e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

「あさ」生家跡とその周辺

2月8

asa 堀川通りに面するホテル「ルビノ京都堀川」が、現在放映中のNHK連続テレビ小説の主人公のモデル・広岡浅子の生家跡に建っているとして、話題になっています。
当ホテルで開催中のパネル展そのものは、朝ドラ関連というよりは、その時代の界隈の様子を収めた写真が主で、出水三井家の庭園にあったとされている石灯籠や庭石は裏手の駐車場の片隅にぽつんと建つのみですが、ロビー内で自由に持ち帰れる「SANKEI EXPRESS特別編 九転十起の女 広岡浅子伝」(産経新聞大阪本社編集局編集委員 石野伸子著)は、何故現代人から忘れ去られていた女傑が朝ドラの題材として起用されたのか、晩年に遺言をしなかったのは何故か、浅子の人生を詳細に掘り下げていて、一読の価値があります。
ルビノ京都堀川に残る石灯籠を確認できたら、帰り道はそのまま油小路通りを散策してみて下さい。
住宅が並ぶ通り沿いに琴や三味線の老舗があったり、もしかしたら浅子女史が駆けまわっていた頃からあったのではないかと想像力を掻き立てられる様な、時を経た風格のある町家が点在していたりして、静かに胸が踊ります。
観光地化されていない、新旧入り混じった京都の素の姿もまた魅力。
なお、主人公の姉が嫁いだ大坂の両替商・山王寺屋のモデルとなった天王寺屋五兵衛の遺構が残る松殿山荘が見学会を予定しています。ご予約はお早めに!

2016年2月08日 | イベント, 町家 | No Comments »

節分とだるまさん

2月2

daruma 節分に見られるのは、鬼やおかめばかりではありません。
「だるま寺」で知られる上京区の法輪寺は、お守りから木像に絵画、建築にとあらゆるものが「だるまだらけ」なのは想像通り。
更に茶席のお菓子も、表で売られているお焼きもだるま型の「だるまスイーツ」!そして、茶道具までも雪だるま柄とは。
京都のお寺には珍しく、横たわった涅槃の姿の釈迦像や、いわゆる「トイレの神様(仏様)」としてお札で代用される事の多い烏枢沙摩(うすさま)明王像も、この機会に拝見する事ができます。
境内のあちらこちらで老若男女がご奉仕されており、子供連れのご近所さんの訪問も多い様子。
壁に九年面したとも言われる達磨大師の厳しい座禅修行のイメージとは裏腹に、参拝者とお坊さん達との距離が近く、和やかな空気が感じられました。
受付の方が「毎回いいお話で面白くて、和尚さんのファンなの!」と言う「だるま説法」は、最終が20時からとなっていますので、夜のお詣りも楽しめますね。

ロックスターが京都で見せる表情

1月18

rock  日本人で初めてザ・ビートルズを撮影した日本人写真家・長谷部宏さんが、写真集『ROCK STARS WILL ALWAYS LOVE JAPAN』を発刊するのを記念した写真展
デヴィッド・ボウイ、ニール・ヤング、ボン・ジョビ、KISS、クイーン、マドンナ、U2など洋楽雑誌『MUSIC LIFE』で被写体となった大物アーティスト達が京都や東京に奈良、倉敷等を訪れ、新選組や学ラン、寿司職人のコスプレをするものもあれば、龍安寺の石庭を静かに眺めていたり、東大寺の前で膝をついて真剣に拝んだり、あるいはごく普通の地味な姿で街並みに溶け込んだり。
ぞれぞれの作品に一枚ずつ添えられた取材の記録も興味深い。
人気者ゆえに撮影場所への制約があったり、行動が奔放だったりアーティストとしてのプライドがあったり、実際に会ってみると印象が違っていたりと様々な気付きを経て、オンとオフが入り混じった彼らの一面を引き出すために工夫が凝らされていた事でしょう。
京都での撮影は、ツアー等で来日した彼らが観光目的で訪れる事が多かったようで、やはり金閣寺清水寺は定番のよう。渡月橋や老舗旅館の前でポーズを取っているところからはリラックスし、また開放感ある表情が読み取れます。
驚く事に、この展覧会の展示作品は撮影OK、ツイッターやフェイスブック等での拡散もOKなのです。
この写真集。ロック好きな方へのバレンタインプレゼントにいかが?

京都のクリスマスチキン

12月28

yoshida 2015年の聖夜は、「吉田チキン」のクリスマスチキンをテイクアウト予約してみました。
ワイン色の壁やアンティーク調の店内には、大きなオーブンの中でチキンがゆっくりと回転していて、受け取ったばかりの温もりを両手に感じながら、思わず見入ってしまいます。
クリスマス当日、丸々と太りながらも皮はパリっと締まったチキンをさばくのに奮闘しましたが、五種類のスパイスが浸み込んだ上品な香りが皮や身の間から漂い、それでいてしつこさが無いのは、ロティサリーというオーブンでじっくりと焼き上げるからなのでしょう。
今回は前もって予約していたので、温め直して頂きましたが、次回はできたて、更なるジューシーな味わいをお店でがぶりと堪能してみたいと遠い目で思いつつ、ワインを飲み干しました。
身を少し残しておき、余った鶏ガラでスープを取って、翌日は鶏飯(けいはん。鹿児島や奄美大島の郷土料理)に。始末して最後まで楽しまなければ勿体無い!
日曜日以外の年末年始も営業しているそうなので、家族親戚が集まる日にわいわいと取り分けるご馳走としても良さそうですね。
良いお年をお迎えください。

花から現れる自分自身

12月21

ikebana 先週末、「生け花で楽しむお正月」という催しのお誘いを受けました。
生け花に関してはほぼ初心者だったので、お正月に飾れる生花のみならず花器や剣山も持ち帰れて、お食事付きというのは魅力的。
たくさんの流派があり、生け方等が異なる印象の生け花ですが、眞田佳子先生は京都未生流とのこと。とても自然体な方で、こう生けたい、という自分の希望を伝えると、「例えば、この枝をこちらに持って来られてはどうでしょう?」と、提案するような柔らかさで導いて頂きました。
同じ花を使っていてもそれぞれに全く異なる趣があり、作品を観てから生けた人を見ると、妙に納得できてしまう不思議。
「生ける」という行為は、花の持つ個性を活かす事で、自分の個性が生かされるのかもしれません。
また、茎を切り、花びらに触れ、葉を落とすという行為は、自らの指先で命そのものを感じ取る時間でもあります。
銘々の作品を飾った後は、会場である「ちきりや茶寮」の、お正月に因んだお料理を味わいながら先生達との話の花を咲かせました。
だしをしっかり効かせた和洋の皿が少しずつ、それでも全10品と盛りだくさんで、懐石料理とフルコース料理の両方を堪能したかの様な満足感。
更には、「ご家庭でもできるものを」と、献立の中の一つ「鯛の蒸し魚 葱油ポン酢ソース」のレシピも配られ、料理長が作り方を解説して下さいました。
次回は2月20日の開催で、打田漬物の社長さんから「京都の三大漬物(千枚漬・しば漬・すぐき漬)」の話と共に、糠床の作り方も学べる内容だそうです。

D&DEPARTMENT KYOTO

11月3

d  仏光寺の境内に、デザイナーのナガオカケンメイさんや京都造形芸術大学の学生らがギャラリーを併設したセレクトショップ「D&DEPARTMENT KYOTO」を開店して、もうすぐ一年になろうとしています。
もとは物置として使われていた和合所を改装して販売されている品は、京都の伝統工芸品や調味料、雑貨等、流行や時代に左右されずに愛されてきたものたち。
おそらくどこかのお店で使われていたと思われる岡持ちや木のお盆、昨年営業を終了した「京都国際ホテル」の名前が裏に入ったノリタケの白いお皿、実験用のシャーレに書籍など、新品からアンティークまで、アイデア次第で新たな価値を生み出しそうなわくわく感で満ちていました。
隣のお茶所は、仏光寺で採れたかりんで作ったドリンクや京都の名産を上手くアレンジして取り入れた軽食や甘味が楽しめます。
京都店は、「ロングライフデザイン」をテーマに、物販・飲食・観光を通して地域の「らしさ」を見直す「D&DEPARTMENT」プロジェクトの10 店舗目に当たり、山梨や富山などの他の店舗の情報が掲載されている専用誌もここで読む事ができます。
単なる名産の寄せ集めではなく、セットメニューのお茶や添えられた塩昆布も丁寧に作られていて京都らしさがちきんと感じられ、ショップで見かけた調味料や器も使わており、それが地域の「らしさ」を現代生活に取り込むインスピレーションを与えてくれるので、思わずお茶所から再びショップに戻ってしまったほど。
「防火用」と書かれた赤いバケツを衝動買い。そう、京町家の軒先でよく見かけるアレです。
年末のお掃除用や、傘立てとして使ってみようかな。

お神酒シャーベット

10月26

omiki 今年の時代祭は平日の斎行だったため、観に来れなかった人も多かったかもしれませんね。
しかし来年は土曜日なので、鞍馬の火祭と併せて今から宿泊先を押さえているという人もいるでしょう。
時代祭ゆかりの話題という事で、平安神宮オリジナルのお神酒「橘酒」(商品画像は、Facebook版e-kyotoをご覧下さい。)。
非常に飲みやすいのですが、まるでデザートワインかと思う程にとっても甘~いお酒。
そこで別の器に移して冷蔵庫で凍らせ、シャーベット状にして食後のデザートにしてみたら…狙い通り!
冷やす事で甘さが抑えられ、シャリシャリした食感が口直しにぴったり。好評でした。
もともと農耕民族である日本人の主食・お米から造られるお酒や餅は、神前にお供えする神饌の中でも、特に重要なもの。
神事の後には必ず直会(なおらい)という儀式があり、神様に供えられた御神酒をお下がりとして戴くことで神様から力を頂いたり、神様と人、また人と人を結びつけてきました。
お神酒シャーベットなら、洋食フルコースの食後酒にも応用できそう。これも「神人共食」か!?

萬福寺宝善院の普茶料理

9月28

fucha 黄檗宗の精進料理「普茶料理」と言えば、黄檗宗大本山の萬福寺の食堂や付近の白雲庵、京都市内の閑臥庵等がありますが、今回は萬福寺塔頭の宝善院に行ってみる事にしました。
揃いの染付の器でテーブルセッティングされた本堂の一角には、「清流無間断(せいりゅうかんだんなし)」という禅語の軸や花が飾られています。
赤ちゃん連れである事を伝えていたので、有りがたい事に子供用の布団も敷いておいて下さいました。
精進料理と言うと修行の一環で静かに食べる印象がありますが、普茶(あまねきの茶)は法要・行事の御礼のおもてなし料理という事で、色どりも華やか、大皿料理を分け合って食べるという賑やかな印象があります。
お寺の奥さまは、「油炸(味付天麩羅)」を出す時にはあえて中身を明かさず、食べた人に推測してもらうようにしているとか。
メロンの天麩羅はさすがに誰も言い当てられず、応え合わせに驚嘆の声をあげてしまいました。
もっちりとしたごま豆腐もとても美味しく、全体にあっさりしているのに食べ応えがあって箸が進んでしまいますが、ちゃんと普段から「五観の偈(ごかんのげ)」を意識して感謝しながら頂かないといけませんね!
自分達以外には誰もいないお堂の中、滋味深い食事を味わう傍らで、お庭のそばで赤ちゃんがすやすやと眠る時間は、平和そのもの。
帰りは廣化庭に配置された干支の守り本尊像を銘々に巡って手を合わせました。
今年はもう終了してしまいましたが、煎茶道・方円流の献茶・煎茶席や、鈴虫の音色と松茸を楽しむ夜間拝観もされているそうです。

2015年9月28日 | お寺, イベント, グルメ | 1 Comment »

「音を織り、織りから聞く」

9月24

piano 大徳寺に程近い多目的スペース「遊狐草舎」にて、「織物とピアノ」をテーマとした映像とひょうたん笛、手回しオルゴールとトイピアノの音色を味わう催しがありました。
中国雲南省の徳宏州に暮らすタイ族はその昔、夜に男子が想いを寄せる相手の家の前でひょうたん笛を奏で、女子は機織りの音で自身の人柄を表現したといいます。
織り上がった品は結婚の際にお披露目され、その織目や端の処理の美しさを見て、花嫁の器用さや、どのタイミングで男性が訪れていたのかを推し量るのだとか。
そう語るおばあさん達が織機に腰掛け、両手両足を巧みに動かして独特のリズムを奏でながら織る姿を映像で観ていると、どこかパイプオルガンの演奏光景に似たものを感じます。同様にピアニストの寒川晶子さんも、織り姿がピアノを弾いている様に見えたと話していました。
このテーマに合うとして提供された藤田織物の帯は、今主流の機械では無く職人の手作業で立体的な造形をしており、それを寒川さんが「五線譜に書き込まれた音楽のよう」と表現していたのが、とても腑に落ちました。
作者が空けた穴に応じて、ころころと涼やかな音を響かせる手回しオルゴールもまたしかり。
「演奏会」「音楽会」と聞くとどこかのホールで、観客が身体全体で聴く事に集中するのも好きですが、人の息遣いや虫の声が聞こえてくるような小さな空間で、座布団に腰をおろしながら繊細な音を紡ぎだしたり実験的な試みができるのも、これからのクラシック界に面白い広がりをもたらしてくれるのではないでしょうか。

「法」の送り火

8月17

hou 今年は「法」の送り火を観る事にしました。
北山通りの混雑を避けて一筋北の小道をひたすら東へ自転車を走らせます。それでも多くのご近所さんがたくさんの家族親族を伴って歩いていました。
「法」の字のふもとに「松ヶ崎大黒天」と呼ばれる妙円寺があるので、その付近から眺めようかと出発したのですが、住宅で火床が見えなくなるぎりぎりの所でたまたま目に入った脇道に入り、アパートや家々に挟まれた駐車場に停める事にしました。
ちなみに、妙円寺では送り火前日に甲子前夜祭が、当日には甲子祭が行なわれていたようです。そして送り火翌日には、焚き上げられた護摩木の消し炭を厄除けのお守りとして拾いに来る人々のために、普段は入山できない松ヶ崎山を開放しています。
また隣の涌泉寺では、日本最古の盆踊りと言われる「松ヶ崎の題目踊り」が行なわれる事でも知られています。
既に来ていた何人かおじさんや学生さん達が世間話をしながら点火の瞬間を待つ中、周囲の関係者や他の送り火保存会との交信でしょうか、時折ちかちかと灯りが放たれています。
そのうちに山の方から太鼓を打ちならす音や、「5分前です」と保存会員へのアナウンスが聞こえてきました。
点火時刻の1分前になっても一向に真っ暗なままの山肌を見ながら周囲の人々が「雨降ったさかい、親火湿ってちゃんと火いつくんかいな」と心配するのも束の間。
いきなり一斉に火が灯り、あっというまに「法」の字が浮かび上がりました。
辺りの空気をも赤く染める一つ一つの大きな火柱の横に白い人影が毅然と立ち、京の街並みを見据えています。
昨年の送り火当日もひどい集中豪雨でしたが、どんな天候であっても、還っていくお精霊の為に、燃え盛る炎であの世への道筋をつける誇り。
この「いつも通りに」が何百年も前から積み重ねられてきました。
京都では、五山の送り火を境に、「暑中見舞い」が「残暑見舞い」に切り替わります。

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