e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

樂美術館『定本 樂歴代』

7月8

raku 京を代表する陶芸師・樂吉左衛門家の歴代の作風が知りたくて、樂美術館を訪れました。
樂歴代」との表題通り、展示は初代の長次郎から始まるものと思っていたら、最初に出迎えてくれたのは、田中宗慶という人物の茶碗でした。
田中宗慶は初代・長次郎の妻の祖父とされ、樂家にとっては「家祖」という位置付けになっていました。因みに長次郎の父・元祖「阿米也(あめや)」は中国・福建省から渡来したとされる陶工で、楽吉左衛門家の2代目を嗣いだのは長次郎の子ではなく、田中宗慶の次男・常慶です。
あえてまずは茶碗を眺めて観たままに感じ、それから解説、銘を見るようにして、歴代の楽焼を観覧してみます。
初代の特徴を踏まえながら、時代の流れを汲んだ作風を表したり、逆にまったく反対の価値観を編み出してみたり、それぞれに創意工夫や葛藤が滲み出ているようです。
450年の歴史を追いながら、そして当15代まで辿り着いても…長次郎の作品が見当たらない!と思ったら、別の部屋に銘「面影」が佇んでいました。その姿はまるで土からそのまま出てきたかの様な、他の歴代茶碗とも違う存在感を放っていました。
轆轤を使わず「手捏ね(てづくね)」によって成形されるため、代々の当主はその手から伝わる感触で歴代の息遣いを感じてきた事でしょう。
「聚楽焼」から始まった樂焼は、現在でもなお「今焼」であり続けているのですね。
本展覧会では、樂家と互いに影響を受け合った本阿弥光悦の作品の他、樂家妻女の作ではないかと言われる尼焼、三代・道入の弟で堺にて樂茶碗を焼いたとされる道樂、四代・一入の庶子で玉水焼を開いた(現在は閉窯)一元という人物達の存在にも注目です。

2014年7月08日 | 芸能・アート

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