e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

お寺のひな祭り

3月6

hina 春桃会の三十三間堂。普段は厳かな佇まいの千手観音坐像も、隣にお雛さんが飾ってあるだけでどことなく春の空気をまとっていました。
この日に限り、体半分ほど高いところから堂内を眺められる足場が設置してあり、おびただしい数の千体千手観音立像が規則正しく並ぶ様を斜め上の角度から観ると、まるで合わせ鏡の中で永遠に続いているかのようです。
境内で女の子の赤ちゃんを連れた人をよく見かけたのは、桃の節句に子供の幸せを願ってのことでしょう。実家にあるお雛さんを思い出し、代わりに女性専用の「桃のお守り」を受けて後にしました。
三十三間堂の東側に出たすぐそばの法住寺の、庭を隔てた奥の書院には、三間にわたって吊り雛をはじめとした様々な人形が花壇の様に彩を放っていました。
段飾りに、床の間には立ち雛の掛け軸、畳の上には貝合わせに西洋の人形まで、様々な姿で親しまれてきた人形たちを観ていると、それらをひとつひとつ包み、大切にしまって引き継いできた人々の姿を想像します。
子供の頃は単なる人形遊びだったひな祭り。その意味を知り、お片付けやお飾りを手伝うようになったのは、いくつのときだったかな。

京都の屋台村

2月19

sujin
京都駅から東に徒歩5分、塩小路高倉の角に2年半限定の屋台村「崇仁新町」ができました。
屋外なので、寒さ対策としては膝掛けのほか、屋台骨の外側に厚手のビニールが張ってあり、ペレットストーブも中の空気を温めています。
入り口では野菜も売られていて、近所の奥さんが自転車を止めて覗き込んでいました。
テイクアウトメニューもありテーブルも共有なので、嵐山で人気の中村屋のコロッケをほおばりながら、他のメニューができるのを待ってみたり。
岡崎から出張してきた店舗の「崇仁新町バーガー」は、肉の旨みと根菜の食感、とろけるチーズがぎゅっと一体化したアメリカンスタイルの逸品でした。
昼間だったのでまだ空いていましたが、夜になればおでん等をつつきながら暖を取る人々で賑わうのでしょうね。
飲食店だけでなく、レンタル着物店や、日本の檜を使ったおもちゃを展示販売しているスペースも。
組み立て中の木枠もたくさん残されていたので、まだまだこれからも「ネオスウジン」にはお店が増えていきそうです。
なんと、4月7日には「京都カス野郎プロレス~崇仁春のBANG×2祭り」もあるみたいですよ。

牟尼庵のカカオ亭

2月5

munian
オンラインショッピングはよく利用しますが、実際に試食ができない食品をそのまま先方に送るのはちょっと不安になるので、できれば事前に自分用に買って試したいタチです。
テレビで観て、早速オンラインショップを検索した「京都ショコラ菓房 牟尼庵」の「フロマージュ・ムニアン」。
チョコレートとチーズケーキが好きな人へのバレンタインの贈り物にぴったり!売り切れないうちに!と珍しく勇み足でオンラインショップで注文したものの、やっぱり実店舗『atelier du munian』にも出向いてしまうのでした。
四条という繁華街の中にありながら、ビルの谷間の路地に吸い込まれていくと、町の喧騒が遠のいていきます。
併設の「プティ・カフェ」にて、北白川や鞍馬の貴重な石を配した100年越えとも言われる日本庭園を眺めながら、カカオティーの香ばしい香りでしばし外の寒さを忘れます。
スタッフは若い女性が数名でしたが、配送作業でしょうか、バックヤードからガムテープを切る音が賑やかに響き、よっぽどオンラインショップが盛況なのかもしれません。
まだ1月だったためか店内は空いていたものの、それでも客足が途切れる事はありませんでした。
トリュフが一粒750円と聞いて、買い物は次回のお楽しみとして先送りしましたが、チョコレート好きなら外せない定番に加えて「カカオ亭」というラインナップもあり、秋冬期の懐中チョコレートや春夏期のわらび餅など、京都発祥のお店なら是非欲しい和のテイストを取り入れた魅力的な商品達に、再訪を促されてしまうのでした。

2018年2月05日 | お店, グルメ | No Comments »

豆まきの発祥の地

1月31

midoro 「深泥池』停留所から少し歩いたところに、「深泥池貴舩神社」があります。
平安の頃より「水の神様」として洛中より多くの参詣者からの信仰を集めていた貴船神社を分社したもので、節分の豆まきの発祥の地とされているそうです。
節分当日の2月3日は、夜7時半から8時半まで豆まきが行われる予定で、一般の人も参加でき、福豆が頂けます。
また、秋葉神社という火伏せの社もあり、上賀茂という土地らしく「すぐき漬け発祥の地」でもあるそうです。
境内の石碑によると、明治の廃仏毀釈によって壊された社殿の修復を村が怠ったため一帯が大火に見舞われ、その際焼け残った漬物樽の漬物を食べた村の長が「酸い茎や」と言ったのが「すぐき」に転じ、その味を再現したものが始まりなのだとか。
更に、江戸期の文人画家・池大雅はこの辺りの出身だったとして、1月30日は記念碑の序幕式が行われたようです。ごく小規模な神社ながら寄進者も多く、エピソードが豊富なんですね。
来訪の際には、深泥池沿いの道路は歩道が狭く交通量も多いので、移動は十分にご注意ください。
なお、池の畔にはよもぎ餅が美味しいおまん屋さんの「多賀良屋(075-781-1705)」もあります(※営業日時については要問い合わせ)。

座席の無いデザイナーズカフェ

1月23

walden 眩しいほどに真っ白な壁や、装飾を排除した白いお皿やカップに囲まれた、いわゆる「お洒落なカフェ」はなんとなく落ち着かないのですが、それが塗られたような白、つまり物語を重ねた痕跡が残るところなら、まだ少し気分的な敷居が下がります。
先月オープンした「Walden Woods Kyoto」。大きな焙煎機を前にしてコーヒーとチャイ、フレーク菓子を受け取り二階に上がると、そこにはテーブルもイスも無く、壁際をぐるりと囲む二段の段差のみ。来客はその段の上にトレイを置き、また腰掛けて自由にすごしています。
ユニオンジャックのごとく組まれ剥き出しになった屋根の梁が、壁と同じく白く塗られている様を見ていて、町家とは異なる空気を感じたので尋ねてみると、元はオーダーカーテンのお店で、築100年は越えているとのこと。
白いサウナ室の様な部屋の真ん中の何も無い空間は、演劇や音楽ライブ、キッズイベント等様々な活用ができそうです。一言で言えば「渉成園の北にあるデザイナーズカフェ」。
美大に通っていそうな女子の二人組や、お一人様男子数名が当時の客層でした。
建築やアート好きな友人が京都に来たときに、渉成園の日本庭園や建築を巡った後で、昭和の香りが残る周辺の下町を経てこのカフェに連れて行ったら、一体どんな反応をするだろう?そんな妄想をしてしまうのでした。

京丹後市・久美浜の新スポット

1月9

heron 年末年始からの連休はいかがでしたでしょうか。休暇中、日常と離れたお気に入りの場所に、自分の別荘を持っていたら楽しいだろうな。そう感じた人もいるかもしれませんね。
でも、実際に別荘を所有すると、メンテナンスや掃除を定期的にしなければなりませんし、人を招くとなると、おもてなしに追われて自らが寛ぐどころか疲れ果ててしまう事も…。
京都北部の丹後半島の南西端、久美浜湾と栃谷川に面したコテージスタイルのホテル「waterside cottage Heron」(0772-82-0101)は、たった2室だけの別荘の様なプライベート感に、自家農園や地元農家の季節の野菜や旬の魚介が程よいボリュームで提供されるオーベルジュの様な快適さも叶います。
余分な装飾を省いたごくシンプルなインテリアの客室には水辺に張り出したデッキがあり、この地域ならではの舟屋も景色のアクセント。「ウォーターフロントリゾート」というよりも、雪や霰の降る田舎で何にも縛られずにゆっくり過ごしたい人向けです。
3月までは薪釜で茹でたカニが楽しめますが、地元の人からの利用もあるので、食事のみでも予約をしておいた方が良さそうです。
なお、付近には「和久傳の森」もあり、豊かな自然と「ふしぎなえ」で知られる絵本作家・安野光雅氏の絵画を収めた安藤忠雄氏の建築、「れんこん菓子・西湖」を製造する工房(要事前予約)もあります。

仕出しでおうちのおもてなし

12月19

akoya 自宅に来客の予定があり、仕出しを頼む事になりました。いわゆる「ケータリング」ですね。
表千家流のお茶の先生をしている方に評判の良いところを尋ね、松屋町中立売下ルにある「阿古や」(075-441-3988)を利用する事に。
約束の時間に、木箱に入った人数分の弁当箱とお椀が届けられ、板前さんからステンレスのポットに入ったお吸い物のだしと天つゆを受け取り、自宅の鍋に移し替えて返します。
塗りの蓋を開けると、お造りや焼き魚、天ぷら、炊き合わせ等がはんなりと盛り付けられ、まさにお弁当の中に凝縮された京料理のフルコース。
味付けもしっとりと上品で、師走という季節柄、お正月を連想させる具材も入っていました。
これにお吸い物まで付いて3千円とは、申し訳ないほどお手頃価格です。
箸袋に書いてあるお店の所在地を見て、お客様が早速スマートフォンでお店の場所を確認しているあたり、満足頂けたようです。
また、足の不自由な人もいたので、移動の苦労や介添えで互いに気を遣う事も無く、また家という空間で主客共にくつろいで楽しむ事ができました。

2017年12月19日 | お店, グルメ | No Comments »

京都はギャップの連続

12月11

kakimoto
秋はチョコレート、冬に入るとココアが飲みたくなる季節です。
とある秋の日。京都の古い神社をお参りした後、「アッサンブラージュ・カキモト」を初訪問。
京都に続々と出現しているチョコレート専門店の中でも新顔で、小さな店構えながらも絶え間なく人が訪れていましたが、町家を改装した店舗の飲食スペースにはワイングラスが並び、カウンター席にサーブされるところは、まるで夜のバーか割烹を訪れたかのようでした。(ちなみに、近くの紙司柿本」とは無関係だそうです)
上質なカカオビーンズで作られたフォンダンショコラをシルバーウェアで頂き、カカオの豆の香りがふくよかなお茶で身体を温めると、その時間さえも贅沢なものになります。
テイクアウトのケーキも一切れ600円前後と、さすがに良いお値段でした。
お店を出ると、すぐ隣に「鶏卵問屋 中川幸商店」が。積み重ねられた卵の箱が透けて見えるガラス戸の「だし巻き200円」の張り紙に、思わず相方と顔を見合わせ「買って帰る!?」。
我が家で温めて、ほうじ茶と共に頂きました。
こんなギャップの連続が、なんとも京都らしい気がします。

2017年12月11日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

稽古場ご用達の和菓子

11月27

kuriko 京都に長年住んでいても、知らない和菓子屋さんはまだまだたくさんあるもので、今回は紅葉の名所である東福寺や泉涌寺に程近い、「京菓子処 末廣屋」をご紹介します。

昔から神社の門前には、参拝客の一服に重宝されてきた「お饅やさん」がつきものですが、ここのお菓子は、泉涌寺の塔頭での煎茶道教室で使われていると聞いたのが出逢いのきっかけでした。
きめ細やかに裏漉しされたほくほくの、密度の濃い栗の餡が、羊羹のベールを纏っている、秋ならではの味覚。
ここに芥子粒の袴でも穿かせようもんなら一気にカジュアルな栗菓子になるところですが、そうしないで一見松露に似た風情を醸しているのが京都の菓子舗らしい。
でも名前は「くりこ」。なんとも気負いの無い、可愛らしい響きに拍子抜けしました。

ケーキもクッキーも大好きだけど、なんだか身体が和菓子を欲している時ってありませんか?
改まった茶席の主菓子では高価過ぎて勿体無いし、スーパーやコンビニの定量生産系和菓子だと物足りないと感じるとき、「お茶の稽古場ご用達」な和菓子屋さんが、そんな気分を満たしてくれる気がします。

2017年11月27日 | お店, グルメ | No Comments »

京都のロシア、京都のラオス

10月31

yulala 京都を何度も訪れている人にとって、京料理やおばんざいは今更…という人もいるかもしれませんね。ならば、ロシア料理やラオス料理という選択はいかがでしょうか。
前者は、京都府立植物園の向かい、北山大橋東詰にある「カフェ ヨージク」。
「ロシアランチ」の他、ビーフストロガノフ等お馴染みのロシア料理があり、ビーツや野菜の旨みが優しく溶け込んだボルシチや手作りのベリージャムを添えたロシアンティーのロマンチックな赤は、日本食とはまた異なる華やかさがあり、マトリョーシカ柄の雑貨もカラフルで元気をもらえそう。
香ばしく揚げられた、挽肉、きのこ、りんごの3種の味のピロシキは、持ち帰りもできます。定期的にイベントも開催されているそうで、ひと時の異文化体験をしたい人はぜひ。
後者は、柳馬場仏光寺を下がった職人さん達の町の中にある「ユララ」。
「ラオス料理って、一体どんなん!?」と思う人も多いでしょうが、どことなく言葉もメニューも、タイ料理に似たところがあり、想像していたよりも繊細な印象でした。
素材の持ち味を活かし、日本で言うところの「たまり醤油」に似た魚醤で味を付け、もち米と共に頂いたり、海の無い内陸の国なので魚を発酵させて長持ちさせる等の工夫がなされているのは、都人の知恵が食文化に現れている京都にも通じる部分があります。
また、京都市動物園では「ゾウの繁殖プロジェクト」に基づく人材交流事業としてラオスからやって来たゾウがおり、映画『ラオス竜の奇跡』も上映中とあって、意外と京都との共通点があったのですね。
京都で体験する異文化、まずは「食」から。

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