e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

紅茶色に染まる嵐山

11月22

chava
嵐山での紅葉狩りは紅茶好きの友人と一緒だったので、「CHAVATY kyoto arashiyama」に立ち寄りました。
東京・表参道では1時間以上の行列となっているティーラテ専門店だそうですが、ランチタイムでもタイミング良く入店できました。
お店の内装も、紅茶の水色が綺麗に映えるガラス瓶も、ステンレスのソーサー等のカトラリーもセンスがよく、阪急嵐山駅や渡月橋にも近い中ノ島地区という絶好の立地なので、人気の程が伺えます。

まるで高級ホテルの朝食の様なランチプレートもに色鮮やかで美味しく、ガラスのティーカップの中で、光を受けて輝く透き通った紅黄色がこの茶葉の品質の良さを表していて、砂糖もミルクも加えず眺めていたくなりました。
しっとりとしたスコーンには、塩ホイップバターやハニーナッツ等の小瓶入りのコンフィチュールが4つも添えられ、自宅では味わえない欲張り感が満たされます。
ミルクティーが大好きなので、ボトル入りのティーラテも注文したかったのですが、さすがに満腹で次回のお楽しみとしました。

ひと昔前の嵐山といえば、芸能人グッズや和雑貨のお店ばかりでした。
必ずしも京都発という訳ではありませんが、最近は専門店化が進んでいるような気がします。

珈琲店に引き続き、京都にも紅茶専門店が増えていくのでしょうか。

迷わないため「心を整える」

11月17

tendoku
宇治・興聖寺の夜間拝観が始まりました。
駅や塔の島周辺からへの道中は街灯が少なくびっくりする程真っ暗で、昼間に平等院や商店街にいた沢山の人々はどこいってしまったのかと思うほど人の気配がありませんでした。
ここの夜間拝観を知らない人はまだ多いのかもしれません。

ライトアップされた琴坂を歩くのは初めてでしたが、14日の時点ではまだまだ青紅葉。
「仕方無いよね」と思いつつ、坂の両脇を流れる水の音に耳を澄ませながら、しんと冷えた空気の中を一人きりで歩くのは稀有なひと時でした。
敷居を跨いですぐに出迎えてくれる開梛は、長年打たれ続けて腹がえぐれていますが、その跡さえも美しい。
ここの大きな庫裏に足を踏み入れたのも初めてだったのですが、おくどさんから静かに湯気が立ちのぼっていました。

夜の6時からと7時からは大般若祈祷法要が行われ、自由に参列できます(詳しい日程は特設サイトをご参照ください)。
全部で600巻あるという膨大な『大般若経』を、まるでアコーディオンの様にパラパラと秒速でめくりながら「転読」する様を、計ずしも間近で見せて頂きました。
法要が終わると、にわかに僧侶の方が本尊や仏画の説明をして下さり、普賢菩薩が乗る象はあらゆる困難をなぎ倒してくれる心強い存在であること、文殊菩薩が乗る獅子は百獣の王で、
その一吠えであらゆる動物が畏れるように、仏法の力で人々の迷いを打ち消し救い上げるために修行で「心を整える」という事を教えて頂きました。

写真家・田口葉子氏による修行生活の写真も境内のあちこちに展示されています。
紅葉時期の寺院を訪れると、つい葉の色付きや写り映えに気を取られてしまうのですが、ここが修業の場である事を改めて実感できます。

ウェブサイトの画像の紅葉が赤く色づくタイミングを計らって訪れものもよし。
まだ人の少ないうちにゆっくり伽藍を巡るもよし。
興聖寺の料理番・村田副典座の指導による料理教室もあるそうです。

アーティストの遊び心

11月8

yu

木の端が染まり始めた嵐山へ。
中之島の砂利を踏みしめた瞬間、眼前にパッチワークの様な紅葉の嵐山と青空が広がる景色はいつ来ても壮観で、気持ちまで晴れ渡ります。

ゆったりと船が行き交うのどかな桂川を西に進み先の石段を登ると、「嵐山 祐斎亭」に辿り着きます。
元は料理旅館だった150年明治期の建造物を、染色作家の奥田祐斎さんが染色アートギャラリーとして予約制で一般開放しています。
文豪・川端康成が「山の音」を執筆したとされる部屋で、お薄とお菓子を頂くことができるほか、錦秋を切り取るモダンな丸窓の部屋はインスタグラム上でも話題に。

祐斎さんは、天皇の第一礼服である黄櫨染を広隆寺にて調査・研究し、再現に成功され、そこから独自の染色技法「夢こうろ染」を創出されています。
不動明王の後ろに燃え盛る炎(漫画『北斗の拳』の作者・原哲夫氏とのコラボレーション)や、前に据えた水指に流れ落ちるような滝を描いたタペストリーなど、巧みな刷毛遣いで対象のオーラを写し取るような作風です。

最近新設されたという「水鏡」がナイスアイデア。
写真家のアドバイスを受けて色とりどりの木々の前に水盤を置き、アトリエのものと思われる筆やスポイトで自由に水面に模様を描きながら、写り込む景色を楽しめるようになっているのです。

景色が「映える」だけでなく、アーティストならではの遊び心や、各所に置かれた膝掛けなど、一見の客でも気張らず楽しめるよう小さなおもてなしが随所に感じられる心地よい空間でした。
ずっと前からここの存在を知っていたのに、なぜ今まで来なかったんだろうと思わずにはいられません。

「THE 京都の観光地」の印象が強い土地ですが、かつては宇治と並んで「平安貴族の別荘地」だったことを思い出させてくれました。

賑わいが戻りつつあります。
行くなら、今。

京の底冷えに備えて

11月2

SILK DE KYOTO  
家の中では靴やブーツから解放され年中裸足でいたい自分でも、秋冬はさすがに足が冷えます。
とはいえ、靴下に足全体がすっぽり包まれると、時に暑くて脱いでしまうことも。そうなれば温活どころではありません。

たまたま和文化インフルエンサー・福満香織さんのインスタグラムを遡って見ていると、「SILK DE KYOTO」というブランドの靴下を発見。
早速ネット検索をして、レッグウォーマーが無いか探しました。
その昔、鍼灸師に「熱がこもりやすい人は、靴下よりレッグウォーマーの方が、余分な熱を放出してくれるからいい」と聞いていたからです。

「京都西陣の絹糸商が選んだつむぎシルク(絹紬糸)を使用」との謳い文句に俄然興味が湧きました。我ながら単純ですね。
外側はシルク100%、肌に触れる面はコットン100%ということは、化繊の肌着を着ると何だか落ち着かなくなる体質で綿ばかり選んできた自分にはうってつけです。
ふわふわとボリュームがあるものと、薄手でボトム下にも履けそうなものとを購入して現在愛用中です。
滑らかな肌触りがよく、鍋を食べて汗ばんだとき以外は布団の中でも暑くて脱ぐということはありませんでした。
かかとやふくらはぎは、つるつるとはまだいきませんが、いつもより保湿されている感覚はあるかな?

紅葉の美しい季節の到来は、「京の底冷え」の厳しさを足元から身をもって実感できることを意味します。
同じ敏感体質で、最近ふくらはぎの冷えに困っている父親にも「シルク肌着デビュー」としてプレゼントしようかな。

2021年11月02日 | お店, 和雑貨 | No Comments »

リモートで近づく和の文化

10月26

zoom

和の文化を日々の暮らしに取り入れる活動をしているNPO百千鳥が主催のオンラインイベント「おうちで出会う煎茶道」に参加しました。
自分で煎茶道のお点前にチャレンジするのは初めて。しかもオンラインです。

ネットで申し込みを済ませると、事前に煎茶セットが入った小さな小包が届きました。
茶葉の入った缶や干菓子等のほか、丈夫な繊維でできた紙のコップと、それに合わせて誂えられた木製の蓋が付いていました。
急須代わりとはいえ、水洗いすると南天の木の良い香りが漂います。
泉涌寺の塔頭・悲田院の青竹を切り出して作ったという竹茶碗なんて、後からお酒を入れて楽しめそうです。

当日、ウェブ会議サービス「Zoom」によって自宅と悲田院がLIVE中継で繋がれ、各地からの参加者が続々と画面に表示されていきました。
それぞれおうちのダイニングで、リビングで、お子さんを膝に載せて、あるいは男性の姿もあり、中には和服に身を包みお子さんと正座で開始に備えている人も。

東仙流のお家元が「自由に楽しめるように」と考案されたシンプルなお点前を見よう見まねで手順を進めます。
画面越しだけど直々に、なんてリモートならではの感覚です。

初めての煎茶点前で淹れた煎茶で喉を潤しつつ、紅斑竹の結界に倣汝窯の茶入れなど、この催しのためのしつらいを会記を傍らに眺めながら、質問があればチャット機能で尋ねます。

煎茶道にいつも登場する素焼きの湯沸かしが「ボーフラ」という奇妙な名前なのですが、ポルトガル語「かぼちゃ」が由来であると初めて知りました。
抹茶の茶道と比べると、煎茶道で飾られる花は大振りです。大地の木の勢いを大切にしてるからだそうです。
掛け軸の書は、詩仙堂で知られる石川丈山によるものでした。煎茶道の祖と言えば売茶翁ですが、丈山も一時そう呼ばれていた事もあったのだとか。
まさに自宅にいながら、今ここが「山居遊勝」の場となりました。

「本物」に迫れる時代祭

10月19

heian  
今年の時代祭(22日)も居祭となりましたが、時代行列の衣装や祭具、御鳳輦が平安神宮に特別公開されています。
本殿前には御鳳輦と、天皇が降りた際に姿を隠すために使われる錦蓋や菅蓋、その上にかざす精巧な鳳凰が公開されています。
額殿においては甲冑はもちろんのこと、巴御前や吉野太夫に和宮など様々な女性の装束の一部が美しい刺繍を輝かせていました。

従来の時代祭で京都御苑に設置される有料観覧席では、周りに近代建築が写り込むことなく時代絵巻の世界に浸れますが、衣装や籠などをこれだけ間近に観られる機会はなかなかありません。
この特別公開を逃したら、次のチャンスは、例年通りの時代祭が斎行される際の当日の朝に行列出発に先立って行われる行在所祭の前後を狙うしか無いかもしれません。

話は少し逸れますが、直後にたまたま観たテレビ番組に、きゃりーぱみゅぱみゅさんが出演されており「美輪明宏さんに出雲阿国の生まれ変わりだと思う。と言われた事がある」と話されていました。
出雲阿国は「歌舞伎の祖」とされる女性芸能者で、着物の上に十字架のネックレスをかけ派手な衣装で踊る姿が描かれていたりします。
まさに平安神宮に展示されていた衣装そのものでした。
時代祭の雅やかな時代行列は、1万2000点にも及ぶ調度、衣裳、祭具に至るまで時代考証をされているので、最も本物に近いと思ってもいいでしょう。
それぞれの時代の潮流に翻弄されながら駆け抜けていった人々の歴史を改めて振り返りながら、令和の時代祭を待ちたいですね。

特別公開は24日まで。時代祭当日の22日には、神苑が無料公開されます。

老舗と芸術家の共鳴

10月13

kagi  
敬愛する画家(絵師?)山口晃さんの個展「山口晃-ちこちこ小間ごと-」を目当てに「ZENBI -鍵善良房- KAGIZEN ART MUSEUM」へ。

初めて山口晃氏の作品を目にしたのは、東京で開業したばかりだった六本木ヒルズで販売されていたポストカードでした。
東京と江戸が入り混じる緻密な描写の近代建築が、まるで大和絵のように描かれており、しかも画材は日本画の岩絵の具でもなく油彩なのでした。
帰京してすぐ購入した画集には拡大して観られるようルーペまでついているほど。

ここ最近では親鸞や伊藤若冲、冷泉家など歴史上の人物の生涯を描く仕事が多いようですが、その字と絵の達筆さに見え隠れするユーモアもさることながら、その原画の小ささに思わず目を丸くし、腰を屈めて覗き込んでしまいました。
この展覧会では、撮影もSNSへの投稿も可能です。

菓子匠・鍵善良房といえば十二代当主と親交の深い、木漆工芸の人間国・黒田辰秋の作品を山口氏の感性で展示した一角もあります。
個人的に大好きな作品で鍵善良房の手提げ袋に採用されている『好きなカフェー』も立体作品になって朱漆の振り出しと並んでいました。
理屈抜きで楽しめて、老舗と芸術家とが共鳴し合う京都の奥深い一面を考えさせられる展覧会でした。

ミュージアムショップ「Zplus」では、山口氏のアイデアスケッチをもとに鍵善良房が誂えた特製和菓子も。
また一冊、我が家に画集が増えました。

和菓子で摘む秋の七草と日本茶のアフタヌーンティー

10月5

camellia  
去年の緊急事態宣言中、門を閉ざした龍安寺から南に延びる道を歩いていると、立派なお屋敷に足が止まりました。
その時は「茶道体験カメリアガーデン」という表札だけ頭に記憶。
それから一年が経ち、偶然友人からのお誘いで初めて訪問することに。

「秋の和菓子と日本茶を楽しむアフタヌーンティー」として、日本茶4種と淹れ方の講座にペアリングとして合う和菓子の数々(秋の七草にちなむ)に、お点前で頂くお薄と特製の和菓子という贅沢な趣向です。
ここ最近はホテル等で和のアフタヌーンティーを見かけるようになりましたが、和菓子に特化したものは珍しい。
まずは茶そばで虫養いしつつ、六角ちきりや茶舗亭主が複数の急須で同時にお茶を淹れる姿に見入ります。
まったりとした玉露にはナッツ入りのお菓子、また香ばしいほうじ茶には柑橘のお菓子が合ったり、貴重な碾茶は玉露風に時間を長めにして淹れて飲む、とかに日本茶の楽しみ方について新しい発見が幾つもありました。
昨年オープンした「菓子屋のなさん」には伝統的な主菓子と、老舗の老松さんには新しい発想の和菓子を誂えるなど、遊び心がユニークだけと奇抜さは無く、ボリュームもいい塩梅です。

最初は緊張して堅かったお客同士も、茶会の間の会話も撮影も自由だったせいか、互いの好きな画像を見せ合ったり、分からないことをスマートフォンで調べて共有したりしているうちに「一座建立」の極みに達していたような…。
それぞれマニアック気質な人が多かったので、茶会の後も外でも話が尽きませんでした。
今後の催しの詳細は、公式SNSをご覧くださいね。

茶を味わい尽くす家

9月28


kouro
  

お彼岸の頃、お墓参りを済ませて大徳寺を出た門前にある「皐盧庵茶舗」さんに立ち寄りました。
子連れでも可能か恐る恐る敷居をまたぎましたが、2つの茶室を含め部屋が5つもあるようで、他のお客さんが続いてもそれぞれ個室のようにすごせました。

やはりここは宇治茶カフェ。メニューにある各お茶の味の特徴がチャートにしてあって選びやすく、飲み比べメニューも豊富です。
既によく湧いていた鉄瓶のお湯で淹れてもらえるのが嬉しい。
目の前で玉露や煎茶などを、缶から茶葉をすくい出すところから見せてもらえるので、自分で淹れるときの参考になります。
お店の外にも床几があったので、秋晴れの日は外でお茶するのも気持いいでしょうね。

お膳の上に、畑作りからこだわったお茶と、干菓子と主菓子、そしてほうじ茶が香ばしいかき氷が同居する贅沢。
幼い子供達はお茶周りにハイエナのごとく食らいつくので、粗相しないよう抑えるのに必死でした。

帰り際に「月白風清」という禅語の色紙を拝見。
「やっぱり今度は一人でゆっくりお茶を味わいに来よう…。」と思うのでした。

2021年9月28日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

知る人ぞ知る鷹峯の市場

9月22

taka

京都に長年住んでいる人でも知らないことはまだまだあります。
「鷹峯メルカート」という市を初めて知りました。
「ほんまにこの道で合ってるんか?」と家人に言われながら車一台通るのがやっとの山道を越えると、空が開けて京都市街を見下ろす広場に出ました。
台風一過の後だったためか、出店はいつもの半分程のようでしたが、氷室の新米や鷹峯の野菜、すぐそばで産んだばかりの有精卵、トリュフオイルやレザー用品が並んでいました。

秋の青空とそよ風を全身に感じながら、チキンクリームコロッケや自家製の野趣あふれるジェノベーゼパスタに絡まるカトラリーの音の気持ちの良いこと。
今の季節が最もおすすめかもしれません。
半分は持ち帰りにしようと思っていたローストチキンは、見事に家族に食い尽くされました。

ここではなんと、2頭の馬が飼われている馬場があり、有料で馬に乗せてもらえます。
穏やかな馬の背にまたがった子供達は大喜び。

帰り際に、「ネットで調べても、連絡先が見つからなくて…」とお店の電話番号を尋ねようと思ったら、
「大雨でもない限りは毎週日曜にやってますわ」とのこと。
行き先はGoogleマップで「鷹峯メルカート」と検索すると出て来ます。
客層は年齢層高めで、常連さんの様子。知る人ぞ知る市場なんですね。
「鷹峯メルカート」は、2021年12月12日まで。
taka2

2021年9月22日 | お店, グルメ | No Comments »
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