e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

空間で完成するアート

5月8

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KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」巡りの続きです。
このイベントの楽しみの一つが、寺社でもギャラリーでも無い、意外な場所が会場になっているところ。むしろ、その空間に足を踏み入れたくて写真展を観に行くような時も。
ギデオン・メンデルが洪水災害に見舞われた人々を写した「Drowning World」という作品の展示会場には、京都市中央市場そばの旧貯氷庫が選ばれ、その上階の旧氷工場には、アルベルト・ガリシア・アリックスが撮った、アンダーグラウンドな人々のポートレートが掲げられました。
一寸先が闇となってしまった人々の曇った表情、それら被写体が浸る暗い水。
もう氷が作られなくなった工場に一歩足を踏み入れた時の薄暗さとリンクして、地球温暖化の脅威がすぐそばまで迫ってきていることを肌で感じさせます。
止まったままのバルブやスイッチ、旧字体で書かれた看板に壁面の落書き。
繁栄の陰で都合の悪いものから目をそらし、どこかで思考を停止し錆つかせてしまっている現代人の頭の中を象徴しているかのようです。
食材や料理が盛り付けや器によって引き立てられるように、これらの作品が、シンプルの極みともいうべき白くて四角いギャラリーの壁に整然と並べられていたら、印象も変わっていたことでしょう。
ここもまた、京都という都市の一面です。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭

5月1

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KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 」の会場を一日で4か所巡って来たので、その一部をご紹介します。
京都新聞社ビルの地下会場は、無料で入場できます。
普段は入る事のできない印刷工場のレールに沿って並ぶは、アメリカの写真家で映像作家の
ローレン・グリーンフィールドが撮り続けていた、富める人々の飽くなき欲望の数々。
繰り返される歴史を擦り続けていた空間を会場に選んだ意図を感じずにはいられません。
一方、建仁寺の塔頭・両足院では、この展示のためにあえて黒い畳を敷き炭化した木材が用いられており、対照的に陽の光が眩しい新緑の庭から涼やかな風が入り込んでいました。
しかし、そこに展示されているものは、真っ赤な花びらを握り潰し、投げつけて執拗に押し固めたような物体。
かぐわしく華やぐ植物というよりも、まるで生き物の臓器を見せつけられているかのよう。
私達が普段、食事をしているときに、命を意識していないのと同じように、華やかな生け花もまた、無抵抗に命を奪われた生命体の最後の輝きであることを突き付けられています。
作者が故人であるため、写真パネルという形でしか鑑賞する事はできませんが、提携イベントとして、出町商店街に新たに登場した映画館「出町座」では、映画『華 いのち 中川幸夫』が上映されています。
六畳一間の極貧生活の中で、誰が観ても観なくても花をいけ続けたという華道家・中川幸夫の、より肉迫した創作のエネルギーがぶつけられるのではないでしょうか。
“> KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の会場を一日で4か所巡って来たので、その一部をご紹介します。
京都新聞社ビルの地下会場は、無料で入場できます。
普段は入る事のできない印刷工場のレールに沿って並ぶは、アメリカの写真家で映像作家のローレン・グリーンフィールドが撮り続けていた、富める人々の飽くなき欲望の数々。
繰り返される歴史を擦り続けていた空間を会場に選んだ意図を感じずにはいられません。
一方、建仁寺の塔頭・両足院では、この展示のためにあえて黒い畳を敷き炭化した木材が用いられており、対照的に陽の光が眩しい新緑の庭から涼やかな風が入り込んでいました。
しかし、そこに展示されているものは、真っ赤な花びらを握り潰し、投げつけて執拗に押し固めたような物体。
かぐわしく華やぐ植物というよりも、まるで生き物の臓器を見せつけられているかのよう。
私達が普段、食事をしているときに、命を意識していないのと同じように、華やかな生け花もまた、無抵抗に命を奪われた生命体の最後の輝きであることを突き付けられています。
作者が故人であるため、写真パネルという形でしか鑑賞する事はできませんが、提携イベントとして、出町商店街に新たに登場した映画館「出町座」では、映画『華 いのち 中川幸夫』が上映されています。
六畳一間の極貧生活の中で、誰が観ても観なくても花をいけ続けたという華道家・中川幸夫の、より肉迫した創作のエネルギーがぶつけられるのではないでしょうか。

ありそうでなかった花街写真展

4月18

utage 辰巳神社を背に微笑み、店出しの日には正装でご挨拶まわり…。
プロアマ問わず、芸舞妓たちを写した写真展は、どこも似通っているような気がします。
極彩色のカメラマン・蜷川実花の手にかかると、彼女たちは白粉ではなく、むせ返るような花の香りに包まれ、厳しい世界をしなやかに逞しく生き抜く「女子」。紅や朱は、むしろショッキングピンクに変貌します。
古典芸能を担う彼女らを、洋花で少女漫画の様に飾り付ける手法に、花街ファンの古株達はどういう印象を受けるかは分かりませんが、どれもはっとさせられるほど美しいので、きっと撮られた本人達は、その新鮮さを楽しまれたのではないかと推測してしまいます。

KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」の中でも、京都駅ビルの百貨店の中という立地なので、普段はアートに接する機会の無い人でも、このアートイベントを巡るスタート地点になる展覧会ではないでしょうか。

お寺のひな祭り

3月6

hina 春桃会の三十三間堂。普段は厳かな佇まいの千手観音坐像も、隣にお雛さんが飾ってあるだけでどことなく春の空気をまとっていました。
この日に限り、体半分ほど高いところから堂内を眺められる足場が設置してあり、おびただしい数の千体千手観音立像が規則正しく並ぶ様を斜め上の角度から観ると、まるで合わせ鏡の中で永遠に続いているかのようです。
境内で女の子の赤ちゃんを連れた人をよく見かけたのは、桃の節句に子供の幸せを願ってのことでしょう。実家にあるお雛さんを思い出し、代わりに女性専用の「桃のお守り」を受けて後にしました。
三十三間堂の東側に出たすぐそばの法住寺の、庭を隔てた奥の書院には、三間にわたって吊り雛をはじめとした様々な人形が花壇の様に彩を放っていました。
段飾りに、床の間には立ち雛の掛け軸、畳の上には貝合わせに西洋の人形まで、様々な姿で親しまれてきた人形たちを観ていると、それらをひとつひとつ包み、大切にしまって引き継いできた人々の姿を想像します。
子供の頃は単なる人形遊びだったひな祭り。その意味を知り、お片付けやお飾りを手伝うようになったのは、いくつのときだったかな。

京都の屋台村

2月19

sujin
京都駅から東に徒歩5分、塩小路高倉の角に2年半限定の屋台村「崇仁新町」ができました。
屋外なので、寒さ対策としては膝掛けのほか、屋台骨の外側に厚手のビニールが張ってあり、ペレットストーブも中の空気を温めています。
入り口では野菜も売られていて、近所の奥さんが自転車を止めて覗き込んでいました。
テイクアウトメニューもありテーブルも共有なので、嵐山で人気の中村屋のコロッケをほおばりながら、他のメニューができるのを待ってみたり。
岡崎から出張してきた店舗の「崇仁新町バーガー」は、肉の旨みと根菜の食感、とろけるチーズがぎゅっと一体化したアメリカンスタイルの逸品でした。
昼間だったのでまだ空いていましたが、夜になればおでん等をつつきながら暖を取る人々で賑わうのでしょうね。
飲食店だけでなく、レンタル着物店や、日本の檜を使ったおもちゃを展示販売しているスペースも。
組み立て中の木枠もたくさん残されていたので、まだまだこれからも「ネオスウジン」にはお店が増えていきそうです。
なんと、4月7日には「京都カス野郎プロレス~崇仁春のBANG×2祭り」もあるみたいですよ。

京都のロシア、京都のラオス

10月31

yulala 京都を何度も訪れている人にとって、京料理やおばんざいは今更…という人もいるかもしれませんね。ならば、ロシア料理やラオス料理という選択はいかがでしょうか。
前者は、京都府立植物園の向かい、北山大橋東詰にある「カフェ ヨージク」。
「ロシアランチ」の他、ビーフストロガノフ等お馴染みのロシア料理があり、ビーツや野菜の旨みが優しく溶け込んだボルシチや手作りのベリージャムを添えたロシアンティーのロマンチックな赤は、日本食とはまた異なる華やかさがあり、マトリョーシカ柄の雑貨もカラフルで元気をもらえそう。
香ばしく揚げられた、挽肉、きのこ、りんごの3種の味のピロシキは、持ち帰りもできます。定期的にイベントも開催されているそうで、ひと時の異文化体験をしたい人はぜひ。
後者は、柳馬場仏光寺を下がった職人さん達の町の中にある「ユララ」。
「ラオス料理って、一体どんなん!?」と思う人も多いでしょうが、どことなく言葉もメニューも、タイ料理に似たところがあり、想像していたよりも繊細な印象でした。
素材の持ち味を活かし、日本で言うところの「たまり醤油」に似た魚醤で味を付け、もち米と共に頂いたり、海の無い内陸の国なので魚を発酵させて長持ちさせる等の工夫がなされているのは、都人の知恵が食文化に現れている京都にも通じる部分があります。
また、京都市動物園では「ゾウの繁殖プロジェクト」に基づく人材交流事業としてラオスからやって来たゾウがおり、映画『ラオス竜の奇跡』も上映中とあって、意外と京都との共通点があったのですね。
京都で体験する異文化、まずは「食」から。

怖い、気持ち悪い、でも観たい

10月23

senkyo 選挙の結果は、皆さんにとっていかがでしたでしょうか?
京都では、もう一つの総選挙が継続中です。
龍谷ミュージアム『地獄絵ワンダーランド』展に併せた特別企画「地獄No.1を決めろ!!地獄オールスターズ選抜総選挙」です。
死後の世界はどんな構図になっているのか、まずは展示物を観る前にシアターで地獄ツアーを疑似体験されると、お子様でも理解が深まりやすいと思います。
最前列で映画を観ていた坊主頭の親子は、もしかするとどこかの寺院の方だったのかもしれません。
子供の頃に繰り返し読んだ絵本『じごくのそうべえ』を思い出したり、幼い頃にのんのんばあに連れられて地獄絵に親しんできた漫画家の水木しげるのように、子供の頃から可愛いものと同じくらい恐ろしいものに惹かれてしまうのは何故なのでしょう。
この死生観は、香典返しの掛け紙にも「満中陰志」と記されるように、大人になってからも私達の生活に関わってきます。
展覧会は、上階では大真面目で怖~い地獄の世界が紹介され、燃え上がる炎や迸る血の色に酔った末に観音図を観ると、ほっとするぐらいなのですが、更に下の階に降りる(堕ちる?)と、今度は打って変わって、「ヘタうま」絵画のごとくユルくてユーモラスな地獄の、時には風刺画の様な世界が展開されるという構成になっています。
総選挙は29日までで31日に結果発表、投票者から抽選でオリジナルグッズが贈られるそうですが、もちろん閻魔様に投票したところで罪を免れられる訳ではありません。
地獄絵の中央に書かれる文字は「心」。
天国に行けるかどうかは、私達の心がけ次第なのですから。

花山天文台

9月12

kazan 海原のように素晴らしい秋晴れが続くこの頃。花山の峰に停車したシャトルバスを降り、山百合が点々と道案内する坂道を少しばかり登ると、白亜の「花山天文台」が見えてきます。
もとは京都大学の時計台の側で観測活動がされていましたが、より適地を求めて標高221mの花山に移されました。
候補地だった吉田山は神社を有する土地であったために外れ、当時昭和4年頃の山科はまだ人口が少なく音羽山が京都市街の光を上手く遮断する好立地だった事からこの地が選ばれたそうです。
8千坪もの土地を持ち主から譲り受け、軍隊が演習を兼ねて資材を運び、造船の技も駆使して、国内3番目の大きさの口径45cmの屈折望遠鏡を有する本館が建てられました。
花山天文台長だった宮本正太郎氏は、スケッチを通して火星に偏西風を発見、NASAに情報を提供するなど、様々な研究成果を挙げてきましたが、京都大学における最先端の研究教育の中心地が飛騨天文台や岡山の新望遠鏡に移り、花山天文台の運営費はそちらに回さざるを得なくなりました。
今後もイベントを企画したり、学校の見学や実習を受け入れていく為には、施設の維持やスタッフを常駐させるための費用を賄わなければならず、一年で一千万円の融資が必要なのだそうです。
残念ながら「京の夏の旅」期間中は資料や建築物の公開のみで天体観測ができる訳ではありませんので、また後日、天文イベントが催される際にはぜひ再訪したいと思っています。
道中は曲がりくねる車道の連続で、人一人が歩いて登るのも危険なので、無料シャトルバスやタクシーを利用して下さいね。

天神さんの「泣き相撲」と「御手洗祭」

8月17

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京の七夕」の会場のひとつ、北野天満宮では「北野七夕祭」(16日まで)が行われていました。
「北野天神泣き相撲」では、立派なまわしを付けた生後5~6か月から2歳までの赤ちゃんが、お父さんやお母さんに抱かれて神楽殿に「土俵入り」。
にこにこ顔の行司さんを挟んで向き合うやいなや、母親にしがみ付いたまま振り向かなかったり、見合う前から顔を真っ赤にして大声で泣き始めたり。
相撲になっているのかいないのか、なんともかしましい状況でしたが、これは泣いた方が勝ちとされています。
なんせ赤ちゃん達が主役なので、「え~次の取り組みですが~まだ現れませんね。」と、大人の思惑通りに進行しない事もありますが、そこは観客もおおらかに見守っていました。
「御手洗川足つけ燈明神事」の方は、週末にも関わらず、昼間だととても空いていて驚きました。
京都に住む知人達にもまだ十分には浸透していないようで、
「天神さんでも御手洗祭があるのん?下鴨神社のは行きそびれたから、そっち行ってみよかな」という調子です。
濡れた足のままで歩き、靴を着脱するための床几やすのこ、頭上のテントからはドライ型ミスト装置も設置されていたので、小さな子供を連れた家族連れでものんびりと楽しめていたようです。
未知の体験におびえたり、冷たい水に驚いたりはしゃいだり。その瑞々しい桃の様な頬が小麦色に焼けるまで、子供達の夏はあともう少し、続きます。 動画はこちら

京都で盆踊り

7月31

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どちらかというと地蔵盆の方が盛んな京都ですが、盆踊り大会が毎年開催されているところもあります。
先日行われたのが、西本願寺の「本願寺納涼盆踊り大会」。
境内の北側にある広大な駐車場に櫓が組まれ、音頭が響きわたるなかで浴衣や洋服姿の老若男女が踊っていました。
どうやら「ゆかたレンタル&着付け」のコーナーもあったようです。
「本願寺グルメストリート」も同時開催されていて、定番の屋台メニューに加えて、有名B級グルメの「富士宮焼きそば」、矢尾定の鮎塩焼きやわらび餅、前田珈琲のかき氷など京都でお馴染みのお店の出店もあり、京都グルメも味わえます。
テント付きの床几もたくさんあるため、甚平姿の赤ちゃんから夫婦連れのお年寄りまで腰かけて食べていました。
夕闇が降りてきて提灯に一層の赤みが増したころ、吉本芸人のお笑いライブが始まると、同時にたくさんの人だかりが舞台へと吸い寄せられていきました。
そういえば、屋台に目移りしてばかりで、踊る事をすっかり忘れてしまっていたな…。

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