e-kyoto「一言コラム」

ガイドブックには載っていない、スキマ情報をご紹介していきます。

京都は「一本入る」。

2月28

stock 雛人形を飾り始める時期に明確な決まりは無いそうですが、立春を過ぎた頃からぼちぼち出す家もあるようです。
自宅を引っ越してから、玄関に季節の飾り物を置く棚が必要になりました。
久しぶりに訪れた荒神口の「ヴィンテージ・アンティーク家具&雑貨の店 STOCKROOM」。

大型量販店では出会えないような小物や家具が入り口に至る通路から並んでいて、心が躍ります。
「今日は冷やかしじゃないぞ」とお店の中を隈なく目を凝らして歩くうちに、ふと気になった木製のサイドボード。
高さの異なる別の棚がドッキングしたような形がユニークで、
「この段には花瓶を置こうか。その下には…」と想像力を掻き立てられました。

北欧の家具もいいけれど、日本のアンティークもやるじゃない。

その後、夷川の家具店通りも巡ってはみたものの、結局こちらに戻って来てしまいました。
送料を入れても3万円弱とは良心的。

京都は一本中に入ったところにいいお店がある。
河原町通りから一本東、人通りのそう多くない静かな通り沿いの古い建物の、更に薄暗い突き当りにあるお店ですが、常連らしき人足が絶えることのない人気ぶり。

数日後、我が家の玄関に収まりました。
閉まりがおぼつかなかった扉も綺麗に補正され、お店で眺めたときよりもすっきり端正な姿に見えます。引き出しを開けると、店主からの小さなお手紙も。

以前に他のネットショッピングでポチっと購入したときのまっさらの家具とは違って、既に時の旅をしてきた「家財」だからでしょうか、撫でてみると初めてなのに懐かしいというか、「うちにやって来てくれた」という気持ちが自然と湧いてきます。
ああもっと、これにまつわる物語を聞いておけばよかった!
帰宅した子供達も、これまでとは違う手触りに触れ、扉や引き出しを開けたり閉めたり、その感触を
確かめているかのようでした。

今日からこの子がうちの玄関の顔です。

2024年2月28日 | お店, 和雑貨, 未分類, 町家 | 1 Comment »

父とうどん、母と蕎麦

2月20

so「小腹が空いた。」
そんな時に父が入るのはカフェではなく、定食屋か麺処。
通りがかった聖護院の「めん処 ときわ」。
おだしの香りと、木の机と椅子。
おそらく初めて入ったのに「そうそう、こんな感じ」となぜか思ってしまう。

お品書きを一通り見て、「鍋焼うどん」を注文するのは薄々分かっていました。
自分はお米の気分だったので、丼もの。

湯気もくもく、熱々をはふはふと口に運びながら、ナイアガラのように額にかいた滝汗を、食後にハンカチでさらりと拭いて満足そうでした。

また別の日、母からは「そ /s/ kawahigashi」というお店の提案が。
一見だったので念のため予約の電話を入れてみると、平日のためか案外すんなり入れそうな印象でした。
ウェブサイトも9席のカウンターの店内もお洒落、混むでもなく空くでもなく、京都に住むオトナ達が絶え間なく出入りしていました。

店名から察して尋ねると、やはり「草喰なかひがし」の中東家の三男さんが開いたお店とのこと。
もう5年ほど経っているそうですが、以前は夜とテイクアウトのみの営業でした。

コースや単品メニューもあり、母はやはりベーシックな鰹だしを選び、そこからチーズや梅干しなどのトッピングを色々追加。
こちらは野菜だしに「たねつけばな」「はこべ」「こうばい」の草が盛り盛り、焼いた大きなお揚げさんで丼が埋められた麺を頂きました。
「やっぱりお米も」と迷わず注文した鯖寿司も、いずれも端正で優しいお味でした。

たまたまどちらも同じエリアのお店になりましたが、
「京都で軽く食べる」なら、こういうところがいいですね。

2024年2月20日 | お店, グルメ | No Comments »

防空壕の残る町家カフェ

2月15

tama 東山で友人と待ち合わせ。
先に入ったお店「たまゆらん」の地下にいる、とのこと。
「路面店ぽいのに地下?」
と思いながら店内に入ると、地下へと続く細い階段に誘導されました。

床に頭をぶつけないよう反り腰になりながら降りると、幾つかテーブル席が。
天井には板が渡してあるのが剥き出しで、全体的に薄暗い。ここってもしかして。
「防空壕ですか?」
お店の方に確認すると、まさしくその通り。

頭上の板には、ところどころ商店の名前や場所が書かれています。運送に使われた木箱を再利用しているのかもしれません。
今のオーナーに渡る前には民家だったようです。

野菜たっぷり、しっかりと手作りされた味わい深いハンバーグのプレートを頂いている合間に、天井の隙間から足だけ見えていた猫ちゃんが降りてきて、自分の膝の上にやってきました。
と思うと、のろのろと友人のスカートの上に移動し、そこで丸く収まりました。
ジーパンの膝よりも、温かなスカートの膝の方が居心地良かったんでしょう。
食べ終えても、目を細めてずっと気持ちよさそうに寝ています。

このお店では、保護猫の譲渡会も時折開催されているのだそうです。
猫カフェはどこも人気で予約が必要だったりもしますが、こんな空間で思わぬ猫とのふれあい。
別れ際は、一緒に外に出たそうにしていました。

2024年2月15日 | お店, グルメ | No Comments »

「大市」に聞いてみた

11月21

maru お品書きは〇鍋コース一択のみという「すっぽん料理 大市」。
暖簾を潜った瞬間から、すっぽんの出汁で空気まで染まっているのではと思うくらいの濃厚な香りに圧倒されました。

坪庭のある渡り廊下を通って小部屋に入ると、低い天井の数寄屋造りの部屋には床の間に掛け軸が掛かっています。
まさしく「京都に昔からあるお店」の風情です。

ごうごうと湯気の上がる鍋の前で、仲居さんがてきぱきとした手つきで取り分けてくれます。
おそらく臭み消しと思われるお酒と生姜がふんだんに使われているようで、スープも濃い!
ぷりぷりとしているのは甲羅周辺にある「エンペラ」という部位でしょうか、身とともに食感はフグに似ていますが、より「肉を食べている感」があります。
リクエストした家族は、「うん、うん、うまい」と頷きながらハフハフと、ひとくち大の骨もしゃぶるように食べていました。

熱々の状態で食べるために2度同じ鍋が運ばれ、締めにオレンジ色の黄身が浮かんだ雑炊となって運ばれてきました。
大きな餅にかけて食べる雑炊も、濃厚な味わいで食べ応え十分。

そこで、ここに来るからには、ぜひお店に尋ねてみたいことがありました。
このお店をモデルにしているという漫画の3巻に収録されている「土鍋の力」の回を読んで予習してきたので、いざ仲居さんに質問をぶつけてみました。
「あ、あの…既に色んな方から尋ねられている事かと思いますが…漫画『美味しんぼ』に描かれているように、空の土鍋に水を張っただけですっぽんの出汁が溶け出すことってあるんでしょうかっ・・・!?」
「ありません。」
鮮やかな即答でした。
「毎日1000℃以上のコークスで土鍋を炊いてますから…鍋の寿命は3か月、もって1年というところなんです。」
漫画なので、何十年もすっぽん出汁を吸い続けたまま奇跡的に残っているという土鍋というエピソードは、だいぶ盛っているというということですね。
「かすかにすっぽんの味がするというのはあるかもしれませんが…」

お店を出る頃には、次のお客が囲炉裏で暖を取りながら談笑されていました。
「京都っぼさ」を売りにしている観光客向けのお店には真似できないだろうなあと思いながら、すっぽんのコンソメスープをお土産にしました。
オンラインショップもあるようですよ。

2023年11月21日 | お店, グルメ, 町家 | No Comments »

お干菓子体験

11月1

miyage 友人の小学生のお嬢さんが干菓子好きと聞いて、お宅訪問の手土産にしました。

最近の和菓子は多種多様なので、カワイイ系と、茶席向き系という、それぞれ趣きの異なる干菓子にすることに。
前者は、「スライスようかん」が大きな話題を呼んだ亀屋良長さんの「宝ぽち袋」
後者は、亀廣保さんの「弓張月」と「雁来紅」を自転車で買い周り。
もちろん、どちらの品もお茶席で映える京の職人技の結晶です。

さて、後日感想を聞いてみました。
先方のパパさんは、見るなり「これ箸置き?」
…確かにそう見えるかも。
「弓張月」を飴だと思って食べてみたら、ゼリーのような食感(干琥珀)だったので驚いたそうです。
薄いお砂糖のコーティングがどうやって作られてるのか知りたくなった、ほんま芸術やね、とのこと。
宝ぽち袋の方にも繰り返し手を伸ばしていたそうです。

また別の家族で、本格的な和のお菓子は初体験という子供達の方は、
綺麗でシンプルな見た目なのに、本人が思っていた以上に甘くてびっくりしていたそう。
甘い物好きなので、ちびちび食べながら喜び、小学生のお兄ちゃんは
「お茶に合う~甘いもののあとはお茶だね」と貫禄あるコメントでした。

川床でお月見

10月4

yuka 仲秋の名月は、家族で鴨川の川床から月を観ながらお食事しようと思いつきました。
お手頃なお店を探して「B STORE 1st」を初訪問。
四条大橋に立った時、月は南座の上に。
川床に出てみると、ちょうど真正面に満月が登っていました。

夜風が涼しく空も晴れて、気持ちの良いお食事タイムでした。
鴨川納涼床は、店舗により10月末まで利用できます。
残暑もようやく和らぎ、いい季節ではないでしょうか。

そして、食後にもう一つの目標のため、出町柳まで移動し、鴨川へ降りました。
レジャーシートを広げ、お茶を点てます。

月明かりの下で一服しながら澄んだ空を仰ぐと、まぶしいくらいに輝く満月の下に、いつしか同じ方向へと伸びる二筋の飛行機雲。
見回すと、芝生に二人もしくは数名で腰を下ろして月を見上げているグループが点々と。 外国人もいます。
中にはアウトドア用の折り畳みテーブルを据え、小さなスタンドライトで手元を照らしながらお酒を酌み交わしつつ談笑するグループも。

夜桜の頃とは違う、暗くて静かな賑わい。
こうして仲間と月を愛でようという人たちが現代にもこんなにいる。
どれだけ観光地化が進んでも、これが京都のいいところ。

2023年10月04日 | お店, グルメ | No Comments »

伊根町、再び。

9月4

tinzao 昨夏以来、再び丹後の伊根町を訪れたのは、奇しくも「伊根花火」の日でした。

交通規制が始まる16時までには入らないと、会場近くの駐車スペースが埋まって入れなくなってしまう恐れがあるので注意が必要です。

舟屋を改装した「台湾茶葉専門店 靑竈(チンザオ)」の空きができるまでの間、近くの屋台で焼きそばやクレープを食べて待ちました。
屋台の店主の明るい声がよく通ると思ったら、向かいの海蔵寺のご住職さんでした。
日頃は宿坊をされていますが、この日は地域貢献のためにお店番。

伊根湾を望む靑竈にて対岸の屋台村の喧騒を遠くに聴きながら、冷えた台湾茶でクールダウン。
いわば「舟のガレージ」だった場所なので冷房こそありませんが、それぞれのお客がリラックスしてすっかり長居してしまうのがよく分かります。

祭り会場に見えるクレーンは、日が暮れるとスクリーンを引き上げて映画を上映するそうです!
町のあちこちの舟屋や母屋の網戸からは、家族親族が集まって団らんしている様子が垣間見えました。

今回は離れた宿泊先の夕食の都合で夕方で泣く泣く伊根町を後にしましたが、
次にここに来る時には、伊根花火に合わせて(今年は5月1日に日程は発表されました)舟屋の宿を早めに押さえておいて、本庄浜海水浴場と共に楽しみたいと思います。

杯を肴に酒に酔う

7月25

sake
祇園祭神幸祭の神輿も通る祇園・古門前。
祭の喧騒を離れ、日本酒バー「THE BAR-SAKE」へ。
美術茶道具商「中西松豊軒」の目利きで選りすぐられた酒器を肴に様々なお酒を楽しめるところ。

ホテル「ART MON ZEN KYOTO(アールモンゼン京都)」内の畳のカウンター「天外」は、堂本印象が長刀鉾の稚児社参を描いた掛け軸や、丸平・大木平蔵による長刀鉾や山伏山の精巧な模型人形が据えられ、祇園祭のしつらいになっていました。
御簾に囲まれ、一人ずつお膳が並べられているだけでテンションが上がります。
エレガントな金髪美女と入れ違いでしたが、以前このホテルに滞在された時に利用されたリピーターとのこと。

まず目の前に出されたのが、祇園さんの紋の入った酒杯と杯台。
「永楽即全です。」京焼の家元の一つであり、千家十職の一つと名高い、いきなり名器の登場です。
今回主に頂いたのは、 京都府「神蔵」、栃木県「鳳凰美田」や青森県「田酒」、灘のシェリー樽熟成特別原酒「絲 ito 」など。

様々な酒杯の中から好きな酒器を選びながら、亭主と話に花を咲かせます。
国宝茶碗で有名な油滴天目をミニチュアにしたような杯も、手にしたとたん底に吸い込まれそうでした。
食前酒のように甘いもの、スパークリングワインのような発砲酒、ウィスキー樽に漬け込んだお酒など、お酒に詳しくなくても変化が楽しめて、杯に少しずつ色んな種類を頂くので飲みやすく、悪酔いもしません。

予算は税サ込みで5000円ほど。
唐揚げとビールで飲めや歌えやの宴席も楽しいものですが、あらゆる「本物」が集う京都で酔うなら、
お酒にも、それを湛える酒器にも思いを馳せて頂くひと時も京都旅の醍醐味ではないでしょうか。
(ちなみに、気に入った器は購入も可能とか)
こちらは金曜日と土曜日の営業ですが、その他の曜日は要相談とのこと。いずれも予約をしてくださいね。

2023年7月25日 | お店, グルメ | No Comments »

美術館に泊まる。「純国産」ホテル

6月21

tengai 古美術商の立ち並ぶ祇園・古門前に、美術茶道具商「中西松豊軒」が監修するホテル「ART MON ZEN KYOTO(アールモンゼン京都)」があります。

足を踏み入れると、御簾に囲まれた畳敷きの「天外」という、このホテルを象徴するかのようなスペースが目に入り、館内は美術商の審美眼によって選び抜かれた国内外の美術品が随所に散りばめられている事に気付きます。

まるで美術館に泊まるかのような趣向。
美術品は飾って眺めるためだけのもはありません。自分の皮膚と対話させてこそ良さが伝わるものもあります。
「和風ラグジュアリー」を謳うホテルは数あれど、日本が誇る「本物に触れられる」純国産のホテルと言えます。

全ての客室が天井高3メートル以上とゆったりとした設計で、
数寄屋の趣は好きだけど、旅館スタイルでは落ち着かないという外国客にもおすすめできますね。

ちなみに、この「天外」スペースでは、金曜日と土曜日は「THE BAR-SAKE」として営業中。
(※ご利用の際には電話にてご確認ください)
ここでしか手にできない骨董の漆器・焼物・ガラスなどの酒器で頂くお酒は、どんな口あたりなのでしょうね。
ぜひ行ってみたくなったので、またレポートしますね。

“Cha”で繋がる世界

6月6

yoshida 週末の昼下がり、ふと思い出して吉田神社へ自転車を走らせました。
京都吉田山大茶会』を久しぶりに覗いてみようと思ったのです。
黄色の横断幕が迎える石段を登り詰めると、いつもは静かな境内に所狭しと立ち並ぶお茶の屋台が見えてきました。

まずは赤い水色が目を引く韓国の五味子茶で栄養補給、和紅茶をスパイスと共に煮出したチャイをアイスでテイクアウト。
ほうじ茶と珈琲をブレンドした餡のどら焼きを片手に喉を潤していくうちに、晴天下の移動の疲れからみるみる元気になりました。

日本、中国、ベトナム、韓国、台湾、南米、ドイツ…お茶のみならず茶器や菓子、バッグ等の雑貨、お茶の木の苗木も手に入ります。
その数なんと37ブース。お客さんもお茶おたくばかり!後から興味本位で石段を登っていた外国人ファミリーは、この景色に圧倒したかもしれませんね。
お茶通でこの会の常連さんである友人達は、茶席が埋まらないうちに予約して午前中から水墨の書画体験も楽しんだようです。

ずっと雅楽のような音色が聞こえるので、吉田神社の神事と重なっているのかな、と思っていたら、更に石段を登ったところにある若宮社にて、能管とサックス、箏や笙の演奏がされていたのでした。初夏の風に乗る、気持ちの良いBGMです。
旅行で出逢ったベトナム雑貨が懐かしくなり、刺繍のバッグを自分のお土産としました。

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