョコレート専門店です。
国内外から日本の、とりわけ京都を目指して出店するところも多く、京都に縁のある食材を使ったオリジナル商品を考案する事で、洋菓子でも「新たな京土産」として打ち出す事が可能になり、徐々に市民権を得て来ています。
年末に頂いた「ショコラ ベルアメール京都別邸」のチョコレートギフトもその一つ。
丹波の赤ワインや栗に黒豆、白味噌や七味に抹茶、水尾の柚子を利かせた一粒一粒が、まるで宝石箱の様に華やかな詰め合わせです。
瑞穂のしずく」は、指先でつまめる程の大きさの枡型チョコに、京都産の酒米「祝」で作られた日本酒や国産茶のジュレが流し込まれています。金箔も浮かんで、おめでたい。
新年会に持参するも良し、違いを味わいたい人は一人占めするも良し。
一年の始まりを、お酒と共に迎えた人も多いでしょう。
続きは猪口をチョコに変えて、楽しんでみては?

2016年1月05日 | お店, グルメ | No Comments »

京都のクリスマスチキン

12月28

yoshida 2015年の聖夜は、「吉田チキン」のクリスマスチキンをテイクアウト予約してみました。
ワイン色の壁やアンティーク調の店内には、大きなオーブンの中でチキンがゆっくりと回転していて、受け取ったばかりの温もりを両手に感じながら、思わず見入ってしまいます。
クリスマス当日、丸々と太りながらも皮はパリっと締まったチキンをさばくのに奮闘しましたが、五種類のスパイスが浸み込んだ上品な香りが皮や身の間から漂い、それでいてしつこさが無いのは、ロティサリーというオーブンでじっくりと焼き上げるからなのでしょう。
今回は前もって予約していたので、温め直して頂きましたが、次回はできたて、更なるジューシーな味わいをお店でがぶりと堪能してみたいと遠い目で思いつつ、ワインを飲み干しました。
身を少し残しておき、余った鶏ガラでスープを取って、翌日は鶏飯(けいはん。鹿児島や奄美大島の郷土料理)に。始末して最後まで楽しまなければ勿体無い!
日曜日以外の年末年始も営業しているそうなので、家族親戚が集まる日にわいわいと取り分けるご馳走としても良さそうですね。
良いお年をお迎えください。

花から現れる自分自身

12月21

ikebana 先週末、「生け花で楽しむお正月」という催しのお誘いを受けました。
生け花に関してはほぼ初心者だったので、お正月に飾れる生花のみならず花器や剣山も持ち帰れて、お食事付きというのは魅力的。
たくさんの流派があり、生け方等が異なる印象の生け花ですが、眞田佳子先生は京都未生流とのこと。とても自然体な方で、こう生けたい、という自分の希望を伝えると、「例えば、この枝をこちらに持って来られてはどうでしょう?」と、提案するような柔らかさで導いて頂きました。
同じ花を使っていてもそれぞれに全く異なる趣があり、作品を観てから生けた人を見ると、妙に納得できてしまう不思議。
「生ける」という行為は、花の持つ個性を活かす事で、自分の個性が生かされるのかもしれません。
また、茎を切り、花びらに触れ、葉を落とすという行為は、自らの指先で命そのものを感じ取る時間でもあります。
銘々の作品を飾った後は、会場である「ちきりや茶寮」の、お正月に因んだお料理を味わいながら先生達との話の花を咲かせました。
だしをしっかり効かせた和洋の皿が少しずつ、それでも全10品と盛りだくさんで、懐石料理とフルコース料理の両方を堪能したかの様な満足感。
更には、「ご家庭でもできるものを」と、献立の中の一つ「鯛の蒸し魚 葱油ポン酢ソース」のレシピも配られ、料理長が作り方を解説して下さいました。
次回は2月20日の開催で、打田漬物の社長さんから「京都の三大漬物(千枚漬・しば漬・すぐき漬)」の話と共に、糠床の作り方も学べる内容だそうです。

« Older EntriesNewer Entries »