e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

自分へのご褒美

3月19

himie 京都新聞社の裏辺りを友人とぶらぶらしているとき、印象的な暖簾が気になって友人を引き留め、立ち寄ったお店が「himie kyoto(ヒーミー京都)」でした。
一澤帆布特注製の、手の形をしたユニークな暖簾に描かれた指輪と、小さな窓に近寄って初めてジュエリーショップであることが分かるほどのシンプルな佇まい。

落ち着いた内装と気軽には買えないお値段に、そのときは一順して去るしかなかったのですが、やっぱり気になって後日一人で再訪。
ネットショッピングもチェックしましたが、やっぱり実物の質感を知りたいですよね。

作品全体を眺めても、アンティークのような金属の硬派質感と繊細な手仕事が感じられ、「静かなる主張」というテーマが貫かれているのが分かります。
例えばスプーン型のネックレスで言えば、お砂糖をイメージした先端の0.03ctのダイヤが微かに揺れる仕様になっているなど、精巧で丁寧な物作り。
ジュエリーデザイナー・下川宏道氏が、もとは歯科技工士だったというのも納得しました。

店内にあるものを幾つか実際に見比べてみて候補を決め、先日ようやく購入に至りました。
2022年に開店した京都店は、3軒程続く町家の一部を改装したものだそうで、2階はイベント等で使われるスペースだそうです。
スタッフの方々もふんわりとした雰囲気なので、ご安心を。

これは「これまでの自分」と「これからの自分」への贈り物。
受け取りは郵送ではなく、やはり来店することしました。1か月後が楽しみです。

2025年3月19日 | お店, 町家 | No Comments »

梅小路の桜と肴

3月11

umekouji今年の梅の開花はのんびりペース?
京都市内ではようやく咲き始めました。

梅小路公園南東の梅林『梅こみち』へ。
ちょうど「梅だより」に「見頃」と出ていたためです。

「梅」の名を冠する「梅小路」という名称は平安時代から。
平安京造営時に設けられた小路の通り名だったようです。
京都水族館から見て芝生の彼方に紅白の花が連なるのが見え、その数は14品種・約150本だとか。

それぞれの木に名札が下げられ、それらの枝ぶりや色み、大きさ等と交互に見比べるのが楽しい。
「緋の司」は足を止める程に鮮やかな紅で、「白加賀」は加賀友禅のように清楚。「月影」は白から黄みがかり、「鹿児島紅」は花も幹も濃く一本でもどっしりとした存在感がありました。
線路沿いの南側梅林まで行けば、行き交う列車と梅の競演ショットが撮れるなど、早咲きから遅咲きまで楽しめるそうです。

梅小路公園内には飲食店も多く座れる場所もあって食べるのに困りませんが、せっかくなら梅小路公園周辺の地元のお店も利用してみたいところ。
「梅小路京都西」駅から西へ行ってすぐのところにある「魚問屋ととや 梅小路」は18年も営業されているお造り定食のお店。
からし醤油に漬けて頂く「まぐろカツ定食」は、厚みがあって、きめ細かい衣は揚げたてのさくさくでした。
イートインの手前にはパックに入った魚の切り身やアラ、昆布〆寿司に出し巻が並び、お花見のお供にテイクアウトできそうですよ。

おひなさまの扇の秘密

3月6

hina 「お雛さんいつまでも飾ってたら、嫁に行き遅れるえ」というのは、あくまでもしつけの話。
京都のひなまつりは、旧暦に沿って4月3日頃まで人形を飾っているところが多数あります。

おひなさまの女雛の手元を見ると、現在のような紙の扇子ではなく、檜の板を重ね合わせた「檜扇」であることに気が付きます。
これは扇子以前の古い扇の姿で、宮中で使われていたものだから。
男雛も同じく木の板の「笏(しゃく)」を持っています。
いずれも木簡(もっかん)が原型とされており、紙がまだ貴重だった時代に大事なことを書き記しておくメモ帳のような役割を果たしていたのです。

日本において扇はあおぐ他にも、置いて結界を示したり、儀式用として開くことの無い「末広」や、投げ落ちた形で点数を競う「投扇興」といった遊びが生まれました。
一方で西欧では「扇子ことば」といって、扇を使った艶っぽい恋愛コミュニケーションがあったそうですよ。

似て非なるそれぞれの展開の違いが面白いですね。

「投げ入れ」でお花を自由に楽しむ

2月26

hana 「生け花」「華道」という言葉はよく聞くけれど、「投げ入れ」「投げ込み」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
「花は野のあるように」自然のままの姿を保つように生ける、比較的自由度のあるスタイルのことで、茶室の床の間に飾ってあるような「お茶花」を想像してみてください。

創意工夫に溢れる「華道の生け花」も、華やかな「フラワーアレンジメント」も洋花の香りが漂ってきたりして好きですが、「投げ入れ」の繊細な和花の緊張感と自由度のバランスが好みです。

時おり体験している程度なので素人の自己満足画像を載せるのもお見苦しいばかりですが、幾つか投げ入れのポイントをご紹介します。

花器の真正面から花を眺める人に対して、向かっていくように入れる。
(真横から見ると、前方へ傾斜している)
花の茎を切るときは水中で切って「水揚げ」する。
花器から見えるそれぞれの茎は、根元が1本に見えるようにまとめる。
基本的には、葉の数は上から奇数になるように。
籠の花入れ(カジュアル)を使う時期は6~8月。最大10月くらいまで。その際の花数は7種類まで。、
入れ終わったら、全体に水を打って瑞々しく。花器の淵ぎりぎりまで水を満たしておく。

お花の手習いで嬉しいのは、指先から命を感じてパワーがもらえること。
そして家に持ち帰って飾れるところ。
玄関やリビング、洗面所にもお花があるとっていい。
生きてるものを飾るって、やっぱりインテリアとは違いますね。

小学生の頃、ピアノの先生の家の玄関の上にいつもきれいな季節のお花が生きられていて、なんとなく嬉しかったことを大人になってもずっと覚えています。
もうすくひな祭り。お雛さんの傍らに、雛あられと春のお花もお供えしてみませんか。

2025年2月26日 | 芸能・アート | No Comments »

和のスパイシーなウェルカムドリンク

2月18

kousen 「香煎」という飲み物をご存じでしょうか。
香煎とは、お湯に浮かべて香りを楽しむ飲み物で、初めて飲んだのはお茶事の待合で始めて飲んだのはカフェでした。
会場に到着し、身支度を整え待合に腰掛けた頃合いを見計らって出されます。本番前の一息つくひと時。
他にも、料亭や旅館、ホテルのウェルカムドリンクのように、あるいは甘味に添えられることも。

淹れ方は、香りを飛ばさないよう熱湯は使わず、かき混ぜずに湯に放ち、香煎が器の縁につかない程の量が見た目にも美しいのだそうです。

御香煎」は原了郭の登録商標だそうで、ういきょうや陳皮、山椒といった漢方の原料を数種類合わせて香ばしく煎り、粉末状にして赤穂の焼き塩で味付けしてあります。
その調合は一子相伝の秘伝なので製法や原料は明かさず、全ての材料を開示しなくてはいけなルールを設定している百貨店のオンラインショップでは扱えないのだとか。

以前にも蘭の花が入った香煎に感動したのですが、そちらの方はもう生産されていないという事で残念ですが、同じ塩気のある飲み物でも昆布茶とは全く異なり穏やかな和のスパイスを感じる逸品です。
天然木の箱を指先でとんとんと叩いて入れる動作も、ちょっとした演出になりそう。

人によって砂糖やミルクを入れる紅茶や珈琲よりはヘルシーで、お茶よりも主張が少ない繊細な味わいの飲み物です。
三寒四温の折、凍るような風から逃げるように屋内に入ったときにこんな香煎が出されたら、ほっと心身がほぐれて、ほんのり春の訪れも感じられそうな気がします。

2025年2月18日 | お店, グルメ | No Comments »

漢字ミュージアム再訪

2月11

kanji子供のリクエストで、「漢検漢字博物館・図書館(漢字ミュージアム)」を再訪。

漢字検定で前の級の試験を終えたその日のうちに次の級のテキストをせがみ、市販のドリルも嬉々として解いていた我が子ですが、それも最初のうち。最近では腰が重くなっていました。
本人の目当てはショップの漢字グッズでしたが、少しでも次の級へのモチベーションアップに繋がれば。

祇園界隈では、話題になっていた積雪は跡形もなく、前回よりも人の入りが増えていて、英語圏の外国人の姿も。
入館してすぐ、まるでノルマのようにせっせと万葉仮名スタンプで自分の名前を押しまくり、2階で  は問題を解いては採点していました。
まだひらがなも読めない娘も、あちこちタッチする仕掛けが楽しいようです。

毎年年末に清水寺で揮毫される歴代の『今年の漢字』を一挙に並べた企画展『今年の漢字展』。
今回の『金』は5度目の選出で、清水寺の貫主は毎度字体を変えているのだとか。
昨年開催のパリ五輪にちなんで、ルネサンス時代のフランスで作られていた額に模した額縁に収まっています。

2度目だから前回より短い滞在になるかと思いきや、結局同じくらいの1.5時間楽しみました。
『今年の漢字』を一挙に並べた企画展『今年の漢字展』は5月6日(火・祝)まで会期が延長されたので、まだまだ間に合います。
アイロンビーズで作るドット漢字などのワークショップ等も開催されているので、来訪の際は日程をチェックしてみてくださいね。

「生きた遺産」として守る道

2月4
teikoku

帝国ホテル京都(本棟)外観イメージ。※右側の建物は歌舞練場玄関部分。提供:帝国ホテル

祇園甲部歌舞練場に隣接した国の登録有形文化財の弥栄会館が26年春、「帝国ホテル 京都」として開業します。

「劇場建築の名手」と呼ばれた大林組の木村得三郎が手がけた弥栄会館は、90年近くの年月を経て建物の老朽化や耐震性の問題から劇場を含む大部分が使用されなくなっており、公的な補助だけでは維持が成り立たない状況だったといいます。

更地にして建て直すのは簡単ですが、景観継承の観点から南と西の外壁・躯体を残して改修・増築をし、「リビングヘリテージ(生きた遺産)」として新ホテルに生まれ変わるという、これまでにない挑戦が始まりました。

弥栄会館を囲う養生のすぐ外側には芸舞妓が夜遅くまで働くお茶屋、朝は眠る生活の場としての置屋があります。

方々のお茶屋を事前に訪ね回り、早朝の花見小路を100台ものダンプトラックがそろそろと徐行しながら現場に入りました。

屋上の社は八坂神社の修繕をする宮大工が行い、劣化した銅板屋根は銅板で忠実に再現、時間経過とともに工事前の屋根色になることを想定しています。

5ヶ月かけて約2万枚生け取りしたタイルは、裏のモルタルを剥がし表面を磨く等、一枚20~30分程かけて再利用。

建物の内側から解体作業を進めるため、土砂を2階部分まで積み上げてかさ上げし、重機一台で複雑な鉄筋を残しながら慎重に壁を剥がしていきました。

昨年『解体キングダム』というテレビ番組で弥栄会館の解体現場を紹介していましたが、それによると、弥栄会館の壁面を装飾していた宝相華がモチーフの「テラコッタタイル」という陶板は、旧帝国ホテルに使用されていたものと同じ常滑の工房で焼かれた可能性が高いという事が判明しました。

歌舞練場の耐震補強工事も同時進行される中、工事の責任者は安全祈願のために毎月八坂神社に出向いて手を合わせ、現在の進捗状況は約7割といい、予定通りとか。

「外側からでは進んでんのか分からへん」くらいの目立たなさで進むのが工事作業の理想だといいます。

開業までに花見小路を通りかかったら、400年の花街・祇園の人々と協力して守られる祇園のシンボルを、外から見上げてみたいと思います。

(画像:帝国ホテル京都(本棟)外観イメージ。※右側の建物は歌舞練場玄関部分。提供:帝国ホテル)

節分の日は何をする?

1月27

setubun 今年の節分は2月2日なので要注意です。
恵方巻に豆撒き、鬼踊り以外でも、京都の節分行事は多岐にわたります。

狂言や雅楽、舞楽を行い、弓矢で邪気を祓うところもたくさんありますが、六波羅密寺では六斎念仏の奉納をします。
千本えんま堂では「厄除けのこんにゃく炊き」、法輪寺では「だるま説法」、天龍寺山内では七福神を巡り、日向大神宮では天の岩戸を通り抜けます。
誓願寺では「大般若転読会」を、平安神宮や鞍馬寺では宮中儀式を再現します。
須賀神社の縁結びの文は効力あり(個人の感想です)。
五条天神社では、日本最古といわれる木版の宝船図が、節分の日に有料で授与されます。

昨年の節目で終了したと聞いていた「ひょっとこ踊り」は、どうやら今年も行われるようです。
花街練り歩きに繰り出すひょっとこ達について行けば、祇園の「おばけ」にも遭遇できるかもしれません。

改めて羅列すると、実にバラエティに富んでいますね。
せっかくの日曜日、春の先取りに節分行事を楽しんでみませんか?

東本願寺の隠れた名所

1月22

miya初弘法をぶらっと歩き、境内のおでんの屋台で腹ごしらえした後、シェアサイクルに乗って東本願寺へ。
「京の冬の旅」キャンペーンで東本願寺の宮御殿と桜下亭(ともに重文)が特別公開されています。

京都駅から徒歩約7分という立地でありながら「オーバーツーリズム」という言葉を感じさせないほど静かで広大な境内です。
ギャラリーに入り、奥の宮御殿へ。
赤い畳縁が珍しく、襖には宮中の行事を描いた大和絵が飾られています。
嵯峨野で鳴き声の良い鈴虫や松虫を籠に入れて楽しむ「撰虫(むしえらび)」や、初子の日に若松の根を引いて占い、若菜を摘む「子日遊(ねのひのあそび)」は初めて知りました。
傾斜した築山と池の水は、実は防火のため。今でこそ水を汲んで張っていますが、かつては琵琶湖とこの地との高低差を活かして引き込んでいたのだとか。
「用と美」を兼ね備えた池泉式庭園です。

撮影できるのはここまで、「桜下亭」へ進みます。
洗練された意匠の建物。大地震から逃れて東本願寺に保護された円山応挙の襖絵「稚松(わかまつ)図」「壮竹図」「老梅図」が三室に配され、それぞれがまるで人生のステージのようです。
隠居した門主がすごした部屋は、浄土真宗における阿弥陀如来の広大な救済を記した「本願海」の軸が床の間に下がり、随所に貼られた金箔は、経年による味わいの変化も見られます。
作者は不明ですが、亭内には犬やうさぎの姿も。
数寄屋風の意匠で、機織りの筬を模した欄間はかなりモダン。釘隠しは部屋の内外で異なり、梅の花弁をがくの側から表現するなど、いずれも他では見たことの無いデザインでした。

これらの建物が公開されるのは、「京の冬の旅」において42年ぶりといいます。
何度も前を通るので知ったつもりになっていた東本願寺でしたが、まだまだ知らない部屋が隠されていたのですね。
なお、京の冬の旅期間中の毎週金曜・土曜日はインターネットからの完全事前予約制で、「僧侶がご案内する特別拝観」も利用できます。

正月の趣向あれこれ

1月14

hanabiraお茶の初稽古に行ってきました。
慌ただしく始まった日常の世界から、釜の湯気が立ち昇る非日常の世界へ。

朱に蒔絵のおめでたい盃で、みんなでお屠蘇をいただきました。
重ねてある盃は一番下から取り、重ねたままの残りの盃を次の人に回します。
「悪鬼を『屠』り、死者を『蘇』らせる」という意味の生薬をお酒やみりんに入れて厄払い。

掛け軸には、それぞれ鼓と扇子を手にした男が楽しげに舞っていました。
新年に烏帽子姿で家の前に立ち、祝いの言葉を述べながら鼓を打つ者を「万歳」と呼び、これが漫才の由来とも言われているとか。
だからお正月に漫才の特番をやってるのか!!

結び柳は命の循環を現すそうです。
来年も再び健やかに集えるように願って、床の間に長く垂らすことが喜ばれます。
「いつも通り」でいられることの有り難さを、この数年は特に感じますね。

二條駿河屋の花びら餅はとってもやわらかくて、うっかり取り箸の跡が付いてしまうほど。
「茶席でいただく宮中のお雑煮」ですね。
菓子器もお正月の趣向で、独楽のような渦巻模様でした。

まもなく小正月ですね。
日本には気持ちを新たにリセットする風習がいっぱい。
この日の行事食べ物も参考にしてみてくださいね。

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