e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

金属で紡ぐ生命

3月22

wata 写真を見た瞬間、是非とも行きたいと思った個展があります。
27日まで清課堂ギャラリーで開催中の「鈴木祥太金工展『循環』」。
錫器・金属工芸品の老舗・清課堂の離れにある茶室の陰に咲く、金属の花。
着色をしない金属の色みは、枯れたような、それでもまるで畳に根を張り、そこから生えてきたかの様な生命感があり、今にも綿帽子から離れようとする綿毛は実に精巧緻密で、思わず息を吹きかけたくなってしまいます。
金属は「人工のもの、無機質で冷たいもの」という一般的なイメージはすっかり覆されてしまいます。
水を吸い上げた花の瑞々しさや鮮やかさ、芳しさとは異なるけれども、辺りの空気を変えてしまう存在感は生花と同じ。
動植物の様に血管や道管があるわけでは無いけれど、確かに金属も、もとから地球上に存在する自然のものであり、錫や真鍮で形作られたこの蒲公英やあざみにも一筋の何かが流れているのではないかと思わせます。
人はなぜ、リアルに限り無く近づくことにこんなにも惹かれるのでしょうか。
作家本人もとても若い事に驚きでしたが、この先どんな花を咲かせてくれるのかが楽しみです。

定食屋で学生気分

3月14

re 先日タクシーのレシートを受け取る際に、運転手さんから「実は、現在2台しか走っていない “二葉葵”マークの車両なんですよ」と教えられました。
昨年の上賀茂神社の式年遷宮を記念して走行を始めたもので、好評に付き延長走行なのだそうです。
という訳で、記念品を受け取りがてら上賀茂神社をお参りしました。
帰りに昼食で立ち寄った定食屋「リバース」(075-721-7322)。
学生時代をこの辺りで過ごした人からは「懐かしい!」という声が上がりそうな昔ながらの洋食屋さんで、一歩入ると一斉に男子学生やサラリーマンの視線が集中し、大いに気後れしましたが、めげずに定食を注文。
値段は500円前後で非常にお手頃ながら、運ばれて来た品のボリュームに動揺していると、ホールを手伝っている真面目な接客ぶりの学生さんが、ご飯量を減らして値段を下げてくれました。
揚げ物たっぷり、既にマヨネーズまでかかっていてコテコテ!
部活の合間でしょうか、ジャージ姿でかき込んでいる男の子達を眺めながら味噌汁を飲んでいると、サービスエリアで食べる揚げ物定食とはやはり違って、「お母さんが息子達を応援している」かのようなメニューだと感じました。
禁煙ではないため、女性同志には入るのに勇気がいるかもしれませんが、上賀茂神社の桜が咲く頃、再び学生気分を味わいにいかがでしょうか。

癒される京座布団

3月7

ozabu  来客に合わせて、座布団を購入する事になりました。
さすがに間に合わせで使っていた100円ショップの座布団は、1カ月程で毛玉だらけになり。
せっかくなら京座布団にしようと、洋間にも合うものを色々迷った末に我が家にやって来た新顔さんは、京都の老舗寝具メーカー大東寝具工業と「SOU・SOU」による伊勢木綿のものと、「京都嵐山プラッツ」の京小座布団。いずれも職人さんの手作りです。
京座布団の特徴の一つとして、座布団の中央は三つ又の「三方とじ」になっていて、垂直に縫われている方向が座布団の正面、つまり膝側となります。
「もし染みを付けてしまったら、裏返しに使うか丸ごとクリーニングに出さなければ…」と覚悟していると、「プラッツ」の方が、「もともと汚れが付きにくくしてありますし、汚れたら上から新たにカバーを付けて使ってはるお客様もおられますよ」とのこと。
ちょうど、母親の嫁入り道具の一つだった西陣織らしき大きな京座布団が出てきたので、手作りのカバーを付けて(刺繍が隠れて勿体無いのですが、部屋に合せるため…)使用する事になりました。
そんなこんなで大中小の京座布団が揃う事になるとは。
小さめサイズはちびっこ達に、大きなサイズは赤ちゃんを寝かせるのにも良さそうです。
邪気が入らないよう房を付けた正統派な京座布団や、うたた寝用やおじゃみ型、座椅子風に椅子に載せられる箱型など、色んな座布団も展開していますが、ふっくらと、床から立ち上がるかまぼこ型の京座布団は、なにより手やお尻で押した時の包まれるような感触に幸せを感じてしまうのです。
他のお店の京座布団も座り比べてみたいところなのですが…そんなにお客様の入る家だったかな!?

座布団の勧め方と当て方、降り方のマナーはこちら

2016年3月07日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

天神さんの残り福

2月29

sara 受験の時の合格祈願、お茶の先生に連れて行ったもらった天神さんの蚤の市、恋心を抱いた相手と巡った梅香る梅苑、一眼レフカメラを片手に歩いた紅葉の御土居。
北野天満宮は今までに何度も訪れているのに、梅花祭当日に境内を歩いたのは意外にも初めてでした。
上七軒主催の野点茶会に参加したかったのですが、都合で終了間際に着いたために入れずじまい(やはり事前に前売り券は買っておくべきですね)。
仕方無く本殿でお参りだけ済ませて、久しぶりに天神さんを楽しむ事にしました。
そもそも今回のお目当ては、来客時に鍋料理を取り分けるための器を探す事だったのです。
アンティーク着物に、コーヒーや玉こんにゃくの屋台、まるでしめじの様に乱立するこけしに、機械や簪のパーツまで。
今やインターネットでも気軽に売買できる時代ですが、こうして実際に色んなお店を見ていると、魅かれるお店は商品の並べ方も見やすく、分かりやすいものですね。
「見立て」として、本来とは異なる用途を連想するのも、また楽し。
ふと目に留まった、「5枚2000円」の染付の器。同行した母親も同じ所で足を止めていました。
一枚ずつ微妙に異なる手描きの、ほのぼのとした山水図がなんだか可愛らしくて手に取っていると、お店のおじさんが更に奥から出して来てくれました。
「12枚で3000円でええよ」との声に、母と半分ずつという事で早くも決まりました。
売り手にとっては、半端な数が売れ残っても仕方無いのでしょう。
掘り出し物を狙う人なら朝早くから行くのでしょうが、残りものにも福はありました。
今月下旬までは、宝物殿にて今、歴女の中でもアツい「宝刀展」が開催されています。

隠れ老舗

2月23

torihatu  寒い夜は、仲間内で肩寄せ合ってつつく水炊きが何よりのごちそう。今回は「本家鳥初」を利用しました。
河原町三条より一筋上がった細い姉小路通りを西に入った目立たないところにあるため、創業から120年は経つという歴史がありながら、「こんな店あるなんて知らなかった!」という声をよく聞きます。長年京都に住んでいても、たまにこんな隠れ老舗に出逢えるのです。
一筋入っただけで街の喧騒が遠のき、暖簾をくぐれば別世界、繁華街のど真ん中に居る事など忘れてしまいます。
まずは薬味としょうが汁を加えた白濁スープで身体を温めると、かじかんだ指先に感覚が戻っていく心地よいしびれ。
綺麗に盛られた白菜は、軽くしゃぶしゃぶして繊維感を楽しむも良し、乳白色のスープに漂わせてとろとろの食感を味わうも良し。
骨付きのかしわは程良い歯応えと香りを醸し、「スープが美味しい」「白菜が甘いね」と各卓から聞こえて来る声にも一安心。
広間や個室、離れもありますが、何だか一日観光を終えて旅館の一室に辿り着いたかのような風情があります。
スープをたっぷりと吸い込んだ雑炊をよそう中居さんの手元を見ながら熱燗を頂いていると、布団を敷いてもらいたいくらい。
帰り際に、暖簾の隙間から見える広い厨房の大きな釜にも、重ねられた歴史を感じました。
「古き良き京都」を思い起こさせる風情が、ここにはまだ残されています。

2016年2月23日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

究極の抹茶バウムクーヘンとは

2月15

baum 日本を訪れる外国人観光客が増え、観光地でも駅前でもお土産屋さんでも、またはドラッグストアにおいても抹茶菓子や竹細工、和柄の小物で溢れかえる今となっては、「日本土産」なのか「京都土産」なのかは裏の表示を注意深く見なければ見わけがつかなくなって来てしまいました。日本産かどうかすら怪しいものも…。
国内外に関わらず「京都好き」とは言いながら、「和風なら、美味しければ、何でもいいやん」という感覚の人が買い手にも作り手にも多いという実態。
抹茶のバウムクーヘンも京都の和洋菓子屋(それ以外の業種からも)から続々と発売され、京都で挙式する人の中には、「京もの」の引き出物や内祝いとして比較検討する人も多いのではないでしょうか。
一層一層が熟練の職人の手作業で焼かれている抹茶のバウムクーヘン「究極のバウムクーヘン」は、宇治茶の老舗・丸久小山園の抹茶の風味や新鮮な緑色を、熱や光等で損ねないよう工夫されており、ふわふわした食感よりもしっとりと目の詰まったものが好み、という人におすすめです。
保存料等の添加物を含まないため、素材の風味が直に飛び込んでくる「ユーハイム」らしい抹茶のバウムクーヘンです。
素材を吟味して手作りしている分、お値段もちょっとプレミアムもの。
主にインターネットでの販売(数量は限定的です)だし、人に差し上げるものは失敗したくない、できれば事前に味見したい、という方は、丸久小山園の西洞院店の喫茶メニューにあるので、そこで食べてみるのも一手でしょう。
小さめカットに見えても、どっしりと食べ応え十分です。

2016年2月15日 | お店, グルメ | No Comments »

お酒をチョコに注いで

1月5

choco この10年程で京都に急増したと感じるものが幾つかあります。
イタリア料理店、結婚式場、珈琲店、パン屋、そしてチョコレート専門店です。
国内外から日本の、とりわけ京都を目指して出店するところも多く、京都に縁のある食材を使ったオリジナル商品を考案する事で、洋菓子でも「新たな京土産」として打ち出す事が可能になり、徐々に市民権を得て来ています。
年末に頂いた「ショコラ ベルアメール京都別邸」のチョコレートギフトもその一つ。
丹波の赤ワインや栗に黒豆、白味噌や七味に抹茶、水尾の柚子を利かせた一粒一粒が、まるで宝石箱の様に華やかな詰め合わせです。
瑞穂のしずく」は、指先でつまめる程の大きさの枡型チョコに、京都産の酒米「祝」で作られた日本酒や国産茶のジュレが流し込まれています。金箔も浮かんで、おめでたい。
新年会に持参するも良し、違いを味わいたい人は一人占めするも良し。
一年の始まりを、お酒と共に迎えた人も多いでしょう。
続きは猪口をチョコに変えて、楽しんでみては?

2016年1月05日 | お店, グルメ | No Comments »

京都のクリスマスチキン

12月28

yoshida 2015年の聖夜は、「吉田チキン」のクリスマスチキンをテイクアウト予約してみました。
ワイン色の壁やアンティーク調の店内には、大きなオーブンの中でチキンがゆっくりと回転していて、受け取ったばかりの温もりを両手に感じながら、思わず見入ってしまいます。
クリスマス当日、丸々と太りながらも皮はパリっと締まったチキンをさばくのに奮闘しましたが、五種類のスパイスが浸み込んだ上品な香りが皮や身の間から漂い、それでいてしつこさが無いのは、ロティサリーというオーブンでじっくりと焼き上げるからなのでしょう。
今回は前もって予約していたので、温め直して頂きましたが、次回はできたて、更なるジューシーな味わいをお店でがぶりと堪能してみたいと遠い目で思いつつ、ワインを飲み干しました。
身を少し残しておき、余った鶏ガラでスープを取って、翌日は鶏飯(けいはん。鹿児島や奄美大島の郷土料理)に。始末して最後まで楽しまなければ勿体無い!
日曜日以外の年末年始も営業しているそうなので、家族親戚が集まる日にわいわいと取り分けるご馳走としても良さそうですね。
良いお年をお迎えください。

花から現れる自分自身

12月21

ikebana 先週末、「生け花で楽しむお正月」という催しのお誘いを受けました。
生け花に関してはほぼ初心者だったので、お正月に飾れる生花のみならず花器や剣山も持ち帰れて、お食事付きというのは魅力的。
たくさんの流派があり、生け方等が異なる印象の生け花ですが、眞田佳子先生は京都未生流とのこと。とても自然体な方で、こう生けたい、という自分の希望を伝えると、「例えば、この枝をこちらに持って来られてはどうでしょう?」と、提案するような柔らかさで導いて頂きました。
同じ花を使っていてもそれぞれに全く異なる趣があり、作品を観てから生けた人を見ると、妙に納得できてしまう不思議。
「生ける」という行為は、花の持つ個性を活かす事で、自分の個性が生かされるのかもしれません。
また、茎を切り、花びらに触れ、葉を落とすという行為は、自らの指先で命そのものを感じ取る時間でもあります。
銘々の作品を飾った後は、会場である「ちきりや茶寮」の、お正月に因んだお料理を味わいながら先生達との話の花を咲かせました。
だしをしっかり効かせた和洋の皿が少しずつ、それでも全10品と盛りだくさんで、懐石料理とフルコース料理の両方を堪能したかの様な満足感。
更には、「ご家庭でもできるものを」と、献立の中の一つ「鯛の蒸し魚 葱油ポン酢ソース」のレシピも配られ、料理長が作り方を解説して下さいました。
次回は2月20日の開催で、打田漬物の社長さんから「京都の三大漬物(千枚漬・しば漬・すぐき漬)」の話と共に、糠床の作り方も学べる内容だそうです。

考えて、試して、美味しくする

12月16

ooya

どちらかと言うと紅茶党で、珈琲については素人なのですが、「珈琲を美味しく淹れたい!」という願望はありました。
いつもはミルクも砂糖も入れないと飲まない自分が、ストレートで飲んでも美味しいと感じたお店は、残念ながらいずれも淹れ方教室をしていなかったので、珈琲の焙煎家・オオヤミノルさんによるドリップ講座を受けてみる事に。
ご本人は美山の山里で焙煎をしているそうですが、今回の会場は「KAFE工船」です。
珈琲豆の焼き加減の浅いものと深いもの、荒挽きのもの、量や温度による違いを、実験の様に繰り返しながら、自分の好みを探ります。
参加者は男性が多く、同業者の方もいました。そのせいかオオヤさんの話題もマニアック(下ネタ注意!)、一見脱線しているかに思えますが、珈琲に限らず食品全般、また珈琲を取り巻く世界の経済情勢に対する造詣の深さも話の端々から感じ取れます。
何より「珈琲の淹れ方のマニュアル」を知る以前に、「自分好みの珈琲豆の焼き具合、挽きの細かさ、好みの焙煎家・店」をよく把握する事が大切なのが分かりました。
それらの要素を変える事でどんな風に味わいが変わるのかを知れば、同じ豆を使っていても、飲んで欲しい相手の好みに調整する事も可能だからです。
「ほぼ水分ゼロの植物の豆を砕き、水を加えてジュースを絞るという調理の行為である事を意識する」。
オオヤさんの講座は2時間以上時間オーバーになるのが常らしいので、参加する場合は他に予定を入れずにめいっぱい質問をして有意義な時間にして下さいね。
25日の天神さんにも出店されているそうですよ。

2015年12月16日 | お店, グルメ, 未分類 | No Comments »
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